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第四章 覚醒編
蜘蛛の魔物
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「ここは…、」
ルーファスは気付けばまた知らない場所に立っていた。
この感覚は覚えがある。また夢の中に引き込まれているのだろう。
ルーファスの立っている場所はまたしても森の中だった。けれど、前回の森とは違う。また別の森か…?
とりあえず、普通の森で内心、安堵した。過去には砂漠や氷山、迷路や洞窟、ジャングルだったこともあった。沈没しかけた船で大嵐の海を彷徨ったこともある。そして、どの場所でもルーファスは命を落としている。
もし、あれば全て夢ではなく、現実だったらルーファスはとっくに死んでいる。
あんなの命が幾つあっても足りない。でも、森の中なら、少しは安全だ。まだ生き残れる可能性がある。
夢の中とはいえ、あんな生々しい感覚を味わうのはたくさんだ。
ルーファスは少しでも生き残れる可能性を見出そうとしていた。
そういえば…、彼らは今日も現れるのだろうか?ルーファスは思わずシグルド達の姿を捜した。
「!?」
ルーファスは鼻につく悪臭に思わず警戒して、腰の剣に手をかける。
この匂い…!魔物の匂いがする。近くにいるのか?
どこにいる…?ルーファスは周囲に視線を巡らすが魔物の姿は確認できない。
足元に何かの気配を感じ、ルーファスは視線を落とした。
黑い蜘蛛が数匹、ルーファスの足元にいた。蜘蛛…?
ルーファスは咄嗟に蜘蛛から距離を取る。
蜘蛛はこちらから危害を加えなければ、攻撃してこない。
でも、毒を持っている危険があるからあまり近づかない方がいい。
そう判断して、蜘蛛を避けながら、ルーファスは木の幹に手をついた。
すると、ベタリ、とした感触がした。不快感に眉を顰め、思わず手に視線を落とす。
見れば、粘々した透明のものが手についていた。何だ。これは?糸…?
その時、突然、木陰から何かが飛び出してきてルーファスの腕に巻きついた。
それは束になった蜘蛛の糸だった。腕を振り払い、無理矢理引きちぎって、拘束を解いていく。
が、腕に巻き付いた糸を引きちぎっている間に今度は足首に糸が巻き付いた。
その間にも次々と蜘蛛の糸が四方八方から襲い掛かり、身体に巻き付いて、絡みとっていく。
気付けば、蜘蛛の糸に拘束され、身動きができなくなってしまった。
何だ。これは…!?ここまで大きい蜘蛛の糸は初めて見た。
しかも、この糸…!固くて、全然びくともしない。
力を籠めれば籠める程、拘束が強くなっていく…!
ルーファスは必死に抜け出そうとするが締め付けがひどくなるばかりだった。
まずい…!このままだと、また…!
そんなルーファスの頭上に大きな影がかかった。かろうじて、顔は動かせるので見上げれば、そこには巨大な蜘蛛がいた。目が六つもあり、爛々と赤く光り、こちらを見下ろしている。
大きな口からは黄土色の唾液が滴り落ちた。食われる…!ルーファスは死を覚悟した。
巨大蜘蛛がガパッと口を開いたその時…、
闇の矢ダークアロー
突然、無数の黒い矢が巨大蜘蛛に襲い掛かった。
矢は巨大蜘蛛の身体を貫通した。巨大蜘蛛はなすすべもなく、断末魔の声を上げて、絶命した。
倒れた巨大蜘蛛を呆然と見つめるルーファスは暗がりから誰かの気配を感じた。
「ルーファス。何だ。その様は。蜘蛛相手に何、負けそうになってんだよ。」
そう言って、溜息を吐きながら現れたのはシグルドだった。シグルドが剣を一振りすると、あれだけ固かった糸があっさり切れて、ルーファスはようやく蜘蛛の糸から解放された。
「す、すまない。シグルド。恩に着る。」
「あんな雑魚相手にこの調子じゃ先が思いやられるぞ。」
巨大蜘蛛を雑魚と言い切るシグルドにルーファスはもう反論する気はなかった。
シグルドの強さは初めて会った時に目の当たりにして、もう十分理解したからだ。
あの巨大蜘蛛もあっさりと倒してしまうし…。
シグルド程の強さを持つ人間はあんな化け物のような蜘蛛でも雑魚になってしまうんだな。
「稽古の前にまずは親玉を倒してからだな。ルーファス。今度はお前が倒せよ。」
「え…。あの蜘蛛は一匹だけじゃないのか?」
「あ?当然だろ。お前、そんな事も分かんないのか。周りをよく見て見ろ。そこら中、こいつらの気配と匂いがするだろうが。」
シグルドに指摘されて、ルーファスはまだ魔物の匂いが消えていないことに気付いた。
「行くぞ。」
「ど、どこに…?」
「決まってるだろ。親玉を倒しに行くんだよ。こういうのは頭を潰すのが一番手っ取り早いからな。」
そう言って、ルーファスの返事も待たずにさっさと先に駆け出していくシグルドの後をルーファスは慌てて追った。
は、速い…!ルーファスは息を切らしながら、必死にシグルドの後を追う。
風のような速度で走っていくシグルドに置いて行かれないようにルーファスは必死に走り続ける。
苦しい。息が切れそうだ。それでも必死に走り続ける。
すると、不意にシグルドが足を止め、立ち止まった。
「止まれ。」
シグルドの言葉にルーファスは反射的に止まると、膝に手をついて、ゼエゼエと息をする。
対して、シグルドは息切れ一つしていない。あれだけ走ったのに息切れ一つしていないなんて…。
この人の体力は一体、どうなっているんだ。
止まれと言われて、止まったが何かあるのだろうか?
そう思って辺りを見渡すが特に異変はなく、森が広がっているだけだった。
「ここから先は気を付けろ。気を抜くと、身体がバラバラに切り裂かれるぞ。」
「え…。」
まさか、どこから攻撃が…!?ルーファスは辺りを警戒し、剣の柄に手をかけて、いつでも剣を抜けるよう身構えた。
「違う。目の前だ。本当に鈍い奴だな。まあ、いい。こういうのは口で説明するより、実際にその目で見た方が早い。」
シグルドはそう言って、足元にあった小枝を拾った。怪訝そうにするルーファスに見てろ、と言って、シグルドは小枝を投げた。
すると、その小枝は地面に落ちるより前に、バラバラに切り刻まれてしまった。
「なっ…!?」
今のは一体、何だ…!?ルーファスは何が起こったのか分からず、唖然とした。
「よく見て見ろ。目を凝らして一点を見つめるんだ。」
シグルドの言葉にルーファスはジッと注視した。すると、よく見れば細い糸のようなものがうっすらと見えた。
糸が月の光に反射して、キラッと光った。
一本だけじゃない。この先の森に…、そこら中に糸が張り巡らされている。
それは、まるで蜘蛛の糸のようだった。けれど、ただの蜘蛛の糸じゃない。
鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた殺傷能力の高い糸だ。触れたり、当たったりすれば、一たまりもない。
さっきの投げた小枝がバラバラに切り刻まれた様を思い出し、ルーファスは戦慄した。
「この先に親玉がいる。このまま突っ切るぞ。」
「え!?いや。でも、この先は蜘蛛の糸が…、」
「避けて通ればいい。ああ。そうだ。知らないだろうから教えてやるが、こいつらの糸には毒があるから気を付けろ。死にたくなきゃ、無傷で通り抜けるんだな。」
「は!?」
つまり、掠り傷ですんだとしても、毒が回れば死んでしまうという事か。
愕然としているルーファスに構わず、シグルドは一歩足を踏み出すと、そのまま風のような速度で森を駆け抜けていく。糸には触れずに。糸の通っていない場所を的確に見極め、すり抜けていくシグルド。
しかも、走る速度はさっき走った速度と変わらない。す、凄い…。ルーファスは思わずシグルドの動きに目を奪われる。
シグルドの姿が見えなくなり、ルーファスは慌てて我に返ると、シグルドの後を追った。
確か、シグルドは…、こうやって…、
ルーファスはシグルドの動きを思い出しながら、糸をすり抜けていく。シグルドのように早くは走れない。
四方八方に張り巡らされた糸を回避しながら進むというのは思った以上に困難だった。
いつ糸に切られてもおかしくない状況にルーファスは不安と緊張感から息が乱れる。
そのせいで動きが鈍り、肩に糸が当たり、服と肌が裂けてしまった。
うっ…!痛みに倒れそうになるがこのまま倒れたら、糸に全身を切り刻まれて死ぬ。
耐えろ…!踏ん張れ!足を止めるな!
ルーファスはそのまま森を駆け抜けていく。
糸を避けようとするが、避けきれずに頬や腕、足に掠り傷を負う。
ようやく糸のない場所まで通り抜けた時にはルーファスの全身はボロボロでそこら中から血が流れていた。
「グッ…!あっ…!」
頭がクラクラする…!上手く、息ができない…!もう、毒が回ってきてるのか。
ハッ、ハッと浅い呼吸をして苦しそうに胸を押さえるルーファスに無傷のシグルドは近付くと、地面に何かを投げた。コロコロと音を立てて、ルーファスの足元に転がる。それは一本の瓶だった。
「飲め。ポーションだ。解毒剤も入っているからそれを飲めば毒は中和される。」
シグルドの言葉にルーファスは瓶に手を伸ばし、おぼつかない手つきで蓋を開け、一気に煽った。
途中で噎せてしまい、激しく咳をしたが何とか飲み込む。しばらくすると、スウ、と傷が塞がり、毒の症状もなくなっていった。身体が軽い。こんなに効き目のあるポーションは初めてだ。
「どうだ?身体の調子は?」
「あ、ああ。もう、平気だ…。」
「よし。なら、もう一回、さっきの道を通ってこい。」
「は!?またあそこを通るのか!?折角、ここまで来たのに何故…!」
「何言ってんだ。あんなの無効に決まってるだろ。大体、俺は無傷で通り抜けろって言ったのに、お前ときたら、全身ボロボロだったじゃなねえか。あんなんじゃ、親玉なんて倒せねえぞ。親玉を倒すのは、俺の課題をこなしてからだ。」
「無茶を言うな!また、あんな地獄道を通るなんて、心臓が幾つあっても足りな、」
「うるせえ!男の癖にグチグチ文句言うな!俺より、弱い癖に一丁前の口を叩いてんじゃねえ!俺に意見するなら俺に勝ってから言いやがれ!」
シグルドの一喝にルーファスは思わず口を噤んだ。
「まあ、いい。俺はこれでも優しい男だからな。さっきの場所まで転移魔法で送ってやるから、今度は無傷でここまで来い。」
そう言って、シグルドは返事も聞かずに魔法を発動した。ルーファスの足元に魔法陣が現れる。
「ちょ、待っ…!」
ルーファスが声を上げるより早くに魔法が発動し、さっきいた場所へと強制送還された。
これのどこが優しいんだ!内心、そう声を上げたルーファスだった。
結局、その後もルーファスは失敗して、どこかしらに傷を負ってしまった。
その度にポーションを飲んで回復し、シグルドに同じ場所に転移させられる。その繰り返しだった。
もう何周したか数えてない。それでも、ルーファスは走った。
何回もやっていく内に段々と糸を見極める事ができるようになった。少しずつだが走る速度も上がり、怪我をする場所も少なくなっている。が、やはり全部の糸を避けきることはできない。
何回も何回も失敗し、ようやくルーファスは初めて無傷で蜘蛛の糸の森を通り抜けることができた。
ルーファスは初めは信じられない気持ちだった。
思わず、自分の全身を確認する。
傷がない。初めて…、糸に触れることも当たる事もなく、無傷で辿り着けたんだ。
ギュッと拳を握り締める。
「シグルド。」
近くにいる筈のシグルドの姿を捜す。が、シグルドの姿がない。
シグルド?辺りを見回すルーファスだったが不意に背後から殺気を感じ、思わずその場から飛んで距離を取った。
すると、大きな音を立てて、木が真っ二つに裂けた。さっきまでルーファスがいた場所だ。
木を切り裂いた正体は糸だった。あの糸は…、
ルーファスの前にズシン、ズシンと音を立てて、黒い巨大な生き物が現れた。
赤い目がぎょろり、とルーファスを見下ろす。そこにいたのは、目玉が八つもある巨大蜘蛛だった。
グロテスクな口に長く伸びた脚、建物のように大きな巨体。
さっき、シグルドが倒した蜘蛛よりも遥かに大きい。明らかに格上の存在…。
この蜘蛛が親玉か。直感的にそう感じたルーファスは思わず剣を抜いて構えた。
以前の自分なら、臆していたかもしれない。本能的な恐怖に直面し、戦意を失っていた事だろう。
ミノタウロスに遭遇した時ですら、勝てないと思い、戦う事を放棄しそうになった程だ。
だけど、何故だろう。今の巨大蜘蛛を前にしてもルーファスはそこまでの恐怖を感じない。
少なくとも、今の自分には戦う意思がある。
蜘蛛が長い手足から糸を放ち、攻撃してくる。
ルーファスはそれを避け、蜘蛛から距離を取りつつ、出方を窺った。
蜘蛛の攻撃を避けながら、ルーファスは思った。こいつの糸は破壊力はすさまじいが…、動きは鈍い。
蜘蛛の糸が向かってくる。ルーファスは剣を構えて、糸を剣で受け流した。
キン、と音を立てて、攻撃を弾き返した。やはり…、この糸は剣で対抗できる。
あれだけ切断力のある糸だから、同じ力を持った剣で立ち向かえば、問題なく弾き返せる。
ルーファスは剣を握り締め、蜘蛛に向かって駆けていく。
糸が弾丸のように次々と放たれるが、それを回避し、剣で弾き返しながら懐に入っていく。
そのまま蜘蛛の身体を足で蹴って駆け上っていく。蜘蛛は暴れるが視覚に映らない場所にいるのでルーファスがどこにいるか分からない。
ルーファスは隙を突いて、蜘蛛の身体に剣を突き立てた。凄まじい咆哮が辺りに轟いた。
だが、それでも蜘蛛は死なない。ルーファスを振り落とそうと暴れ回り、長い足を振り回して、ルーファスを薙ぎ払おうとする。
蜘蛛の身体から飛び降りて、その様を見やりながら、ルーファスは冷静に今の状況を分析する。
やはり、これでは死なないか。さっきの一撃はあまり手ごたえがなかった。
蜘蛛の身体が固すぎて、浅くしか斬れないせいだ。
俺の剣では力が弱く、致命傷を負わせられる程の打撃を与えられないのだ。
それなら…!ルーファスはタッと駆け出し、蜘蛛の身体に飛び移り、斬撃を繰り出した。
さっきの攻撃でも分かった。俺の剣でも一撃は与えられる。
それで十分だ。俺の剣は未熟で浅い攻撃しかできない。けれど、浅くても攻撃し続ければそれは大きな傷となり、致命傷を与えられる。
本来なら、一撃で仕留めるべき攻撃。だが、未熟な俺の剣ではそれができない。
だから、連続で何回も攻撃しなくてはいけない。走れ…!誰よりも早く…!風のように…!
シグルドの風のような速度の如く…!あれ位のスピードでないと、こいつは倒せない!
何度も立て続けに攻撃を続け、斬撃を繰り広げる。
やがて、何度目かの攻撃でシュバッと大きな手ごたえを感じた。
蜘蛛の首が切れたのだ。首を失った蜘蛛の身体は地面に崩れ落ちた。
ハアハア、と肩で息をしながら、ルーファスは呆然とした。
やった…、のか?俺が?こいつを?
まだ実感が沸かない。そんなルーファスの背後に何者かの気配を感じた。
ハッと振り返ると、そこにはシグルドが立っていた。
「やっと倒したのか。お前の事だから、後、二~三回は失敗するかと思ったんだけどな。」
「シグルド…。」
いつの間にかルーファスの背後にいたシグルドは骸となった蜘蛛を見やり、そう言った。
「まあ、初心者にしては上出来だな。ちゃんと自分の苦手分野を理解した上で戦ったみたいだしな。
剣ってのは闇雲に振り回せば勝てるもんじゃねえ。敵の戦法を見破ったり、相手を倒す為に自分の弱点を補って戦う方法を見つけるのは基本中の基本だ。よし。準備運動は済んだことだし、稽古を始めるぞ。」
準備運動!?さっきのあれが?ルーファスはさっきの巨大蜘蛛を倒したばかりでもう疲労困憊だった。
が、シグルドはそんなものは関係ないとでもいいたげにルーファスについてくるように指示してくる。
着いた先は開けた場所で剣を手合わせするのに適した場所だった。
そこでシグルドがいきなり、攻撃を仕掛けてきたから、ルーファスも慌てて応戦する。
グッ…!やっぱり、シグルドの剣は強い…!今にも押し返されそうだ…!
「どうした!少しは反撃してみろ!」
ガッ!キン!キン!と剣がぶつかり合う音が辺りに響き渡る。
ルーファスはシグルドの剣を受け流しながら、隙を窺う。必ずどこかで隙はできる筈だ…!そこを狙え!
ルーファスはシグルドの動きを見て、攻撃に転じた。
それでも、ルーファスの攻撃はシグルドには当たらない。
結局、この日は一度もシグルドに勝つことはできなかった。
ルーファスは気付けばまた知らない場所に立っていた。
この感覚は覚えがある。また夢の中に引き込まれているのだろう。
ルーファスの立っている場所はまたしても森の中だった。けれど、前回の森とは違う。また別の森か…?
とりあえず、普通の森で内心、安堵した。過去には砂漠や氷山、迷路や洞窟、ジャングルだったこともあった。沈没しかけた船で大嵐の海を彷徨ったこともある。そして、どの場所でもルーファスは命を落としている。
もし、あれば全て夢ではなく、現実だったらルーファスはとっくに死んでいる。
あんなの命が幾つあっても足りない。でも、森の中なら、少しは安全だ。まだ生き残れる可能性がある。
夢の中とはいえ、あんな生々しい感覚を味わうのはたくさんだ。
ルーファスは少しでも生き残れる可能性を見出そうとしていた。
そういえば…、彼らは今日も現れるのだろうか?ルーファスは思わずシグルド達の姿を捜した。
「!?」
ルーファスは鼻につく悪臭に思わず警戒して、腰の剣に手をかける。
この匂い…!魔物の匂いがする。近くにいるのか?
どこにいる…?ルーファスは周囲に視線を巡らすが魔物の姿は確認できない。
足元に何かの気配を感じ、ルーファスは視線を落とした。
黑い蜘蛛が数匹、ルーファスの足元にいた。蜘蛛…?
ルーファスは咄嗟に蜘蛛から距離を取る。
蜘蛛はこちらから危害を加えなければ、攻撃してこない。
でも、毒を持っている危険があるからあまり近づかない方がいい。
そう判断して、蜘蛛を避けながら、ルーファスは木の幹に手をついた。
すると、ベタリ、とした感触がした。不快感に眉を顰め、思わず手に視線を落とす。
見れば、粘々した透明のものが手についていた。何だ。これは?糸…?
その時、突然、木陰から何かが飛び出してきてルーファスの腕に巻きついた。
それは束になった蜘蛛の糸だった。腕を振り払い、無理矢理引きちぎって、拘束を解いていく。
が、腕に巻き付いた糸を引きちぎっている間に今度は足首に糸が巻き付いた。
その間にも次々と蜘蛛の糸が四方八方から襲い掛かり、身体に巻き付いて、絡みとっていく。
気付けば、蜘蛛の糸に拘束され、身動きができなくなってしまった。
何だ。これは…!?ここまで大きい蜘蛛の糸は初めて見た。
しかも、この糸…!固くて、全然びくともしない。
力を籠めれば籠める程、拘束が強くなっていく…!
ルーファスは必死に抜け出そうとするが締め付けがひどくなるばかりだった。
まずい…!このままだと、また…!
そんなルーファスの頭上に大きな影がかかった。かろうじて、顔は動かせるので見上げれば、そこには巨大な蜘蛛がいた。目が六つもあり、爛々と赤く光り、こちらを見下ろしている。
大きな口からは黄土色の唾液が滴り落ちた。食われる…!ルーファスは死を覚悟した。
巨大蜘蛛がガパッと口を開いたその時…、
闇の矢ダークアロー
突然、無数の黒い矢が巨大蜘蛛に襲い掛かった。
矢は巨大蜘蛛の身体を貫通した。巨大蜘蛛はなすすべもなく、断末魔の声を上げて、絶命した。
倒れた巨大蜘蛛を呆然と見つめるルーファスは暗がりから誰かの気配を感じた。
「ルーファス。何だ。その様は。蜘蛛相手に何、負けそうになってんだよ。」
そう言って、溜息を吐きながら現れたのはシグルドだった。シグルドが剣を一振りすると、あれだけ固かった糸があっさり切れて、ルーファスはようやく蜘蛛の糸から解放された。
「す、すまない。シグルド。恩に着る。」
「あんな雑魚相手にこの調子じゃ先が思いやられるぞ。」
巨大蜘蛛を雑魚と言い切るシグルドにルーファスはもう反論する気はなかった。
シグルドの強さは初めて会った時に目の当たりにして、もう十分理解したからだ。
あの巨大蜘蛛もあっさりと倒してしまうし…。
シグルド程の強さを持つ人間はあんな化け物のような蜘蛛でも雑魚になってしまうんだな。
「稽古の前にまずは親玉を倒してからだな。ルーファス。今度はお前が倒せよ。」
「え…。あの蜘蛛は一匹だけじゃないのか?」
「あ?当然だろ。お前、そんな事も分かんないのか。周りをよく見て見ろ。そこら中、こいつらの気配と匂いがするだろうが。」
シグルドに指摘されて、ルーファスはまだ魔物の匂いが消えていないことに気付いた。
「行くぞ。」
「ど、どこに…?」
「決まってるだろ。親玉を倒しに行くんだよ。こういうのは頭を潰すのが一番手っ取り早いからな。」
そう言って、ルーファスの返事も待たずにさっさと先に駆け出していくシグルドの後をルーファスは慌てて追った。
は、速い…!ルーファスは息を切らしながら、必死にシグルドの後を追う。
風のような速度で走っていくシグルドに置いて行かれないようにルーファスは必死に走り続ける。
苦しい。息が切れそうだ。それでも必死に走り続ける。
すると、不意にシグルドが足を止め、立ち止まった。
「止まれ。」
シグルドの言葉にルーファスは反射的に止まると、膝に手をついて、ゼエゼエと息をする。
対して、シグルドは息切れ一つしていない。あれだけ走ったのに息切れ一つしていないなんて…。
この人の体力は一体、どうなっているんだ。
止まれと言われて、止まったが何かあるのだろうか?
そう思って辺りを見渡すが特に異変はなく、森が広がっているだけだった。
「ここから先は気を付けろ。気を抜くと、身体がバラバラに切り裂かれるぞ。」
「え…。」
まさか、どこから攻撃が…!?ルーファスは辺りを警戒し、剣の柄に手をかけて、いつでも剣を抜けるよう身構えた。
「違う。目の前だ。本当に鈍い奴だな。まあ、いい。こういうのは口で説明するより、実際にその目で見た方が早い。」
シグルドはそう言って、足元にあった小枝を拾った。怪訝そうにするルーファスに見てろ、と言って、シグルドは小枝を投げた。
すると、その小枝は地面に落ちるより前に、バラバラに切り刻まれてしまった。
「なっ…!?」
今のは一体、何だ…!?ルーファスは何が起こったのか分からず、唖然とした。
「よく見て見ろ。目を凝らして一点を見つめるんだ。」
シグルドの言葉にルーファスはジッと注視した。すると、よく見れば細い糸のようなものがうっすらと見えた。
糸が月の光に反射して、キラッと光った。
一本だけじゃない。この先の森に…、そこら中に糸が張り巡らされている。
それは、まるで蜘蛛の糸のようだった。けれど、ただの蜘蛛の糸じゃない。
鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた殺傷能力の高い糸だ。触れたり、当たったりすれば、一たまりもない。
さっきの投げた小枝がバラバラに切り刻まれた様を思い出し、ルーファスは戦慄した。
「この先に親玉がいる。このまま突っ切るぞ。」
「え!?いや。でも、この先は蜘蛛の糸が…、」
「避けて通ればいい。ああ。そうだ。知らないだろうから教えてやるが、こいつらの糸には毒があるから気を付けろ。死にたくなきゃ、無傷で通り抜けるんだな。」
「は!?」
つまり、掠り傷ですんだとしても、毒が回れば死んでしまうという事か。
愕然としているルーファスに構わず、シグルドは一歩足を踏み出すと、そのまま風のような速度で森を駆け抜けていく。糸には触れずに。糸の通っていない場所を的確に見極め、すり抜けていくシグルド。
しかも、走る速度はさっき走った速度と変わらない。す、凄い…。ルーファスは思わずシグルドの動きに目を奪われる。
シグルドの姿が見えなくなり、ルーファスは慌てて我に返ると、シグルドの後を追った。
確か、シグルドは…、こうやって…、
ルーファスはシグルドの動きを思い出しながら、糸をすり抜けていく。シグルドのように早くは走れない。
四方八方に張り巡らされた糸を回避しながら進むというのは思った以上に困難だった。
いつ糸に切られてもおかしくない状況にルーファスは不安と緊張感から息が乱れる。
そのせいで動きが鈍り、肩に糸が当たり、服と肌が裂けてしまった。
うっ…!痛みに倒れそうになるがこのまま倒れたら、糸に全身を切り刻まれて死ぬ。
耐えろ…!踏ん張れ!足を止めるな!
ルーファスはそのまま森を駆け抜けていく。
糸を避けようとするが、避けきれずに頬や腕、足に掠り傷を負う。
ようやく糸のない場所まで通り抜けた時にはルーファスの全身はボロボロでそこら中から血が流れていた。
「グッ…!あっ…!」
頭がクラクラする…!上手く、息ができない…!もう、毒が回ってきてるのか。
ハッ、ハッと浅い呼吸をして苦しそうに胸を押さえるルーファスに無傷のシグルドは近付くと、地面に何かを投げた。コロコロと音を立てて、ルーファスの足元に転がる。それは一本の瓶だった。
「飲め。ポーションだ。解毒剤も入っているからそれを飲めば毒は中和される。」
シグルドの言葉にルーファスは瓶に手を伸ばし、おぼつかない手つきで蓋を開け、一気に煽った。
途中で噎せてしまい、激しく咳をしたが何とか飲み込む。しばらくすると、スウ、と傷が塞がり、毒の症状もなくなっていった。身体が軽い。こんなに効き目のあるポーションは初めてだ。
「どうだ?身体の調子は?」
「あ、ああ。もう、平気だ…。」
「よし。なら、もう一回、さっきの道を通ってこい。」
「は!?またあそこを通るのか!?折角、ここまで来たのに何故…!」
「何言ってんだ。あんなの無効に決まってるだろ。大体、俺は無傷で通り抜けろって言ったのに、お前ときたら、全身ボロボロだったじゃなねえか。あんなんじゃ、親玉なんて倒せねえぞ。親玉を倒すのは、俺の課題をこなしてからだ。」
「無茶を言うな!また、あんな地獄道を通るなんて、心臓が幾つあっても足りな、」
「うるせえ!男の癖にグチグチ文句言うな!俺より、弱い癖に一丁前の口を叩いてんじゃねえ!俺に意見するなら俺に勝ってから言いやがれ!」
シグルドの一喝にルーファスは思わず口を噤んだ。
「まあ、いい。俺はこれでも優しい男だからな。さっきの場所まで転移魔法で送ってやるから、今度は無傷でここまで来い。」
そう言って、シグルドは返事も聞かずに魔法を発動した。ルーファスの足元に魔法陣が現れる。
「ちょ、待っ…!」
ルーファスが声を上げるより早くに魔法が発動し、さっきいた場所へと強制送還された。
これのどこが優しいんだ!内心、そう声を上げたルーファスだった。
結局、その後もルーファスは失敗して、どこかしらに傷を負ってしまった。
その度にポーションを飲んで回復し、シグルドに同じ場所に転移させられる。その繰り返しだった。
もう何周したか数えてない。それでも、ルーファスは走った。
何回もやっていく内に段々と糸を見極める事ができるようになった。少しずつだが走る速度も上がり、怪我をする場所も少なくなっている。が、やはり全部の糸を避けきることはできない。
何回も何回も失敗し、ようやくルーファスは初めて無傷で蜘蛛の糸の森を通り抜けることができた。
ルーファスは初めは信じられない気持ちだった。
思わず、自分の全身を確認する。
傷がない。初めて…、糸に触れることも当たる事もなく、無傷で辿り着けたんだ。
ギュッと拳を握り締める。
「シグルド。」
近くにいる筈のシグルドの姿を捜す。が、シグルドの姿がない。
シグルド?辺りを見回すルーファスだったが不意に背後から殺気を感じ、思わずその場から飛んで距離を取った。
すると、大きな音を立てて、木が真っ二つに裂けた。さっきまでルーファスがいた場所だ。
木を切り裂いた正体は糸だった。あの糸は…、
ルーファスの前にズシン、ズシンと音を立てて、黒い巨大な生き物が現れた。
赤い目がぎょろり、とルーファスを見下ろす。そこにいたのは、目玉が八つもある巨大蜘蛛だった。
グロテスクな口に長く伸びた脚、建物のように大きな巨体。
さっき、シグルドが倒した蜘蛛よりも遥かに大きい。明らかに格上の存在…。
この蜘蛛が親玉か。直感的にそう感じたルーファスは思わず剣を抜いて構えた。
以前の自分なら、臆していたかもしれない。本能的な恐怖に直面し、戦意を失っていた事だろう。
ミノタウロスに遭遇した時ですら、勝てないと思い、戦う事を放棄しそうになった程だ。
だけど、何故だろう。今の巨大蜘蛛を前にしてもルーファスはそこまでの恐怖を感じない。
少なくとも、今の自分には戦う意思がある。
蜘蛛が長い手足から糸を放ち、攻撃してくる。
ルーファスはそれを避け、蜘蛛から距離を取りつつ、出方を窺った。
蜘蛛の攻撃を避けながら、ルーファスは思った。こいつの糸は破壊力はすさまじいが…、動きは鈍い。
蜘蛛の糸が向かってくる。ルーファスは剣を構えて、糸を剣で受け流した。
キン、と音を立てて、攻撃を弾き返した。やはり…、この糸は剣で対抗できる。
あれだけ切断力のある糸だから、同じ力を持った剣で立ち向かえば、問題なく弾き返せる。
ルーファスは剣を握り締め、蜘蛛に向かって駆けていく。
糸が弾丸のように次々と放たれるが、それを回避し、剣で弾き返しながら懐に入っていく。
そのまま蜘蛛の身体を足で蹴って駆け上っていく。蜘蛛は暴れるが視覚に映らない場所にいるのでルーファスがどこにいるか分からない。
ルーファスは隙を突いて、蜘蛛の身体に剣を突き立てた。凄まじい咆哮が辺りに轟いた。
だが、それでも蜘蛛は死なない。ルーファスを振り落とそうと暴れ回り、長い足を振り回して、ルーファスを薙ぎ払おうとする。
蜘蛛の身体から飛び降りて、その様を見やりながら、ルーファスは冷静に今の状況を分析する。
やはり、これでは死なないか。さっきの一撃はあまり手ごたえがなかった。
蜘蛛の身体が固すぎて、浅くしか斬れないせいだ。
俺の剣では力が弱く、致命傷を負わせられる程の打撃を与えられないのだ。
それなら…!ルーファスはタッと駆け出し、蜘蛛の身体に飛び移り、斬撃を繰り出した。
さっきの攻撃でも分かった。俺の剣でも一撃は与えられる。
それで十分だ。俺の剣は未熟で浅い攻撃しかできない。けれど、浅くても攻撃し続ければそれは大きな傷となり、致命傷を与えられる。
本来なら、一撃で仕留めるべき攻撃。だが、未熟な俺の剣ではそれができない。
だから、連続で何回も攻撃しなくてはいけない。走れ…!誰よりも早く…!風のように…!
シグルドの風のような速度の如く…!あれ位のスピードでないと、こいつは倒せない!
何度も立て続けに攻撃を続け、斬撃を繰り広げる。
やがて、何度目かの攻撃でシュバッと大きな手ごたえを感じた。
蜘蛛の首が切れたのだ。首を失った蜘蛛の身体は地面に崩れ落ちた。
ハアハア、と肩で息をしながら、ルーファスは呆然とした。
やった…、のか?俺が?こいつを?
まだ実感が沸かない。そんなルーファスの背後に何者かの気配を感じた。
ハッと振り返ると、そこにはシグルドが立っていた。
「やっと倒したのか。お前の事だから、後、二~三回は失敗するかと思ったんだけどな。」
「シグルド…。」
いつの間にかルーファスの背後にいたシグルドは骸となった蜘蛛を見やり、そう言った。
「まあ、初心者にしては上出来だな。ちゃんと自分の苦手分野を理解した上で戦ったみたいだしな。
剣ってのは闇雲に振り回せば勝てるもんじゃねえ。敵の戦法を見破ったり、相手を倒す為に自分の弱点を補って戦う方法を見つけるのは基本中の基本だ。よし。準備運動は済んだことだし、稽古を始めるぞ。」
準備運動!?さっきのあれが?ルーファスはさっきの巨大蜘蛛を倒したばかりでもう疲労困憊だった。
が、シグルドはそんなものは関係ないとでもいいたげにルーファスについてくるように指示してくる。
着いた先は開けた場所で剣を手合わせするのに適した場所だった。
そこでシグルドがいきなり、攻撃を仕掛けてきたから、ルーファスも慌てて応戦する。
グッ…!やっぱり、シグルドの剣は強い…!今にも押し返されそうだ…!
「どうした!少しは反撃してみろ!」
ガッ!キン!キン!と剣がぶつかり合う音が辺りに響き渡る。
ルーファスはシグルドの剣を受け流しながら、隙を窺う。必ずどこかで隙はできる筈だ…!そこを狙え!
ルーファスはシグルドの動きを見て、攻撃に転じた。
それでも、ルーファスの攻撃はシグルドには当たらない。
結局、この日は一度もシグルドに勝つことはできなかった。
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