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一年生編 第一章 オルエイ入学

第十一話 滅茶凄同級生

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朝がやってきた。



オルエイ高等学校入学式の朝だ。



窓からさす日の光で俺達は目を覚ます。



「おはよ。」



ナルキが寝ぐせのはねた状態で言うと、



「おう、おはよ。」

「おおお、おはようございますす。」



俺とヨロはすぐに返す。



ナルキもヨロも、案外寝起きがいいんだなと感心した。



朝に強いというのはルームメイトにとってはかなりいい。



俺は今回の部屋の割り振り、意外とあたりなのではないかと思い始めていた。



ただ一人を除いて。



「ミナクール、起きて!朝だよ!」



ナルキがそういいながら、変態ナルシストを起こそうとする。



しかし、彼は起きることがなかった。



代わりに寝言を一言。



「やめて、、、、僕の、、ミラルクミミチップを壊さないで、、、」



こいつは一体どんな夢を見ているのだろうか?



ミラルクミミチップってなんだよ。



ナルキは何度も彼を叩いて起こそうと奮闘しているがまるで起きる気配はない。



「こいつ、今日が入学式だって意識あんのか?」



俺がそう呟くと、ナルキは同調した。



「ねー、ほんとに…」



とはいえ、こう言いながらも必死に彼を起こそうとするナルキに、優しさを感じた。







☆★☆★☆★







ようやく全員が起きると、俺達は部屋を出てロビーへと向かった。



朝食を食べる為だ。



昨日の夕食は、別の所で食べてからオルエイへと向かったので、寮で飯を食うのは実質初めてとなる。



ロビーへつくと、数人の先輩達が料理を準備していた。



俺達が来たことに気付くと、こっちに話しかける。



「あ、一年生達、やっと起きたんだ! ご飯食べる?」



そう言ったのは、昨日ディーン先輩を引き連れてどっかいったリール先輩だった。



白髪赤目で高身長、昨日は暗くてよくわからなかったが、今こうしてみると美人だ。



どうやらオルエイは朝ごはんは自炊らしい。



学食や購買があるのかと思っていたからかなり意外だった。



とりあえず俺達は先輩の言葉に甘えて、朝食を食べる事にする。



俺たちが食べる主旨を伝えると、彼女らは上機嫌でスープや野菜を注いだ。



お盆の上にご飯をもらうと、俺達はロビーに並んでいる、まるで食堂のように並んでいる机についた。



そしてご飯を食べ始める。



「そういえば、他の一年生は全くいないんだな。」



俺がそう言うと、少し遠くからシチューを温めている男の先輩の声が聞こえた。



「お前ら皆起きる時間がバラバラすぎんだよ。早すぎてもう学校へ向かってるやつもいれば、そろそろ準備を始めないといけないのにまだ起きてこないやつもいる。まぁ、Hクラスなんてどの学年も個性の強いやつばっかだから仕方ねぇけどな、朝食作ってる俺達の身にもなって欲しいぜ。」



なんだか申し訳なく感じた。



ナルキは今日遅くなった戦犯に対して愚痴を言う。



「そもそもミナクールがちゃんと声掛けた時に起きていれば、もっと早く準備も始められたのにね。」



指摘された変態ナルシストは一瞬肩をビクッと震わせたのち、謝った。



「うっ。それ一件については謝ろう。すまなかった。しかし仕方ないのだッ!ミラクルミミチョップが僕を待っていたんだからッ!」



だからミラクルミミチョップってなんだよ。てかさっきはミミチップだったのにちょっと変わってるし。



一緒にご飯を食べている俺達3人は、呆れ果てて彼を無視する事にした。



それからは時間がなかった事もあり、急いでご飯を食べ終わり、俺達は部屋に戻って準備をする事にする。



特に用意する物もなったので筆記用具をリュックに詰めて背負った。



服は私服だ。



本来なら制服があるのだが、まだ合格発表初日であり、個人の制服など出来上がるはずがない。



入学前にもらった学校のパンフレットには、制服が届くのは入学してから2ヶ月後と書いてあったので、俺達が制服を着れるようになるのはもう少し先の話になりそうだ。





「じゃあ時間も時間だしそろそろ行かない?」



皆の準備が終わった段階で、そうナルキは呼びかけた。



俺達はお互いを見合ってからうなづく。



「そうだな、行こう、オルエイ高等学校校舎へ。」











☆★☆★☆★











入学式。



それはどこの学校にも存在する行事の一つだ。



長ったるい話を延々と聞かされて退屈に感じるはずなのだが、これから始まる学生生活の期待とワクワクにより何故か少し楽しさを感じる不思議な行事である。



同じような卒業式はあんなにも退屈だと言うのに、一体何が違うのだろうか?







高等学校の校舎へと着くと、大きな看板に案内が貼られていた。



入学式は大ホールと呼ばれる建物で行われるらしい。



一緒に地図も張られていたので案内通りに俺たちは進んだ。



歩いていると、ナルキが話し出す。



「凄いね、噂通り、有名人がいっぱいいるよ。」



そう言われて周囲を見渡すと、俺たち以外にも多くの生徒が歩いていた。



皆同じくらいの時間を狙ってきているということだ。



時間的には少し余裕がないくらいだが、ちょうどいいと言って差し支えない。



逆にこのくらいの時間を狙って起きた俺達と誰一人Hクラスの生徒が鉢合わせていないことが疑問だった。



ナルキは有名人がいっぱいいるというので、誰か知っている人がいるか確認してみるが、残念ながら誰一人知らない。



俺がおかしいのか?と思いミナクールとヨロの方を見てみるが、二人も頭にはてなマークを浮かべていた。



そんな様子の俺たちに呆れたのか、ナルキは大きく溜息をつく。



「君たち、普段何して生きてるの? 普通に生活してたら街のモニターや、新聞で見る人ばっかりでしょ。」



「普段、何してるって、、、修行?」

「自分磨きッ!」

「お、押し活?」



「・・・ひどいね。」



彼はゴミを見る目で俺達を見つめてくる。



「まぁ、別に有名人を知らないと生きていけないわけじゃないからな。逆にナルキが知ってるなら今教えてよ。」



俺がそう言うと、彼は溜息をついた。



そして呆れながら渋々話し始めた。



「まあいいよ。教えてあげる。まずはあそこにいる人。」



そう言って彼は右前を指さす。



そこには、受験の時、同じグループでトップ争いをしていた短髪の少年がいた。



「彼の名前はレイブン。恐らく今年の入学生の中で、唯一主席であるアーシャに匹敵する実力者。入試では次席だった。上位貴族で公爵家の次男らしく、アーシャとまとめられて、奇跡の二人と記事に取り扱われる事も少なくない。」



説明を聞いてなんか納得した。



受験の時、彼の戦闘を見ていたが、同世代だとは思えなかった。そんなにすごい人物だったのか。



「そして次はあそこ。」



そう言ってナルキは指している指を少し左にずらす。



そこには超絶イケメンな美男子が女の子を引き連れて歩いていた。



「彼はシエスタ。国一番の美男子として一番にあがる、今一番勢いのある男。モデルや俳優をやっていてその知名度はアーシャやレイブンをも超える。」

「ビューティフルッ!まるで僕みたいだ。」

「ミナクール、お口チャック。」



ナルキに言われると、彼は素直に黙り込んだ。



なんかこう見てると可愛く感じてくるな。



ナルキは説明を続ける。



「次はあそこで水筒を飲みながら歩いている人。あれもやばいね。テットボールの最年少選手なのに何故か去年引退した伝説の選手、ピンクバレット。クラスはDクラスだけど、凄いことには変わりないよ。千年に一度の運動神経だなんて言われているくらいだからね。」



そういわれてみると、とんでもない人ばっかりだな。



「凄いな、今年は豊作だったのか?」



「歴代一と言われるくらいにはね。それに、これはほんの一部。ちょっと周りを見ただけでこんなに有名人が出てくるんだから実際にはもっと凄いことになってるはずだよ。特に君もその代表例だしね、ヨロ君。」



そうナルキが言うと、俺とミナクールは一瞬でヨロの方向を向く。



急に注目されたのかヨロは肩を震わせて目線を下に向けた。



「ヨロって有名人だったのか?」



俺がそう言うと、彼は反論する。



「いいいいや、そ、そんなことないですす。」



しかしナルキは彼についてようようと語りだした。



「彼、凄いんだよ~。僕たちの世代だとあんまり興味がなくて他の人に注目しがちだけど、やった功績自体はとんでもないものなんだから~。何たって国一の研究者達がこぞって解いてもわからい難問を子供でありながらたった一人で解いちゃったんだから。去年の話だからそんな昔の話題でもないしね。」



「い、、いや、、たまたま、とけただけけですす。」



いやそれ凄いなんてもんじゃ無くね? 本当にただの天才じゃん。



俺は思わず彼を二度見してしまった。



実は俺とんでもない人物と話しているのでは・・・?



全くそんな頭いいオーラなんか出ていないがこの話が事実だとすれば、ほんとに千年に一度の天才じゃん。



ナルキは語りつくしてスッキリしたのか、気持ちよさそうな顔をしていた。



「まぁ、とりあえず、大ホールに向かお? 時間もギリギリってわけじゃないけど、余裕がたくさんあるわけでもないから。」



彼がそう言うと、俺達は頷いて、入学式会場である大ホールへと歩き始めた。
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