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見られてた!!(//Д//)
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会議室みたいな部屋から出て、女性の騎士(格好は冒険者)に部屋へ案内されている途中で、グレンが走って来て呼び止められました。
振り返ると、
「その……失礼な事を言った。悪かったな。」
「……いえ、確かにフードを被ったままなのは失礼な事ですから、気にしてませんよ。」
全く気にしないムーベラス王国の人達が寛大と言うか、暢気と言うか…………あっ、でも最初はアレフ様がちょっと言ってたっけ?
「そうか!どうも、俺は直ぐカッとなってしまってその度に怒られるんだが、中々治せなくて……俺もアンダルシア様に付いていくから、その、宜しく!」
と、手が差し出されたので握手しようとしたら、隣に居た旦那様がグレンの手を掴み、
「ええ、少しの間ですが宜しく。ミントと宜しくする必要は有りませんよ。終わればムーベラスに帰りますので。」
満面の笑みが……怖いですよ?旦那様。
「……俺はあんたに言って無いんだが?」
グレンが旦那様を睨みます。
「知ってますよ?後、私は伯爵で副団長です。言葉使いがなってない様ですね。学び直して来て下さい。」
「うぐっ!」
「では、早朝お会いしましょう。」
そう言って、グレンの手を離し騎士さんが開けてくれていた部屋に私を押して入りました。
ドアは騎士さんが閉め、その直後「うがああああああ!!なんなんだよ!アイツ~!?」と言う叫び声があり、騎士さんの「伯爵様でしょ!五月蝿い。ほら、仕事仕事!!」の台詞と同時に足音が遠ざかって行きました。
足音が聞こえ無くなってから、部屋の中を見渡します。
パッと見た感想は、中の上くらいの宿屋ですかね?
地下のアジトを考えれば、立派でしょう。
ベッド、机、テーブル、チェストに簡易キッチン。
横のドアはたぶんお風呂とトイレでしょう。
旦那様がマントと上着を脱いでるので、私もヤマダさんを下ろして、マントを脱いでハンガーに掛けときます。
ヤマダさんはグングン大きくなって、簡易キッチンのチェックを始めてます。
…………パンダだよね?
旦那様が大きく椅子を動かして座ると、手招きされたので側へ行きました。
で……腰を引き寄せられ、旦那様の足の上に横座り……です。
ほえ?
ギュッと抱き締められて、
「はあ~、落ち着く。」
は?いやいやいや、私は落ち着けないよ!?
旦那様に抱き締められたまま、トントントンと野菜を刻む音が部屋に響き……て、ヤマダさんが調理始めてるし!!
「ああ、そうでした。ミリアに聞きたい事があったんですよ。」
そう言うと、抱き締める力を緩めてくれました。
「……なんですか?」
「…………シュウ、とは誰ですか?」
「えっ!!」
「崖から落ちた後、呟いていたので気になりまして。」
え~と、困ったな……。
ブィーアが秀兄なの説明するのに、前世を話さないといけなくなっちゃう。
子供の頃の知り合い?とか……侯爵家に居ていつ、どこで会うの?
今すぐ、辻褄の合う設定とか思い付かない……。
「…………言い難い相手ですか?」
う~ん、このままだと変に誤解されそうです。
それは嫌だな……。
「驚きますよ?」
「驚くんですか?」
「だって、シュウ……秀兄はブィーアです。」
旦那様が目を見開いて固まってしまいました。
顔の前でヒラヒラと手を振って…………あっ、戻ってきた!
戻ってきたのは良いんですけど、旦那様の目が据わっていきます。
「……いつから知り合っていたんです?然も「兄」と慕う程?ブィーアは帝国の人間ですよ?」
「……分かってます。ブィーアと知り合ったのは祝日の前ですけど、秀兄は前世での私の兄です!」
「…………前世?」
「はい。私、前世の記憶を持ったままこの世界に産まれたんです。」
「……そんな事が?あ、赤ん坊の頃の記憶が有ると言ってましたね。」
「信じられないかもですけど、そもそも「ミント」と言う名前が前世の私の名前なんですよ。で、ブィーアの前世の名前が「シュウ」です。」
信じて貰えるかな?
頭がおかしい子とか思われたらショックだよ。
「その、あの崖で戦っていた時に、リュートさんから貰ったお守りにブィーアが触れた瞬間に、電流が流れて……あやふやだった記憶が鮮明になってブィーアが兄だと分かったんです。」
「…………信じますよ。誤魔化そうとするなら、もっと無難な事を言うでしょうからね。」
あれ?意外に簡単に信じて貰えた。
「……と言う事は、ブィーアの方も記憶が戻っている可能性が高いんですね?」
「う……ん、だと思います。」
「前世のミントですか…………きっと、前世も可愛かったんでしょうね。」
カアアアアッと頬が熱くなります。
「そ、そんな事、無いですよ?彼氏とか……居なかったし。」
恥ずかしくて俯いてモジモジしてたら、旦那様の手が頬に添えられてチュッとされました。
一端離れて、熱っぽく見詰められると今度は深く口付けられます。
「んっ…………。」
だけど、少し離れた時に見えてしまった。
再び、口付けようとする旦那様の口許に手を当て、
「ちょっ、ちょっと待って下さい。」
「……どうしました?」
「…………ヤマダさんが……。」
「?…………ヤマダがどうし……。」
旦那様が振り返りピクッと固まります。
簡易キッチンに立つヤマダさんが、両前足で顔を覆っているのだけれど…………所謂、指の隙間改め爪の間からバッチリ目が覗いてます。
堂々と立ってるので、ガン見です。
「「…………。」」
黙る私達2人に、ヤマダさんは右腕で顔を覆い直し、左腕を「どうぞどうぞ」みたいに動かして見せます。
…………私に構わず続けて……ですかね?
でも、左目はやっぱり爪の間から見えてて……口元を引き吊らせながら立ち上がった旦那様が、
「続けにくいわ!!!!」
…………デスヨネ~。
振り返ると、
「その……失礼な事を言った。悪かったな。」
「……いえ、確かにフードを被ったままなのは失礼な事ですから、気にしてませんよ。」
全く気にしないムーベラス王国の人達が寛大と言うか、暢気と言うか…………あっ、でも最初はアレフ様がちょっと言ってたっけ?
「そうか!どうも、俺は直ぐカッとなってしまってその度に怒られるんだが、中々治せなくて……俺もアンダルシア様に付いていくから、その、宜しく!」
と、手が差し出されたので握手しようとしたら、隣に居た旦那様がグレンの手を掴み、
「ええ、少しの間ですが宜しく。ミントと宜しくする必要は有りませんよ。終わればムーベラスに帰りますので。」
満面の笑みが……怖いですよ?旦那様。
「……俺はあんたに言って無いんだが?」
グレンが旦那様を睨みます。
「知ってますよ?後、私は伯爵で副団長です。言葉使いがなってない様ですね。学び直して来て下さい。」
「うぐっ!」
「では、早朝お会いしましょう。」
そう言って、グレンの手を離し騎士さんが開けてくれていた部屋に私を押して入りました。
ドアは騎士さんが閉め、その直後「うがああああああ!!なんなんだよ!アイツ~!?」と言う叫び声があり、騎士さんの「伯爵様でしょ!五月蝿い。ほら、仕事仕事!!」の台詞と同時に足音が遠ざかって行きました。
足音が聞こえ無くなってから、部屋の中を見渡します。
パッと見た感想は、中の上くらいの宿屋ですかね?
地下のアジトを考えれば、立派でしょう。
ベッド、机、テーブル、チェストに簡易キッチン。
横のドアはたぶんお風呂とトイレでしょう。
旦那様がマントと上着を脱いでるので、私もヤマダさんを下ろして、マントを脱いでハンガーに掛けときます。
ヤマダさんはグングン大きくなって、簡易キッチンのチェックを始めてます。
…………パンダだよね?
旦那様が大きく椅子を動かして座ると、手招きされたので側へ行きました。
で……腰を引き寄せられ、旦那様の足の上に横座り……です。
ほえ?
ギュッと抱き締められて、
「はあ~、落ち着く。」
は?いやいやいや、私は落ち着けないよ!?
旦那様に抱き締められたまま、トントントンと野菜を刻む音が部屋に響き……て、ヤマダさんが調理始めてるし!!
「ああ、そうでした。ミリアに聞きたい事があったんですよ。」
そう言うと、抱き締める力を緩めてくれました。
「……なんですか?」
「…………シュウ、とは誰ですか?」
「えっ!!」
「崖から落ちた後、呟いていたので気になりまして。」
え~と、困ったな……。
ブィーアが秀兄なの説明するのに、前世を話さないといけなくなっちゃう。
子供の頃の知り合い?とか……侯爵家に居ていつ、どこで会うの?
今すぐ、辻褄の合う設定とか思い付かない……。
「…………言い難い相手ですか?」
う~ん、このままだと変に誤解されそうです。
それは嫌だな……。
「驚きますよ?」
「驚くんですか?」
「だって、シュウ……秀兄はブィーアです。」
旦那様が目を見開いて固まってしまいました。
顔の前でヒラヒラと手を振って…………あっ、戻ってきた!
戻ってきたのは良いんですけど、旦那様の目が据わっていきます。
「……いつから知り合っていたんです?然も「兄」と慕う程?ブィーアは帝国の人間ですよ?」
「……分かってます。ブィーアと知り合ったのは祝日の前ですけど、秀兄は前世での私の兄です!」
「…………前世?」
「はい。私、前世の記憶を持ったままこの世界に産まれたんです。」
「……そんな事が?あ、赤ん坊の頃の記憶が有ると言ってましたね。」
「信じられないかもですけど、そもそも「ミント」と言う名前が前世の私の名前なんですよ。で、ブィーアの前世の名前が「シュウ」です。」
信じて貰えるかな?
頭がおかしい子とか思われたらショックだよ。
「その、あの崖で戦っていた時に、リュートさんから貰ったお守りにブィーアが触れた瞬間に、電流が流れて……あやふやだった記憶が鮮明になってブィーアが兄だと分かったんです。」
「…………信じますよ。誤魔化そうとするなら、もっと無難な事を言うでしょうからね。」
あれ?意外に簡単に信じて貰えた。
「……と言う事は、ブィーアの方も記憶が戻っている可能性が高いんですね?」
「う……ん、だと思います。」
「前世のミントですか…………きっと、前世も可愛かったんでしょうね。」
カアアアアッと頬が熱くなります。
「そ、そんな事、無いですよ?彼氏とか……居なかったし。」
恥ずかしくて俯いてモジモジしてたら、旦那様の手が頬に添えられてチュッとされました。
一端離れて、熱っぽく見詰められると今度は深く口付けられます。
「んっ…………。」
だけど、少し離れた時に見えてしまった。
再び、口付けようとする旦那様の口許に手を当て、
「ちょっ、ちょっと待って下さい。」
「……どうしました?」
「…………ヤマダさんが……。」
「?…………ヤマダがどうし……。」
旦那様が振り返りピクッと固まります。
簡易キッチンに立つヤマダさんが、両前足で顔を覆っているのだけれど…………所謂、指の隙間改め爪の間からバッチリ目が覗いてます。
堂々と立ってるので、ガン見です。
「「…………。」」
黙る私達2人に、ヤマダさんは右腕で顔を覆い直し、左腕を「どうぞどうぞ」みたいに動かして見せます。
…………私に構わず続けて……ですかね?
でも、左目はやっぱり爪の間から見えてて……口元を引き吊らせながら立ち上がった旦那様が、
「続けにくいわ!!!!」
…………デスヨネ~。
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