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#84話 過去から来た人
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わたしは校門の少し横にある花壇の脇で瀬戸くんを待つことにした。
ここなら目立たないし、彼なら絶対見つけてくれるから。
今でも信じられない…
わたし…本当に瀬戸くんの彼女になったんだ…
瀬戸くんが…好きだって言ってくれた…
瀬戸くんはいつも側にいてくれて…
いつも優しくて
わたしを大切にしてくれる。
そんな男がわたしを好きになってくれた…
傍にいても良いって言ってくれた…
瀬戸くんとは一年からの付き合いだから、
彼がどんなにいい人かよく知ってる。
わたしに安心をくれる人だ…
「藤木先輩も必死だな」
「自業自得だろ」
男子二人の話し声が偶々耳に入ってきた。
「今更怪我させた女の子捜してどうするんだろ?」
「さあ、責任を取るとかどうとか言ってたけど…」
『女の子に怪我させたのか…大変だな…』
わたしの顔にも怪我で出来た傷が右眼のところにある。
二階の教室で男子が窓際に置いてあった鉢を、
ふざけて下に落としたんだ。
その時下で、花壇の植替えをしていたわたしは、
割れた鉢植えの破片を頭から被って怪我をした…
一年生の時だ…
わたしは今でもキズがなるべく見えないよう、
右側の前髪はいつも長めにカットしてる。
「君…」
花壇のブロックに腰掛けて本を読んでいたわたしに、誰かが声をかけた。
顔を上げると、男の人が立っている。
私服だし、大学生みたいだからウチの生徒じゃない。
「君、三ツ木真古都さんでしょ?」
知らない男の人から名前を呼ばれる。
わたしは胸が苦しくなって上手く息が出来ない。
『だ…誰?』
「突然ごめんね。俺は藤木瞭介。2年前君に怪我をさせた1人だ。
あの時はすまなかった。
どうしても謝りたかったけど、どうしても謝る勇気がなくて…」
あの時は男子生徒二人がふざけて落としたと先生から訊いた。
話しながら距離を詰めてくるので怖くなる。
「今になって来られても困ります」
わたしは少しでもこの人から離れようと立ち上がったが、慌てていたのでそのまま転んでしまう。
治ったばかりの膝に痛みが走る。
「あっ…」
痛くて膝を押さえる。
「大丈夫?」
男の人が近づいてくる。
「やだっ…来ないで」
思わず伸ばされた手を払い除ける。
「困ったな…何もしないよ」
わたしがあまりにも怯えるので手を焼いている感じだった。
「君の顔に残るキズをつけた責任を取りたいんだ。
話を訊いてくれないか」
わたしが嫌がってるのに、尚も距離を縮めようとしてくる。
「今更責任なんておかしいじゃない!
お願いだから来ないで!」
わたしは怖くてもう動けない…
「とにかく話を…」
「それ以上近づくな!」
わたしの知ってる声がする…
「もう大丈夫だ」
その人の顔を見た途端、涙が零れ落ちていく。
「し…知らない人が…声を…わたし…怖くて…」
わたしは瀬戸くんに抱き起こされて、そのまま彼の胸に顔を埋めて泣いた。
「怖いなんて大袈裟だろう…俺は何もしていない!」
男が少し声を荒げて言った。
「知らない男が話しかけてきて、詰め寄ってくれば、女の子なら誰だって怖いと思うがな」
「わ…悪かったよ。その子と話があるんだ。
君は席を外してくれないか」
年下とは云え、男子から睨まれたため下出になっている。
「断る。自分の彼女が怖くて泣いてるのに、その相手と二人きりにする彼氏が何処にいるんだ!」
「か…彼氏だって?
まさか…と、とにかく今日は帰るが、話は訊いてくれ! また来る」
男はそう言って慌てて帰って行った。
「真古都、遅くなってすまない」
「翔くん…来てくれて…嬉しい」
真古都に一体どんな話があるんだ…?
ここなら目立たないし、彼なら絶対見つけてくれるから。
今でも信じられない…
わたし…本当に瀬戸くんの彼女になったんだ…
瀬戸くんが…好きだって言ってくれた…
瀬戸くんはいつも側にいてくれて…
いつも優しくて
わたしを大切にしてくれる。
そんな男がわたしを好きになってくれた…
傍にいても良いって言ってくれた…
瀬戸くんとは一年からの付き合いだから、
彼がどんなにいい人かよく知ってる。
わたしに安心をくれる人だ…
「藤木先輩も必死だな」
「自業自得だろ」
男子二人の話し声が偶々耳に入ってきた。
「今更怪我させた女の子捜してどうするんだろ?」
「さあ、責任を取るとかどうとか言ってたけど…」
『女の子に怪我させたのか…大変だな…』
わたしの顔にも怪我で出来た傷が右眼のところにある。
二階の教室で男子が窓際に置いてあった鉢を、
ふざけて下に落としたんだ。
その時下で、花壇の植替えをしていたわたしは、
割れた鉢植えの破片を頭から被って怪我をした…
一年生の時だ…
わたしは今でもキズがなるべく見えないよう、
右側の前髪はいつも長めにカットしてる。
「君…」
花壇のブロックに腰掛けて本を読んでいたわたしに、誰かが声をかけた。
顔を上げると、男の人が立っている。
私服だし、大学生みたいだからウチの生徒じゃない。
「君、三ツ木真古都さんでしょ?」
知らない男の人から名前を呼ばれる。
わたしは胸が苦しくなって上手く息が出来ない。
『だ…誰?』
「突然ごめんね。俺は藤木瞭介。2年前君に怪我をさせた1人だ。
あの時はすまなかった。
どうしても謝りたかったけど、どうしても謝る勇気がなくて…」
あの時は男子生徒二人がふざけて落としたと先生から訊いた。
話しながら距離を詰めてくるので怖くなる。
「今になって来られても困ります」
わたしは少しでもこの人から離れようと立ち上がったが、慌てていたのでそのまま転んでしまう。
治ったばかりの膝に痛みが走る。
「あっ…」
痛くて膝を押さえる。
「大丈夫?」
男の人が近づいてくる。
「やだっ…来ないで」
思わず伸ばされた手を払い除ける。
「困ったな…何もしないよ」
わたしがあまりにも怯えるので手を焼いている感じだった。
「君の顔に残るキズをつけた責任を取りたいんだ。
話を訊いてくれないか」
わたしが嫌がってるのに、尚も距離を縮めようとしてくる。
「今更責任なんておかしいじゃない!
お願いだから来ないで!」
わたしは怖くてもう動けない…
「とにかく話を…」
「それ以上近づくな!」
わたしの知ってる声がする…
「もう大丈夫だ」
その人の顔を見た途端、涙が零れ落ちていく。
「し…知らない人が…声を…わたし…怖くて…」
わたしは瀬戸くんに抱き起こされて、そのまま彼の胸に顔を埋めて泣いた。
「怖いなんて大袈裟だろう…俺は何もしていない!」
男が少し声を荒げて言った。
「知らない男が話しかけてきて、詰め寄ってくれば、女の子なら誰だって怖いと思うがな」
「わ…悪かったよ。その子と話があるんだ。
君は席を外してくれないか」
年下とは云え、男子から睨まれたため下出になっている。
「断る。自分の彼女が怖くて泣いてるのに、その相手と二人きりにする彼氏が何処にいるんだ!」
「か…彼氏だって?
まさか…と、とにかく今日は帰るが、話は訊いてくれ! また来る」
男はそう言って慌てて帰って行った。
「真古都、遅くなってすまない」
「翔くん…来てくれて…嬉しい」
真古都に一体どんな話があるんだ…?
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