64 / 100
#64話 先走る気持ち(こころ)
しおりを挟む
真古都に、ちゃんと気持ちを伝えようと決心したものの、どう云う訳か告白のタイミングがなかなか上手く掴めない。
一体、世の中のヤツらは、みんなどうやって伝えてるんだ?
いざ自分の身に起きてみると、なかなか上手く切り出せないでいた。
何がいけない?
時間か?
場所か?
「真古都、お前今度の週末何してる?」
俺は週末の予定を訊いた。
「ん…図書館かな」
コイツが図書館に行くのは大概勉強のためだ。
もうすぐ期末が近い。
人が多いところが苦手なコイツは、
滅多な事が無い限り家から出掛けない。
「週末…ウチに来るか?」
俺は自分の家に誘う。
コイツとは夏休みの宿題も一緒にしたから
きっと断らないで来てくれる筈だ。
「いいの?」
真古都の顔が嬉しそうに見えるのは、
気の所為だろうか?
「図書館に籠って一人でやるより効率的だろ
「嬉しい! 瀬戸くん教えるの上手なんだもん」
真古都は、俺の教え方が上手いと言って、
喜んで承諾してくれた。
嬉しいのは俺の方なのに…
週末、俺は真古都に告白する決心をした。
そうなると今度は、
週末の事が頭から離れず落ち着かない。
全く…俺は何やってるんだ…
「おい瀬戸」
柏崎が妙な顔で俺を見ている。
「今度は何だ?」
付き合いの長いこいつには、俺の様子が可怪しい事に気付いたらしい。
俺が週末の話しをしたら、少し安心したようだ。
「お前ってさ、俺から見たら何でもそつなくこなすし、完全無敵だと思ってたんだけど、
まさか恋愛関係はここまでからっきしだとはな…」
柏崎は心配を通り越して、幾分呆れ顔だ。
「…るせっ」
「だけど、お前でも苦手な事があると思うとなんだか安心するより笑っちゃうな」
俺は恥ずかしくていたたまれない。
渡り廊下のところまで来ると、廊下の向こう側で真古都がうろうろしている。
俺を見つけると安心した顔で近づいて来る。
「良かった、行き違いにならなくて」
「お…おう」
コイツの顔を見た途端、俺の心臓は別の生き物のように暴れ出した。
『心配するなって言っても無理かな…』
彼女は俺の知る限り、
他人を受け入れない瀬戸が
初めて自分から絡んだ女の子だ。
一年の頃から二人を見てる。
最初は何の気まぐれだろうと思ったが、
彼女が校庭の隅でケガをした時の
瀬戸の慌てぶりには俺でも信じられなかった。
後輩には悪いが、
俺は瀬戸の初恋を成就させてやりたい。
彼女が瀬戸といる時の表情、
瀬戸を見る眼
俺から見たらまんざらでもないんだけど…
そう思うのは友人の欲目だろうか…
「それじゃあ瀬戸、俺も彼女と待ち合わせしてるからまたな」
「おう」
次の日、俺は駅まで真古都を迎えに行った。
実のところ、この後の事を思うとなかなか勉強が手につかなかった。
「ごめん瀬戸くん、ここ判んない」
横に座って問題を解いてる真古都が訊いて来た。
俺が説明している横で、一生懸命訊いてる。
18時を知らせる時計の音が聴こえてきた。
「続きはまた明日にするか」
俺は真古都に声をかける。
「うん」
彼女は自分の教科書やノートを鞄にしまい始めた。
俺は緊張して思わず唾を飲み込んだ。
「真古都…」
横に座っている彼女が俺の方へ顔を向ける。
「なあに?」
もう少しでぶつかりそうな距離に、
俺はそのまま唇を重ねた。
この気持ちを伝えたいのに、
俺の心臓は早馬を飛ばす足音のように
直ぐには止まりそうもない…
真古都はただじっとして俺のする行為を
そのまま受け入れている。
このキスが、仲が良いだけだとは思いたくない…
ゆっくり唇を離して彼女を見る。
「真古都…俺…」
その後を言おうとしたその時、
突然ドアをノックする音が聞こえる。
『えっ? 嘘だろ?』
「翔吾、今日は真古都さんに夕食を食べていってもらえ」
『親父…タイミング悪すぎだろ……』
一体、世の中のヤツらは、みんなどうやって伝えてるんだ?
いざ自分の身に起きてみると、なかなか上手く切り出せないでいた。
何がいけない?
時間か?
場所か?
「真古都、お前今度の週末何してる?」
俺は週末の予定を訊いた。
「ん…図書館かな」
コイツが図書館に行くのは大概勉強のためだ。
もうすぐ期末が近い。
人が多いところが苦手なコイツは、
滅多な事が無い限り家から出掛けない。
「週末…ウチに来るか?」
俺は自分の家に誘う。
コイツとは夏休みの宿題も一緒にしたから
きっと断らないで来てくれる筈だ。
「いいの?」
真古都の顔が嬉しそうに見えるのは、
気の所為だろうか?
「図書館に籠って一人でやるより効率的だろ
「嬉しい! 瀬戸くん教えるの上手なんだもん」
真古都は、俺の教え方が上手いと言って、
喜んで承諾してくれた。
嬉しいのは俺の方なのに…
週末、俺は真古都に告白する決心をした。
そうなると今度は、
週末の事が頭から離れず落ち着かない。
全く…俺は何やってるんだ…
「おい瀬戸」
柏崎が妙な顔で俺を見ている。
「今度は何だ?」
付き合いの長いこいつには、俺の様子が可怪しい事に気付いたらしい。
俺が週末の話しをしたら、少し安心したようだ。
「お前ってさ、俺から見たら何でもそつなくこなすし、完全無敵だと思ってたんだけど、
まさか恋愛関係はここまでからっきしだとはな…」
柏崎は心配を通り越して、幾分呆れ顔だ。
「…るせっ」
「だけど、お前でも苦手な事があると思うとなんだか安心するより笑っちゃうな」
俺は恥ずかしくていたたまれない。
渡り廊下のところまで来ると、廊下の向こう側で真古都がうろうろしている。
俺を見つけると安心した顔で近づいて来る。
「良かった、行き違いにならなくて」
「お…おう」
コイツの顔を見た途端、俺の心臓は別の生き物のように暴れ出した。
『心配するなって言っても無理かな…』
彼女は俺の知る限り、
他人を受け入れない瀬戸が
初めて自分から絡んだ女の子だ。
一年の頃から二人を見てる。
最初は何の気まぐれだろうと思ったが、
彼女が校庭の隅でケガをした時の
瀬戸の慌てぶりには俺でも信じられなかった。
後輩には悪いが、
俺は瀬戸の初恋を成就させてやりたい。
彼女が瀬戸といる時の表情、
瀬戸を見る眼
俺から見たらまんざらでもないんだけど…
そう思うのは友人の欲目だろうか…
「それじゃあ瀬戸、俺も彼女と待ち合わせしてるからまたな」
「おう」
次の日、俺は駅まで真古都を迎えに行った。
実のところ、この後の事を思うとなかなか勉強が手につかなかった。
「ごめん瀬戸くん、ここ判んない」
横に座って問題を解いてる真古都が訊いて来た。
俺が説明している横で、一生懸命訊いてる。
18時を知らせる時計の音が聴こえてきた。
「続きはまた明日にするか」
俺は真古都に声をかける。
「うん」
彼女は自分の教科書やノートを鞄にしまい始めた。
俺は緊張して思わず唾を飲み込んだ。
「真古都…」
横に座っている彼女が俺の方へ顔を向ける。
「なあに?」
もう少しでぶつかりそうな距離に、
俺はそのまま唇を重ねた。
この気持ちを伝えたいのに、
俺の心臓は早馬を飛ばす足音のように
直ぐには止まりそうもない…
真古都はただじっとして俺のする行為を
そのまま受け入れている。
このキスが、仲が良いだけだとは思いたくない…
ゆっくり唇を離して彼女を見る。
「真古都…俺…」
その後を言おうとしたその時、
突然ドアをノックする音が聞こえる。
『えっ? 嘘だろ?』
「翔吾、今日は真古都さんに夕食を食べていってもらえ」
『親父…タイミング悪すぎだろ……』
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる