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第三章・前章、夏休み~校内大会・帝国編~
第百五話:波乱の実技試験Ⅳ(素直になれない者たち)
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☆★☆
「あ、見っけ」
「本当に居たよ……」
居ることは分かっていたので、アリシアがやっぱりと言わんばかりに告げ、フィールが信じられないとばかりに呟く。
「何、アリシアは役員の人たちと一緒だったの?」
「キソラも一緒よ。今はちょっと別行動中」
アリシアと一緒に居る面々に目を向けたノエルに、アリシアはそう返す。
「ま、キソラが一緒なら大丈夫か」
「あの子、迷宮の守護者には嫌われてるから罠やモンスターとのエンカウントが上昇中な上に、現在地が分からないとか言ってたんだけど?」
その説明に、アキトとノエル、ユーキリーファは顔を見合わせ、ぷっと噴き出す。
「なぁ、ガーランド。お前、それ信じてるのか?」
「まさか」
「だよね。どんなに現在地が分からなくとも、あの子はちゃんと正しいルートを導き出すはずだし」
それが、『キソラ・エターナル』という迷宮管理者なのだから。
「それに、ここがキソラの迷宮じゃなく、ノークさんの管理下の迷宮なら、なおさら大丈夫」
「どういうこと?」
ユーキリーファの言葉に、フィールが問い返す。
「キソラが居なくなって一番困る人が居るからさ」
公平さを求める試験だが、その決められた範囲外を出てしまえば、その規定は無意味なものとなる。
「つまり、何があっても正規ルートに戻される、ってことだよ」
キソラが正規ルートを引き当てるのが先か、正規ルートに戻されるのが先か。
「とにもかくにも、キソラが来るまでは、何も出来ないわけだし、少しばかりお話ししましょうか」
ここまで来るのに、何があったのかを――
☆★☆
轟炎に包まれた大玉に、後退しながらキソラは大水をぶっかける。
相性もそうだが、そんなに強力な炎を放ったわけでもないので、すぐには鎮火したが、キソラに休む暇など無い。
「これで――どう?」
最後に氷属性の魔法をぶつける。
「ですよねー……」
急激な温度変化を利用したつもりだが、必要となる温度と一気に冷やすための氷属性が足りなかったらしい。
「やれやれ……」
キソラの呆れたような、面倒くさそうな様子で、魔法を発動させる。
――氷属性のフィールド魔法、“氷結の試合場”。
足りないのなら、その場に増やしてしまえばいいとばかりに、すぐさま、その場が氷に覆い尽くされていく。
迷宮内のフィールドを書き換えた訳ではないし、勝手にフィールドを発動したことから守護者には怒られるだろうが、向こうが仕掛けてきたのだから、キソラは大玉が動かないのを確認した後、文句は受け付けないとばかりに歩き出す。
「あ、ようやく来たわね」
キソラが来たことに気付いたらしいアリシアが声を掛ける。
「つか、また派手にやったな? ここまで冷気が届いたぞ」
もう慣れたとばかりに、アキトが溜め息混じりに告げる。
「そう?」
「というか、相変わらず……って、キソラ。顔色悪いみたいだけど、大丈夫?」
キソラの顔色に気付いたノエルが声を掛けるが、当の本人は不思議そうな顔をする。
「うん? そんなに悪そうに見える?」
「そこまでじゃないけど……あんた、魔法使いすぎたんじゃない?」
「んー……これでも節約した方なんだけどね」
嘘である。
というか、基本的にキソラが動き回っていたりする方が多いので、他に動いたりしたとしても、アリシアやアオイの魔法ぐらいだ。
「……お前、このままだと本当に過労死するぞ?」
「あんたたち、もう少し動いてあげなさいよ」
「そんなこと言ったって、気づいたらこの子が動いているんだから、しょうがないでしょ」
アリシアの言い分も尤もで、キソラの察知能力も困りものである。
「とりあえず、これだけ人が居るんだから、キソラの察知能力に及ばないながらも、何とかなるだろ」
アキトがそう纏める。
「そういうことだから、あんたは休みなさい」
「支障が出て困るのはそっちなんだから」
「……分かったよ」
ノエルとユーキリーファの二人に言われては、キソラも反論できない。
「それで、どうする。あっちも駄目、こっちも駄目となると、もう道は無いぞ」
「さっき通り過ぎたとか言ってた場所は?」
「キソラが凍らせちゃったみたいだから、無理でしょうね」
ジト目を向けるアリシアに、キソラは目を逸らす――が、そうしていても問題は解決しないので、目線をアキトたちに向ける。
「とりあえず、そっちの地図を見せて。試験を再開しようにも出来ないし」
「でも、カンニングにならない?」
「そもそも、この試験の目的は、私たちの協調性とかを確認したり、示すためのもの。敵対しているのならいざ知らず、こんなことが許されないようじゃ、制限付きの――私や兄さんの管理下にある迷宮やダンジョンとかで生き残らせることなんか、まず無理だよ」
自分たちの通ってきた場所とノエルたちが通ってきた場所をキソラは確認しながら、そう告げる。
迷宮やダンジョンはその特性上様々ではあるが、迷宮管理者の管理下にあるいくらかの制限付きの迷宮やダンジョンの危険度が優しいわけがない。
もし優しくなっているとすれば、新人冒険者たちに迷宮やダンジョンの攻略経験値を与える時のみである。当然、先輩冒険者が付いていくときもあるが、基本的に低レベルなモンスターを狩ったところで彼らに何のメリットも無いし、新人とパーティ登録なんてしないから、経験値の山分けなんてことが起こるはずもない。
そして、何よりそのレベル設定をしているのがキソラとその迷宮の守護者であるために、「あまり新人を苛めてやるなよ?」と他の冒険者たちに言われながらも、現実の厳しさを教えてやろうと新人たちが苦手としているであろう部類(狙撃系に弱いなら、狙撃系を得意とするモンスター等)を放つのだから、鬼と言われても仕方がない。
まあ、一部の冒険者たちからは弱点が分かったり、苦手分野の強化が出来るから有り難がれたりしているのだから、世の中と言うものは分からないものである。
「どう?」
「確認するけど、四人は途中で合流したってことでいいんだよね?」
「そうだな」
キソラの確認に、アキトが肯定する。
「んーー……」
「え、何。まさか、あんたでも駄目とか言わないよね?」
ノエルが何かを察知したかのように尋ねるが――
「……いや、もう、ね」
キソラの歯切れの悪さに、面々も顔を引きつらせる。
「頼みの綱が駄目とか……」
「マジでどうするんだよ、これ……」
試験の合格など、絶望的である。
「つか、誰だよ! キソラがちゃんと正しいルートを導き出すはずだとか言ったのは!」
「私ですよ! でも、キソラまで駄目とか、普通は思わないじゃん!」
ギャーギャーと揉め出したアキトとノエルに、フィールがどうするの、とキソラに目を向けようとして――
「うふふふ。この試験が終わったら、マジで説教しなきゃ……」
――止めた。
何だか、負のオーラを感じる。
「はぁ、もうマジであいつ呼ばないといけないとか、最悪」
「あいつって、守護者?」
「それ以外、誰が居ると?」
どうやら、思っていた以上に仲が悪いらしい、と面々は思う。
とりあえず、よく響きそうな位置にまで移動したキソラは大声で告げる。
「とっとと、正規ルートに戻せ! バカ守護者!!」
そんな呼び掛けで来るのかと思うのだが、ここはノークの管理下にある迷宮であり、何より守護者はノークが好きなのである。
つまり――
「早く来ないと、有ること無いこと、兄さんに吹き込むぞー!」
何と言う低レベルな脅しだろうか。
そんなことを思っていれば、どこからか音がする。
「……ね、ねぇ、キソラ。守護者の逆鱗に触れたとかはないわよね?」
「それは無い。というか、そこまであいつは短気じゃないし」
そんなキソラの返事に、彼女のことを知る面々は肩を竦める。
「仲悪いくせに、よく分かってるんじゃねーか」
「いやでも、守護者のことは知ることになるの。特に私たち兄妹みたいなタイプの管理者はね」
それでも、こうして助けを呼んでいる辺り、キソラの方はそんなに嫌っていないんじゃないのか、と予想する。
『――ふっざけんじゃねぇぞ、クソ管理者! あと、『ヴィッキー』って、呼ぶんじゃねぇっ!!』
そして、キソラを殺そうとするぐらいに嫌いなら、今の呼び掛けぐらい無視をすればいいのに、彼女の要請に対し、こうしてちゃんと来ている守護者にも、ノエルたちは微笑ましそうに見ていた。
「……私、何となく分かった。守護者はツンの強いツンデレで、ノークさんと同じぐらい、キソラのことが好きなんだ」
そう結論付けたユーキリーファに、誰も否定はしなかった。
今でもギャーギャーと言い合いをしているが、彼ら守護者はエターナル兄妹が生まれたときから一緒に居るようなものなため、幼少時から一緒に居るノエルたちよりも彼女たちのことについては詳しいはずなのだ。
「よし、表へ出ろ。クソ守護者。こっちが下手に出ていれば、付け上がりやがって。空間魔法で存在そのものを消してやる」
『ハッ、どこが付け上がって、下手に出ているんだか。あんたの願いなんか、こっちから願い下げだっつーの! 大体、そんなこと出来るもんならやってみやがれ。まあ、俺が消滅したら、怒られるのはお前だろうがな』
「その台詞、そのまま返してあげる。血は何よりも濃いんだから」
――あ、これは駄目な奴だ。
そう、アリシアたちは思う。
ユーキリーファたちが一つの可能性に結論付けている間にも、二人の舌戦は終わっていなかったらしい。
「しかも、何かヒートアップしてるし……」
「……とりあえず、一回止めるか。このままだと、休もうにも休めない」
ユーキリーファの呆れとアオイの正論とも取れる言葉に、面々は頷き、動き出すのだった。
「あ、見っけ」
「本当に居たよ……」
居ることは分かっていたので、アリシアがやっぱりと言わんばかりに告げ、フィールが信じられないとばかりに呟く。
「何、アリシアは役員の人たちと一緒だったの?」
「キソラも一緒よ。今はちょっと別行動中」
アリシアと一緒に居る面々に目を向けたノエルに、アリシアはそう返す。
「ま、キソラが一緒なら大丈夫か」
「あの子、迷宮の守護者には嫌われてるから罠やモンスターとのエンカウントが上昇中な上に、現在地が分からないとか言ってたんだけど?」
その説明に、アキトとノエル、ユーキリーファは顔を見合わせ、ぷっと噴き出す。
「なぁ、ガーランド。お前、それ信じてるのか?」
「まさか」
「だよね。どんなに現在地が分からなくとも、あの子はちゃんと正しいルートを導き出すはずだし」
それが、『キソラ・エターナル』という迷宮管理者なのだから。
「それに、ここがキソラの迷宮じゃなく、ノークさんの管理下の迷宮なら、なおさら大丈夫」
「どういうこと?」
ユーキリーファの言葉に、フィールが問い返す。
「キソラが居なくなって一番困る人が居るからさ」
公平さを求める試験だが、その決められた範囲外を出てしまえば、その規定は無意味なものとなる。
「つまり、何があっても正規ルートに戻される、ってことだよ」
キソラが正規ルートを引き当てるのが先か、正規ルートに戻されるのが先か。
「とにもかくにも、キソラが来るまでは、何も出来ないわけだし、少しばかりお話ししましょうか」
ここまで来るのに、何があったのかを――
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轟炎に包まれた大玉に、後退しながらキソラは大水をぶっかける。
相性もそうだが、そんなに強力な炎を放ったわけでもないので、すぐには鎮火したが、キソラに休む暇など無い。
「これで――どう?」
最後に氷属性の魔法をぶつける。
「ですよねー……」
急激な温度変化を利用したつもりだが、必要となる温度と一気に冷やすための氷属性が足りなかったらしい。
「やれやれ……」
キソラの呆れたような、面倒くさそうな様子で、魔法を発動させる。
――氷属性のフィールド魔法、“氷結の試合場”。
足りないのなら、その場に増やしてしまえばいいとばかりに、すぐさま、その場が氷に覆い尽くされていく。
迷宮内のフィールドを書き換えた訳ではないし、勝手にフィールドを発動したことから守護者には怒られるだろうが、向こうが仕掛けてきたのだから、キソラは大玉が動かないのを確認した後、文句は受け付けないとばかりに歩き出す。
「あ、ようやく来たわね」
キソラが来たことに気付いたらしいアリシアが声を掛ける。
「つか、また派手にやったな? ここまで冷気が届いたぞ」
もう慣れたとばかりに、アキトが溜め息混じりに告げる。
「そう?」
「というか、相変わらず……って、キソラ。顔色悪いみたいだけど、大丈夫?」
キソラの顔色に気付いたノエルが声を掛けるが、当の本人は不思議そうな顔をする。
「うん? そんなに悪そうに見える?」
「そこまでじゃないけど……あんた、魔法使いすぎたんじゃない?」
「んー……これでも節約した方なんだけどね」
嘘である。
というか、基本的にキソラが動き回っていたりする方が多いので、他に動いたりしたとしても、アリシアやアオイの魔法ぐらいだ。
「……お前、このままだと本当に過労死するぞ?」
「あんたたち、もう少し動いてあげなさいよ」
「そんなこと言ったって、気づいたらこの子が動いているんだから、しょうがないでしょ」
アリシアの言い分も尤もで、キソラの察知能力も困りものである。
「とりあえず、これだけ人が居るんだから、キソラの察知能力に及ばないながらも、何とかなるだろ」
アキトがそう纏める。
「そういうことだから、あんたは休みなさい」
「支障が出て困るのはそっちなんだから」
「……分かったよ」
ノエルとユーキリーファの二人に言われては、キソラも反論できない。
「それで、どうする。あっちも駄目、こっちも駄目となると、もう道は無いぞ」
「さっき通り過ぎたとか言ってた場所は?」
「キソラが凍らせちゃったみたいだから、無理でしょうね」
ジト目を向けるアリシアに、キソラは目を逸らす――が、そうしていても問題は解決しないので、目線をアキトたちに向ける。
「とりあえず、そっちの地図を見せて。試験を再開しようにも出来ないし」
「でも、カンニングにならない?」
「そもそも、この試験の目的は、私たちの協調性とかを確認したり、示すためのもの。敵対しているのならいざ知らず、こんなことが許されないようじゃ、制限付きの――私や兄さんの管理下にある迷宮やダンジョンとかで生き残らせることなんか、まず無理だよ」
自分たちの通ってきた場所とノエルたちが通ってきた場所をキソラは確認しながら、そう告げる。
迷宮やダンジョンはその特性上様々ではあるが、迷宮管理者の管理下にあるいくらかの制限付きの迷宮やダンジョンの危険度が優しいわけがない。
もし優しくなっているとすれば、新人冒険者たちに迷宮やダンジョンの攻略経験値を与える時のみである。当然、先輩冒険者が付いていくときもあるが、基本的に低レベルなモンスターを狩ったところで彼らに何のメリットも無いし、新人とパーティ登録なんてしないから、経験値の山分けなんてことが起こるはずもない。
そして、何よりそのレベル設定をしているのがキソラとその迷宮の守護者であるために、「あまり新人を苛めてやるなよ?」と他の冒険者たちに言われながらも、現実の厳しさを教えてやろうと新人たちが苦手としているであろう部類(狙撃系に弱いなら、狙撃系を得意とするモンスター等)を放つのだから、鬼と言われても仕方がない。
まあ、一部の冒険者たちからは弱点が分かったり、苦手分野の強化が出来るから有り難がれたりしているのだから、世の中と言うものは分からないものである。
「どう?」
「確認するけど、四人は途中で合流したってことでいいんだよね?」
「そうだな」
キソラの確認に、アキトが肯定する。
「んーー……」
「え、何。まさか、あんたでも駄目とか言わないよね?」
ノエルが何かを察知したかのように尋ねるが――
「……いや、もう、ね」
キソラの歯切れの悪さに、面々も顔を引きつらせる。
「頼みの綱が駄目とか……」
「マジでどうするんだよ、これ……」
試験の合格など、絶望的である。
「つか、誰だよ! キソラがちゃんと正しいルートを導き出すはずだとか言ったのは!」
「私ですよ! でも、キソラまで駄目とか、普通は思わないじゃん!」
ギャーギャーと揉め出したアキトとノエルに、フィールがどうするの、とキソラに目を向けようとして――
「うふふふ。この試験が終わったら、マジで説教しなきゃ……」
――止めた。
何だか、負のオーラを感じる。
「はぁ、もうマジであいつ呼ばないといけないとか、最悪」
「あいつって、守護者?」
「それ以外、誰が居ると?」
どうやら、思っていた以上に仲が悪いらしい、と面々は思う。
とりあえず、よく響きそうな位置にまで移動したキソラは大声で告げる。
「とっとと、正規ルートに戻せ! バカ守護者!!」
そんな呼び掛けで来るのかと思うのだが、ここはノークの管理下にある迷宮であり、何より守護者はノークが好きなのである。
つまり――
「早く来ないと、有ること無いこと、兄さんに吹き込むぞー!」
何と言う低レベルな脅しだろうか。
そんなことを思っていれば、どこからか音がする。
「……ね、ねぇ、キソラ。守護者の逆鱗に触れたとかはないわよね?」
「それは無い。というか、そこまであいつは短気じゃないし」
そんなキソラの返事に、彼女のことを知る面々は肩を竦める。
「仲悪いくせに、よく分かってるんじゃねーか」
「いやでも、守護者のことは知ることになるの。特に私たち兄妹みたいなタイプの管理者はね」
それでも、こうして助けを呼んでいる辺り、キソラの方はそんなに嫌っていないんじゃないのか、と予想する。
『――ふっざけんじゃねぇぞ、クソ管理者! あと、『ヴィッキー』って、呼ぶんじゃねぇっ!!』
そして、キソラを殺そうとするぐらいに嫌いなら、今の呼び掛けぐらい無視をすればいいのに、彼女の要請に対し、こうしてちゃんと来ている守護者にも、ノエルたちは微笑ましそうに見ていた。
「……私、何となく分かった。守護者はツンの強いツンデレで、ノークさんと同じぐらい、キソラのことが好きなんだ」
そう結論付けたユーキリーファに、誰も否定はしなかった。
今でもギャーギャーと言い合いをしているが、彼ら守護者はエターナル兄妹が生まれたときから一緒に居るようなものなため、幼少時から一緒に居るノエルたちよりも彼女たちのことについては詳しいはずなのだ。
「よし、表へ出ろ。クソ守護者。こっちが下手に出ていれば、付け上がりやがって。空間魔法で存在そのものを消してやる」
『ハッ、どこが付け上がって、下手に出ているんだか。あんたの願いなんか、こっちから願い下げだっつーの! 大体、そんなこと出来るもんならやってみやがれ。まあ、俺が消滅したら、怒られるのはお前だろうがな』
「その台詞、そのまま返してあげる。血は何よりも濃いんだから」
――あ、これは駄目な奴だ。
そう、アリシアたちは思う。
ユーキリーファたちが一つの可能性に結論付けている間にも、二人の舌戦は終わっていなかったらしい。
「しかも、何かヒートアップしてるし……」
「……とりあえず、一回止めるか。このままだと、休もうにも休めない」
ユーキリーファの呆れとアオイの正論とも取れる言葉に、面々は頷き、動き出すのだった。
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