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一年生編 第一章 オルエイ入学
第二十六話 朝の指導
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次の日の朝、俺は早起きして、エイリア先生に会いに体育館へと向かった。
一昨日の約束の為だ。
わざわざ俺に、剣技の指導をしてくれるようだ。
時刻は朝六時。
まだ春なのもあって若干肌寒い。
ちなみに俺の全身は筋肉痛で悲鳴をあげていた。
あんなに無茶な戦闘訓練を受けたのだから当たり前だ。
走りで足、剣術で上半身が損傷。
正直歩くだけでもまあまあ辛い。
だがそれでも、エイリア先生の指導を受けられるならどうってことなかった。
体育館裏へと着くと、もう先生は来ていた。
ひとまず俺は声を掛ける。
「すみません、遅かったですか?」
「いや、ちょうどいいくらいだ。正確な時間を伝えるのを忘れていたのでな、少し早めに来ていた。次からもこのくらいの時間で来てくれればいい。」
「はい。」
そう言われて俺は頷いた。
すると、彼女は薄い笑みを浮かべてから、腰から剣を抜いた。
そして、俺に向ける。
「では、早速始めよう。剣技は実戦の中で学ぶのが一番効率がよい。私は攻撃しないから、受けの事は考えるな。好きにかかってこい。」
俺はもう一度頷いてから、即座に剣を抜いた。
一度、バックステップをして距離を取る。
剣をエイリア先生に向け、腰を落として構える。
何気に初めての実剣勝負だ。
「いきます。」
そう宣言して、俺は強く踏み出した。
思いっきり切り込みにかかる。
木刀ではなく実剣なので相手が怪我するリスクを考えられるが、相手が実力者なので特に気にする必要はない。
カキン、と剣と剣が打ち合う音が鳴り響く。
完璧に防がれた。
向こうから仕掛けたわけじゃないのに、重い衝撃が右腕に走る。
なんつう力だ。
しかし臆する事無く、俺は追撃に走る。
左から一撃。
止められたら右から一壁。
上からとフェイントをかけてもう一度右から一撃。
やはりはじかれた。
「腰が高い、もっと落せ。」
「はいッ!」
先生に言われた通りに動きを修正して、再び切りかかる。
下から、より柔軟に。
より速く、より強く。
はじかれた。
「踏み込みが弱い! 全体重をかけるくらい強く踏み込め!」
「はいッ!」
いつも力負けする原因はそれか。
試しに思いっ切り踏み込みながら切りかかる。
カンッ! とはじかれると同時に衝撃で、俺は少し後ろへと吹き飛ばされた。
「腰がまた高くなってるぞ! 落とす癖を付けろ!」
「はい! すみません!」
正直全身が痛くて辛い。
昨日のスパルタ訓練のせいだ。
だが、甘えていられない。
俺は痛みを我慢して彼女のもとへと再び突き進んだ。
思いっきり踏み込んで、腰を低く、持てる力を使い、自分にできる最大の一撃を放つ。
ガキン! と先程より重厚な音が鳴った。
「いいぞ! その調子だ、今のをもう一度!」
今日1番上手く行った一撃だった。
入ったわけではないが、何かがはまった気持ちよさがある。
この感覚だ。
これをいつでも引き出せれば。
もう一度。
その後、俺は同じ一撃を引き出す為に何度も彼女に斬りかかった。
朝日が眩しくなる。
午前8時を超えた頃。
俺はバテて地面に倒れ込んだ。
昨日の疲れも相まって、もう限界だった。
そんな様子の俺を見て、先生は薄い笑みを浮かべる。
「しっかり鍛錬しているだけあって、悪くないな。指摘した部分もすぐに直せている。」
褒められた。
エイリア先生に認められて、少し嬉しくなる。
しかし、その後思いっきり落とされた。
「だが、まず体力が無さすぎる。30分でバテるようじゃ話にならん。魔王なら数時間戦い続ける事だってあるんだ。」
「…はい、そうですね。」
「それと、まだ腰が高い。戦闘において力は大事だ。腰が高くては力が出ない、もっと落とせ。」
「…善処します。」
色々言われてしまった。
そりゃ、たった1時間で完璧にできるなんて、微塵も思っていない。
もっと時間をとって頑張らないと。
先生は袖を捲って、腕時計を見た。
「じゃ、そろそろ私は戻ろうと思う。昨日今日で疲れが溜まり始めてると思うが、頑張れよ。オルエイでは疲弊している状態が日常だ。」
そう言い残して、彼女は校舎の方へと歩いていく。
俺は、そんなエイリア先生の背中を見ながら1人反省会を開いていた。
何が悪かったか。
どうすれば、先生のあの守備を突破できるのか。
次はもっとやれる。
俺は上半身だけでも起き上がらせた。
そして、手に握っている剣をより強く握りしめた。
少しでも近付けるように頑張ろう。
俺は自分の心に言い聞かせた。
☆★☆★☆★
20分後、俺はクラスの教室へと向かった。
普通に歩いていると、腹の音がなる。
朝ごはんを食べていない為、お腹が減っているのだ。
だが、仕方ない。
他の人は朝7時頃に食べるが、俺は6時にはエイリア先生の元にいたので、食べる機会など無いのだ。
週3でこれかぁ。ちょっとキツイな。
だがまぁ、こればっかりは我慢するしかない。昼ごはんは食べられるのだから、それまで耐えればいいだけの話だ。
教室に入ると、ナルキ達はもう来ていた。
俺の席付近で、ナルキ、シア、エリーゼの3人で固まって雑談しているようだった。
すぐ前にヨロもいるが、彼は会話には入っていないようだ。難しそうな本を一人で黙々と読んでいた。
「おはよう。」
俺は雑談している三人に声をかけた。
すると、機嫌よく返事を返してくれる。
「おはようエスタ!」
「おはよう!」
「エスタ! 結婚しよ!」
一人婚活女子が混じっているが、無視だ。
「皆もう集まってるのな。」
俺がそう言うと、ナルキが口を尖らせ始めた。
「エスタ、どこに行ってたんだよ。朝起きたらいないからびっくりしたじゃん。」
「どこ行ってたって…修行?」
「「「うわ~」」」
三人がドン引きして一歩後ずさる。
「え? なんだその反応?」
「エスタ君、よく昨日の今日で修行とか言ってられるね。昨日の疲れは? あたしなんか、全身筋肉痛で動けないんだけど。」
エリーゼがジト目を向けてくる。
「いや、俺だって疲れてるわ。あんな無茶苦茶な指導受けて、平気なわけないだろ。」
「説得力がなさすぎる!」
鋭い突っ込みだった。
横からナルキが余計な事を言い始める。
「エリーゼ、何言っても無駄だよ。こいつ修行バカだから。」
「おいこらナルキ、勝手に俺に変なキャラつけるな。」
「なに? 事実じゃん。」
「事実か? 大分不服なんだが。そもそも俺はバカじゃないだろ。」
修行ばっかりしてるっていうのは、まあわかる。
オルエイに来てからは、ずっと剣を振ってたからな。
だが、別に修行バカかと言われれば、違う気がする。別にバカって言われるほど日中修行の事考えてるわけでもあるまいし。
しかし、俺が抗議してみるも、あまり意味はなかったようだった。
「いやエスタ、普通、魔力が枯渇した数時間後に魔力操作の練習なんかしないから。肉離れしてる時に筋トレしているようなものでしょ。」
「…そうか? 別にそこまでじゃないような気がするが…」
ナルキは夜にした魔装の練習の事を言っているのだろう。
魔力切れは、別に怪我ではない。
確かに魔力を枯渇させて半日経たないうちから魔力を使うと、気持ち悪さがある。
とても言語化しずらい嫌な感覚だ。
だからと言って、別に耐えられない程でもないと俺は思っている。
「まあ、いいや。それにしても、あの戦闘訓練、今日もやるのか?」
「朝、先輩に聞いてみたんだけど、あれ日課らしいよ。」
「えぇ、あれが日課ってまじか。」
「ほんとに、ね…」
ナルキが暗い表情を浮かべた。
昨日の様子を見るに、彼は体力がない方だろう。身体能力もお世辞にも高いとは言えない。
それなのにあんなスパルタみたいな訓練受けさせらるなんて、そりゃこんな顔にもなるわ。
あの地獄みたいな一日が、今日も始まるのか。
そう考えると、なんだか憂鬱になってきた。
一昨日の約束の為だ。
わざわざ俺に、剣技の指導をしてくれるようだ。
時刻は朝六時。
まだ春なのもあって若干肌寒い。
ちなみに俺の全身は筋肉痛で悲鳴をあげていた。
あんなに無茶な戦闘訓練を受けたのだから当たり前だ。
走りで足、剣術で上半身が損傷。
正直歩くだけでもまあまあ辛い。
だがそれでも、エイリア先生の指導を受けられるならどうってことなかった。
体育館裏へと着くと、もう先生は来ていた。
ひとまず俺は声を掛ける。
「すみません、遅かったですか?」
「いや、ちょうどいいくらいだ。正確な時間を伝えるのを忘れていたのでな、少し早めに来ていた。次からもこのくらいの時間で来てくれればいい。」
「はい。」
そう言われて俺は頷いた。
すると、彼女は薄い笑みを浮かべてから、腰から剣を抜いた。
そして、俺に向ける。
「では、早速始めよう。剣技は実戦の中で学ぶのが一番効率がよい。私は攻撃しないから、受けの事は考えるな。好きにかかってこい。」
俺はもう一度頷いてから、即座に剣を抜いた。
一度、バックステップをして距離を取る。
剣をエイリア先生に向け、腰を落として構える。
何気に初めての実剣勝負だ。
「いきます。」
そう宣言して、俺は強く踏み出した。
思いっきり切り込みにかかる。
木刀ではなく実剣なので相手が怪我するリスクを考えられるが、相手が実力者なので特に気にする必要はない。
カキン、と剣と剣が打ち合う音が鳴り響く。
完璧に防がれた。
向こうから仕掛けたわけじゃないのに、重い衝撃が右腕に走る。
なんつう力だ。
しかし臆する事無く、俺は追撃に走る。
左から一撃。
止められたら右から一壁。
上からとフェイントをかけてもう一度右から一撃。
やはりはじかれた。
「腰が高い、もっと落せ。」
「はいッ!」
先生に言われた通りに動きを修正して、再び切りかかる。
下から、より柔軟に。
より速く、より強く。
はじかれた。
「踏み込みが弱い! 全体重をかけるくらい強く踏み込め!」
「はいッ!」
いつも力負けする原因はそれか。
試しに思いっ切り踏み込みながら切りかかる。
カンッ! とはじかれると同時に衝撃で、俺は少し後ろへと吹き飛ばされた。
「腰がまた高くなってるぞ! 落とす癖を付けろ!」
「はい! すみません!」
正直全身が痛くて辛い。
昨日のスパルタ訓練のせいだ。
だが、甘えていられない。
俺は痛みを我慢して彼女のもとへと再び突き進んだ。
思いっきり踏み込んで、腰を低く、持てる力を使い、自分にできる最大の一撃を放つ。
ガキン! と先程より重厚な音が鳴った。
「いいぞ! その調子だ、今のをもう一度!」
今日1番上手く行った一撃だった。
入ったわけではないが、何かがはまった気持ちよさがある。
この感覚だ。
これをいつでも引き出せれば。
もう一度。
その後、俺は同じ一撃を引き出す為に何度も彼女に斬りかかった。
朝日が眩しくなる。
午前8時を超えた頃。
俺はバテて地面に倒れ込んだ。
昨日の疲れも相まって、もう限界だった。
そんな様子の俺を見て、先生は薄い笑みを浮かべる。
「しっかり鍛錬しているだけあって、悪くないな。指摘した部分もすぐに直せている。」
褒められた。
エイリア先生に認められて、少し嬉しくなる。
しかし、その後思いっきり落とされた。
「だが、まず体力が無さすぎる。30分でバテるようじゃ話にならん。魔王なら数時間戦い続ける事だってあるんだ。」
「…はい、そうですね。」
「それと、まだ腰が高い。戦闘において力は大事だ。腰が高くては力が出ない、もっと落とせ。」
「…善処します。」
色々言われてしまった。
そりゃ、たった1時間で完璧にできるなんて、微塵も思っていない。
もっと時間をとって頑張らないと。
先生は袖を捲って、腕時計を見た。
「じゃ、そろそろ私は戻ろうと思う。昨日今日で疲れが溜まり始めてると思うが、頑張れよ。オルエイでは疲弊している状態が日常だ。」
そう言い残して、彼女は校舎の方へと歩いていく。
俺は、そんなエイリア先生の背中を見ながら1人反省会を開いていた。
何が悪かったか。
どうすれば、先生のあの守備を突破できるのか。
次はもっとやれる。
俺は上半身だけでも起き上がらせた。
そして、手に握っている剣をより強く握りしめた。
少しでも近付けるように頑張ろう。
俺は自分の心に言い聞かせた。
☆★☆★☆★
20分後、俺はクラスの教室へと向かった。
普通に歩いていると、腹の音がなる。
朝ごはんを食べていない為、お腹が減っているのだ。
だが、仕方ない。
他の人は朝7時頃に食べるが、俺は6時にはエイリア先生の元にいたので、食べる機会など無いのだ。
週3でこれかぁ。ちょっとキツイな。
だがまぁ、こればっかりは我慢するしかない。昼ごはんは食べられるのだから、それまで耐えればいいだけの話だ。
教室に入ると、ナルキ達はもう来ていた。
俺の席付近で、ナルキ、シア、エリーゼの3人で固まって雑談しているようだった。
すぐ前にヨロもいるが、彼は会話には入っていないようだ。難しそうな本を一人で黙々と読んでいた。
「おはよう。」
俺は雑談している三人に声をかけた。
すると、機嫌よく返事を返してくれる。
「おはようエスタ!」
「おはよう!」
「エスタ! 結婚しよ!」
一人婚活女子が混じっているが、無視だ。
「皆もう集まってるのな。」
俺がそう言うと、ナルキが口を尖らせ始めた。
「エスタ、どこに行ってたんだよ。朝起きたらいないからびっくりしたじゃん。」
「どこ行ってたって…修行?」
「「「うわ~」」」
三人がドン引きして一歩後ずさる。
「え? なんだその反応?」
「エスタ君、よく昨日の今日で修行とか言ってられるね。昨日の疲れは? あたしなんか、全身筋肉痛で動けないんだけど。」
エリーゼがジト目を向けてくる。
「いや、俺だって疲れてるわ。あんな無茶苦茶な指導受けて、平気なわけないだろ。」
「説得力がなさすぎる!」
鋭い突っ込みだった。
横からナルキが余計な事を言い始める。
「エリーゼ、何言っても無駄だよ。こいつ修行バカだから。」
「おいこらナルキ、勝手に俺に変なキャラつけるな。」
「なに? 事実じゃん。」
「事実か? 大分不服なんだが。そもそも俺はバカじゃないだろ。」
修行ばっかりしてるっていうのは、まあわかる。
オルエイに来てからは、ずっと剣を振ってたからな。
だが、別に修行バカかと言われれば、違う気がする。別にバカって言われるほど日中修行の事考えてるわけでもあるまいし。
しかし、俺が抗議してみるも、あまり意味はなかったようだった。
「いやエスタ、普通、魔力が枯渇した数時間後に魔力操作の練習なんかしないから。肉離れしてる時に筋トレしているようなものでしょ。」
「…そうか? 別にそこまでじゃないような気がするが…」
ナルキは夜にした魔装の練習の事を言っているのだろう。
魔力切れは、別に怪我ではない。
確かに魔力を枯渇させて半日経たないうちから魔力を使うと、気持ち悪さがある。
とても言語化しずらい嫌な感覚だ。
だからと言って、別に耐えられない程でもないと俺は思っている。
「まあ、いいや。それにしても、あの戦闘訓練、今日もやるのか?」
「朝、先輩に聞いてみたんだけど、あれ日課らしいよ。」
「えぇ、あれが日課ってまじか。」
「ほんとに、ね…」
ナルキが暗い表情を浮かべた。
昨日の様子を見るに、彼は体力がない方だろう。身体能力もお世辞にも高いとは言えない。
それなのにあんなスパルタみたいな訓練受けさせらるなんて、そりゃこんな顔にもなるわ。
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