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箱から覗いてみました……
何故、騙される……
しおりを挟むあまりが通っていた古い幼稚園の建物の裏。
誰も居ないそこで、幼い海里がフランス語でなにやらペラペラしゃべってくる夢を見た。
わ、わからない、と思っていると、海里が小馬鹿にしたように鼻で笑う。
ゆっ、ゆるしませんーっと目を覚ますと、朝だった。
あまりはひとりでラグの上の布団で寝ていた。
そうか。
夢だったか。
なんて夢だ……。
「おはよう」
とキッチンのカウンターの向こうから顔を覗けた海里が言ってくる。
「あ、海里さん、おはようございます」
海里は布団をたたんで抱えてくる。
「そっち寒くなかったですか?」
大丈夫だ、という海里と共に、着替えたあと、一緒にパンを焼いたり珈琲を淹れたりする。
「これ、うちの店のパンなんですよ」
「だろうな。
食パンも美味いな」
こんがり焼けた厚切りの食パンの上にはたっぷりの溶けたバター。
指でちぎると、ふわっと湯気とともに、真っ白でふかふかのパンが現れる。
……美味しい。
でも、なにか釈然としない。
サクサクふかふかのパンを見ながらあまりは呟いていた。
「昨日、おかしな夢を見たんですよ……」
しばらく間を置いて、こらえきれなくなったように、海里が吹き出した。
「ああっ。
やっぱり、夢じゃなかったんですねっ」
海里は笑いながら、
「だって、お前、自分であんな夢を見るなんて相当な淫乱だぞ」
と言ってくる。
「まあまあ。
今日も風呂磨いてやるから」
と言う海里にいじけたように、
「そうそう毎日汚れませんよ……」
と呟いた。
不本意ながらも、それなり楽しい朝食だった。
「お、おはようごさいますー」
成田が控え室に居ると、あまりがやって来て、ささささっとロッカーへと入っていこうとした。
カフェの特集の載っている雑誌を見ていた成田は視線であまりを追う。
「あまり」
と呼ぶと、ビクついて振り返り、アコーディオンカーテンの向こうから顔を出してきた。
「な……なんですか?」
なんだ、そのビクビクは、と思いながら訊く。
「どうかしたのか?」
「いえ。
なんでもありません」
と言って、あまりは、そのまま引っ込もうとした。
「嘘つけ。
なんかあったろ?」
「べ、別になにもありませんよ」
あまりは、しらばっくれるように言ったあとで、足を止め、言ってくる。
「あ、でも、今度刑事さんが此処にいらっしゃるそうですよ」
「いや……なんで、なにもないのに、突然、刑事さんが現れるわけ?」
ついに警察に目を付けられるようななにかをやったのかと思ったが、そうではなかった。
「昨日の人、刑事さんだったんですよ。
あのちょっぴり挙動不審で私を見てた人」
あまりのお隣さんなのだと言う。
「此処に服部さん……、あ、その刑事さんなんですけど。
服部さんが追ってる人がたまに現れるそうなんです。
こんな感じの人です」
とポケットからメモ書きを出してくる。
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