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お茶汲み秘書の話すのやめときたい秘密

新幹線での探り合い

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 戻ってくると、海里は、ぼんやり外の緑を眺めていた。

 ……絵になる人だな。

 写真の向こうに居るのを眺めているのが一番平和だった気がしているが、と思いながら、あまりは、
「はい」
と海里の前に皿を置く。

 いつの間にか、あまりの皿に、オムレツが切って置いてあった。

 ちょっと笑い、
「はい」
とスクランブルエッグを少し海里の皿にあげる。

「いや、いい。
 お前、食え」
と言った海里は、こちらを振り向き、

「今日はカフェは休みだったよな?」
と訊いてきた。

「はい。
 土日は学生のアルバイトさんがいらっしゃるので、私はお休みです」

 いいですよねえ、とあまりは呟く。

「高校生の子も居るんですよ。
 私も高校時代に、ああいう素敵なカフェでバイトとかしてみたかったです。

 うちはバイト禁止だったので」

「そうか。
 俺は今日も適当な時間に会社を覗くが。

 明日は休みなんだ。
 お前、明日は――」

「死ぬ程忙しいです」
と素早く言うと、そうか、と笑っていた。

 今まで見たどのときとも違う、少し打ち解けたような笑顔で、うっかり、ちょっと可愛いなと思ってしまった。

 いやいや。

 気のせいだ、気のせい、と思いながら、ふかふかのパンを食べる。

 ほんのり温かくて美味しかった。



 一見、普通だな、と海里はあまりを眺める。

 二人で新幹線に乗ったあと、駅で買った旅行雑誌をあまりは真剣に読んでいた。

 ……何故、旅の帰りにそれを買う。

 俺とまた旅に出たいとか?

 ……なさそうだな。

 本を読むから通路側でいいというあまりは、昨日、自分がしたように、一個席を空けて座っていた。

 昨日は真横に座るのがちょっと気恥ずかしかったから、間を空けてしまったのだが、今日は別に側に座ってもよかったんだぞ、あまり。

 本当に記憶から消し去ったんじゃあるまいな、とまったくこちらを見ないあまりを見ていた。

 窓際を譲ってもらったが、ほとんど外など見ていない。



 一方、あまりは、

 ……な、何故、ずっとこっちを見ているのですか。

 と本を広げたまま思っていた。

 素敵な宿や料理が鮮やかに映し出されたページばかりなのに、まるで頭に入ってこない。

 海里がずっとこちらを見ているからだ。

 勘弁してください~。

 本を見ているフリをしながらも、海里の視線ばかりが気になっていた。


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