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諦めきれない

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俺は庭掃除の後、一階の窓拭きをする為に雑巾とバケツを持って廊下の窓まできていた。

その時向かいの廊下からローズ先輩が小走りでやってきた。
「コリーン!」
「ローズ先輩。」
少し慌てたような顔のローズ先輩が俺の前で息を切らす。
いつもは走ってはいけない!とキツく怒るのに。とちょっと苦笑いしてしまう。
息を切らしているローズ先輩もめちゃくちゃ可愛く見えるんだからもう重症かも・・・俺

「さっき、階段の清掃してたら・・・ね。 はぁ・・・旦那様が凄い怒ったようなお顔でパティと2階に上がられたの!
しかも2階には上がってはいけないって言って・・・
コリン、パティと庭掃除だったわよね?!」
庭中コリンの事探しちゃった!
そう言って少しヘラっと笑うローズ先輩。
不覚にもドキッする。

「旦那様、どうしちゃったのかしら?」
「俺も・・・よく分からなくて。 とりあえず俺は一階の窓拭きをするように言われちゃって。」
「えぇっ!?一階の窓拭きって・・・すっごく大変じゃない。」
「パティ姉ちゃんじゃなくて、俺が何かしたんですかね。」
俺の事睨んでたし・・・

「うーん。普段温厚な旦那様がねー・・・そうだ!私ちょっと様子見てくるわね。」
「え。でも2階に上がらないようにって言われたんですよね?」
バレたらローズ先輩まで怒られるんじゃ・・

「だから、コソッと行ってくるわ。すぐ帰ってくるし、その後は私が窓拭き手伝ってあげるから!ね?」
後輩を想うからこそ突っ走ってしまう人なんだろうな。
そんな所も、好きで仕方ない。
俺に上目遣いをして両手を合わせて口元に持っていくローズ先輩をみてドキドキする。

「・・・こっそり行ってきてくださいね。 バレちゃダメですよ。」
俺がそう言うとわかった!と言っていつものように姿勢正しく歩いていくローズ先輩。


俺はその間、言いつけ通りに窓を拭く。
思っていたよりも汚れが付いてきたようで、窓拭きに力が入る。
ここに来てから気付いたけど、俺は結構掃除が好きみたいだ。
ピカピカになっていくのは本当に気持ちが良い。
熱中して拭いていると、ローズ先輩がなんだか顔を赤くしてやってきた。


「あ。ローズ先輩。どうしたんですか?顔赤いですよ?」
「ぇ・・・っ、いや!なんでもないわ! 窓拭きやりましょうか!」
そう言ってローズ先輩はバケツに入っていた雑巾を持って上の方の窓を拭こうと梯子に登る。
俺はとっさに梯子を持つ

「あ。危ないんで俺が」
「大丈夫よ!慣れてるから。コリンも他を掃除して。」
そう言って俺に手を離させる。

「あっ!!」
「危ないっ!!!」
ローズ先輩が上の段まで登ろうとした時、お仕着せの裾を踏んでしまったようで足を踏み外した。
俺は慌てて落ちてくるローズ先輩を受け止める。

「痛たっ・・・くない。って!コリン!?ごめんなさい!!」
「・・・ローズ先輩。大丈夫ですか?」
俺は横抱きで受け止めたローズ先輩をおろす。
「怪我してないですか?」
「私は大丈夫・・・コリンは?」
「俺は大丈夫です。」
「ごめんなさい。私ったら。」
先輩は顔を赤くして申し訳なそうにこちらを見る
怪我がなくて本当に良かった・・・

「先輩に怪我がなくて本当に良かったです。上は俺がするんで、ローズ先輩は下の窓拭き。お願いしますね。」
「はぃ・・・。コリン、ありがとう」
先輩は大人しく下の窓拭きをし始める。


「そういえば、旦那様とパティ姉ちゃんどうでしたか?」
拭きながらローズ先輩の方を見ると、耳まで真っ赤になって固まっている。
「ローズ先輩?」
「ぁ・・・、大丈夫そう、だったわ・・・」
「? 大丈夫ですか?顔真っ赤ですよ?」
俺は梯子から降りて先輩のおでこに手を当てる。
「ひゃ・・・っ!!」
ローズ先輩はびっくりしたのかちょっと変な声出してた。
・・・うん。可愛い。
にやけそうなのを必死に押さえて平常心を保ちつつ
「うー・・・ん。熱はないですね。」
そう言って手を離す。
「体調悪くなったなら、休んでいいですよ?俺が任された仕事ですし。」
「だっ・大丈夫よ!一緒にやるわ!」
そう言ってテキパキといつものように働き始めた。

俺はコソコソと横目でローズ先輩を見てさっき抱きとめた事を思い出した。
細くて軽かった。
落ちてきた時にまた香ったあのローズの香り。
ローズ先輩にぴったりだ。
耳まで赤くなった顔も可愛くて抱きしめたくなった。

好きだ、好きだ!!!

もしこれから先。
ローズ先輩が他の人と結婚・・・とかになったら、俺本気で落ち込むかも。
ローズ先輩の隣に居るのは、出来れば俺でありたい。
諦めようと、この気持ちを大切にしようと思っていたけど・・・

「当たって砕けてみようかな・・・」
「・・・?何か言った?」
キョトンとした顔で俺を見るローズ先輩
「い、いえ!!何でもないです!!」
思わず言葉に出ていたみたいで焦った。

玉砕覚悟で、アプローチしてみよう。
男として見てもらえるように。
「ローズ先輩!俺!頑張ります!!」
「? えぇ。頑張って!・・・?」
何が何だか分かってないローズ先輩から、応援してもらったし!
俺、これから頑張ろう!
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