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王妃様のご実家
しおりを挟む「そろそろ着くわね。」
王妃様は馬車の窓からそう言ってしばらく経つと馬車が止まった。
王妃様から先に馬車を降りられ、私はその後に続いて降りる。
「わぁ・・・」
そこは王都や活気に満ちた場所ではなく、大きなお屋敷の敷地内には沢山の自然が溢れていた。
「素敵な所でしょう?」
「はい・・・とっても素敵です・・・」
まるで自分がいたあの森のような雰囲気に、どこか懐かしさすら覚える。
まだ、あの森から離れてそんなに経っていないというのに・・・
ボーッと景色を眺めていると王妃様が声をかけてくださる。
「ねぇ、アリス。帰るまでに屋敷の裏の山にも入りましょうね? 私のお気に入りの場所へ案内するわ。」
「はい!」
「じゃあ一先ずアリスがこの屋敷にいる間の部屋へ案内するわね。」
そう言って、王妃様は私の手を取り屋敷の中に案内してくれた。
「「「お帰りなさいませ!!!」」」
「ただいま。」
沢山の執事や侍女がお出迎え。
この雰囲気はアーベライン邸でもよく見る光景だ。
「・・・クロヴィス様・・・」
屋敷の事を考えたら、フッとクロヴィス様が浮かんできた。
「あら、アリス。早速アーベライン公爵が恋しいのかしら?良いわねぇ新婚というのは。」
うふふっと揶揄うように笑う王妃様のお顔を見て私の顔が暑くなる
「い、いえっ!そんな事は」
「うふふ、可愛いわぁ」
そう言ってニコニコしている王妃様と立っていると、執事さんが来て2階に上がって1番手前のお部屋に案内してくれた。
「このお屋敷でお過ごしの間はこちらのお部屋をお使い下さい。」
「わぁ・・・!」
その部屋は木の素材を活かした温かみのある家具が多く使われていて、まるであの小屋に帰って来たかのような雰囲気があった。
「とっても素敵なお部屋でしょう?我が家は全てこのような家具を使っているのよ。」
「そうなんですか?!」
確かに玄関ホールも素朴な色合いで纏められていたし、このお部屋も草木で染めたような優しい色合いのカーテンや絨毯が使われている。
「私の実家は草木染めの商店を持っているし、何より代々自然と共存するようなこの場所を中心とした領地だから、絢爛豪華な家具や服はあまり好まないの。」
そう話す王妃様になんだか嬉しくなった。
「以前公爵との出会いのお話を聞かせてくれた時に貴女とお母様の小屋の話をしてくれたわよね?アリスはこのお部屋は好きかしら?」
「覚えていてくださったんですか?」
「もちろんよ。」
「嬉しいです!・・・このお部屋は私と母の過ごしたあの森の小屋のようで、とても懐かしい雰囲気です。」
思い出されるお母様との懐かしい思い出に、まるでそこにお母様が居るかのような気持ちになる。
『アリス・・・アリス・・・』
そう呼ばれているような・・・
「アリス!アリス!!」
「はっ!す、すみません。王妃様。」
「うふふ、良いのよ? ねぇ?お茶にしましょう? アリスとお母様のお話もっと聞きたいわ。」
「はい!ぜひ。」
私は王妃様のご実家で作っているドライフルーツのお茶を頂きながら、王妃様にお母様の話をした。
王妃様は嫌な顔1つせずに、聞き時折り声を出して笑ってくれた。
こんな風に、人の話を聞く事が出来ると言うのはやはり王妃という地位に居られる方だからだろうか・・・
「そう言えば、アリスは気になる?私と王様の馴れ初め。」
「え、・・・はい。気になります。」
「こんな田舎に住む貴族令嬢が王様と結婚して王妃になったのはね、実は政略結婚ではないのよ?」
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