72 / 222
第一章 出会い編
リスティーナの属性
しおりを挟む
殿下がこちらに来る!?ど、どうしよう…!リスティーナは混乱した。
スザンヌに頼んで殿下を迎える準備を整える。
い、一体、何がどうなっているの?も、もしかして、見舞いの品が気に入らなかったとか?
いや。でも、ちゃんとこの国の風習に則った下調べもしたし…。花束の色とか花の種類によっては病人に贈っては失礼にあたるものもあるだろうからそういったものは選ばず、ちゃんと慎重に選別して用意したのだ。
あのハンカチの色や刺繍だって、大丈夫な筈だ。
鷲はこの国では健康や回復、力強さ、勇気の象徴。だから、殿下の体調がよくなりますようにという思いを込めて刺繍をしたのだが…。それがいけなかったのだろうか。リスティーナはどんどん悪い方向に考えてしまう。
女官長の話だと、殿下の体調が今朝になって少し回復したらしい。
今では自力で立ち上がり、歩けるようになったとか。食事はまだ軽い物しか食べていないがそれでもかなり快調に向かっているとのことだ。その話を聞いて、リスティーナもホッとしたものだ。
殿下の体調が回復したのは喜ばしい。だが…、だからといって、今夜いきなり殿下が来られると聞いて、驚かないわけがない。とにかく、あの初夜の時のような失態を犯さないようにしないと…!
普通は寝酒を用意するものだが殿下は病み上がりの身だし、酒は身体に良くないかもしれない。
酒ではなく、ハーブティーにしよう。蜂蜜も用意して…。
そういえば、ダニエラ様達の話だと月に数回は一人一人の妃の元に通う事があると仰っていた。
殿下がここに来られたら、相手をすることになるとも…。
つまりは…、今夜ここに来られるということは私は殿下と…。
そこまで考えて、かああ、と顔が赤くなった。
いや!でも、殿下はまだ病み上がりだし…、でも、もしそういう雰囲気になったらどうすればいいのだろう?
そもそも、リスティーナは知識は知っていても、実際にどうすればいいのかとはよく分からない。
男女の営みで女性は皆、どうしているのだろうか。積極的に動くべき?夫に奉仕をするべき?
いや。でも、それだとはしたないと思われたら…、
湯浴みを済まして髪や肌に香油を塗られ、薄いネグリジェを着たリスティーナはぐるぐると混乱しながらも大人しく殿下の来訪を待っていた。
「リスティーナ様。ルーファス殿下がお見えになられました。」
リスティーナはドキッとして、身構えた。侍女に通すように返事をして立ち上がって殿下を迎える。硬い靴音を響かせて、部屋に入ってきたルーファスにリスティーナは深く頭を下げて出迎えた。
「ご機嫌麗しゅうございます。殿下。お越しいただき、光栄でございます。」
ルーファスは無言のままだ。シーン、と沈黙が流れる。それなのに、じっとこちらを見ている視線を強く感じる。重苦しい空気を破るようにリスティーナは声を上げた。
「後宮まで足を運んで下さり、痛み入ります。お疲れでございましょう?よろしければ、こちらのソファーにでも…、」
すぐに寝台に誘導するのは何となく躊躇してしまい、とりあえず、ソファーに座ってもらおうとした。
「…ああ。」
軽く頷くと、そのままソファーに座った。
注意深く観察すると、ソファーに座ったことで少し溜息を吐いたルーファスの姿を見て、やっぱり立っているだけでも辛かったのかもしれないと感じた。
リスティーナも向かい側のソファーに腰掛ける。前のように顔色は良くなったように見えるが明らかに痩せていて、以前よりも弱弱しく見える。リスティーナは何か飲み物でも…、と言おうとしたその時、
「リスティーナ姫。」
「は、はい。」
名を呼ばれ、慌てて居住まいを正した。ルーファスは無表情のまま言った。
「…見舞いの品を頂いた。気遣いに感謝する。」
リスティーナは一瞬、何を言われたのか分からず、キョトンとした。漸く、じわじわと言葉の意味を理解し、
「い、いえ!そんな…、喜んでいただけたのなら光栄です。」
まさか、お礼を言われるなんて…。リスティーナは心が温かい気持ちに包まれた。
嬉しくて思わず笑顔を浮かべるリスティーナだったがルーファスは無言のままだ。
その表情は何を考えているのか分からない。
「あ、あの…、殿下。喉は渇きませんか?よろしかったら、ハーブティーでも如何ですか?」
ルーファスがリスティーナに視線を向ける。
「ハーブティー?」
「はい。お酒だと殿下の身体に良くないと思いましたので。…もしかして、ハーブティーはお嫌いですか?」
「…いや。そんな事はない。」
「では、早速準備しますね。」
良かった。頷いてくれた。リスティーナはハーブティーを淹れ、レモンと蜂蜜を少し混ぜてルーファスに差し出した。
「お口に合えばよろしいのですけど…、」
「…。」
が、ルーファスは口をつけようとしない。
「あの…、もしかして、カモミールはお嫌いでしょうか?」
「いや…。」
ルーファスは首を振った。じっとカップに視線を注ぐ。
一瞬、躊躇したように見えたがカップを手に取り、口をつけた。良かった。飲んでくれた。
「お口に合いますか?」
「…ああ。」
「そうですか。良かったです。」
ルーファスの言葉にリスティーナはホッと安堵した。
「あの、もうお加減はよろしいのですか?」
「今の所は大丈夫だ。」
「それは良かったです。一時は危なかったとお聞きしていましたので…、回復したのなら何よりですわ。あの、でも、まだ回復したばかりなのですから、無理はせずに…、」
「今日ここに来たのは、君に聞きたいことがあったからだ。」
聞きたいこと?何だろう。リスティーナは改めてルーファスに向き直った。
「何でございましょうか?」
「君は魔力持ちだな?属性は何だ?」
「え…、属性、ですか?私の?」
「そうだ。もしかして、光の属性持ちか?」
「い、いえ。私の属性は土魔法ですわ。」
「土?…本当か?」
「はい。成人した年に受けた魔力の属性判定の儀式でそう判定されました。」
リスティーナの言葉にルーファスは考え込むように顎に手を当てた。
「あの…、突然どうして属性の事をお聞きに?それに、私の属性が光の魔力持ちと思ったのは…?」
ルーファスは黙ったまま、懐から何かを取り出した。スッと目の前に置かれたそれは…、リスティーナがあげたハンカチだった。
「このハンカチに何か光魔法でも使ったのではないのかと思ったのだ。」
「え…、まさか!だって、私は光の属性ではないですからそもそも光魔法は使えませんから…。」
「…そうか。」
ルーファスはリスティーナの答えに何かを考える様な素振りを見せた。
「あの…、そのハンカチに何か…?」
「…いや。ただの気のせいだったみたいだ。」
ルーファスにそう言われ、リスティーナは首を傾げながらもそれ以上は聞かなかった。
もしかして、私の魔力が光属性だとありもしない噂がこの国に流れているのだろうか?
そんな馬鹿な。それに、私はここで光魔法は使ったことないし、そもそも使えない。
だって、光の属性ではないのだから。土属性だって、初歩的な魔法しか使えないのに…。
あ、そういえば、私…、
スザンヌに頼んで殿下を迎える準備を整える。
い、一体、何がどうなっているの?も、もしかして、見舞いの品が気に入らなかったとか?
いや。でも、ちゃんとこの国の風習に則った下調べもしたし…。花束の色とか花の種類によっては病人に贈っては失礼にあたるものもあるだろうからそういったものは選ばず、ちゃんと慎重に選別して用意したのだ。
あのハンカチの色や刺繍だって、大丈夫な筈だ。
鷲はこの国では健康や回復、力強さ、勇気の象徴。だから、殿下の体調がよくなりますようにという思いを込めて刺繍をしたのだが…。それがいけなかったのだろうか。リスティーナはどんどん悪い方向に考えてしまう。
女官長の話だと、殿下の体調が今朝になって少し回復したらしい。
今では自力で立ち上がり、歩けるようになったとか。食事はまだ軽い物しか食べていないがそれでもかなり快調に向かっているとのことだ。その話を聞いて、リスティーナもホッとしたものだ。
殿下の体調が回復したのは喜ばしい。だが…、だからといって、今夜いきなり殿下が来られると聞いて、驚かないわけがない。とにかく、あの初夜の時のような失態を犯さないようにしないと…!
普通は寝酒を用意するものだが殿下は病み上がりの身だし、酒は身体に良くないかもしれない。
酒ではなく、ハーブティーにしよう。蜂蜜も用意して…。
そういえば、ダニエラ様達の話だと月に数回は一人一人の妃の元に通う事があると仰っていた。
殿下がここに来られたら、相手をすることになるとも…。
つまりは…、今夜ここに来られるということは私は殿下と…。
そこまで考えて、かああ、と顔が赤くなった。
いや!でも、殿下はまだ病み上がりだし…、でも、もしそういう雰囲気になったらどうすればいいのだろう?
そもそも、リスティーナは知識は知っていても、実際にどうすればいいのかとはよく分からない。
男女の営みで女性は皆、どうしているのだろうか。積極的に動くべき?夫に奉仕をするべき?
いや。でも、それだとはしたないと思われたら…、
湯浴みを済まして髪や肌に香油を塗られ、薄いネグリジェを着たリスティーナはぐるぐると混乱しながらも大人しく殿下の来訪を待っていた。
「リスティーナ様。ルーファス殿下がお見えになられました。」
リスティーナはドキッとして、身構えた。侍女に通すように返事をして立ち上がって殿下を迎える。硬い靴音を響かせて、部屋に入ってきたルーファスにリスティーナは深く頭を下げて出迎えた。
「ご機嫌麗しゅうございます。殿下。お越しいただき、光栄でございます。」
ルーファスは無言のままだ。シーン、と沈黙が流れる。それなのに、じっとこちらを見ている視線を強く感じる。重苦しい空気を破るようにリスティーナは声を上げた。
「後宮まで足を運んで下さり、痛み入ります。お疲れでございましょう?よろしければ、こちらのソファーにでも…、」
すぐに寝台に誘導するのは何となく躊躇してしまい、とりあえず、ソファーに座ってもらおうとした。
「…ああ。」
軽く頷くと、そのままソファーに座った。
注意深く観察すると、ソファーに座ったことで少し溜息を吐いたルーファスの姿を見て、やっぱり立っているだけでも辛かったのかもしれないと感じた。
リスティーナも向かい側のソファーに腰掛ける。前のように顔色は良くなったように見えるが明らかに痩せていて、以前よりも弱弱しく見える。リスティーナは何か飲み物でも…、と言おうとしたその時、
「リスティーナ姫。」
「は、はい。」
名を呼ばれ、慌てて居住まいを正した。ルーファスは無表情のまま言った。
「…見舞いの品を頂いた。気遣いに感謝する。」
リスティーナは一瞬、何を言われたのか分からず、キョトンとした。漸く、じわじわと言葉の意味を理解し、
「い、いえ!そんな…、喜んでいただけたのなら光栄です。」
まさか、お礼を言われるなんて…。リスティーナは心が温かい気持ちに包まれた。
嬉しくて思わず笑顔を浮かべるリスティーナだったがルーファスは無言のままだ。
その表情は何を考えているのか分からない。
「あ、あの…、殿下。喉は渇きませんか?よろしかったら、ハーブティーでも如何ですか?」
ルーファスがリスティーナに視線を向ける。
「ハーブティー?」
「はい。お酒だと殿下の身体に良くないと思いましたので。…もしかして、ハーブティーはお嫌いですか?」
「…いや。そんな事はない。」
「では、早速準備しますね。」
良かった。頷いてくれた。リスティーナはハーブティーを淹れ、レモンと蜂蜜を少し混ぜてルーファスに差し出した。
「お口に合えばよろしいのですけど…、」
「…。」
が、ルーファスは口をつけようとしない。
「あの…、もしかして、カモミールはお嫌いでしょうか?」
「いや…。」
ルーファスは首を振った。じっとカップに視線を注ぐ。
一瞬、躊躇したように見えたがカップを手に取り、口をつけた。良かった。飲んでくれた。
「お口に合いますか?」
「…ああ。」
「そうですか。良かったです。」
ルーファスの言葉にリスティーナはホッと安堵した。
「あの、もうお加減はよろしいのですか?」
「今の所は大丈夫だ。」
「それは良かったです。一時は危なかったとお聞きしていましたので…、回復したのなら何よりですわ。あの、でも、まだ回復したばかりなのですから、無理はせずに…、」
「今日ここに来たのは、君に聞きたいことがあったからだ。」
聞きたいこと?何だろう。リスティーナは改めてルーファスに向き直った。
「何でございましょうか?」
「君は魔力持ちだな?属性は何だ?」
「え…、属性、ですか?私の?」
「そうだ。もしかして、光の属性持ちか?」
「い、いえ。私の属性は土魔法ですわ。」
「土?…本当か?」
「はい。成人した年に受けた魔力の属性判定の儀式でそう判定されました。」
リスティーナの言葉にルーファスは考え込むように顎に手を当てた。
「あの…、突然どうして属性の事をお聞きに?それに、私の属性が光の魔力持ちと思ったのは…?」
ルーファスは黙ったまま、懐から何かを取り出した。スッと目の前に置かれたそれは…、リスティーナがあげたハンカチだった。
「このハンカチに何か光魔法でも使ったのではないのかと思ったのだ。」
「え…、まさか!だって、私は光の属性ではないですからそもそも光魔法は使えませんから…。」
「…そうか。」
ルーファスはリスティーナの答えに何かを考える様な素振りを見せた。
「あの…、そのハンカチに何か…?」
「…いや。ただの気のせいだったみたいだ。」
ルーファスにそう言われ、リスティーナは首を傾げながらもそれ以上は聞かなかった。
もしかして、私の魔力が光属性だとありもしない噂がこの国に流れているのだろうか?
そんな馬鹿な。それに、私はここで光魔法は使ったことないし、そもそも使えない。
だって、光の属性ではないのだから。土属性だって、初歩的な魔法しか使えないのに…。
あ、そういえば、私…、
0
お気に入りに追加
282
あなたにおすすめの小説
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
初めての相手が陛下で良かった
ウサギテイマーTK
恋愛
第二王子から婚約破棄された侯爵令嬢アリミアは、王子の新しい婚約者付の女官として出仕することを命令される。新しい婚約者はアリミアの義妹。それどころか、第二王子と義妹の初夜を見届けるお役をも仰せつかる。それはアリミアをはめる罠でもあった。媚薬を盛られたアリミアは、熱くなった体を持て余す。そんなアリミアを助けたのは、彼女の初恋の相手、現国王であった。アリミアは陛下に懇願する。自分を抱いて欲しいと。
※ダラダラエッチシーンが続きます。苦手な方は無理なさらずに。
婚姻初日、「好きになることはない」と宣言された公爵家の姫は、英雄騎士の夫を翻弄する~夫は家庭内で私を見つめていますが~
扇 レンナ
恋愛
公爵令嬢のローゼリーンは1年前の戦にて、英雄となった騎士バーグフリートの元に嫁ぐこととなる。それは、彼が褒賞としてローゼリーンを望んだからだ。
公爵令嬢である以上に国王の姪っ子という立場を持つローゼリーンは、母譲りの美貌から『宝石姫』と呼ばれている。
はっきりと言って、全く釣り合わない結婚だ。それでも、王家の血を引く者として、ローゼリーンはバーグフリートの元に嫁ぐことに。
しかし、婚姻初日。晩餐の際に彼が告げたのは、予想もしていない言葉だった。
拗らせストーカータイプの英雄騎士(26)×『宝石姫』と名高い公爵令嬢(21)のすれ違いラブコメ。
▼掲載先→アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる