111 / 119
第三章・前章、夏休み~校内大会・帝国編~
第百七話:波乱の実技試験Ⅵ(彼女の背と手はまだ遠く)
しおりを挟む
☆★☆
さて、岩肌に不釣り合いな扉を通れば、明らかに大規模戦闘向きだと言えるぐらいの空間が姿を表す。
「こんなとこ、あったんだね」
ヴィクトリウスに視線のみを向け、キソラは言う。
『まあ、こんなところに来る奴なんて、そもそも居ないんだがな』
ヴィクトリウスがそう返している間にも、モンスターたちが姿を見せ始め、キソラたちもそれぞれの得物を構える。
『――大規模戦闘、開始致します』
ヴィクトリウスとのものとも、モニター室で見ているノークや教師陣のものとも違う声が、その場に響き渡る。
「とりあえず、カエル以外は遠慮なく一掃! フォローは可能な限りしてあげる!」
キソラの声に、学生側からの攻撃が一斉に始まる。
「それじゃ、私も行きますか」
ホーリーロードを双槍に変化させ、それぞれ火と水を纏わせる。
「ああ、そうだ。あんたは手出ししちゃ、駄目だからね?」
そして、ヴィクトリウスが何か言うために口を開く前に、キソラは告げる。
「あんたはこの迷宮の守護者であり、私たちの試験がまだ続行中である以上、手出しは厳禁だから」
迷宮管理者命令! とばかりに言いたいことは言ったので、キソラもモンスター狩りに参加する。
「全く、素直じゃないんだから」
「誰が素直じゃないって?」
近くのゴブリンやコボルトを狩りながら、ノエルと話す。
「あんた以外、誰が居るの?」
ノエルの氷属性の魔法により、周辺のモンスターたちが凍り付く。
「単にあいつを戦闘に関わらせることなく、試験のやり直しを避けただけだろ?」
「さすが、幼馴染。よく分かってる!」
地属性を付与した足で、モンスターたちに蹴りを繰りだし、纏めて吹っ飛ばす。
「無茶だけはするなよ」
「誰に向かって言ってるの?」
「だから、お前以外に誰が居るんだよ」
アキトもアキトで、目の前のコボルトを狩って行く。
「イフリート!」
『ったく、俺たちの力を借りることは良いなんて、どんなルールなんだか』
「文句言ってないで、ウンディーネが来れない分まできりきり働く!」
呼ばれたら呼ばれたでこれだもんなぁ、とイフリートは、周囲のモンスターを焼き尽くす。
『――で、あのカエルは?』
「知らないし、後回し」
『ヴィクトリウスは?』
「仮にも試験官側だから、手出しさせないようにしてる」
それを聞いてイフリートは顔を顰めたが、迷宮の管理主が違うため、特に口出ししないことにしたらしい。
『シルフィードも呼んだ方が良くないか?』
「シルフィ呼んだら、活躍の場が減るよ?」
『質問を質問で返すな。それに、んなこと言ってる場合か』
イフリートの言いたいことが分からないわけではないし、シルフィードを喚べないわけではないが、彼女を喚び出すためのタイミングが訪れない。
「――っ、」
背後に気配を感じ、対処のために振り返ろうとするが、キソラに斬りかかろうとしていたオークはアリシアの剣により絶命する。
「アリシア……?」
「しっかりしなさい。貴女が殺られたら、誰が指揮を取るの」
「私、指揮官になった覚えはないんだけど?」
「そっちがそうじゃなくても、みんな貴女が指揮官だと思っている」
「無茶を言うなぁ」
キソラとしては指揮をする側より、指示されて動き回っている側の方が良いのだが。
「作戦を立てた以上は、きちんと全うしなさい。指揮官」
「いや、作戦立案は参謀の役目であって、最終決定する指揮官じゃ……」
二つの槍を一つにし、二足歩行の子犬を焼き払う。
「ああ、もう。これじゃ、キリがないな」
戦闘開始時からいくらか経ったとはいえ、その数は少しずつ減っているのだろうが、まだまだ残存数は多い。
「ったく」
ふわり、とキソラの周辺に風が起こる。
目には藤色の光が宿り、髪の毛先も藤色に変化する。
「そんなに死にたければ掛かってこい、雑魚ども。勝てる気で居る者のみ、彼らや彼女たちに手を出せば良い。それ以外は全て散れ!」
気を纏わせた、単なる威嚇である。ほんの少しばかり、「こいつらには逆らってはいけない」と思わせることさえ出来れば良い。
自分たちに「死」をもたらす存在なのだと分かったのなら、本能で生きているモンスターたちが逃げ出すのは当たり前のはずだが――
「さすが『レイドモンスター』、というところか」
ゴブリンとコボルトの少数が混乱に陥っただけで、他のモンスターたちは何の変化も見せず、戦闘を続行している。
だが、そんなの関係ないとばかりに、キソラは双槍から双剣に変化させ、標的をリザードマンに切り替える。
「ただの双剣だと思うなよ。トカゲども!」
見た目は二足歩行のトカゲとはいえ、その表面はドラゴンのように鱗に覆われている。そのため、武器に何らかの付与をしていない限り、ただの斬撃では致命傷を負わせることは不可能である。
その点、ホーリーロードは使い手が限られているとはいえ、比較的優秀とも言える武器であり、幾多の刀剣からその場に最適な武器へと変化することが可能だったりする。
そして、現時点では双剣状態ではあるが、その剣には『竜殺し』としての能力が付与されていたため、キソラがわざわざ何かを付与する必要は無かったのである。
「っ、」
「キソラっ!」
「――ああ゛もうっ!」
自身を呼ぶ声に、キソラはイライラしたまま振り返るのと同時にリザードマンだけではなく、オーガやコボルトも同時に斬り付けていく。
「あと残り数体で、カエルに移れるぞ!」
「でも、一部の前衛メンバーの疲労が酷いです!」
共闘状態にあった男子の言葉に、同じく共闘状態にあった女子からの報告が届く。
「魔力を多大に消費した人、動けなくなった人たちは治療メンバーの方へ! 魔法チームは最初にも言ったけど、魔欠にならないように気を付けて!」
「はい!」
「ちょっと、そんなこと言ったら、あんたが一番休まなきゃなんないでしょ!? 前線で戦い続けた上に、魔法も使っているんだから!」
キソラの呼び掛けに返事がされるが、それを聞いていたアリシアが、彼女の腕を掴んで訴える。
「そうだね。でも、今休憩に入ったら、この感覚は失われそうだから」
ぎらぎらと、まるで戦闘狂のような光がその眼に宿ろうとしているのを見て、アリシアは思わず掴んでいたキソラの腕を離してしまう。
「キ、ソラ……」
「その勢いそのままに、カエルを倒さないと、また再スタートになっちゃう気がするから」
「……」
まさか気付いてないのか、とアリシアは問いたかったが、それは何故か憚られた。
「だから、このままで居させて」
普段通りの笑みを浮かべたはずのキソラに、アリシアはどこか不安そうな顔をする。
――ああ、やっと近付けたかと思ったのに。
出会って日は浅いが、それでも『ゲーム』関係で共闘とかしていく中で、少しずつ『キソラ・エターナル』という存在を理解し始め、ノエルたちからも彼女の話を聞いて。迷宮管理者や空間魔導師でありながらも、自分たちと同じ一人の女の子であるはずなのに――
(あの子が、遠い)
キソラの見ている景色は、一体どんなものだろうか。
仲間は居ても、同い年の仲間が居ない彼女の見ている景色は、何色なのだろうか。
☆★☆
アリシアと別れ、キソラはカエルの元へと赴く。
「あー、これは厄介そうだ」
何となく、そう感じただけだけど。
「さて」
聞き得た情報から、全て想定することはし終えた。
だからこそ、後はその目で確認するのみだった。
ホーリーロードの形態が『魔鎌』へと変わる。
――確かに、大規模戦闘の設定は存在するが、話に出ていたような奴を出現させるように設定した覚えは無い。
扉を通る前、ヴィクトリウスはそう言った。
ヴィクトリウスが居ない間――つまり、彼が自分たちと一緒にいる間にノークが追加で設定したのかもしれないが、それにしてはそいつが持つ特性が厄介すぎる。
そこで登場するのが、他者の存在を感知できるキソラである。
(カエルはカエル、か。でも――)
何か引っ掛かるのは何故だろうか。
「あんた、何者?」
答えなど、最初から期待なんてしていない。
こちらとしても相手が答えないと分かっているからこそ、聞いて答えて貰えられる程度のことなら、馬鹿正直に聞きはしない。
「まあ、あんたがどこの誰でも構わないんだけどさ。この戦い、私たちが勝たしてもらうよ」
ただ真っ直ぐに、キソラはカエルを見据えた。
さて、岩肌に不釣り合いな扉を通れば、明らかに大規模戦闘向きだと言えるぐらいの空間が姿を表す。
「こんなとこ、あったんだね」
ヴィクトリウスに視線のみを向け、キソラは言う。
『まあ、こんなところに来る奴なんて、そもそも居ないんだがな』
ヴィクトリウスがそう返している間にも、モンスターたちが姿を見せ始め、キソラたちもそれぞれの得物を構える。
『――大規模戦闘、開始致します』
ヴィクトリウスとのものとも、モニター室で見ているノークや教師陣のものとも違う声が、その場に響き渡る。
「とりあえず、カエル以外は遠慮なく一掃! フォローは可能な限りしてあげる!」
キソラの声に、学生側からの攻撃が一斉に始まる。
「それじゃ、私も行きますか」
ホーリーロードを双槍に変化させ、それぞれ火と水を纏わせる。
「ああ、そうだ。あんたは手出ししちゃ、駄目だからね?」
そして、ヴィクトリウスが何か言うために口を開く前に、キソラは告げる。
「あんたはこの迷宮の守護者であり、私たちの試験がまだ続行中である以上、手出しは厳禁だから」
迷宮管理者命令! とばかりに言いたいことは言ったので、キソラもモンスター狩りに参加する。
「全く、素直じゃないんだから」
「誰が素直じゃないって?」
近くのゴブリンやコボルトを狩りながら、ノエルと話す。
「あんた以外、誰が居るの?」
ノエルの氷属性の魔法により、周辺のモンスターたちが凍り付く。
「単にあいつを戦闘に関わらせることなく、試験のやり直しを避けただけだろ?」
「さすが、幼馴染。よく分かってる!」
地属性を付与した足で、モンスターたちに蹴りを繰りだし、纏めて吹っ飛ばす。
「無茶だけはするなよ」
「誰に向かって言ってるの?」
「だから、お前以外に誰が居るんだよ」
アキトもアキトで、目の前のコボルトを狩って行く。
「イフリート!」
『ったく、俺たちの力を借りることは良いなんて、どんなルールなんだか』
「文句言ってないで、ウンディーネが来れない分まできりきり働く!」
呼ばれたら呼ばれたでこれだもんなぁ、とイフリートは、周囲のモンスターを焼き尽くす。
『――で、あのカエルは?』
「知らないし、後回し」
『ヴィクトリウスは?』
「仮にも試験官側だから、手出しさせないようにしてる」
それを聞いてイフリートは顔を顰めたが、迷宮の管理主が違うため、特に口出ししないことにしたらしい。
『シルフィードも呼んだ方が良くないか?』
「シルフィ呼んだら、活躍の場が減るよ?」
『質問を質問で返すな。それに、んなこと言ってる場合か』
イフリートの言いたいことが分からないわけではないし、シルフィードを喚べないわけではないが、彼女を喚び出すためのタイミングが訪れない。
「――っ、」
背後に気配を感じ、対処のために振り返ろうとするが、キソラに斬りかかろうとしていたオークはアリシアの剣により絶命する。
「アリシア……?」
「しっかりしなさい。貴女が殺られたら、誰が指揮を取るの」
「私、指揮官になった覚えはないんだけど?」
「そっちがそうじゃなくても、みんな貴女が指揮官だと思っている」
「無茶を言うなぁ」
キソラとしては指揮をする側より、指示されて動き回っている側の方が良いのだが。
「作戦を立てた以上は、きちんと全うしなさい。指揮官」
「いや、作戦立案は参謀の役目であって、最終決定する指揮官じゃ……」
二つの槍を一つにし、二足歩行の子犬を焼き払う。
「ああ、もう。これじゃ、キリがないな」
戦闘開始時からいくらか経ったとはいえ、その数は少しずつ減っているのだろうが、まだまだ残存数は多い。
「ったく」
ふわり、とキソラの周辺に風が起こる。
目には藤色の光が宿り、髪の毛先も藤色に変化する。
「そんなに死にたければ掛かってこい、雑魚ども。勝てる気で居る者のみ、彼らや彼女たちに手を出せば良い。それ以外は全て散れ!」
気を纏わせた、単なる威嚇である。ほんの少しばかり、「こいつらには逆らってはいけない」と思わせることさえ出来れば良い。
自分たちに「死」をもたらす存在なのだと分かったのなら、本能で生きているモンスターたちが逃げ出すのは当たり前のはずだが――
「さすが『レイドモンスター』、というところか」
ゴブリンとコボルトの少数が混乱に陥っただけで、他のモンスターたちは何の変化も見せず、戦闘を続行している。
だが、そんなの関係ないとばかりに、キソラは双槍から双剣に変化させ、標的をリザードマンに切り替える。
「ただの双剣だと思うなよ。トカゲども!」
見た目は二足歩行のトカゲとはいえ、その表面はドラゴンのように鱗に覆われている。そのため、武器に何らかの付与をしていない限り、ただの斬撃では致命傷を負わせることは不可能である。
その点、ホーリーロードは使い手が限られているとはいえ、比較的優秀とも言える武器であり、幾多の刀剣からその場に最適な武器へと変化することが可能だったりする。
そして、現時点では双剣状態ではあるが、その剣には『竜殺し』としての能力が付与されていたため、キソラがわざわざ何かを付与する必要は無かったのである。
「っ、」
「キソラっ!」
「――ああ゛もうっ!」
自身を呼ぶ声に、キソラはイライラしたまま振り返るのと同時にリザードマンだけではなく、オーガやコボルトも同時に斬り付けていく。
「あと残り数体で、カエルに移れるぞ!」
「でも、一部の前衛メンバーの疲労が酷いです!」
共闘状態にあった男子の言葉に、同じく共闘状態にあった女子からの報告が届く。
「魔力を多大に消費した人、動けなくなった人たちは治療メンバーの方へ! 魔法チームは最初にも言ったけど、魔欠にならないように気を付けて!」
「はい!」
「ちょっと、そんなこと言ったら、あんたが一番休まなきゃなんないでしょ!? 前線で戦い続けた上に、魔法も使っているんだから!」
キソラの呼び掛けに返事がされるが、それを聞いていたアリシアが、彼女の腕を掴んで訴える。
「そうだね。でも、今休憩に入ったら、この感覚は失われそうだから」
ぎらぎらと、まるで戦闘狂のような光がその眼に宿ろうとしているのを見て、アリシアは思わず掴んでいたキソラの腕を離してしまう。
「キ、ソラ……」
「その勢いそのままに、カエルを倒さないと、また再スタートになっちゃう気がするから」
「……」
まさか気付いてないのか、とアリシアは問いたかったが、それは何故か憚られた。
「だから、このままで居させて」
普段通りの笑みを浮かべたはずのキソラに、アリシアはどこか不安そうな顔をする。
――ああ、やっと近付けたかと思ったのに。
出会って日は浅いが、それでも『ゲーム』関係で共闘とかしていく中で、少しずつ『キソラ・エターナル』という存在を理解し始め、ノエルたちからも彼女の話を聞いて。迷宮管理者や空間魔導師でありながらも、自分たちと同じ一人の女の子であるはずなのに――
(あの子が、遠い)
キソラの見ている景色は、一体どんなものだろうか。
仲間は居ても、同い年の仲間が居ない彼女の見ている景色は、何色なのだろうか。
☆★☆
アリシアと別れ、キソラはカエルの元へと赴く。
「あー、これは厄介そうだ」
何となく、そう感じただけだけど。
「さて」
聞き得た情報から、全て想定することはし終えた。
だからこそ、後はその目で確認するのみだった。
ホーリーロードの形態が『魔鎌』へと変わる。
――確かに、大規模戦闘の設定は存在するが、話に出ていたような奴を出現させるように設定した覚えは無い。
扉を通る前、ヴィクトリウスはそう言った。
ヴィクトリウスが居ない間――つまり、彼が自分たちと一緒にいる間にノークが追加で設定したのかもしれないが、それにしてはそいつが持つ特性が厄介すぎる。
そこで登場するのが、他者の存在を感知できるキソラである。
(カエルはカエル、か。でも――)
何か引っ掛かるのは何故だろうか。
「あんた、何者?」
答えなど、最初から期待なんてしていない。
こちらとしても相手が答えないと分かっているからこそ、聞いて答えて貰えられる程度のことなら、馬鹿正直に聞きはしない。
「まあ、あんたがどこの誰でも構わないんだけどさ。この戦い、私たちが勝たしてもらうよ」
ただ真っ直ぐに、キソラはカエルを見据えた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる