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王子の妃への覚悟
しおりを挟む「ねぇ、サーシャ。僕がもう少し大人になるまで待っていてよ。僕は妃であるサーシャをちゃんと愛すと約束するよ。」
そう言って私の手を取り手の甲にキスを落とす。
不覚にもドキッとしてしまったものの、気恥ずかしさからいつもの調子でそっぽを向く
「わ、私はまだそのつもりはないけど、結婚したければ他の男性に取られる前に早く大人になる事ね。」
「うん。そうする。」
私達はお互い見合わせて笑った。
まだアルヴィン様への気持ちは変わらず慕っているし、クラウスは弟にしか見えないけれど、クラウスとの結婚も悪くないかもしれない。
そう思っていた矢先にアルヴィン様が他国に留学する事が決まった。
お兄様は私がアルヴィン様を慕っている事を知っているからかとても顔色が悪く話してくれなかったが、お兄様付きの執事を問い詰めた。
「サーシャ様・・・どうかお許しください。」
「お願い・・・貴方から聞いたとは口が裂けようとも言わないから、何故アルヴィン様が他国へ行かねばならなくなったのか教えて頂戴? もしかして、私が原因なの?」
お父様が私とアルヴィン様を逢えなくするために?
私はギュッと両手を胸の前で握り執事を見つめる。
「そのような事!絶対にあり得ません! サーシャ様のせいでも、旦那様が他国へ追いやったのでもありません! 全てアルヴィン様の撒かれた種です。」
曰く、アルヴィン様は近々婚約が成立しそうな御令嬢がいらっしゃったけれど、あちらこちらの令嬢に手を出し、なんと御令嬢を2人程妊娠させてしまったそうだ。
宰相様は多額の堕胎費用等を支払い内々に納めたそうだ。
御令嬢の方も傷物になったとあっては結婚に支障があるという事でその申し出をのんだらしい。
何故それをお兄様とお兄様の執事が知っているかと言うと、アルヴィン様がお兄様に相談に来られたそうだ。
しかもあまりにも必死だったからかお兄様の私室に入るなりお兄様に縋りつき大きな声で話始めたらしい。
幸いにもお兄様とお兄様付きの執事である彼以外に人は居らずここだけの話・・・となったそうだ。
「そう・・・だったの・・・」
まさか、アルヴィン様がそのように沢山の令嬢に声をかけて、ましてや妊娠までさせてしまうなんて。
「あの時にアルヴィン様が仰った言葉にトーマス様も・・・私も呆れてしまいました。」
「アルヴィン様がお兄様に何か仰ったの?」
「いえ・・・とにかく、その際にトーマス様はアルヴィン様への信頼を失い、それからはお会いしておりません。 今回の留学は宰相様自ら御子息を国外へ出したのです。」
「そう・・・」
お兄様の信頼を失うなんて、相当な事をアルヴィン様はおっしゃったのね・・・
「ありがとう。私はも自室に戻ります。」
「はい。失礼致します。」
私はくるりと方向を返して自室へと戻った。
コンコンッ
「入れ」
「失礼致します。」
「・・・サーシャになんと言った?」
「アルヴィン様がトーマス様に仰ったあの事以外は・・・」
「そうか・・・ならいい。下がりなさい。」
「はい。」
➖なぁトーマス!!サーシャ嬢!!サーシャ嬢に会わせてくれよ!他の令嬢とは少し遊んだだけなんだ!
俺の本命がサーシャ嬢だって事は、お前もよくわかってるだろ?
俺や俺の家族を王族の親戚にしてくれよ!
そうすれば、俺が次男だからと相手にしない両親に認められる!!なぁ!トーマス!!
サーシャ嬢を俺にくれよ!➖
バンッ
「よくもあんな事が言えたな・・・それに、サーシャは物じゃない!!!」
年月が巡り
私は23歳に。
クラウスは本日18歳になった。
クラウスが18になる迄に何度か毒を盛られたり王位を狙う者に命を狙われたりしていた。
王位とは、そんなにも欲しい手にしたいと思うものなの?
人の命を狙ってまで?
もちろん犯人を見つけ次第極刑に処して来た。
だが、そう言う人達は次々と現れてくる。
何故ならその犯人達はまた別の人間に雇われているから。
国王の側室達だ。
王様は私のお父様とは違い、女性好きで10人の側室がいる。
その側室達には多くの子どもがいる。
側室から産まれた王子王女は王妃の子であるクラウスが疎ましく幾度となく命を狙って来た。
私がその事実に気付いたのはとても遅く18歳頃の事だった。
13歳のクラウスは私に心配を掛けまいとそれまでずっと黙っていたと知った時、今まで以上に護りたいと強く思った。
それと同時に、お父様や王妃様が私をクラウスの妻にしたいと思った気持ちも理解した。
従姉弟である私が正妃となりクラウスが王位を継いで王となれば、側室の子ども達を王宮から追い出す事も出来るし側室もまた離宮へ行く事となる。
現在の王様は女好きではあるが、王妃様には頭が上がらないらしく、幼い頃から私を王妃候補として押し上げたのも王妃様だったそうだ。
私が23歳の誕生日お父様に部屋に呼ばれた
「サーシャ。お前とクラウス王子が結婚すると言う事は、この国を守るという事とクラウス王子を護るという事が一度に出来る事でもあるのだ。」
「お父様・・・」
「私も、お前には好きな相手と生涯を共に歩んで欲しいと思っていた。だが、王子様が産まれ、お前を王妃にしたいとも願った。だが、お前も危険な目に遭う可能性もある。私は浅はかにもお前が危険になる事まで考えずここまで来た。本当に申し訳ないことをした。」
お父様の手はギュッと拳を作り少し震えていた。
「お父様、私は未だにクラウスを男性と思う事はできません。 ですが、クラウスを支えてあげたいと心から思うのです。だから 私はクラウスと結婚しますわ。」
「サーシャ・・・すまない」
「謝らないで、私が選んだ事です。」
お父様はその日珍しく私の前で涙を流した。
私の誕生パーティーにはもちろんクラウスも来た。
クラウスはいつにも増して煌びやかな装飾をした服装に身を包みなんだか緊張した面持ちで私の前に立ち、着ていたスーツの内ポケットから小さな箱を出した。
「サーシャ。僕もあと数ヶ月もすれば18になる。18になったその日に君と夫婦となりたいと思っているんだけれど、君はどうかな?」
その箱を開けると私の大好きな花がモチーフになっている宝石の付いた指輪が入っていた。
「クラウス、もちろんよ。私、貴方の妻となります。」
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