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#92話 祭りのあと
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俺には小学校からの親友がいる。
尤も、親友だと思ってるのは俺の方だけかもしれないが…
と云うのも、そいつは
勉強も出来るし、顔だって悪くない。
絵を描くのが好きなヤツたが、美術部でなく運動部にはいったとしてもやっていけるくらいの運動神経だって持ち合わせている。
この男に欠点があるとすれば、人嫌いで他人を全く信用しないところだ。
そんなコイツに彼女が出来た。
1年の時から同じ部活にいる女子だ。
この変わり者の恋を、俺は成就させてやりたかった。
彼女を逃したら、それこそ山奥にでも引き籠もって一生独り身を通すだろう…
それほど彼女に対する想いの強さが、見てるこっちが恥ずかしくなるくらい良く判った。
バサバサッ!
「チッ!」
瀬戸が舌打ちしながら昇降口のごみ箱へ手紙の束を捨てている。
「やあ瀬戸、朝から凄いな」
「全くふざけてる!」
女の子からラヴレター貰ってこんなに怒るヤツお前だけだよ…
こんな変わったヤツの初恋を、クラスの男子全員で応援したくて、後夜祭の投票をした。
コイツは校内でも噂の美少女二人に目もくれず、
自分の彼女へ真っ直ぐ行き、
キスをしたかと思ったら彼女をお姫様抱っこして、
さっさと壇上から降りてしまった。
それにキュンとした女子が多かったんだろう…
それが、この捨てられているラヴレターの束だ…
「読まずに捨ててるが良いのか?」
捨てられてる手紙が不憫で訊いてみた。
「お前の彼女が一枚一枚読んでたら返事でも書いてやれと助言でもするのか?」
コイツは表情も変えずに答えてきた。
「何言ってる!読む前にみんな破り捨ててやる!」
俺はついムキになった。
「なら俺は破らないだけマシってわけだ」
「くくっ…そりゃそーだ」
俺たちは何事もなかったように教室へ向かった。
放課後、真古都を迎えに彼女の教室へ行くが姿が見えない。
「さっき葵くんと焼却所に行ったよ」
同じクラスの女子が教えてくれた。
おれは裏庭の端にある焼却所まで走った。
厭な予感がする!
「おい三ツ木、いつまであんな男と付き合ってるんだ?」
葵勢津那が三ツ木真古都を、焼却所の裏手に呼び出し、壁際に追い詰めて訊いた。
「あ…葵くんには関係ないでしょ?」
三ツ木はか細い声で答える。
「そんなつれない事言うなよ。俺たち小学校からずっと一緒の仲だろ?」
葵が顔を近づけて話しかける。
「葵くん…わたしのこと嫌いじゃない…」
三ツ木の声が震えてきた。
「何言ってんだよ。一度も嫌いだなんて言ったことないぞ。その証拠にいつも遊んでやってるだろ?」
葵が笑みを浮かべながら三ツ木の頭を掴んだ。
「わ…わたしを笑い者にして嫌がらせしてるだけじゃない!」
「うるさい!みっともないお前を構ってやってるんだ!有り難いと思え!」
葵が尚も近づいて話しかける。
「さっさと別れて戻ってこい!」
「や…やだっ!」
焼却所に近づいた時、真古都の声が聞こえてきた。
「あの男だっていつかお前を捨てるんだぞ」
………?
俺が、真古都を捨てる?
「考えてもみろよ、あんな成績の良いヤツがずっとお前みたいな女相手にしてると思うか?
今だって何人もの女から手紙貰ったり誘われたりしてるんだぞ。そんなヤツ信用できるのか?
気に入ったヤツが見つかるまでのツナギなんだよ」
コイツ言わせておけば…
俺はそのまま二人の前に出ようとした…
「いいよ…」
真古都の声だ…
「それでもいいよ…
瀬戸くんは…わたしのこと大事にしてくれる…
今のままのわたしでいいって…
瀬戸くんの傍にいると安心していられるんだよ…
だから…瀬戸くんの傍にいたい…
瀬戸くんが望んでくれるなら…
ずっと応えたい!」
三ツ木がいくつもの滴を落としながら答えてる。
「コイツッ!」
「その汚い手を離せ!」
俺は葵に近づき、真古都を掴んでる腕をねじ上げた。
「二度と真古都に近づくな!
コイツは俺の彼女だ!誰にも渡さない!
お前にもだ!
今度真古都に近づいたら次は無いからな!」
俺は怒りで力の抑制がきかないまま、葵を押し倒した。
「く…くそっ…」
葵は悔しそうな顔を見せるが、走って行った。
俺は真古都を力一杯抱き締めた。
「お前を不安にさせる様な事はしない!
泣かせる様な事もしない!
お前だけを一生大事にする!
だから…俺を信じてついてきてくれ!」
「翔くん…」
「俺は、お前と一緒に生きて行きたい!」
尤も、親友だと思ってるのは俺の方だけかもしれないが…
と云うのも、そいつは
勉強も出来るし、顔だって悪くない。
絵を描くのが好きなヤツたが、美術部でなく運動部にはいったとしてもやっていけるくらいの運動神経だって持ち合わせている。
この男に欠点があるとすれば、人嫌いで他人を全く信用しないところだ。
そんなコイツに彼女が出来た。
1年の時から同じ部活にいる女子だ。
この変わり者の恋を、俺は成就させてやりたかった。
彼女を逃したら、それこそ山奥にでも引き籠もって一生独り身を通すだろう…
それほど彼女に対する想いの強さが、見てるこっちが恥ずかしくなるくらい良く判った。
バサバサッ!
「チッ!」
瀬戸が舌打ちしながら昇降口のごみ箱へ手紙の束を捨てている。
「やあ瀬戸、朝から凄いな」
「全くふざけてる!」
女の子からラヴレター貰ってこんなに怒るヤツお前だけだよ…
こんな変わったヤツの初恋を、クラスの男子全員で応援したくて、後夜祭の投票をした。
コイツは校内でも噂の美少女二人に目もくれず、
自分の彼女へ真っ直ぐ行き、
キスをしたかと思ったら彼女をお姫様抱っこして、
さっさと壇上から降りてしまった。
それにキュンとした女子が多かったんだろう…
それが、この捨てられているラヴレターの束だ…
「読まずに捨ててるが良いのか?」
捨てられてる手紙が不憫で訊いてみた。
「お前の彼女が一枚一枚読んでたら返事でも書いてやれと助言でもするのか?」
コイツは表情も変えずに答えてきた。
「何言ってる!読む前にみんな破り捨ててやる!」
俺はついムキになった。
「なら俺は破らないだけマシってわけだ」
「くくっ…そりゃそーだ」
俺たちは何事もなかったように教室へ向かった。
放課後、真古都を迎えに彼女の教室へ行くが姿が見えない。
「さっき葵くんと焼却所に行ったよ」
同じクラスの女子が教えてくれた。
おれは裏庭の端にある焼却所まで走った。
厭な予感がする!
「おい三ツ木、いつまであんな男と付き合ってるんだ?」
葵勢津那が三ツ木真古都を、焼却所の裏手に呼び出し、壁際に追い詰めて訊いた。
「あ…葵くんには関係ないでしょ?」
三ツ木はか細い声で答える。
「そんなつれない事言うなよ。俺たち小学校からずっと一緒の仲だろ?」
葵が顔を近づけて話しかける。
「葵くん…わたしのこと嫌いじゃない…」
三ツ木の声が震えてきた。
「何言ってんだよ。一度も嫌いだなんて言ったことないぞ。その証拠にいつも遊んでやってるだろ?」
葵が笑みを浮かべながら三ツ木の頭を掴んだ。
「わ…わたしを笑い者にして嫌がらせしてるだけじゃない!」
「うるさい!みっともないお前を構ってやってるんだ!有り難いと思え!」
葵が尚も近づいて話しかける。
「さっさと別れて戻ってこい!」
「や…やだっ!」
焼却所に近づいた時、真古都の声が聞こえてきた。
「あの男だっていつかお前を捨てるんだぞ」
………?
俺が、真古都を捨てる?
「考えてもみろよ、あんな成績の良いヤツがずっとお前みたいな女相手にしてると思うか?
今だって何人もの女から手紙貰ったり誘われたりしてるんだぞ。そんなヤツ信用できるのか?
気に入ったヤツが見つかるまでのツナギなんだよ」
コイツ言わせておけば…
俺はそのまま二人の前に出ようとした…
「いいよ…」
真古都の声だ…
「それでもいいよ…
瀬戸くんは…わたしのこと大事にしてくれる…
今のままのわたしでいいって…
瀬戸くんの傍にいると安心していられるんだよ…
だから…瀬戸くんの傍にいたい…
瀬戸くんが望んでくれるなら…
ずっと応えたい!」
三ツ木がいくつもの滴を落としながら答えてる。
「コイツッ!」
「その汚い手を離せ!」
俺は葵に近づき、真古都を掴んでる腕をねじ上げた。
「二度と真古都に近づくな!
コイツは俺の彼女だ!誰にも渡さない!
お前にもだ!
今度真古都に近づいたら次は無いからな!」
俺は怒りで力の抑制がきかないまま、葵を押し倒した。
「く…くそっ…」
葵は悔しそうな顔を見せるが、走って行った。
俺は真古都を力一杯抱き締めた。
「お前を不安にさせる様な事はしない!
泣かせる様な事もしない!
お前だけを一生大事にする!
だから…俺を信じてついてきてくれ!」
「翔くん…」
「俺は、お前と一緒に生きて行きたい!」
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