漆黒の白魔族~最弱生徒の成り上がり~

sizuma

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一年生編 第一章 オルエイ入学

第十七話 求婚ヒロイン

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「じゃあ、ここからは別行動、また寮で会おうね。」



エリーゼがそう言うと、皆で頷く。



そしてそれぞれ背を向けて決まったグループごとに歩き出していった。



一番下のクラスの魔獣だと、一食分の食事代を手に入れる為だけに十数体近く狩らなければならない。



最低レベルだから仕方ないが、効率が悪いにも程がある。



俺達は2人ずつでグループ分けをしたので、これから2人分、しかも昼と夕食分、明日の朝の分までお金を集めなければならない。



流石にきつすぎないか?



せめて最初の一週間分の食料なりお金なりを配布してくれてもいいんじゃなかろうか。



これからの目標は魔獣九十匹近く。



とりあえず、俺と一緒に組んだシアは離れていくクラスメイト達の背中を眺めていた。



そして、見えなくなると、急にシアが話し出す。



「ようやく2人になれたね、エスタ!」



彼女は俺の両手をとって、握りしめながら顔を近づけてくる。



距離感が近いな。



「お、おう。じゃあ、さっそく狩りを始めるか。」



俺がそう返すと、彼女は笑顔で両手を離した。



そして前へ数歩、歩いたのちに振り返る。



「そうそう、その前になんだけどね、言いたい事があるの。」



このシアという女の子だが、正直全然どんな人物なのかつかめない。



ローズマリーは貴族で礼儀正しい、エリーゼは委員長タイプで話しやすく、友達が多い感じだろう。ノエルは食に対しての執着がすごい。一方で、俺の中にあるシアに対してのイメージは普通の女の子。



見た目はかわいいのだが、それ以外にこれといったぶっ飛んだ個性があるようには感じられない。



まあ、普通でいてくれたほうが気持ち的には楽だからいいんだけど。



「言いたい事?」



俺は聞き返した。



すると彼女はうんと頷いた後、頬を赤らめながら、爆弾発言を始める。



「エスタ、私と結婚しようッ!」



「・・・は?」



一瞬思考がフリーズした。



言葉が右から入って来て、左に流れたような感覚だ。



頭に文字列は流れてくるのだが、意味の理解が追いつかない。



「いや、結…⁉」



「結婚しようッ!」



そこで、ようやく状況が読み込めた。



俺、求婚されてる!?!?



「いや、ちょっと待って、俺達まだ会ったばかりだよな。」



「うん。でも私、ずっと前からエスタのこと好きだったの。」



「セリフが矛盾してね!?」



彼女は顔を赤らめながらも、こちらへ歩いてくる。



そして、息がかかる距離まで顔を近づけてきた。



「ぱっちりとした二重のお目目に、高い鼻、そしてバランスの整ったイケメン顔。」



「いや、俺一重だしイケメンとか初めていわれたわ、なんなら普通顔だろ。」



「しかも、誰よりも優しい王子様のような性格。」



「まだ会って初日だろ。」



「私と結婚してくださいッ!」



「なんでそうなる!?」



俺は若干パニックを起こしかけていた。



人生この方、彼女なんて作ったことがない。



女子とたくさん喋るタイプでも無いので、免疫があるかどうかを聞かれれば、微妙な所だ。



だと言うのに、いきなり求婚は流石にビビるって。



「一つ聞かせてくれ。」



俺は一旦落ち着いてから話す。



「なに?」



「なんで俺なんだ?」



俺の質問を聞いたシアは、不思議そうな顔で聞き返す。



「え? だってエスタが一番かっこいいじゃん。あっ、顔だけの話じゃないよ?」



逆に顔の話だとは思わんわ。



しかもこれをさも普通かのように言われても。



まさか入学初日に求婚されるなんて夢にも思わなかった。



これ、俺はどう返せばいいんだろうか。



「えっと、ごめん。」



俺は、言葉を選びながら、シアを傷つけないように返事をした。



「ちょっと、結婚とかはまだ。」



「まあ、そりゃそうだよね。出会って初日の女の子に求婚されてもはっ?ってなるだけだし。私も出会っていきなり求婚してくる男とかやだもん。」



彼女は急に真顔になってそう言った。



「・・・わかってるんだったら。やめてくんない?」



「にしし、仕方ないじゃん、エスタの困った表情を見てみたかったんだもん。」



なんだか、ナルキみたいだ。



この子と話していると、自分のペースを崩される。



八人でいるときは積極的に話している様子がなかったから、あまり目立たなかったけど、シアも十分に癖が強かった。



いきなり求婚してくる女子とか、初めて見た。



彼女は満足すると、前に歩き出した。



俺は、一旦自分の心を落ち着けるために、持ってきていたカバンから水筒をとって水分補給をする。



「あっ、そうそう、でも結婚しようっていうのは別に冗談じゃないよ。もしエスタがその気ならいつでも待ってるからね」



彼女が振り返ってそう言うと、俺はつい吹き出してむせてしまった。



肺の奥から咳が飛び出してくる。



「いや、なんで最初から俺に対する好感度がそんなに高いんだよ。」



「さあ、なぜでしょうね。」



そう言い残して、シアは再び前へと歩き出した。



そんな彼女を後ろから見ながら、不思議な人だなと心の中で呟いた。







★☆★☆★







赤の森には大体四種類の魔獣が現れる。



一種類目はラットウルフ。



八人でいた時に敵対した魔獣だ。



全長40㎝程の小さな狼で、腕をかまれるとそれなりに痛いらしい。



二種類目は大ミミズ。



全長5メートルくらいある、巨大なミミズで、見た目がとにかく気持ち悪い。



でかいが鈍いので、別に強くはない。



三種類目は木とかげ。



全長30cmのとかげで、色が木と同化していて見つけづらい。



ただし攻撃しても逃げるだけで、こちら側に反撃してこない。



四種類目が大鳥。



だいちょうと呼ぶのだが、こ奴らはミミズよりも気持ち悪く、お腹がえぐれていて、大腸がまるだしなのだ。



ダジャレで面白いと思ってやっているのか、ただただ気持ち悪く、不快感しかない。



そして、こいつら四匹はどれも換金したら同じ額になる。







俺とシアは、森を歩きながらラットウルフと木とかげを中心に獲物を狩っていた。



大鳥は、狩れそうなら狩る、ミミズは見つけてもスルー。



魔獣を狩った証として、目の中に形成される魔石と呼ばれる石を持って帰らなければならないのだが、ミミズの目なんかえぐりたくない。



現状狩れた魔獣が、ラットウルフ10匹と木とかげ7匹、そして大鳥が2匹。



時間は一時間を上回っている。



「なあ、シア。一時間でこれって、結構やばくないか? まだ二人分の昼ご飯も買えない状態なんだが。」



「一匹の価値が低いからね。どうする? 私はお昼はいらないつもりだけど、エスタだけでも食べに戻る?」



「いや、それはシアに悪いからいいよ。」



まだ合わせて19匹。



三分に一匹の獲物を狩っている計算だから決して悪くはない。



むしろいいほうなのだが、狩れらなければいけない獲物の数が多すぎて全然喜べない。



「きっついなぁ、でもやらなきゃ明日の飯はないしな。」



「がんばろう、お昼抜きって考えたらあと四十匹!」



「いや、明日の昼ご飯の分も考えたら結局七十くらいなんだよなぁ。」



「あ、そっか。」



流石にめちゃくちゃだオルエイ。



強制はされていないとは言え、スパルタにも程がある。



もう腹ペコだ。



まじで初日のご飯くらい配布しろよッ!





俺のオルエイ高等学校に対する不満は初日からかなり爆発していた。



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