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#67話 真古都の意外な過去
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「ドライバーの城之内さん。
一緒に組んで作業するから、仕事は彼から教わってね。」
真古都の母親から、一緒に仕事をする先輩を紹介された。
「瀬戸翔吾です。よろしくお願いします」
俺は瀬戸に頭を下げて挨拶する。
「いやぁ、真古ちゃんの友達だって?
こっちこそ助かるよ。バイトに逃げられて困ってたんだ」
一緒に組む先輩は人当たりの良さそうな人だった。
車の中で、城之内さんから仕事の手順を教わる。
レンタルの観葉植物を交換する時は、大きくて重いので特に注意するように言われる。
実際にやってみると、大きな鉢物だけでなく、小さなポット苗も数が多いとそれなりに大変だった。
『結構肉体労働だな』
「お疲れ、初日から大物ばかりで大変だったろう?大丈夫か?」
店に帰る車の中で城之内さんが訊いて来た。
「思ってたより力仕事でしたけど大丈夫です。
やれます」
俺は先輩に伝えた。
「真古ちゃんと同じ美術部だって訊いたから勤まるか心配してたんだが、お前さんなら大丈夫そうだ!明日からも頼むな」
「はい!」
俺は役に立ててるようで安心した。
使い物にならないなんて言われたら、真古都に会わせる顔がない…
「そういやぁ友達だって訊いてたけど、お前さん真古ちゃんの彼氏か?」
突然の質問で、一気に心臓が跳ね上がる。
「えっ?」
なんて答えたらいいんだ?
「なんだ、違ったか」
「いえっ!違いません!」
ここはしっかり肯定しとかないと!
一人でも多く俺が彼氏だと認知してもらっていて損はない。
「やっぱりそうか。真古ちゃんの様子からそんな感じがしたんだ。男嫌いのあの子がやたらお前さんを心配してたからな」
俺は顔から火が出る思いだった。
「前はダメだったけど、今回は彼氏だからな俺も安心したよ」
……前?
「あ…あの前って」
俺はどうしても気になって訊いてみた。
「悪い!失言だった」
城之内さんはつい口を滑らせた事を気にしてる。
「大丈夫です!ただどうしても気になるので、差支えなければ相手が誰か教えてもらえませんか?」
暫く黙って考え込んでいた城之内さんが、俺があまりに必死で頼むのでやっと口を開いてくれた。
「小さい頃から、花とか、植物が好きでウチによく通って来る男の子がいたんだよ…」
城之内さんの話しによれば、その男の子は真古都より二つほど年上で、多分それが初恋なんじゃないかと言っていた。
ところが、小学校に入って朝顔の種蒔きの時、平気でミミズを掴める真古都を、クラスの男子が何人かで酷く嘲笑して苛めたらしい。
あまり苛めが辛くて暫く学校に行けない程だったという。
真古都の男嫌いも、それが発端じゃないかとも言っていた。
仲の良かったその男の子ともそれが原因で距離をおくようになったそうだ…
『二つ上の男子…』
俺はその相手に、一人だけ心当たりがあった…
「もしかして…そいつ、天宮神ていいませんか?」
俺はまさかと思いながらも訊いてみた。
「なんだ、知ってたのか」
城之内さんは少し安心した顔になった。
やっぱり…
何となくそんな感じはあった。
真古都もあのクズを初恋だと言ってたから、
自分でも気づいて無かったんだろう…
去年の夏、天宮先輩が告白の相手を夏祭りに誘うのを、妙に羨ましそうに話していた顔を思い出す。
俺は心のどこかで安堵していた。
あの人が相手では、
俺は敵わないかもしれなかった…
「お帰りなさい」
真古都が心配そうな顔をして待っていた。
その顔を見たら、慣れないバイトでの疲れなんてどうでもよくなった。
そうだ、今は俺がコイツの彼氏だ!
一緒に組んで作業するから、仕事は彼から教わってね。」
真古都の母親から、一緒に仕事をする先輩を紹介された。
「瀬戸翔吾です。よろしくお願いします」
俺は瀬戸に頭を下げて挨拶する。
「いやぁ、真古ちゃんの友達だって?
こっちこそ助かるよ。バイトに逃げられて困ってたんだ」
一緒に組む先輩は人当たりの良さそうな人だった。
車の中で、城之内さんから仕事の手順を教わる。
レンタルの観葉植物を交換する時は、大きくて重いので特に注意するように言われる。
実際にやってみると、大きな鉢物だけでなく、小さなポット苗も数が多いとそれなりに大変だった。
『結構肉体労働だな』
「お疲れ、初日から大物ばかりで大変だったろう?大丈夫か?」
店に帰る車の中で城之内さんが訊いて来た。
「思ってたより力仕事でしたけど大丈夫です。
やれます」
俺は先輩に伝えた。
「真古ちゃんと同じ美術部だって訊いたから勤まるか心配してたんだが、お前さんなら大丈夫そうだ!明日からも頼むな」
「はい!」
俺は役に立ててるようで安心した。
使い物にならないなんて言われたら、真古都に会わせる顔がない…
「そういやぁ友達だって訊いてたけど、お前さん真古ちゃんの彼氏か?」
突然の質問で、一気に心臓が跳ね上がる。
「えっ?」
なんて答えたらいいんだ?
「なんだ、違ったか」
「いえっ!違いません!」
ここはしっかり肯定しとかないと!
一人でも多く俺が彼氏だと認知してもらっていて損はない。
「やっぱりそうか。真古ちゃんの様子からそんな感じがしたんだ。男嫌いのあの子がやたらお前さんを心配してたからな」
俺は顔から火が出る思いだった。
「前はダメだったけど、今回は彼氏だからな俺も安心したよ」
……前?
「あ…あの前って」
俺はどうしても気になって訊いてみた。
「悪い!失言だった」
城之内さんはつい口を滑らせた事を気にしてる。
「大丈夫です!ただどうしても気になるので、差支えなければ相手が誰か教えてもらえませんか?」
暫く黙って考え込んでいた城之内さんが、俺があまりに必死で頼むのでやっと口を開いてくれた。
「小さい頃から、花とか、植物が好きでウチによく通って来る男の子がいたんだよ…」
城之内さんの話しによれば、その男の子は真古都より二つほど年上で、多分それが初恋なんじゃないかと言っていた。
ところが、小学校に入って朝顔の種蒔きの時、平気でミミズを掴める真古都を、クラスの男子が何人かで酷く嘲笑して苛めたらしい。
あまり苛めが辛くて暫く学校に行けない程だったという。
真古都の男嫌いも、それが発端じゃないかとも言っていた。
仲の良かったその男の子ともそれが原因で距離をおくようになったそうだ…
『二つ上の男子…』
俺はその相手に、一人だけ心当たりがあった…
「もしかして…そいつ、天宮神ていいませんか?」
俺はまさかと思いながらも訊いてみた。
「なんだ、知ってたのか」
城之内さんは少し安心した顔になった。
やっぱり…
何となくそんな感じはあった。
真古都もあのクズを初恋だと言ってたから、
自分でも気づいて無かったんだろう…
去年の夏、天宮先輩が告白の相手を夏祭りに誘うのを、妙に羨ましそうに話していた顔を思い出す。
俺は心のどこかで安堵していた。
あの人が相手では、
俺は敵わないかもしれなかった…
「お帰りなさい」
真古都が心配そうな顔をして待っていた。
その顔を見たら、慣れないバイトでの疲れなんてどうでもよくなった。
そうだ、今は俺がコイツの彼氏だ!
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