【R-18】冷徹な公爵が迎えた隣国の令嬢※現在不定期連載

みるく

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3日後

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あの日、身体を重ねてから3日程経った。
クロヴィス様のお仕事が始まった。


「クロヴィス様、いってらっしゃいませ。」
「今日は早く帰宅する。必ず帰るから夕食は待っていてくれると嬉しい。」
「もちろんです。クロヴィス様のご帰宅をお待ちしています。」

朝起きてから3回は繰り返しているこの会話。
今は侍女のみんなと玄関までお送りしている。
クロヴィス様はなかなか私の手を離してくださらず、ハリーがとても困っている。

「あ、あの・・・ハリーも困ってますので、・・・そろそろ」
「あぁ。・・・もう少し。」
ぎゅーっと握る手をクロヴィス様が口元まで持っていき私の手の甲にキスを落とす
「ぁ、あの。・・・きゃっ!」
そのままグイッとクロヴィス様に引き寄せられぎゅーっと抱きしめられる。
「ク!クロヴィス様!!」
「アリスの補充だ。・・・行ってくる」
耳元でそう言って次に私のおでこにキスをしてサッと玄関を出て行かれた。


「はぁ~。こ、これもしも毎日とかだったら私持たなさそう。」
熱い顔をパタパタと仰ぐ

「うふふ。旦那様は本当に奥様を愛されているんですね。」
「あんなに熱々なお見送り私達初めて見ました。」
「羨ましい限りでございます。」
ヤヤやリリー達が口々に話す。
少し冷めてきた顔がまた熱を帯び始める。

「も、もう!そんな恥ずかしいわ。」
両頬を両手で包んで部屋に戻る。

部屋に入ったらすぐにお茶とお茶菓子が出てきてそれを頂く。
ここに来て1週間程・・・初めはこんなおもてなしをされて心底驚いて、侍女達の手伝いをしようとして侍女長に止められた。
それをみて肩を震わせて笑ったクロヴィス様を見て、侍女達が驚く・・・その繰り返しだった。

流石にもう、お手伝いはしない。
「ふぅ・・・、クロヴィス様がお仕事に行かれたら、たっぷりと時間があるのね。」
朝はクロヴィス様を起こすと抱きしめられてまたベッドに引き摺り込まれる
抱きしめられて出るのがとても大変で、その後一緒に食事。
お庭に出てお花を愛でたり、市場まで連れて行ってくださったりととても楽しかった。

そう言えば、市場では私を連れて歩くクロヴィス様を見て驚く人々がとても多かった。
何故あんなに驚いていたのか・・・
「ねぇ、先日旦那様と市場に行った時に、みんなとても驚いた顔をしていたのだけれど、どうしてだかわかる?」

「それは・・・」
リリーが少し言いにくそうな顔をして話し出す。

「私から申し上げる事は憚られると思うのですが、おそらくこれからも奥様はそのような目に晒されてしまうかもしれません。」
「と、言うと?」
「旦那様は奥様と出会うまで、とてもお寂しい生活をしておられたので・・・」
リリーはそれ以上は言いにくいようで何も言わなかった。
私もそれ以上は聞かないことにした。

「でも!奥様と出会われてからの旦那様は、本当に幸せそうです!」
こちらが恥ずかしくなる位に!
なんて言われてしまい、照れてしまった。
「そ、そんな・・・。私もクロヴィス様と出会ってから本当に幸せだから、クロヴィス様もそうなら嬉しいわ。」

リリーとヤヤと笑い合い、今日は刺繍をする事に決めた。
お洋服の繕いやお直しはしていたけれど、刺繍は初めてで、リリーとヤヤに教えてもらいながら進めていった。


「ふぅ・・・なかなか難しいのね。ハンカチに小さく刺繍するだけでも時間がかかってしまうわ。」
「いいえ!奥様とってもお上手ですよ。」
「えぇ、奥様はお小さい頃から本当に何でも器用でしたから、すぐにもっとお上手になりますよ。」
「リリーもヤヤもありがとう。」

上手に出来るようになったら、クロヴィス様のハンカチにも刺繍が出来る様になるかしら。
「うふふ。奥様、あっという間に旦那様の物にも刺繍が出来るようになりますね。」
ヤヤが笑いながら言うのでちょっとびっくりした。
「えっ、私・・・声に出してたかしら?」
「いえいえ、声には出てませんでしたけど、何となく奥様のお顔があまりにも嬉しそうに笑うもんですから、きっと旦那様の事を考えていらっしゃるんだろうな、と。」
「まぁ!本当にお二人は相思相愛ですね!羨ましいです!」

「そ、そんな。」
顔が熱くなる。
私、今日は朝から照れてばっかりだわ。

「まぁ!もうお昼ですね。奥様お食事はどうされますか?軽食にいたしましょうか?」
リリーが時計をみてそう聞いてくる。

私があまり食べないから、とクロヴィス様はキチンと3食。そしておやつまでいただくようにとおっしゃっていたけれど、長い間食事は1日1食。
そんな日は必ずと言って良いほど、侍女がゆで卵とかを持ってきてくれたけれど、パンとスープの日は2食だったりで正直そんなに食べられないし、食べると胃もたれしてしまう。

そんな私を気遣って、リリーは私だけ軽食だったり朝と夜も少なめに出してくれる。
「そうね・・・でも、まだ朝ごはんがお腹に残ってるのかそんなにお腹空いてないの。お茶とお茶菓子を頂くわ。」
「かしこまりました。」
では、準備致しますね。
そう言ってリリーは下がっていった。

まだお昼・・・
クロヴィス様のご帰宅が待ち遠しい・・・
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