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第三章・前章、夏休み~校内大会・帝国編~
第百六話:波乱の実技試験Ⅴ(大規模戦闘対策)
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☆★☆
「……キソラ。あんた、大丈夫?」
「大丈夫。つか、嫌な予感がひしひしと感じるから、正常だと思う」
「それを正常だと思えるなんて、世界中でもあんたぐらいよ」
そんなやり取りをキソラとノエルがしながらも、時折休憩を挟みながら、この迷宮の守護者、ヴィッキーことヴィクトリウスに本来の試験範囲内まで案内されつつ、一行は歩いていた。
「あら?」
そこで、アリシアが何かに気付く。
「貴女たち、こんなところで何してるの?」
「あ、アリシアさん……」
「それが……」
何やら十数名が、周辺とは不釣り合いな豪華な扉の前で立ち往生していた。
「ふーん、『レイドモンスター』、ねぇ……。どういうのか、説明してもらえる?」
アリシアは、この中の誰よりも詳しいであろうキソラに目を向ける。
「『レイドモンスター』というより、そもそも『レイド』自体をあまり知らないでしょ。まずはそっちの説明から始めるけど、簡単に言えば、大規模戦闘だね。対モンスター戦闘となる場合が多いけど、対人戦闘が無いわけでもない。で、『レイドモンスター』だけど、さっき言った『レイド』専用のモンスターと言ってもいい。ただし、厄介なことにこちらのレベルに関係なく、相手は上位レベルで尚且つ厄介な奴らが出現するから、単独では危険だし、いくら高レベル、高ランクのメンバーが居たとしても、人数が少なければ瞬殺される可能性もある」
「え……」
「攻略法は?」
キソラの説明に、アリシアに事情を説明した子が絶望したような声を洩らすが、それを気にせずアリシアは問い掛ける。
「高レベル、高ランクのメンバーは必要だけど、今の私たちには無理だし、出現モンスターにドラゴンが現れてたりしたら厄介だね。ドラゴン退治が可能な戦力があれば別だけど、このメンバーだと圧倒的に足りないだろうし」
「さっき言ってた高レベル、高ランク枠をキソラが補うってのは?」
「別に不可能ってわけじゃないけど、こんなところで空間魔法みたいな大技放ったらどうなるかぐらい、予想できなくはないでしょ? 心中したいって言うなら、文句は言わないけど」
そう返されて、生き埋めになるのを想像した面々は「あー」と納得する。
「それで、どんなのが現れてたか、分かる?」
「えっと……」
思い出すようにして上げられる定番のものから、そんなものまで、と言いたげなモンスターに、キソラの目が次第に表現がしにくい――ヤバい方向へと変わっていく。
「とりあえず、纏めるとこう? 緑色の豚みたいな奴――」
「ゴブリンやオークやオーガ系列だね」
「――に、二足歩行するトカゲみたいな奴」
「小さいなら、リザードマン。または亜種」
「で、これまた同じく二足歩行する子犬に――」
「コボルトか」
「これがよく分からないんだけど、カエルって何よ。カエルって」
アリシアのまとめの合間合間に、推測されるモンスターの種類に直していくキソラだが、最後のカエルだけはさすがに分からなかったらしい。アリシアも納得してないのか、首を傾げている。
(何と言う、ファンタジー殺し)
話を聞いていたメンバーで唯一、アキトはそう思う。
ゴブリンやオークや、オーガから始まり、リザードマンやコボルトはまだ分かるが、何故カエルなのだろうか。
(俺たちのレベルに合わせたって言うのなら、ドラコンたちが出てこないのも分かるんだが……)
この中で、レベルブレイカーであろうキソラ(とヴィクトリウス)が居るにも関わらず、ドラゴン系列がリザードマンしか出てきていないということは、あくまで試験に則ってるということだろうか、とアキトは推測する。
しかも、怖いのは、最終的な砦であろうキソラの使える手が全て失われた時だ。
『大丈夫だよ。私は絶対に帰ってくるから』
確かに、クラリスの時には、彼女はちゃんと約束を守って帰ってきてくれた。
アキトは自身の手を見て、握り締める。
――大丈夫。俺がちゃんとフォローすれば良い。
「カエル。カエルなぁ……トード系かフロッグ系だと予測するとして、どんなの使ってきたか、分かる?」
「どんなのって……」
「『火』と『風』、『地』は使ってきたよ」
「あ、でも、あれさ。私たちが使った魔法を吸収して、使ってるように見えなかった?」
「そう?」
「……」
今まで出た情報から、キソラは攻略法を考える。
「……他の奴らの対処方法は分かっているから……一番ネックになるのは、やっぱりカエルか……ドレイン系を持っていると仮定して……って、あれ?」
「どうかした?」
「『水』、使わなかったの?」
「ああ、基本的に回復に回していたし、それ以外だと『火』を相殺するためにしか使ってなかったから……」
「……」
それを聞いて、キソラは再度思案する。
「何かもう、いろいろと厄介そうだな」
「ああ、そうだな」
アキトの呟きに、アオイが同意する。
「つか、俺たちも加わったことで、レイドモンスターが増えなきゃ良いんだが……」
「……どういうことだ?」
「どういうことって……そんなの、言葉の通りだよ」
アキトは告げる。
「キソラが居て、尚且つ参戦しようとしている時点で、レイドモンスターたちの出現数かレベルは跳ね上がっているはずだ」
「エターナルは……」
「あいつのことだから、分かってるんじゃねーか? キソラの残存魔力なんて、生きるか死ぬかのモンスターたちにはほとんど関係ない。そもそも大規模戦闘なんて、そうそう体験できるようなイベントでもないしな」
だが、この状況を楽しもうだなんてことは誰一人考えていない。この戦いで一番重要なのは、全員が無事に勝利し、帰還することなのだから。
「……」
そんなアキトがアオイと話すところを見つつ、この迷宮のモニタールームで、ノークは一人見ていた。
「それにしても、お前も鬼だな。いくら妹が居るからって、んな迷宮を試験場所にしなくても良かっただろうに」
「その話、何度目ですか」
それも、あんな大規模戦闘機能まで起動させて、と言いたげな、ここ最近見慣れた学院の教師陣に対し、ノークは返す。
「何度も言いますが、キソラが居るから、ですよ」
彼女は数週間後に、先日まで敵対していた帝国へと向かう。
現在の実力でも問題はないとは思うが、それでも妹を心配してしまうのが兄というものである。
「実技試験を名目に、妹だけじゃなく、同学年の連中にも経験を積ませて、少しでもスキルアップさせる。『天才』の考えることは怖いな」
一緒にモニターを見ていた教師の言葉に、ノークは首を傾げる。
「何を言っているんですか?」
「うん? お前が怖いって、話だが?」
「いやいや、そうじゃなくて。俺が『天才』なんて、何らかの間違いでしょ」
周囲がそのようなことを言っていたのはノークも知っているが、面と向かって言われたことなど数回ぐらいしかなく、ほとんど無いに等しい。それに――
「学院での成績面だけで『天才』と呼んでいるのなら、それはもう過去のものだし、『才能』とかの面から俺を『天才』と言っているのなら、それも間違いですよ」
ノークが何を言いたいのか分からず、教師陣は顔を見合わせる。
だが、ノークとしては彼らが分からなくとも良かった。
(そんなことよりも、今は――)
ノークは目の前のモニターに映し出された一人の少女を見つめる。
彼女の側には仲が悪いはずの守護者が居り、何やら話している。
「つか、レイドモンスターを出現させるとか、あいつらマジ一体何考えてるの……!」
作戦を考えていたキソラが爆発したかのように叫ぶ。
この迷宮に転移されたときからのストレスが地味にあったのか、ノークたちに対する呼び方がついに『あいつら』になったことで、友人たちはもう諦めの境地である。
『主の文句は、たとえその血縁者であろうと許さんぞ』
「へぇ、私もその『主』に含まれるわけだけど、私の管理下にある守護者たちも敵に回す気?」
「ちょっ、こんなところで揉めるのだけは止めて!」
ようやく纏まりかけていたと思ったところで、バチバチと火花を散らし始めたキソラとヴィクトリウスに、フィールが制止に入るが――
『そっちが全面戦争するというのなら、受けてやる』
「ハッ、一対多で勝てると思ってるの? 私たちに勝つ気でいるなら、フィーさんとこの迷宮にでも武者修行しに行かなきゃ無理だっつーの」
「ちょっ、みんなあれを止めないの?」
今なお続くキソラたちの口喧嘩に、フィールが戸惑ったような顔をしながら、ノエルたちに目を向ける。
「えー、だって、私たちからすると当たり前だし……」
「そもそも、管理者だとか守護者とかに関して、私たちは部外者。詳しい人たちに口を出すべきじゃない」
「……まあ、口を出してる奴はいるみたいだがな」
ノエルとユーキリーファの言葉に、状況を見守っていたジャスパーがぽつりと呟く。
「え」と反応を示す三人に、ほら、とジャスパーはそちらを指し示す。
「……あー、そういや、一人居たわ」
邪魔すんな、とばかりに、ヴィクトリウスの首根っこを掴み、引っ張り、引き摺りながら、アキトが面々の方に戻ってくる。
『ちょっ、離せ!』
「嫌だよ。離したら、またキソラの方に行くだろ? 荒れたあいつを誰が宥めると思ってるんだよ」
本当に嫌なのか、アキトは顔を顰めているが、幼いときからの付き合いなので仕方がない。
「そりゃあ、アキトだよねぇ」
「制御役」
「おい、止めろ」
ノエルとユーキリーファのからかいにも、明確な拒否は示してはないものの、制止を掛ける。
「じゃあ、何なら止めないの?」
「そうだな……」
アキトが少しばかり思案する。
「兄妹喧嘩……?」
「何故、疑問系?」
「けど、あの兄妹の場合は下手に止められないだろ。しかも、どちらかの言い分が正論だった場合は特に」
「まあねぇ」
自分たちもほぼ同じ故に、否定はしないし、出来ない。
「まあ、キソラの様子から判断するに、ノークさんにはご愁傷様としか言えないがな」
彼女の方に目を向けながら、アキトはそう纏めるが――
「……」
この様子を見ていたノークは、とりあえず、この試験終了時から彼女からの説教を覚悟しといた方が良さそうだ――と、怒られ始めるであろうその時まで、密かに内心でカウントダウンを始めるのだった。
「……キソラ。あんた、大丈夫?」
「大丈夫。つか、嫌な予感がひしひしと感じるから、正常だと思う」
「それを正常だと思えるなんて、世界中でもあんたぐらいよ」
そんなやり取りをキソラとノエルがしながらも、時折休憩を挟みながら、この迷宮の守護者、ヴィッキーことヴィクトリウスに本来の試験範囲内まで案内されつつ、一行は歩いていた。
「あら?」
そこで、アリシアが何かに気付く。
「貴女たち、こんなところで何してるの?」
「あ、アリシアさん……」
「それが……」
何やら十数名が、周辺とは不釣り合いな豪華な扉の前で立ち往生していた。
「ふーん、『レイドモンスター』、ねぇ……。どういうのか、説明してもらえる?」
アリシアは、この中の誰よりも詳しいであろうキソラに目を向ける。
「『レイドモンスター』というより、そもそも『レイド』自体をあまり知らないでしょ。まずはそっちの説明から始めるけど、簡単に言えば、大規模戦闘だね。対モンスター戦闘となる場合が多いけど、対人戦闘が無いわけでもない。で、『レイドモンスター』だけど、さっき言った『レイド』専用のモンスターと言ってもいい。ただし、厄介なことにこちらのレベルに関係なく、相手は上位レベルで尚且つ厄介な奴らが出現するから、単独では危険だし、いくら高レベル、高ランクのメンバーが居たとしても、人数が少なければ瞬殺される可能性もある」
「え……」
「攻略法は?」
キソラの説明に、アリシアに事情を説明した子が絶望したような声を洩らすが、それを気にせずアリシアは問い掛ける。
「高レベル、高ランクのメンバーは必要だけど、今の私たちには無理だし、出現モンスターにドラゴンが現れてたりしたら厄介だね。ドラゴン退治が可能な戦力があれば別だけど、このメンバーだと圧倒的に足りないだろうし」
「さっき言ってた高レベル、高ランク枠をキソラが補うってのは?」
「別に不可能ってわけじゃないけど、こんなところで空間魔法みたいな大技放ったらどうなるかぐらい、予想できなくはないでしょ? 心中したいって言うなら、文句は言わないけど」
そう返されて、生き埋めになるのを想像した面々は「あー」と納得する。
「それで、どんなのが現れてたか、分かる?」
「えっと……」
思い出すようにして上げられる定番のものから、そんなものまで、と言いたげなモンスターに、キソラの目が次第に表現がしにくい――ヤバい方向へと変わっていく。
「とりあえず、纏めるとこう? 緑色の豚みたいな奴――」
「ゴブリンやオークやオーガ系列だね」
「――に、二足歩行するトカゲみたいな奴」
「小さいなら、リザードマン。または亜種」
「で、これまた同じく二足歩行する子犬に――」
「コボルトか」
「これがよく分からないんだけど、カエルって何よ。カエルって」
アリシアのまとめの合間合間に、推測されるモンスターの種類に直していくキソラだが、最後のカエルだけはさすがに分からなかったらしい。アリシアも納得してないのか、首を傾げている。
(何と言う、ファンタジー殺し)
話を聞いていたメンバーで唯一、アキトはそう思う。
ゴブリンやオークや、オーガから始まり、リザードマンやコボルトはまだ分かるが、何故カエルなのだろうか。
(俺たちのレベルに合わせたって言うのなら、ドラコンたちが出てこないのも分かるんだが……)
この中で、レベルブレイカーであろうキソラ(とヴィクトリウス)が居るにも関わらず、ドラゴン系列がリザードマンしか出てきていないということは、あくまで試験に則ってるということだろうか、とアキトは推測する。
しかも、怖いのは、最終的な砦であろうキソラの使える手が全て失われた時だ。
『大丈夫だよ。私は絶対に帰ってくるから』
確かに、クラリスの時には、彼女はちゃんと約束を守って帰ってきてくれた。
アキトは自身の手を見て、握り締める。
――大丈夫。俺がちゃんとフォローすれば良い。
「カエル。カエルなぁ……トード系かフロッグ系だと予測するとして、どんなの使ってきたか、分かる?」
「どんなのって……」
「『火』と『風』、『地』は使ってきたよ」
「あ、でも、あれさ。私たちが使った魔法を吸収して、使ってるように見えなかった?」
「そう?」
「……」
今まで出た情報から、キソラは攻略法を考える。
「……他の奴らの対処方法は分かっているから……一番ネックになるのは、やっぱりカエルか……ドレイン系を持っていると仮定して……って、あれ?」
「どうかした?」
「『水』、使わなかったの?」
「ああ、基本的に回復に回していたし、それ以外だと『火』を相殺するためにしか使ってなかったから……」
「……」
それを聞いて、キソラは再度思案する。
「何かもう、いろいろと厄介そうだな」
「ああ、そうだな」
アキトの呟きに、アオイが同意する。
「つか、俺たちも加わったことで、レイドモンスターが増えなきゃ良いんだが……」
「……どういうことだ?」
「どういうことって……そんなの、言葉の通りだよ」
アキトは告げる。
「キソラが居て、尚且つ参戦しようとしている時点で、レイドモンスターたちの出現数かレベルは跳ね上がっているはずだ」
「エターナルは……」
「あいつのことだから、分かってるんじゃねーか? キソラの残存魔力なんて、生きるか死ぬかのモンスターたちにはほとんど関係ない。そもそも大規模戦闘なんて、そうそう体験できるようなイベントでもないしな」
だが、この状況を楽しもうだなんてことは誰一人考えていない。この戦いで一番重要なのは、全員が無事に勝利し、帰還することなのだから。
「……」
そんなアキトがアオイと話すところを見つつ、この迷宮のモニタールームで、ノークは一人見ていた。
「それにしても、お前も鬼だな。いくら妹が居るからって、んな迷宮を試験場所にしなくても良かっただろうに」
「その話、何度目ですか」
それも、あんな大規模戦闘機能まで起動させて、と言いたげな、ここ最近見慣れた学院の教師陣に対し、ノークは返す。
「何度も言いますが、キソラが居るから、ですよ」
彼女は数週間後に、先日まで敵対していた帝国へと向かう。
現在の実力でも問題はないとは思うが、それでも妹を心配してしまうのが兄というものである。
「実技試験を名目に、妹だけじゃなく、同学年の連中にも経験を積ませて、少しでもスキルアップさせる。『天才』の考えることは怖いな」
一緒にモニターを見ていた教師の言葉に、ノークは首を傾げる。
「何を言っているんですか?」
「うん? お前が怖いって、話だが?」
「いやいや、そうじゃなくて。俺が『天才』なんて、何らかの間違いでしょ」
周囲がそのようなことを言っていたのはノークも知っているが、面と向かって言われたことなど数回ぐらいしかなく、ほとんど無いに等しい。それに――
「学院での成績面だけで『天才』と呼んでいるのなら、それはもう過去のものだし、『才能』とかの面から俺を『天才』と言っているのなら、それも間違いですよ」
ノークが何を言いたいのか分からず、教師陣は顔を見合わせる。
だが、ノークとしては彼らが分からなくとも良かった。
(そんなことよりも、今は――)
ノークは目の前のモニターに映し出された一人の少女を見つめる。
彼女の側には仲が悪いはずの守護者が居り、何やら話している。
「つか、レイドモンスターを出現させるとか、あいつらマジ一体何考えてるの……!」
作戦を考えていたキソラが爆発したかのように叫ぶ。
この迷宮に転移されたときからのストレスが地味にあったのか、ノークたちに対する呼び方がついに『あいつら』になったことで、友人たちはもう諦めの境地である。
『主の文句は、たとえその血縁者であろうと許さんぞ』
「へぇ、私もその『主』に含まれるわけだけど、私の管理下にある守護者たちも敵に回す気?」
「ちょっ、こんなところで揉めるのだけは止めて!」
ようやく纏まりかけていたと思ったところで、バチバチと火花を散らし始めたキソラとヴィクトリウスに、フィールが制止に入るが――
『そっちが全面戦争するというのなら、受けてやる』
「ハッ、一対多で勝てると思ってるの? 私たちに勝つ気でいるなら、フィーさんとこの迷宮にでも武者修行しに行かなきゃ無理だっつーの」
「ちょっ、みんなあれを止めないの?」
今なお続くキソラたちの口喧嘩に、フィールが戸惑ったような顔をしながら、ノエルたちに目を向ける。
「えー、だって、私たちからすると当たり前だし……」
「そもそも、管理者だとか守護者とかに関して、私たちは部外者。詳しい人たちに口を出すべきじゃない」
「……まあ、口を出してる奴はいるみたいだがな」
ノエルとユーキリーファの言葉に、状況を見守っていたジャスパーがぽつりと呟く。
「え」と反応を示す三人に、ほら、とジャスパーはそちらを指し示す。
「……あー、そういや、一人居たわ」
邪魔すんな、とばかりに、ヴィクトリウスの首根っこを掴み、引っ張り、引き摺りながら、アキトが面々の方に戻ってくる。
『ちょっ、離せ!』
「嫌だよ。離したら、またキソラの方に行くだろ? 荒れたあいつを誰が宥めると思ってるんだよ」
本当に嫌なのか、アキトは顔を顰めているが、幼いときからの付き合いなので仕方がない。
「そりゃあ、アキトだよねぇ」
「制御役」
「おい、止めろ」
ノエルとユーキリーファのからかいにも、明確な拒否は示してはないものの、制止を掛ける。
「じゃあ、何なら止めないの?」
「そうだな……」
アキトが少しばかり思案する。
「兄妹喧嘩……?」
「何故、疑問系?」
「けど、あの兄妹の場合は下手に止められないだろ。しかも、どちらかの言い分が正論だった場合は特に」
「まあねぇ」
自分たちもほぼ同じ故に、否定はしないし、出来ない。
「まあ、キソラの様子から判断するに、ノークさんにはご愁傷様としか言えないがな」
彼女の方に目を向けながら、アキトはそう纏めるが――
「……」
この様子を見ていたノークは、とりあえず、この試験終了時から彼女からの説教を覚悟しといた方が良さそうだ――と、怒られ始めるであろうその時まで、密かに内心でカウントダウンを始めるのだった。
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