上 下
73 / 139

とうとう奴が現れた

しおりを挟む
「いいか? これが目的の薬草、"モウダメ草”だ」



 森の奥へと進み込み、草木が多く茂る中、オリビアはその中のひとつを選んで見せた。



「えーと、そこら辺の草との違いがいまいち分からんのだが……」



「特徴としては、この葉っぱ全部が下を向いていて今にも枯れそうな感じがしないか?

 周りの草は、青々と生い茂っている中なのに、だ」



 言われて見れば、その選んだ草だけが元気がなくて枯れそうだ。

 なるほど、だから"モウダメ草”ってことか。

 これなら何とか他の草と判別出来そうである。



「では、ここからは三人、離れてこいつを採取しよう。

 その方が効率が良い」



 そうオリビアに言われて俺は、急に不安になった。



「なあ、オリビア。この森におっかないモンスターとか出ないよね?」



「うーん、それはどうだろうか。

 森と言っても、これだけ町に近いのだから大した魔物は出ないと思うがな。

 まあ、何かあったら私を呼べばいい。

 なにせ私は、『雷撃の魔剣姫』だからな」



 その雷撃が出せなくなって、今では『半裸の露出狂』と言った方がいいけど今は、黙っておこう。だって、また殴られちゃうからね。



 三人、バラバラに別れて探し始めてから直ぐ、あることに気が付いた。

 この"モウダメ草”、中々に生えてない上、本当に枯れそうな草との違いを判別するのが難しいのだ。

 俺達は、知らず知らずのうちにお互いに目の届く位置から徐々に離れて行った。



 一時間過ぎた頃。

 俺は貧相な収穫しかなかったが、二人からはぐれてしまわないようにそろそろ元の場所へ戻ろうとした時だった。



 ガサリ



 何かが枯葉を踏むような音が鳴り、俺の前の草むらが動いたように見える。

 俺は、恐怖しその場から離れようとしたがひと足遅かった。



 ボヨ~ン



 草むらから俺の方に向かって何かが飛び出して来る。



 高さは俺の膝ぐらい。プルップルンの表皮に包まれた丸みのあるゼリー状でできた歪な球体。



 実物を見るのは初めてだったが、すぐに何かは理解した。

 俺が、直ちにオリビアを呼ぼうと息を吸ったまさにその時、そいつは元気にこう言った。



「はいっ! どーもー! 

 骨もないけど、人気もない! 意外にプリンが大っ嫌い! 

 モリモリモーリ(森)のスライムですっ!!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...