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#61話 ゴシップガール

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 文化祭でのプロポーズ事件は瞬く間に、
此処彼処で噂になった。

バカにするヤツもいれば、感心するヤツもいる。
誰がどんな感想を持とうが関係ないが、
プロポーズをされた真古都がどう思ってるのか、
それが一番気がかりだった。

男より、女の方が、
結婚は近い未来に存在するからだ。



「三ツ木先輩どうなんですか?」
一年の女子が、真古都と一緒に雑用をしながら
話を切り出した。

「何が?」
真古都は一年に不思議そうに答える。

「何って、霧嶋くんのプロポーズですよぉ…
受けるんですか?」
興味津々で訊いている。

「どうして?」
真古都はやっぱり不思議そうだ。

「だって校内一のイケメン王子から
プロポーズされたんですよ!」

「えっ? 顔で結婚する訳じゃ無いでしょ?」

「そうですけど…
じゃあ先輩はどんな人と結婚したいんですか?」
真古都の返事に不満そうだが、尚も訊いてくる。

「わたしに…安心をくれる人」
「なんですか?それ」

真古都は曖昧に笑っている。

劣等感が強い真古都は、
相手の男が他の女を好きになっても
仕方ないと思ってる節がある。
それを感じさせない男が彼女の理想だ…

俺はお前に安心させてやれてるか?
俺はこんなにお前しか見てないのに…



「それに、わたしには瀬戸くんがいるから」

俺はその一言に心臓が音を立てた。

同じ美術室でも、真古都たちは隅の方で
固まって作業している。
俺は部屋の中ほどで絵を描いているが、
彼女たちに背中を向けている。

『真古都は、どんな顔で言ったんだ?』
俺は真古都の表情が気になって、
後ろを向きたかった。

「瀬戸先輩も悪くないですけど…」

くそっ! 一年! 悪くないって何なんだよ!

「瀬戸くんは、わたしを凄く大事にしてくれるよ」

キャンバスに向かってはいるが、
筆は全然進んでいない…
真古都の言葉に、
俺の心臓は五月蝿く叫んでいる。

「瀬戸くんはね、一年の時から変わらず
わたしに一番優しくしてくれる人なんだよ」




「真古都、お茶を飲んで帰ろうか?」
「うん」

真古都が俺の腕を掴んだまま答える。
キャンプでキスをして以来、
少なからず彼女だと意識してくれている。

『このまま本当の彼女に
なってくれたらいいのに…』


(ねぇ、あの子でしよ?)
(やだっ、全然可愛くないじゃん)
(霧嶋くんが優しくしてるから
いい気になってるんじゃない?)

学校を出る時、近くにいた女子がこっちを見て
話す声が聞こえてきた。

霧嶋がモテるのは仕方ないが、良くも悪くも、
そのお鉢は真古都にも回ってくる。
当然やっかみもあるだろう…

真古都は俺の横で俯いている。




二人で、いつものように個室のスペースで
お茶を飲む。

幸せそうに紅茶お茶を飲む真古都が
いつになく愛おしい。
霧嶋のことで、色々中傷されている筈なのに…

「真古都、暫くは色々言われるかもしれないが
気にするなよ」
真古都は俺の横で含羞んだ笑顔を見せてくれる。

ダメだ…我慢出来ない…

俺は真古都を力一杯抱き締める。
真古都は俺がキスをしても拒否しない。
キャンプで俺が強引にしたにも関わらず
そのまま俺を受け入れてくれてる。


「そう云えば霧嶋のヤツ、今日部活来なかったな…」
あいつが部活に来ないのは珍しい。
「どうしたんだろうね…」
真古都も心配そうだ。


ところが、それから一週間経っても
部活どころか学校にも姿を現さなかった。


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