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#89話 怯える羊
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三ツ木真古都とは小学校からずっと同じ学校だった。
大して可愛くも無いのに花瓶の水換えや花壇の水やりを毎日楽しそうにしているヤツだった。
「ズブ濡れの野良猫みたいにみっともねぇお前が、花なんか似合う訳ねぇだろ。ブサイクのくせに生意気なんだよ!」
ブスのくせに、毎日ニコニコしながら花の世話をしてるのが、見てて腹立たしかったから泥水を頭から被せて揶揄ったのが始まりだった。
それからは、面白くない時や、ムシャクシャしてる時は、酷い悪戯をして遊んだ。
怯える羊みたいに、いつもビクビクしてて、どれだけ酷い事をしても絶対歯向かって来ないから愉しかった。
「おい、葵。 お前本当にするのか?」
俺と一緒に三ツ木を揶揄ってた蓮奈賀準哉が訊いてきた。
「丁度良い機会だろ?そろそろ泣いた顔を見せてもらおうじゃん」
あの女は、俺たちが揶揄って、酷い嫌がらせをしても、今まで一度も泣いた顔を見せた事が無い。
困った顔で俯くばかりで、泣いて赦しを請う事は無かった。
その事が一層俺を苛立たせた。
「お前って酷いヤツだよなぁ」
「それ言ったらお前だって同類じゃねぇか」
「それもそーか カッカッカッ」
準哉が変な笑い方をしてる。
あの先輩が、もっと上手くやってくれたら、こんな面倒な事しなくてもすんだんだ。
あんなにあっさり親元に連れてかれるなんてホント使えねーヤツ…
「あの子も可哀相になー こんなヤツに目をつけられてさぁ」
準哉が冷やかすように言う。
「準哉、一言多いぞ。俺は小学校からの級友として、いつもボッチなあいつと遊んでやってるだけだ」
「そりゃいーや」
準哉の下卑た笑い声が放課後の教室に響いた。
「ついに、明日から文化祭ですね! 部長!」
「色々楽しめるといいな」
霧嶋のクラスはやはり去年同様演劇で、今年は[王子役]から逃れられなかったらしい。
「まあ、霧嶋くんにはハマり役じゃないですかぁ?」
笹森がそう言って霧嶋を揶揄った。
「もう、煩いなぁ」
霧嶋は少し拗ねて、プイッと横を向いた。
「いいじゃないか。そのムダに良い顔を存分に発揮してこいよ」
「何だよ先輩まで!」
「こらあ、あんまり揶揄わないの!
でも、霧嶋くんの王子様はやっぱり素敵だと思うよ」
真古都が拗ねてる霧嶋の顔を覗きこんで慰めてる。
「そう言ってくれるのは真古都さんだけだよ!
愛を囁くシーンでの台詞は全て君に捧げるよ!」
霧嶋はドサクサに紛れて、真古都の両手を取り、その指先へキスをおとしてる。
「何ドサクサに紛れて変な事してるんだよ!
真古都から離れろ霧嶋!」
「えーっやだよ!」
霧嶋が益々真古都を抱き竦めて言った。
「だってみんなして先輩に投票したんでしょ?
後夜祭でのキスの相手は先輩にほぼ決まりじゃん?
今ぐらいくっついてたっていーじゃない!」
「黙れ!それとこれとは関係無いだろ!」
「…あ…あの…キスって…何?」
思ってもみなかった一言で、その場にいた部員は一斉に真古都を見た!
「????????」
大して可愛くも無いのに花瓶の水換えや花壇の水やりを毎日楽しそうにしているヤツだった。
「ズブ濡れの野良猫みたいにみっともねぇお前が、花なんか似合う訳ねぇだろ。ブサイクのくせに生意気なんだよ!」
ブスのくせに、毎日ニコニコしながら花の世話をしてるのが、見てて腹立たしかったから泥水を頭から被せて揶揄ったのが始まりだった。
それからは、面白くない時や、ムシャクシャしてる時は、酷い悪戯をして遊んだ。
怯える羊みたいに、いつもビクビクしてて、どれだけ酷い事をしても絶対歯向かって来ないから愉しかった。
「おい、葵。 お前本当にするのか?」
俺と一緒に三ツ木を揶揄ってた蓮奈賀準哉が訊いてきた。
「丁度良い機会だろ?そろそろ泣いた顔を見せてもらおうじゃん」
あの女は、俺たちが揶揄って、酷い嫌がらせをしても、今まで一度も泣いた顔を見せた事が無い。
困った顔で俯くばかりで、泣いて赦しを請う事は無かった。
その事が一層俺を苛立たせた。
「お前って酷いヤツだよなぁ」
「それ言ったらお前だって同類じゃねぇか」
「それもそーか カッカッカッ」
準哉が変な笑い方をしてる。
あの先輩が、もっと上手くやってくれたら、こんな面倒な事しなくてもすんだんだ。
あんなにあっさり親元に連れてかれるなんてホント使えねーヤツ…
「あの子も可哀相になー こんなヤツに目をつけられてさぁ」
準哉が冷やかすように言う。
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「そりゃいーや」
準哉の下卑た笑い声が放課後の教室に響いた。
「ついに、明日から文化祭ですね! 部長!」
「色々楽しめるといいな」
霧嶋のクラスはやはり去年同様演劇で、今年は[王子役]から逃れられなかったらしい。
「まあ、霧嶋くんにはハマり役じゃないですかぁ?」
笹森がそう言って霧嶋を揶揄った。
「もう、煩いなぁ」
霧嶋は少し拗ねて、プイッと横を向いた。
「いいじゃないか。そのムダに良い顔を存分に発揮してこいよ」
「何だよ先輩まで!」
「こらあ、あんまり揶揄わないの!
でも、霧嶋くんの王子様はやっぱり素敵だと思うよ」
真古都が拗ねてる霧嶋の顔を覗きこんで慰めてる。
「そう言ってくれるのは真古都さんだけだよ!
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霧嶋はドサクサに紛れて、真古都の両手を取り、その指先へキスをおとしてる。
「何ドサクサに紛れて変な事してるんだよ!
真古都から離れろ霧嶋!」
「えーっやだよ!」
霧嶋が益々真古都を抱き竦めて言った。
「だってみんなして先輩に投票したんでしょ?
後夜祭でのキスの相手は先輩にほぼ決まりじゃん?
今ぐらいくっついてたっていーじゃない!」
「黙れ!それとこれとは関係無いだろ!」
「…あ…あの…キスって…何?」
思ってもみなかった一言で、その場にいた部員は一斉に真古都を見た!
「????????」
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