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新しい王子が現れました
ついに扉は開かれた――
しおりを挟む夢の中、ついに謁見の間の扉は開かれた。
何故か扉が開くのを阻止しようとしていた隣の国の王子が、やってきた騎士団長に連行されていなくなったからだ。
まばゆい光あふれる謁見の間には、紀和一世と名乗る女王陛下がいて、突然、
「イイクニ作ろう 鎌倉幕府」
と言ってきた。
この国の挨拶なのだろうか、と思いながら、女王の前で控える朝霞をねぎらい、女王は言う。
「いつも王子の道楽を手伝ってくれているようですね」
宝石探しのことらしい。
道楽と言っては可哀想ですよ。
王子は宝石を元手にあなたから独立しようと真剣なのに。
やっぱり、容赦ないな、と朝霞は横にいる王子を見ながら思っていた。
王子は特に反論はしなかったが、沈黙していた。
だが、女王の口調はきついが、王子に対する深い愛情は感じた。
別に反発して出て行くほどではないんじゃないかな、とは思ったが。
まあ、そこのところは、本人の心の問題だ。
「女王様もご心配でしょうが。
私が、ずっと王子を見ていますから」
と言うと、うむ、と紀和一世は頷いた。
「では、ずっと王子の宝石探しについているがよい。
お前に穴掘り職人の称号を与えよう」
……いりません。
私、見ているだけですし、と思っている間に、盛大な晩餐会が行なわれ、勲章を女王陛下から授けられた。
イメージ不足により、素敵なラベンダーのドレスにつけられたのは、小学校の入学式のとき胸につけられたあれだったが。
天まで届きそうなケーキとか。
コックさんが目の前で音を立てて肉を焼いてくれるブースとか。
寿司を握ってくれる屋台とか。
なにか城の晩餐会では出なさそうなものも混ざってはいたが、どれも美味しそうだった。
だが、朝霞はそのどれにも手をつけなかった。
夢の中で喜んで、ご馳走を食べようとすると、必ず、目が覚めるからだ。
すると、そんな朝霞の許に、女王が騎士団長を従えやってきた。
「ほんとうにいいのですか?」
と朝霞に訊いてくる。
「え?」
「息子と穴など掘っていていいのですか?
お前には、もっといい相手がいて、素敵な未来が待っているかもしれないのに」
ほら、あそこに、と女王が示した先には、寿司の屋台のブースの陰からこちらを窺う佐野村王子がいた。
……だから、何故、佐野村、と思ったとき、目が覚めた。
こ、こんなことなら、なにか食べればよかったっ、と思ったとき、母親の声がした。
「朝霞ー。
まだ起きてないの?
ご飯よーっ」
はーい、と返事しながら枕許を見る。
あのゲームと一緒に十文字に買ってもらったゲームが並べてあった。
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