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第四章 覚醒編
悲劇の勇者、シグルド
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残酷描写あり。
ご注意ください。
「ここは…、遺跡、か?」
ルーファスは今度は古代遺跡のような場所にいた。
目の前には、地下に続く階段がある。
ルーファスは一瞬、逡巡するが、意を決して、階段を降りて、地下に下っていく。
階段を降りれば、地下の中は通路が広がっていた。
地下の中は暗いが、夜目が利き、灯りのない暗がりの中でも見分けることができる。
壁には絵が書かれていた。
ルーファスは蜘蛛の巣を手で払い、壁画を見つめる。
この絵は…、勇者達の歴史の…?
ルーファスは壁画を辿っていく。進んでいくと、どんどんと勇者の歴史が見えてきた。
この壁画は魔王と勇者の歴史を残したものだ。巫女らしき女性も描かれている。
この緋色の髪を持つ美しい巫女は恐らく、聖剣の乙女と呼ばれたクリスタだろう。
クリスタが勇者や仲間に聖剣と魔剣を与える場面も描かれている。
クリスタは元々、鍛冶屋の娘でクリスタ自身も凄腕の鍛冶職人だったと聞く。
かつて、初代巫女ペネロペが女神から与えられたという光の聖剣の復元にも成功し、魔族と魔物に対抗できる武器を作り、勇者達に適した武器を与えたと聞く。
ルーファスはクリスタが闇の勇者に魔剣を与える壁画に目を留めた。
闇の勇者、シグルド…。
この名は歴代勇者の中でも特に有名だ。
光の勇者、ラインハルトと並ぶ位に名を馳せた勇者の一人。
魔王との最期の決戦で古代剣術と闇魔法を駆使して、魔王と戦い、シグルドとの戦いで弱り切った魔王をクリスタが封印したと言い伝えられている。
次々と他の勇者が倒れていく中で最後まで倒れずに生き残り、魔王と互角に戦い、消耗させるまでに至ったシグルドの強さは今でも語り継がれている。
故人であるシグルドが現代でもその名が知られているのは、ただ強いだからではない。
シグルドの名が今でも刻まれているのはその生涯があまりにも凄惨だったからだ。
魔王討伐に貢献した勇者、シグルド。彼の偉業は世界中が賞賛し、人々はシグルドを褒め称えた。
誰もがこう思った事だろう。これだけの偉業を成し遂げたシグルドは幸福な一生を終えるのだろうと…。
しかし、運命は残酷だった。シグルドは後に、破壊の勇者、悲劇の勇者と呼ばれるようになる。
誰も想像できなかっただろう。まさか、シグルドが魔王討伐から一年足らずで非業の死を遂げることになるとは…。
「……。」
ルーファスは思わず足を止めた。この先の展開が分かっているからだ。
勇者の歴史について学んだ時にシグルドの生涯についても知っている。
シグルドは…、最後…。ルーファスはグッと拳を握り締めた。
シグルドには、妻と幼い娘がいた。シグルドの妻は同郷の村出身者で四歳年上の幼馴染だった。
シグルドの妻は、薬草の知識が豊富で薬師として生計を立てていた。
シグルドは愛妻家として有名で、数多くのエピソードがある。
妻に言い寄る男には不能になる呪いをかけたり、妻を平民だと馬鹿にする貴族令嬢の口が悪臭になる呪いをかけたり、妻に嫌がらせでワインをかけた令嬢には転移魔法で飛ばして、肥だめに落としてやったり…。
一説では、作り話だといわれているが、あのシグルドの人となりを知れば分かる。
あの逸話は決して、作り話じゃない。全て真実なのだと…。
シグルドは勇者に覚醒してすぐに村の幼馴染であった薬師の少女と婚約し、結婚式の準備をしていた。
その最中に国から使者が来て、シグルドを勇者として王城に呼び寄せた。
そして、教会と魔法省の承認を得て、正式に勇者として認められた。
そして、国王から勇者として魔王を討伐するようにと命じられた。
が、婚約者を深く愛していたシグルドは彼女と離れるのを嫌がり、勇者になるのも魔王討伐に行くのも断固拒否をした。これは、異例なことだった。
シグルドが国王の命令に従わないのは、その婚約者とやらのせい。
ならば、その婚約者を排除すればいいとほんの軽い気持ちで口にした貴族にシグルドは殺気を向け、今にも殺そうとしたという。
そんなシグルドを遅れて到着した巫女であるクリスタが止めた。
その時には、既に顔見知りの仲だったクリスタとシグルド。
クリスタの説得もあり、シグルドは勇者になり、魔王討伐に行く事に同意した。
後にクリスタはシグルドの妻も旅の同行に加わることができるように取り計らったのだそうだ。
ルーファスは一つの壁画の前に足を止めた。
燃える炎に包まれた王城…。
王城をアンデッドと髑髏の集団が取り囲み、人間を襲い、地獄絵図のような光景が描かれていた。
闇の勇者、シグルドが単身で王城に乗り込み、国王と王女、王族全員を皆殺しにし、シグルドはたった一人で王城を制圧した。
国王と王女は最も凄惨な方法で殺害された。
一度は国王の首を刎ねたシグルドだが、すぐに王家の秘宝で国王を生き返らせると、その後も国王を拷問し、最後は串刺しにした。
国一番の美女と謳われた王女の末路は悲惨だった。
国王と同じように始めは首を刎ねたが、すぐに秘宝で生き返らせた。
シグルドは命乞いして涙を流す王女の懇願に耳を貸さず、その顔を一切の躊躇なく、切り刻むと、王女の両手両足を斬り落とし、そのまま城のバルコニーから突き落とした。
何故、シグルドが王家に反意を翻し、ここまで残酷な殺戮行為を犯したのか。
それは王家がシグルドの妻子を惨殺したのが原因だ。正しくは、王女の我儘を聞き入れた国王の独断によるものだが。
シグルドの生まれ育った国の第一王女は王族で唯一人の姫君だった。
国一番の美女として、呼び声高く、王女は自分に絶対の自信があった。
王家にたった一人の姫であり、国王が寵愛する側室の娘でもあった王女は蝶よ花よと育てられ、気位が高く、我儘な王女に成長した。
その王女が魔王の討伐を終え、王都に帰還したシグルドに一目惚れしたのだ。
が、シグルドには妻子がいた。
王女はシグルドにアプローチするが、シグルドは全く相手にしなかった。
王女は国王に泣きついた。王女に甘い国王は妻と離縁し、シグルドに王女を妻にするよう王命を下すが、その理不尽な命令にシグルドは怒り狂った。
妻と別れるくらいなら、死んだ方がマシだと言い捨て、そちらがその気なら、自分は国を捨てて、他国に行くとまで言い切ったという。
勇者に出て行かれては困るため、国王と重臣達は慌てて引き留め、王女の縁談はなかったことにした。
しかし、それを聞かされても王女は納得しなかった。そして、王女は考えた。
シグルドの妻さえいなくなれば、彼もきっとあたしを見てくれる筈だと…。
王女にとって、平民であるシグルドの妻と娘は虫けら同然だった。故に踏みつぶしても罪悪感の欠片も抱かなかった。自分とシグルドの仲を邪魔したのだから、ボロボロにしてやろうと考えた。
王女に甘い国王はその願いを叶える事にした。
これが悲劇の始まりだった。
シグルドが留守の間を見計らって、国王と王女の命令を受けた兵士達がシグルドの家を襲い、シグルドの妻と娘は惨殺された。
シグルドの妻はその時、二人目の子を妊娠中だった。家に帰ったシグルドが目にした光景は無残な姿になった妻と娘の亡骸だった。
シグルドの妻は複数の男に凌辱された跡があった。
冷たくなった妻子の亡骸に泣き縋り、シグルドは咆哮した。
真実を知ったシグルドはアンデッドと髑髏の軍隊を召喚し、王城に乗り込んだ。
復讐に燃えたシグルドを誰も止められなかった。
国王はやっと、自分の過ちに気付くが、もう遅かった。
シグルドは妻の身体に残されていた男達の体液と魔力の痕跡から犯人を見つけ出し、一人残らず惨殺した。
シグルドを捕縛しようとした近衛兵や王宮魔術師達は全く歯が立たず、返り討ちにされた。
最後は王族だった。
全てが終わったシグルドは城に火を放った。
燃え盛る王城を背にしたシグルドは、愛剣で自らの身体を突き刺した。
復讐を果たしたシグルドはそのまま息絶えた。
クリスタが仲間達と共に駆けつけるが、遅かった。
その時には既に虫の息となったシグルドが地面に横たわっていた。
クリスタはシグルドの死を見届けると、王家を呪った。
その後のクリスタは夫と共にシグルドの名誉回復に努めた。
シグルドの遺体はクリスタ達が丁寧に弔った。彼の妻子と共に。
「……。」
あの時のシグルドの言葉の意味が分かった気がする。
そして、シグルドの目に宿っていた狂気の色…。
そういう事だったんだな。シグルド…。
「!」
背後に気配を感じた。ルーファスは振り返った。
すると、そこには腕組みをしたシグルドが立っていた。
「よお。ルーファス。」
「シグルド。」
「初めて会った時よりもいい顔つきになったな。最初に会った時は、弱っちいひよっこみたいだったお前が男の顔をするようになったじゃないか。」
シグルドはそう言って、口の端を片方上げて笑った。
「お前も覚悟を決めたようだな。ルーファス。」
「…ああ。」
闇の勇者になったことを指しているのだろう。
そう…。俺は覚悟を決めた。
エレンもリーも…、シグルドも…、きっと俺と同じように覚悟を決めた上で勇者になったのだろう。
「シグルド…。教えてくれ。あの時…、シグルドが言っていた女とは…、誰だ?」
あの時、シグルドは俺に忠告してくれた。
女には気を付けろと…。
好みの男を手に入れる為に邪魔だという理由で妻子を惨殺した女とは、シグルドに横恋慕した王女の事だろう。
だが…、金に目が眩んで血の繋がった姉を売る女とは一体、誰の事だ?
「まさかとは思うが…、リーナの妹が裏切ったのか?」
「察しがいいな。ルーファス。…その通りだよ。リーナには双子の妹がいたんだ。」
そういえば、リーナには兄弟がたくさんいたとシグルドが言っていたな。
リーナは双子だったのか。
「リーリアって言ってな…。一卵性の双子だったから、顔だけはリーナとよく似ていた。似ているのは顔だけだけどな。リーナには似ても似つかない。我儘で男好きで怠け者で自己中な女だったよ。
家の仕事は全部、リーナに押し付けて、自分は男と遊び回っていたんだ。覚醒前の俺を虫けらを見るような目で見て、嫌ってた癖に俺が覚醒したら、媚びた声で甘えてくるようなどうしようもない女だった。
大方、勇者の妻って肩書きが欲しかったんだろうな。リーナと同じ顔をしてるのに、目だけはハイエナみたいに血走らせて、滅茶苦茶気持ち悪い女だった。」
嫌悪に満ちた表情でシグルドはそう吐き捨てた。
よっぽど、そのリーリアって女を嫌っていたんだな。まあ、それもそうか。
自分が苦しんでた時に邪険にしていた癖に勇者になった途端、掌を返して、擦り寄ってくる女だ。
嫌って当然だろう。
「しかも、リーリアの野郎…。村が盗賊に襲われた時、リーナを囮にして、自分一人だけ逃げやがったんだ。あん時は、マジで殺してやろうかと思った。」
当時の事を思い出したのだろう。
シグルドの低い声には怒りと殺意が滲んでいた。
姉を囮にして、自分一人だけ逃げるだなんて…、どうしようもない女だな。
リーナはそのせいで盗賊に捕まり、攫われてしまったのだそうだ。
けれど、それが発端となって、シグルドは闇の勇者として、覚醒した。
シグルドはすぐに追跡魔法を使って、盗賊のアジトに乗り込み、盗賊達を全員殺し、捕まっていたリーナを助け出した。その時にリーナと同じく捕まっていた女達の中にクリスタがいたのだそうだ。
それがシグルドと後に聖剣の乙女と呼ばれるクリスタとの出会いだった。
リーナを助け出したシグルドは家に戻ると、反省の色も見せないリーリアにブチ切れた。
そんなシグルドを必死にリーナが止めた。
リーナが許したこともあって、シグルドは渋々、引き下がったが、その後、黒い紋様が消えたことで美青年になったシグルドに惚れ込んだリーリアが言い寄ってくるようになった。
シグルドは勿論、相手にしなかった。
が、リーリアはシグルドに夜這いしたり、リーナの振りをしてシグルドと既成事実を作ろうとしたり、極めつけにはリーナが浮気をしているという嘘を吹き込んでまでシグルドを寝取ろうとした。
全てを知ったリーナはさすがにそれ以上、リーリアを庇う事はしなかった。
もうこれ以上は一緒に住めないと言い、リーナはリーリアと縁を切ることにした。
それでも、家族の情もあったのだろう。報復しようとするシグルドにリーナは懇願した。
あんな子でもリーリアは自分の血を分けた妹なの。だから、お願い。リーリアに手を出したりしないで、と。シグルドはリーナの願いを聞き入れた。その決断をシグルドは一生、後悔することになった。
リーリアは、元々、姉であるリーナに強い劣等感を抱いていた。
強い被害妄想癖のあるリーリアはこの件でリーナを逆恨みし、強い憎しみを抱くようになる。
そして、リーリアは王女の甘言にあっさりと騙され、金と引き換えに姉を売った。
シグルドは家に強力な防御魔法をかけていた。シグルドの留守中は家の住人…、つまりはリーナが扉を開けなければ、誰も中に入れないようになっていたのだ。その為、兵士は家に入ることができなかった。
王女と取引を交わしたリーリアはリーナの元を訪ねた。
初めは警戒して、扉を開けなかったリーナだったが、リーリアは涙ながらにあの時の事を謝りたいと切々と訴え、中に入れて欲しいと頼み込んだ。リーナはリーリアの言葉を信じ、扉を開けてしまった。
しかし、それは罠だった。扉を開けた瞬間、隠れていた兵士達が家に押し入ってきたのだ。
その後、どうなったかは…、聞かなくても分かる。
シグルドはそこまで話すと、急に黙り込んだ。
そして、ガン!と壁に拳を殴りつけ、壁に額を押し付けた。
衝撃で石の破片がパラパラと崩れ落ちた。
「俺は…、リーナとリズを守れなかった…。守ると約束したのに…。」
「それは、シグルドのせいじゃ…、」
「俺のせいだよ。あの糞王女にしろ、リーリアにしろ…。俺がもっと、ちゃんとしていれば、リーナとリズが殺されることはなかった。腹の子供が流れる事もなかった。俺が甘かった。…ああいう女が…、救いようがない屑女だってことはよーく分かってたのに…。なのに、俺は…、判断を誤った。」
シグルドが真実を知ったのはリーリアが口を割ったからだ。
闇魔法を使って、殺される前のリーナの記憶を見たシグルド。
その記憶の中にリーリアの姿を見て、シグルドは最初はリーリアが犯人だと思い込んだ。
シグルドはすぐにリーリアの居場所を見つけ、捕まえて、拷問した。
拷問したことでリーリアはあっさりと口を割った。そこでシグルドは真実を知った。
全ては国王と王女の企みだったのだと…。
情報を吐いたのだから、これで助かると思い込んだリーリアだったが、シグルドはリーリアを許すつもりは毛頭なかった。
シグルドはリーリアに三日三晩苦しみ抜いて死ぬという古代禁術の呪いをかけ、森に捨てた。
ルーファスはシグルドにどんな言葉をかければいいのか分からなかった。
あんな悲劇が起こらなければ…、シグルドの家族は殺されることもなかったし、シグルドが破滅することもなかった。きっと、リーナと一緒に穏やかな余生を送ることができた筈だ。
あんな形で突然、幸せを奪われ、シグルドの心は壊れてしまったのだろう。
最愛の妻と娘を失ったことでシグルドはもうこの世に生きる価値を見出せなくなったのだ。
だから、復讐を終えた後は何の躊躇もなく、自ら命を絶った。
そんなシグルドに…、何て言えばいいんだ。
「ルーファス。お前は…、俺のようにはなるなよ。」
顔を上げ、壁から手を離したシグルドはルーファスに視線を向け、そう口にした。
「えっ…?」
「覚えているか?俺は初めてお前に会った時、惚れた女は死んでも守り抜けって言っただろ。」
「あ、ああ…。勿論、覚えている。」
「どの口が言うんだって話だよな。あれだけでかい口を叩いておいて、俺自身は惚れた女を守れなかった癖に…。」
シグルドはそう言って、自嘲するように笑った。
「悪かったな。あの時は俺も随分と大人げない真似をした。お前…、昔の俺にそっくりだったんだよ。だから、余計に苛ついたんだ。まるで、昔の弱い俺を見ている様だった…。」
そうだったのか…。だから、シグルドはあんなにも…、
ルーファスは漸くシグルドの本心を聞けた気がした。
「お前には…、俺のようになって欲しくなかった。」
シグルドはぽつり、と小さな声でそう呟いた。
それはシグルドの切実な訴えのように聞こえた。
シグルド…。だけど、俺は…、
「俺は…、シグルドのようになりたいと思う。妻と娘の仇を討つ為に、たった一人で戦ったシグルドは…、立派だったと俺は思う。リーナは殺されてしまったが…、それでも…、シグルドは最後まで家族の為に戦った。俺もシグルドのように最後まで大切な人の為に…、リスティーナの為に戦える男になりたいと思う。」
シグルドはルーファスの言葉に目を瞠った。
「ルーファス。お前…、」
「シグルド。忠告に感謝する。俺は…、何があってもリスティーナを守り抜いてみせる。シグルドの忠告を無駄にはしない。」
シグルドはルーファスの言葉にフッと笑った。
それはどこか安心した様な…、嬉しそうな…、そして、泣きそうな表情だった。
「その意気だ。ルーファス。お前は…、惚れた女を…、リスティーナを…、最後まで守ってやれよ。」
「ああ。約束する。」
シグルドの言葉にルーファスは頷いた。
「ルーファス。一つ訂正するぞ。お前…、マジでいい男になったな。」
シグルドはそう言って、ニッと白い歯を見せて、笑った。
その笑みはどこか子供っぽくて、歳相応のものだった。
そういえば、シグルドは闇の勇者として覚醒したのは十八歳だったといわれている。
ミハイルの話だと、試練の為に召喚した時は勇者として覚醒した年齢の姿で現れるのだそうだ。
つまり、シグルドはルーファスよりも一歳年下なのだ。
今までシグルドが年下のように思えたことなどなかったが、今の彼を見ていると、十八歳の少年なのだと実感する。
「じゃあな。ルーファス。」
シグルドは片手をあげ、ルーファスに背を向ける。
「シグルド!その…、色々とありがとう。」
シグルドは無言でひらひらと手を振った。
シグルドを見送ったルーファスはそのまま意識が遠のいた。
ご注意ください。
「ここは…、遺跡、か?」
ルーファスは今度は古代遺跡のような場所にいた。
目の前には、地下に続く階段がある。
ルーファスは一瞬、逡巡するが、意を決して、階段を降りて、地下に下っていく。
階段を降りれば、地下の中は通路が広がっていた。
地下の中は暗いが、夜目が利き、灯りのない暗がりの中でも見分けることができる。
壁には絵が書かれていた。
ルーファスは蜘蛛の巣を手で払い、壁画を見つめる。
この絵は…、勇者達の歴史の…?
ルーファスは壁画を辿っていく。進んでいくと、どんどんと勇者の歴史が見えてきた。
この壁画は魔王と勇者の歴史を残したものだ。巫女らしき女性も描かれている。
この緋色の髪を持つ美しい巫女は恐らく、聖剣の乙女と呼ばれたクリスタだろう。
クリスタが勇者や仲間に聖剣と魔剣を与える場面も描かれている。
クリスタは元々、鍛冶屋の娘でクリスタ自身も凄腕の鍛冶職人だったと聞く。
かつて、初代巫女ペネロペが女神から与えられたという光の聖剣の復元にも成功し、魔族と魔物に対抗できる武器を作り、勇者達に適した武器を与えたと聞く。
ルーファスはクリスタが闇の勇者に魔剣を与える壁画に目を留めた。
闇の勇者、シグルド…。
この名は歴代勇者の中でも特に有名だ。
光の勇者、ラインハルトと並ぶ位に名を馳せた勇者の一人。
魔王との最期の決戦で古代剣術と闇魔法を駆使して、魔王と戦い、シグルドとの戦いで弱り切った魔王をクリスタが封印したと言い伝えられている。
次々と他の勇者が倒れていく中で最後まで倒れずに生き残り、魔王と互角に戦い、消耗させるまでに至ったシグルドの強さは今でも語り継がれている。
故人であるシグルドが現代でもその名が知られているのは、ただ強いだからではない。
シグルドの名が今でも刻まれているのはその生涯があまりにも凄惨だったからだ。
魔王討伐に貢献した勇者、シグルド。彼の偉業は世界中が賞賛し、人々はシグルドを褒め称えた。
誰もがこう思った事だろう。これだけの偉業を成し遂げたシグルドは幸福な一生を終えるのだろうと…。
しかし、運命は残酷だった。シグルドは後に、破壊の勇者、悲劇の勇者と呼ばれるようになる。
誰も想像できなかっただろう。まさか、シグルドが魔王討伐から一年足らずで非業の死を遂げることになるとは…。
「……。」
ルーファスは思わず足を止めた。この先の展開が分かっているからだ。
勇者の歴史について学んだ時にシグルドの生涯についても知っている。
シグルドは…、最後…。ルーファスはグッと拳を握り締めた。
シグルドには、妻と幼い娘がいた。シグルドの妻は同郷の村出身者で四歳年上の幼馴染だった。
シグルドの妻は、薬草の知識が豊富で薬師として生計を立てていた。
シグルドは愛妻家として有名で、数多くのエピソードがある。
妻に言い寄る男には不能になる呪いをかけたり、妻を平民だと馬鹿にする貴族令嬢の口が悪臭になる呪いをかけたり、妻に嫌がらせでワインをかけた令嬢には転移魔法で飛ばして、肥だめに落としてやったり…。
一説では、作り話だといわれているが、あのシグルドの人となりを知れば分かる。
あの逸話は決して、作り話じゃない。全て真実なのだと…。
シグルドは勇者に覚醒してすぐに村の幼馴染であった薬師の少女と婚約し、結婚式の準備をしていた。
その最中に国から使者が来て、シグルドを勇者として王城に呼び寄せた。
そして、教会と魔法省の承認を得て、正式に勇者として認められた。
そして、国王から勇者として魔王を討伐するようにと命じられた。
が、婚約者を深く愛していたシグルドは彼女と離れるのを嫌がり、勇者になるのも魔王討伐に行くのも断固拒否をした。これは、異例なことだった。
シグルドが国王の命令に従わないのは、その婚約者とやらのせい。
ならば、その婚約者を排除すればいいとほんの軽い気持ちで口にした貴族にシグルドは殺気を向け、今にも殺そうとしたという。
そんなシグルドを遅れて到着した巫女であるクリスタが止めた。
その時には、既に顔見知りの仲だったクリスタとシグルド。
クリスタの説得もあり、シグルドは勇者になり、魔王討伐に行く事に同意した。
後にクリスタはシグルドの妻も旅の同行に加わることができるように取り計らったのだそうだ。
ルーファスは一つの壁画の前に足を止めた。
燃える炎に包まれた王城…。
王城をアンデッドと髑髏の集団が取り囲み、人間を襲い、地獄絵図のような光景が描かれていた。
闇の勇者、シグルドが単身で王城に乗り込み、国王と王女、王族全員を皆殺しにし、シグルドはたった一人で王城を制圧した。
国王と王女は最も凄惨な方法で殺害された。
一度は国王の首を刎ねたシグルドだが、すぐに王家の秘宝で国王を生き返らせると、その後も国王を拷問し、最後は串刺しにした。
国一番の美女と謳われた王女の末路は悲惨だった。
国王と同じように始めは首を刎ねたが、すぐに秘宝で生き返らせた。
シグルドは命乞いして涙を流す王女の懇願に耳を貸さず、その顔を一切の躊躇なく、切り刻むと、王女の両手両足を斬り落とし、そのまま城のバルコニーから突き落とした。
何故、シグルドが王家に反意を翻し、ここまで残酷な殺戮行為を犯したのか。
それは王家がシグルドの妻子を惨殺したのが原因だ。正しくは、王女の我儘を聞き入れた国王の独断によるものだが。
シグルドの生まれ育った国の第一王女は王族で唯一人の姫君だった。
国一番の美女として、呼び声高く、王女は自分に絶対の自信があった。
王家にたった一人の姫であり、国王が寵愛する側室の娘でもあった王女は蝶よ花よと育てられ、気位が高く、我儘な王女に成長した。
その王女が魔王の討伐を終え、王都に帰還したシグルドに一目惚れしたのだ。
が、シグルドには妻子がいた。
王女はシグルドにアプローチするが、シグルドは全く相手にしなかった。
王女は国王に泣きついた。王女に甘い国王は妻と離縁し、シグルドに王女を妻にするよう王命を下すが、その理不尽な命令にシグルドは怒り狂った。
妻と別れるくらいなら、死んだ方がマシだと言い捨て、そちらがその気なら、自分は国を捨てて、他国に行くとまで言い切ったという。
勇者に出て行かれては困るため、国王と重臣達は慌てて引き留め、王女の縁談はなかったことにした。
しかし、それを聞かされても王女は納得しなかった。そして、王女は考えた。
シグルドの妻さえいなくなれば、彼もきっとあたしを見てくれる筈だと…。
王女にとって、平民であるシグルドの妻と娘は虫けら同然だった。故に踏みつぶしても罪悪感の欠片も抱かなかった。自分とシグルドの仲を邪魔したのだから、ボロボロにしてやろうと考えた。
王女に甘い国王はその願いを叶える事にした。
これが悲劇の始まりだった。
シグルドが留守の間を見計らって、国王と王女の命令を受けた兵士達がシグルドの家を襲い、シグルドの妻と娘は惨殺された。
シグルドの妻はその時、二人目の子を妊娠中だった。家に帰ったシグルドが目にした光景は無残な姿になった妻と娘の亡骸だった。
シグルドの妻は複数の男に凌辱された跡があった。
冷たくなった妻子の亡骸に泣き縋り、シグルドは咆哮した。
真実を知ったシグルドはアンデッドと髑髏の軍隊を召喚し、王城に乗り込んだ。
復讐に燃えたシグルドを誰も止められなかった。
国王はやっと、自分の過ちに気付くが、もう遅かった。
シグルドは妻の身体に残されていた男達の体液と魔力の痕跡から犯人を見つけ出し、一人残らず惨殺した。
シグルドを捕縛しようとした近衛兵や王宮魔術師達は全く歯が立たず、返り討ちにされた。
最後は王族だった。
全てが終わったシグルドは城に火を放った。
燃え盛る王城を背にしたシグルドは、愛剣で自らの身体を突き刺した。
復讐を果たしたシグルドはそのまま息絶えた。
クリスタが仲間達と共に駆けつけるが、遅かった。
その時には既に虫の息となったシグルドが地面に横たわっていた。
クリスタはシグルドの死を見届けると、王家を呪った。
その後のクリスタは夫と共にシグルドの名誉回復に努めた。
シグルドの遺体はクリスタ達が丁寧に弔った。彼の妻子と共に。
「……。」
あの時のシグルドの言葉の意味が分かった気がする。
そして、シグルドの目に宿っていた狂気の色…。
そういう事だったんだな。シグルド…。
「!」
背後に気配を感じた。ルーファスは振り返った。
すると、そこには腕組みをしたシグルドが立っていた。
「よお。ルーファス。」
「シグルド。」
「初めて会った時よりもいい顔つきになったな。最初に会った時は、弱っちいひよっこみたいだったお前が男の顔をするようになったじゃないか。」
シグルドはそう言って、口の端を片方上げて笑った。
「お前も覚悟を決めたようだな。ルーファス。」
「…ああ。」
闇の勇者になったことを指しているのだろう。
そう…。俺は覚悟を決めた。
エレンもリーも…、シグルドも…、きっと俺と同じように覚悟を決めた上で勇者になったのだろう。
「シグルド…。教えてくれ。あの時…、シグルドが言っていた女とは…、誰だ?」
あの時、シグルドは俺に忠告してくれた。
女には気を付けろと…。
好みの男を手に入れる為に邪魔だという理由で妻子を惨殺した女とは、シグルドに横恋慕した王女の事だろう。
だが…、金に目が眩んで血の繋がった姉を売る女とは一体、誰の事だ?
「まさかとは思うが…、リーナの妹が裏切ったのか?」
「察しがいいな。ルーファス。…その通りだよ。リーナには双子の妹がいたんだ。」
そういえば、リーナには兄弟がたくさんいたとシグルドが言っていたな。
リーナは双子だったのか。
「リーリアって言ってな…。一卵性の双子だったから、顔だけはリーナとよく似ていた。似ているのは顔だけだけどな。リーナには似ても似つかない。我儘で男好きで怠け者で自己中な女だったよ。
家の仕事は全部、リーナに押し付けて、自分は男と遊び回っていたんだ。覚醒前の俺を虫けらを見るような目で見て、嫌ってた癖に俺が覚醒したら、媚びた声で甘えてくるようなどうしようもない女だった。
大方、勇者の妻って肩書きが欲しかったんだろうな。リーナと同じ顔をしてるのに、目だけはハイエナみたいに血走らせて、滅茶苦茶気持ち悪い女だった。」
嫌悪に満ちた表情でシグルドはそう吐き捨てた。
よっぽど、そのリーリアって女を嫌っていたんだな。まあ、それもそうか。
自分が苦しんでた時に邪険にしていた癖に勇者になった途端、掌を返して、擦り寄ってくる女だ。
嫌って当然だろう。
「しかも、リーリアの野郎…。村が盗賊に襲われた時、リーナを囮にして、自分一人だけ逃げやがったんだ。あん時は、マジで殺してやろうかと思った。」
当時の事を思い出したのだろう。
シグルドの低い声には怒りと殺意が滲んでいた。
姉を囮にして、自分一人だけ逃げるだなんて…、どうしようもない女だな。
リーナはそのせいで盗賊に捕まり、攫われてしまったのだそうだ。
けれど、それが発端となって、シグルドは闇の勇者として、覚醒した。
シグルドはすぐに追跡魔法を使って、盗賊のアジトに乗り込み、盗賊達を全員殺し、捕まっていたリーナを助け出した。その時にリーナと同じく捕まっていた女達の中にクリスタがいたのだそうだ。
それがシグルドと後に聖剣の乙女と呼ばれるクリスタとの出会いだった。
リーナを助け出したシグルドは家に戻ると、反省の色も見せないリーリアにブチ切れた。
そんなシグルドを必死にリーナが止めた。
リーナが許したこともあって、シグルドは渋々、引き下がったが、その後、黒い紋様が消えたことで美青年になったシグルドに惚れ込んだリーリアが言い寄ってくるようになった。
シグルドは勿論、相手にしなかった。
が、リーリアはシグルドに夜這いしたり、リーナの振りをしてシグルドと既成事実を作ろうとしたり、極めつけにはリーナが浮気をしているという嘘を吹き込んでまでシグルドを寝取ろうとした。
全てを知ったリーナはさすがにそれ以上、リーリアを庇う事はしなかった。
もうこれ以上は一緒に住めないと言い、リーナはリーリアと縁を切ることにした。
それでも、家族の情もあったのだろう。報復しようとするシグルドにリーナは懇願した。
あんな子でもリーリアは自分の血を分けた妹なの。だから、お願い。リーリアに手を出したりしないで、と。シグルドはリーナの願いを聞き入れた。その決断をシグルドは一生、後悔することになった。
リーリアは、元々、姉であるリーナに強い劣等感を抱いていた。
強い被害妄想癖のあるリーリアはこの件でリーナを逆恨みし、強い憎しみを抱くようになる。
そして、リーリアは王女の甘言にあっさりと騙され、金と引き換えに姉を売った。
シグルドは家に強力な防御魔法をかけていた。シグルドの留守中は家の住人…、つまりはリーナが扉を開けなければ、誰も中に入れないようになっていたのだ。その為、兵士は家に入ることができなかった。
王女と取引を交わしたリーリアはリーナの元を訪ねた。
初めは警戒して、扉を開けなかったリーナだったが、リーリアは涙ながらにあの時の事を謝りたいと切々と訴え、中に入れて欲しいと頼み込んだ。リーナはリーリアの言葉を信じ、扉を開けてしまった。
しかし、それは罠だった。扉を開けた瞬間、隠れていた兵士達が家に押し入ってきたのだ。
その後、どうなったかは…、聞かなくても分かる。
シグルドはそこまで話すと、急に黙り込んだ。
そして、ガン!と壁に拳を殴りつけ、壁に額を押し付けた。
衝撃で石の破片がパラパラと崩れ落ちた。
「俺は…、リーナとリズを守れなかった…。守ると約束したのに…。」
「それは、シグルドのせいじゃ…、」
「俺のせいだよ。あの糞王女にしろ、リーリアにしろ…。俺がもっと、ちゃんとしていれば、リーナとリズが殺されることはなかった。腹の子供が流れる事もなかった。俺が甘かった。…ああいう女が…、救いようがない屑女だってことはよーく分かってたのに…。なのに、俺は…、判断を誤った。」
シグルドが真実を知ったのはリーリアが口を割ったからだ。
闇魔法を使って、殺される前のリーナの記憶を見たシグルド。
その記憶の中にリーリアの姿を見て、シグルドは最初はリーリアが犯人だと思い込んだ。
シグルドはすぐにリーリアの居場所を見つけ、捕まえて、拷問した。
拷問したことでリーリアはあっさりと口を割った。そこでシグルドは真実を知った。
全ては国王と王女の企みだったのだと…。
情報を吐いたのだから、これで助かると思い込んだリーリアだったが、シグルドはリーリアを許すつもりは毛頭なかった。
シグルドはリーリアに三日三晩苦しみ抜いて死ぬという古代禁術の呪いをかけ、森に捨てた。
ルーファスはシグルドにどんな言葉をかければいいのか分からなかった。
あんな悲劇が起こらなければ…、シグルドの家族は殺されることもなかったし、シグルドが破滅することもなかった。きっと、リーナと一緒に穏やかな余生を送ることができた筈だ。
あんな形で突然、幸せを奪われ、シグルドの心は壊れてしまったのだろう。
最愛の妻と娘を失ったことでシグルドはもうこの世に生きる価値を見出せなくなったのだ。
だから、復讐を終えた後は何の躊躇もなく、自ら命を絶った。
そんなシグルドに…、何て言えばいいんだ。
「ルーファス。お前は…、俺のようにはなるなよ。」
顔を上げ、壁から手を離したシグルドはルーファスに視線を向け、そう口にした。
「えっ…?」
「覚えているか?俺は初めてお前に会った時、惚れた女は死んでも守り抜けって言っただろ。」
「あ、ああ…。勿論、覚えている。」
「どの口が言うんだって話だよな。あれだけでかい口を叩いておいて、俺自身は惚れた女を守れなかった癖に…。」
シグルドはそう言って、自嘲するように笑った。
「悪かったな。あの時は俺も随分と大人げない真似をした。お前…、昔の俺にそっくりだったんだよ。だから、余計に苛ついたんだ。まるで、昔の弱い俺を見ている様だった…。」
そうだったのか…。だから、シグルドはあんなにも…、
ルーファスは漸くシグルドの本心を聞けた気がした。
「お前には…、俺のようになって欲しくなかった。」
シグルドはぽつり、と小さな声でそう呟いた。
それはシグルドの切実な訴えのように聞こえた。
シグルド…。だけど、俺は…、
「俺は…、シグルドのようになりたいと思う。妻と娘の仇を討つ為に、たった一人で戦ったシグルドは…、立派だったと俺は思う。リーナは殺されてしまったが…、それでも…、シグルドは最後まで家族の為に戦った。俺もシグルドのように最後まで大切な人の為に…、リスティーナの為に戦える男になりたいと思う。」
シグルドはルーファスの言葉に目を瞠った。
「ルーファス。お前…、」
「シグルド。忠告に感謝する。俺は…、何があってもリスティーナを守り抜いてみせる。シグルドの忠告を無駄にはしない。」
シグルドはルーファスの言葉にフッと笑った。
それはどこか安心した様な…、嬉しそうな…、そして、泣きそうな表情だった。
「その意気だ。ルーファス。お前は…、惚れた女を…、リスティーナを…、最後まで守ってやれよ。」
「ああ。約束する。」
シグルドの言葉にルーファスは頷いた。
「ルーファス。一つ訂正するぞ。お前…、マジでいい男になったな。」
シグルドはそう言って、ニッと白い歯を見せて、笑った。
その笑みはどこか子供っぽくて、歳相応のものだった。
そういえば、シグルドは闇の勇者として覚醒したのは十八歳だったといわれている。
ミハイルの話だと、試練の為に召喚した時は勇者として覚醒した年齢の姿で現れるのだそうだ。
つまり、シグルドはルーファスよりも一歳年下なのだ。
今までシグルドが年下のように思えたことなどなかったが、今の彼を見ていると、十八歳の少年なのだと実感する。
「じゃあな。ルーファス。」
シグルドは片手をあげ、ルーファスに背を向ける。
「シグルド!その…、色々とありがとう。」
シグルドは無言でひらひらと手を振った。
シグルドを見送ったルーファスはそのまま意識が遠のいた。
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