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2ヶ月後

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クロヴィス様が王妃様の実家に私が招待されていると話してくださった2ヶ月前。
あの日はすごく機嫌が悪く帰っていらして、執事や侍女達が怯えて大変だった。

お食事の際に話を聞けば王妃様が国軍訓練の際に私を王妃様のご実家に招待してくださると言う話だった。



「アリスはどう思う?」
「それは、・・・私のような貴族が王妃様のせっかくのご招待をお断りする事は不敬ではないかと・・・」
「・・・そうだな。」
はぁぁ・・・と深くため息をつかれる。

「クロヴィス様は国軍訓練のお仕事でお忙しいのでしょう? どうか私の事は気にせずに訓練に力を入れてください。」
「そうなんだが・・・今回は王都での訓練だから出来るだけ屋敷に戻って来ようと思っていた。」

カシャンッ
クロヴィス様の空になった食器を片付けて、デザートを出していたハリーがフォークを床に落とした。
「失礼致しました。新しい物と取り替えてまいります。」
「ああ、頼む。」

落としたフォークをスッと拾い上げ何事もなかったかのように後片付けをして新しいフォークを持ってくる。



「それで、どこまで話したか・・・あぁ。俺が屋敷に帰ってくると言う話だったな。」
「ですが、本来は帰って来られない程大変なお仕事なんですよね?」
「まぁ・・・」
「ならばクロヴィス様は戻って来ないでお仕事に力を入れてください! 私は王妃様のご実家に行って参ります。」
「アリス・・・」
「私もクロヴィス様が帰ってこないのは寂しいです。 侍女や執事のみんなは居てくれますが、王妃様のお誘いをお断りするわけにもいきませんし。」
「それは・・・」
「ですから心配なさらないで下さい!私は王妃様のご実家に行きます!」
「・・・わかった。」


・・・と言うことがあり、今日がその出発の日。
この日が来るまで本当に大変だった。
疲れて帰って来ている筈なのに毎夜のように求められ、私は最近朝のお送りに参加が出来ていない。
日に日に今日が近付くにつれてクロヴィス様のため息も増え、更には最近毎日
「吐き気はないか? 体調は悪くないか?」
そう聞かれる。
きっと少しでも体調が悪かったらお断りが出来るからかと思うと、何だかそんなに離れがたいと思って下さっているんだとわかって、嬉しくも感じた。



王妃様の馬車に乗る時も、わざわざ来てくださって、何度も何度も道中の心配をして下さった。
一緒に行くヤヤやリリーにまで、私の事を気遣うようにと繰り返し仰っていて、なんだかとっても嬉しくてついつい笑ってしまった。



今は王妃様のご実家まで行く馬車の中で王妃様が興奮気味にお話ししている。
「本当に、あれがアーベライン公爵?!私驚き過ぎて倒れるかと思いましたわ!」

「私にはいつもあんな風で、王妃様や侍女達から聞くクロヴィス様の方が想像つかないです。」
「まぁまぁ!新婚さんは良いわねぇ。だけれどこれから1週間はアリスは私のものですから、この1週間の間にアーベライン公爵がヤキモチを焼くくらい仲良くなりましょうね。」
「はい!」


そう言って王妃様と笑い合った。
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