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魔法雑貨店

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僕はロナウド・デュフィ
王立魔法学校に通う15歳で、将来は魔法省に就職したい。
家はごく普通の平民。
だから毎日勉強を頑張ってるんだ!
平民の子どもが魔法省に入るには、魔法学校で優秀な成績を修めた者だけだからね。

魔法省は色んな仕事をするんだけれど、僕がなりたいのは魔法陣研究室のリーダー!
古代の魔法陣からこれから生み出される魔法陣の研究をするところ!
魔法陣いいよね、まず紋様がカッコいいし、古代の文字を書き起こすのが好き。
書くのは時間かかるけど、その代わり強い魔法になる。
その研究室のリーダーになれたら良いのになぁ。



「あ。今日もマーガレットに会いにいこ。」

王都商店街のはずれにある小さなお店。
キュリー魔法雑貨店で働いている見習い魔女のマーガレット。
いつも魔女帽を被り、魔女の紺色ワンピースを着る彼女。
不思議雰囲気を持つマーガレットは、僕が好きな女の子です。

カランカラン
ドアベルの音が中にいる人をこちらに振り向かせる。

「いらっしゃいま、 あ。ロナウド、学校終わったの?」
「マーガレット!ただいま!」
「今日はどんな勉強をしたの?」
「えっとねー」



僕がマーガレットと出会ったのは3年前。
些細なことで母さんと喧嘩して家を飛び出した。
帰るのが嫌になって商店街のはずれにある人の少ない公園でボーッとしていた時。
「ずーっとそこに座ってるけど、どうしたの?」
黒い魔女の帽子を被り首を傾げるマーガレットがそこにいた。
「何か落ち込んでるの?」
「・・・・。」
何も言わない僕にそれ以上聞かずに隣に座ったマーガレット。

「もう夕方ね。キミのお母さん心配してないかしら?」
「・・・絶対してない。」
「あら、どうして?」
「・・・・・・・」
「ケンカしたの?」
「!?」
「うふふ。なんで知ってるのって顔してる。」
くすくすと笑うマーガレットは夕陽に当たって綺麗だった。

「キミ、顔に出るんだもん。面白い」
「キミじゃない。 ロナウド。」
「ロナウドって言うのね! 私はマーガレットよ。」
にっこりと笑うマーガレット。
その笑顔に自然に惹きつけられた。
そのあとマーガレットに連れられて、僕が座っていた公園のベンチからすぐの魔女キュリーのお店に行った。

・・・キュリー魔法雑貨店。


カランカランッ
「お婆ちゃん!連れてきたよ、ロナウドだって!」
「おやおや、公園の坊や。やっと動いたんだね。てっきり氷魔法で固められてるのかと思ったよ。」
「やだわお婆ちゃん、ロナウドはお母さんとケンカして落ち込んでたのよ。」
「マーガレットがずっとそわそわと外を眺めてるからね。 早く見に行っておやりって言ったんだよ。」

魔女キュリーはマーガレットと同じ魔女の帽子を被りゆらゆらと揺れる椅子に座り編み物をしながら話す。
ここの窓からずっと、見られてたのか。

「もう!そんな事ロナウドに言わないでよ!」
マーガレットは、恥ずかしいじゃない!と赤くなった頬をプクッと膨らませてる。

そして、僕の方をみて慌てて頬を元に戻し
「ホットミルク作ってあげるから待ってて!」
と言って奥に入って行った。



「ロナウド・・・だったかな?」
僕を見ずに編み物を進めながら話しかけてきた。
「はい。」
「母親とケンカしたんだって?」
「母さんが、僕に勉強しろ!勉強しろって言うんです、、僕は、努力してるのに。」
今日のテストの点が思ってたよりも悪かった。
母さんは僕のテストが悪かったのを酷く怒った。
僕は僕なりに努力したし、それなりの成績を取っているつもりだけど。
母さんは満足しないみたいだ。

「ふん。・・・期待されるプレッシャーが仇となったね。 でもね、親ってのはね子どもが大人になった時に、やりたい事が出来るように、好きなものが選べるようにと思うとついつい口から文句が出てしまうんだよ。」
許してやりな。と言う魔女キュリー。

「そんなの、僕にはわからないよ」
「まぁ、そうだろうね。 わかるはずないよ。」
「え?」
魔女キュリーの言う言葉に首を傾げる

「親の気持ちなんてのは分からなくて良いんだよ。そんなもんは親にならなきゃわからんよ。 ロナウド、あんたは今まで通りにすればいいんだ。 テストは次に頑張りな。」
そう言われると、少し気持ちが楽になった気がする。

「あの、ありがとう、ございます。」
「お婆ちゃん、口は悪いけど、なかなかいい人なのよ!」
マグカップを持って奥からマーガレットが出てきた。
「なかなかいい人とはどう言う事だい!マーガレット!」
「えー。そのままの事を言ったまでだよ。」

ニコニコと楽しそうに言うマーガレットの笑顔にドキッとした。
こちらを向くマーガレットは僕に、はい。とマグカップをくれた。
「見習い魔女マーガレットが入れた魔法のスペシャルホットミルクよ!」
「魔法・・・」
ふーふーと冷まして口に入れるとホワンと温かい優しい味のミルクが入ってきた。
「美味しい。」
「でしょ!心を落ち着ける魔法が入ってるのよ。」
ハチミツって言うね!とペロッと舌を出すマーガレット。
その姿が可愛くて、心に別の甘い暖かい気持ちが湧き上がった。
気付かれないようにミルクを飲んだ。



その日を境に僕はここに通うようになった。
それから3年の月日が経った。
マーガレットは今年学校を卒業したので、忙しいお父さんとお母さんのかわりに育ててくれたマーガレットのお婆さんの魔女キュリーと一緒にこの雑貨屋さんをしている。
魔女の家系で魔力が強いマーガレットのお母さんは魔法省で働いているそうだ。

「マーガレットは魔力強くないの?」
「私は全然!勉強も苦手だし魔法も大したものが出来ないの。」
「魔法陣とか使えば?」
魔法陣は魔力が弱くても呪文を唱える魔法より効果がある。

「魔法陣書くのめんどくさいしねー」
「うーん。そっかー。」
「それに!別に魔力弱くても雑貨屋さんは出来るからねー。」
「まぁね。」

マーガレットとほのぼのと話す。
この時間は本当に好き。
学校から家に帰るだけだった僕にとってこのお店は癒しの場所だ。

家でやっていた宿題もここでやると捗る。
「そういえば、この間のテストどうだった?」
「実はね、3教科ほぼ満点だった!」
「えー!すごい!!」
「ここで勉強すると不思議と捗るんだよね!」
「そりゃ、私のホットミルクのおかげね!」
「えー、ほんとにぃー?」
「ほんとよー!だって私がロナウドが集中出来る呪文を唱えてるんだもん!」
胸をはって言うマーガレットに笑った。
「ふふ、そうだね。そう言う事にするよ。」
「信じてないなー」

2人で笑い合う。
大好きな時間。

「ねぇ、ロナウド。」
「何?」
「魔法陣でする魔法が好きなんでしょ?」
「うん!調べるのも好きだよ。」
「言葉で唱える魔法は?」
「詠唱を早く言えなくてさ。」
いつも噛んじゃうんだよね。
「ゆっくりの言葉でもね、かけられる魔法があるんだよ。」
「え?」
「私が今からかけてあげるから目を瞑って」
「うん!」

目をギュッと瞑ると、マーガレットの手が僕の手を包む
「できる、絶対できる。ロナウドはできる」


チュッ



「・・っえ、ええ!!い、今!口に!!!」
顔が熱くなる!

マーガレットも頬が赤くなってる
「うふふ。私のとっておきの魔法をかけてあげたから、これできっとなんでも出来る様になるわ。 勉強も頑張ってね。ロナウド。」


そのあと、マーガレットが配達があるからと言ったので僕は自宅に帰った。
マーガレットとキスしちゃった。
思い出してはドキドキと心臓がうるさい。
明日から、どんな顔して会えばいいんだ!

悶々としながらも翌日も学校へ行った。
授業も終わりいつものように店行った。

「・・・・え。 閉店。」

店の前に着くと扉の前に貼り紙があった。
「キュリー魔法雑貨店は、魔女キュリーの体調が思わしくない為、閉店とさせて頂います。 長きに渡りご利用下さいました皆様に感謝と御礼を申し上げます。」


「そんな。 昨日まで何事もなくやってたのに。 なんで・・・」
僕は店の前で座り込んだ。
すると、店に通うようになってから知り合いになった近所のおばさんが家から出てきた。

「あら、ロナウド君。どうしたの?」
「おばさん!!お店が!閉店って!!」
「あら聞いてなかったの?」
「う、ん。」
「魔女キュリーがね、ここ最近体調不良が続いて入院したのよ。だからマーガレットだけではまだお店回せないから閉めるって。」
「そんな・・・なんで、言ってくれなかったんだよーーー!!!」
目の前が真っ暗になるってこんな感じなんだね。
初めて知ったよ。

涙がボタボタと止まらない。
おばちゃんは
「さよならは言いにくかったんだよ。」と慰めてくれたけど。

そんなのないよ。

「マーガレット!!マーガレットー!!!」







あれから4年が経った。
僕は必死で勉強して、学校を首席で卒業した。
あんなに苦手だった呪文の詠唱もあの後から苦もなく出来るようになった。
おかげで魔法省へ入る事になり、卒業から1年経った今では、希望だった魔法陣研究室への配属となった。

あの後マーガレットの両親に魔法省で会う機会があった。
マーガレットは魔女キュリーの看病の為にこの国よりも医療が進んでいる隣国へ、行ったと聞いた。

今でも時々雑貨店があった場所にくる。
今日もマーガレットにもしかしたら会えるかもと思って来た。
雑貨店は、まだ残ってるけど長いこと使っていないからか、お店の看板は剥がれてしまっている。



マーガレットは僕の事が好きだったんだろうか。
それとも、思い出を残してくれる為のキスだったんだろうか。
僕は、あの後にマーガレットが好きだと気付いたんだ。
「好きって気づくの遅すぎたよな。」
「ほんっと、遅いよ!」

後ろからずっと聞きたかった声が聞こえた

「マー、ガレット」
「私なんて、初めて会った時には好きって気付いたのに!」
僕にだんだん近づいてくるマーガレットに大切な気持ちがどんどんと大きくなっていく。

「久しぶり、ロナウド。」
「隣国に行ったんじゃ・・・」
「お婆ちゃんの治療が終わったの。もうピンピンしてるよ! ・・だから帰って来たんだよ。」

来週からまたお店する事になったんだーと話すマーガレット。
「なんで、・・・なんで何も言わずに言っちゃったんだよ!」
「・・・・・。」
「僕、もう2度とマーガレットに会えないんじゃないかって、それで」
「さよならしたら、」
マーガレットが、僕の声を遮る
「さよならしたら、もう会えなくなるかもしれないでしょ?」

だから、いつも通りにしたんだよ。
と、笑うマーガレット。

「マーガレット」
僕がマーガレットを抱きしめる。
「・・いつの間にか、背。伸びたね。」
「うん」
「声も姿も、大人になった。」
「マーガレットは僕より小さくなったね」
「ロナウドが大きくなったんでしょ」

見つめあって2人で笑い合う。

「僕、マーガレットに魔法かけていいかな。」 
「・・いいよ」

「ずっとマーガレットが好きだよ。一生側にいて欲しい。」
「はい、ずっとロナウドの側にいます。」

僕たちに永遠の魔法がかかる。
魔法陣も長くて早い詠唱も何もいらない。
言葉の魔法。
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