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第二章、戦争
第六十二話:国内・学院攻防戦XI/国境付近にてⅢ(放たれた矢の行方)
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さて、牽制するとは言ったが、この暗闇の中、火の明かりのみを頼りに、どのように牽制するべきか。
「……」
目の前では、四聖精霊とリックスがアルヴィスとニール、レイの率いる帝国軍と交戦中であり、アキトとアザーも似たような状況だった。
「ま、何事もやってみるべきか」
とりあえず、やるだけやってみることにすれば、キソラは槍から弓へと変化させる。
シルフィードが持つ弓ほどではないが、自身の愛機である以上、それなりに威力はあるはずだ。
刀剣を扱うことの方が多いためか、弓を扱うのは久し振りでもあり、感触を少しでも思い出すためにも、弦を軽く引っ張ったりするなどをして確認した後、矢も魔力で生成し、誰もいない方向に魔力光を放ち、それを的に見立てて試し打ちをしてみる。
「うわっ!」
『――っつ!』
『きゃっ!』
「……あちゃー」
だが、誰もいない方向に試し打ちをしたにも関わらず、それは花火のように爆発し、その火花と閃光が近くにいた敵味方問わずその者たちの目を眩ませたらしい。
「キソラ!」
『主!』
一時的に全員の動きは止まったが、ようやく視力が回復し、再度見えるようになってきたのか、リックスと四聖精霊たちから呼び掛けにより責められる。
「あー、ごめん」
こんな謝り方をしているが、キソラに悪気があったわけでもなければ、わざとやったわけでもない。ただ、久々すぎて加減を間違えただけなのだ。
(こりゃ、定期的に確認したり、メンテナンスしたりしないと駄目かなぁ)
弓だけでこれでは、使っていない他の武器モードも同じようになりかねない。
「……つか、まだあんなのがあったのかよ」
一方で、視力が回復し、見えるようになったらしいニールが顔を引きつらせる。
しかも、爆発した勢いから察するに、使った魔力量も魔力量だったのだろう。
「まだあれだけの魔力があったとか、さすが空間魔導師というべきか」
そう告げるアルヴィスは目を細め、にやっと口角が上げる。
「なーんか、楽しそうだな。アル」
ニールが暗にアルヴィスの表情について指摘すれば、不思議そうに目を向けられ、
「当たり前だろ。相手は空間魔導師だぞ」
そう返される。
これを聞いたニールは「おい」と突っ込みたくなった。
「あのな、そう思えるのは、お前だけだって」
相手が相手だけに正直、撤退したい。
「で、だ。お前は彼女の相手をし続けるつもりか?」
ニールの問いに、アルヴィスは無言で時計塔屋上で何か思案するキソラに目を向ける。
「するとしたら、どうするつもりだ?」
逆に問い返され、驚きの表情を浮かべるニールだが、すぐさまふっと笑みを浮かべる。
「それなら、この目の前にいる奴らをどうにかしないとな」
空間魔導師であるリックスと四聖精霊に、キソラの喚んだ天空騎士団の面々を見ながらそう言えば、先程までずっと“黒雷”を使っていたニールが、腰にある剣を抜く。
「……うん、やるだけやってみようか」
考えが纏まり、とりあえず方向性を決めたのか、顔を上げたキソラは、敵味方それぞれが今いる位置を確認する。
「シルフィード!」
『何?』
キソラに呼ばれ、シルフィードがやってくる。
今から狙う目標物を射抜くには、彼女の協力が必要になるため、キソラはシルフィードを呼んだのだ。
「シルフィの弓で、国境付近にまで矢を放てる?」
『いや、やろうと思えば、不可能ではないよ。放たれる矢には風の加護が付くから、横風の影響で目標から外れることもないし』
「だよね」
シルフィードに尋ねたのには、確認の意味もあった。
『けど、距離があるからなぁ』
だから、命中するかどうかは分からないと、シルフィードは言う。
「ま、やるだけやってみるよ」
『そっか』
無理だと言わない辺り、シルフィードはキソラの考えや頑固さをよく分かっている。
「でも、無茶すぎないか? 確認はどうするんだよ」
話を聞いていたらしいアキトが尋ねる。
「ああ、多分その辺は大丈夫だと思う」
何せ国境付近周辺には観察者と呼ばれる者たちが居るのだが、実際の所、その大半は本職ではない上に、それを知るのはその関係者と彼らに要請した者ぐらいだ。
「なら、いいんだけどな」
剣を振り上げた帝国騎士を薙ぎ払えば、アキトは一息吐く。
『それじゃ』
「やってみますか」
シルフィードが差し出した手に、キソラが自身の手を重ねて精霊憑依をすれば、シルフィードが所有する武器の一つである『風の弓』を手にする。
「久し振りだから、コントロールは任せた」
『りょーかい』
魔力の矢を弓に合わせて構えれば、鏃を中心に小さな風が渦のように生じる。
「……よし」
そして、軽く深呼吸すると、目標地点である国境付近のある方へ、狙いを定める。
「狙うのはたった一つ……一人だけだから」
『大丈夫。最低でも一ヶ所は掠らせる』
シルフィードが隣で笑みを浮かべてそう返した後、吹いてきた風が止むのと同時に、キソラが矢を放つ。
放たれた矢は、横風の影響を受けても逸れることはせず、ただ真っ直ぐに目的地へと向かっていく。
――国境付近の森。
「特に変化無し、か」
双眼鏡を覗きながら、そう呟く。
ずっと見ていて変わったことと言えば、(帝国騎士と同じ軍服を着ていることから)帝国軍所属と思われるある一人の人物により、こちらの騎士や兵たちが蹂躙され、その人物を危険だと判断した数人の騎士と空間魔導師たちが抑えているといったところだ。
はっきり言って、あんなのが国内で暴れられては困るし、迷惑である。もし仮に、観察を自分に頼んできた依頼者が対峙したとしても。
「さて、そろそろこちらの状況報告でも――っつ!?」
――彼が小型通信機を手に取る前に起きたそれは、依頼者に対し、「人使いが荒い」と言いながらも、きちんと仕事をしている観察者(もとい諜報部員)の彼の横を通り過ぎていく。
「……今のって」
横は横でもほぼ真横だったから、彼は何が自分の横を通って行ったのか、その目で捉えていた。
そして、それは――……
「……ん?」
国境付近で帝国軍の(所属と思われる)女と交戦中だったノークたちの元へと向かい、近づいてくる矢にいち早く気付いたノークが振り返った。
「イアン、アクアさん、避けて!」
「っ、」
「わっ!」
ちょうど矢の軌道上にいた二人へとノークが叫べば、間一髪で二人が回避する。
そして、面々と対峙していた彼女も容易く回避したことで、矢は地面に突き刺さり、その動きを止めた。
「この矢――」
彼女の隣を通り過ぎ、地面に刺さった矢を見て、ノークとエルシェフォード、アクアライトの三人は、すぐにその矢が誰の物で、誰が放ったのかを理解した。
「……つか、え、マジ? 冗談じゃなく?」
「でも、風を纏っているのを見ると、シルフィードの弓矢で間違ってはないと思うよ?」
「いやいやいや! 仮にそうだとしても、学院からどれだけ距離があると思ってるんですか!」
そう話し合ってはみるが、放ったのはおそらくキソラであり、放った場所は彼女の通う学院にある時計塔だろうと、そこまで推測する三人。
「次は本当に、当ててきそうだから怖い」
「矢の軌道上に居なければ大丈夫だと思うけど、風の加護があるから、下手に避けるのは止めた方が良い気がする」
それこそ本当に当たりかねない。
「それで、どうするんだよ。次来るまでの時間が分からないから、どうしようも無いぞ」
イアンの問いに、ノークは放たれる魔法に対し、防壁を展開しながら思案する。
「ああ、その事なんだけど……とりあえず、この矢を放った主に連絡してみる」
その後、何かぶつぶつと呟きながら、小型通信機を操作するノークに、若干怖くなったのか、イアンとレオンが引く。
「ノーク、あの子に連絡するなら、陣営まで下がりなよ。危ないし、邪魔だから」
先程から帝国軍の女と対峙するアクアライトに言われ、ノークたち三人はあっさりと自軍の陣営にまで戻るのだが、そんな彼らを見た後、
「後で私たちからも、言っておく必要があるかもね」
と、エルシェフォードがアクアライトに視線だけ向けながら言う。
「そうだね。けどその前に――」
アクアライトは帝国軍の女へ目を向けながら言う。
「戦争を終わらせないと」
それにエルシェフォードが笑みを浮かべて無言で肯定すれば、水と風が二人の周囲に渦巻き始める。
「それじゃ、あの子が感づいてこっちに来る前に、さっさと終わらせようか」
そして、それぞれの相棒を構えれば、
「第二ラウンド、開始と行きましょうか」
そう、エルシェフォードが口火を切った。
「……」
目の前では、四聖精霊とリックスがアルヴィスとニール、レイの率いる帝国軍と交戦中であり、アキトとアザーも似たような状況だった。
「ま、何事もやってみるべきか」
とりあえず、やるだけやってみることにすれば、キソラは槍から弓へと変化させる。
シルフィードが持つ弓ほどではないが、自身の愛機である以上、それなりに威力はあるはずだ。
刀剣を扱うことの方が多いためか、弓を扱うのは久し振りでもあり、感触を少しでも思い出すためにも、弦を軽く引っ張ったりするなどをして確認した後、矢も魔力で生成し、誰もいない方向に魔力光を放ち、それを的に見立てて試し打ちをしてみる。
「うわっ!」
『――っつ!』
『きゃっ!』
「……あちゃー」
だが、誰もいない方向に試し打ちをしたにも関わらず、それは花火のように爆発し、その火花と閃光が近くにいた敵味方問わずその者たちの目を眩ませたらしい。
「キソラ!」
『主!』
一時的に全員の動きは止まったが、ようやく視力が回復し、再度見えるようになってきたのか、リックスと四聖精霊たちから呼び掛けにより責められる。
「あー、ごめん」
こんな謝り方をしているが、キソラに悪気があったわけでもなければ、わざとやったわけでもない。ただ、久々すぎて加減を間違えただけなのだ。
(こりゃ、定期的に確認したり、メンテナンスしたりしないと駄目かなぁ)
弓だけでこれでは、使っていない他の武器モードも同じようになりかねない。
「……つか、まだあんなのがあったのかよ」
一方で、視力が回復し、見えるようになったらしいニールが顔を引きつらせる。
しかも、爆発した勢いから察するに、使った魔力量も魔力量だったのだろう。
「まだあれだけの魔力があったとか、さすが空間魔導師というべきか」
そう告げるアルヴィスは目を細め、にやっと口角が上げる。
「なーんか、楽しそうだな。アル」
ニールが暗にアルヴィスの表情について指摘すれば、不思議そうに目を向けられ、
「当たり前だろ。相手は空間魔導師だぞ」
そう返される。
これを聞いたニールは「おい」と突っ込みたくなった。
「あのな、そう思えるのは、お前だけだって」
相手が相手だけに正直、撤退したい。
「で、だ。お前は彼女の相手をし続けるつもりか?」
ニールの問いに、アルヴィスは無言で時計塔屋上で何か思案するキソラに目を向ける。
「するとしたら、どうするつもりだ?」
逆に問い返され、驚きの表情を浮かべるニールだが、すぐさまふっと笑みを浮かべる。
「それなら、この目の前にいる奴らをどうにかしないとな」
空間魔導師であるリックスと四聖精霊に、キソラの喚んだ天空騎士団の面々を見ながらそう言えば、先程までずっと“黒雷”を使っていたニールが、腰にある剣を抜く。
「……うん、やるだけやってみようか」
考えが纏まり、とりあえず方向性を決めたのか、顔を上げたキソラは、敵味方それぞれが今いる位置を確認する。
「シルフィード!」
『何?』
キソラに呼ばれ、シルフィードがやってくる。
今から狙う目標物を射抜くには、彼女の協力が必要になるため、キソラはシルフィードを呼んだのだ。
「シルフィの弓で、国境付近にまで矢を放てる?」
『いや、やろうと思えば、不可能ではないよ。放たれる矢には風の加護が付くから、横風の影響で目標から外れることもないし』
「だよね」
シルフィードに尋ねたのには、確認の意味もあった。
『けど、距離があるからなぁ』
だから、命中するかどうかは分からないと、シルフィードは言う。
「ま、やるだけやってみるよ」
『そっか』
無理だと言わない辺り、シルフィードはキソラの考えや頑固さをよく分かっている。
「でも、無茶すぎないか? 確認はどうするんだよ」
話を聞いていたらしいアキトが尋ねる。
「ああ、多分その辺は大丈夫だと思う」
何せ国境付近周辺には観察者と呼ばれる者たちが居るのだが、実際の所、その大半は本職ではない上に、それを知るのはその関係者と彼らに要請した者ぐらいだ。
「なら、いいんだけどな」
剣を振り上げた帝国騎士を薙ぎ払えば、アキトは一息吐く。
『それじゃ』
「やってみますか」
シルフィードが差し出した手に、キソラが自身の手を重ねて精霊憑依をすれば、シルフィードが所有する武器の一つである『風の弓』を手にする。
「久し振りだから、コントロールは任せた」
『りょーかい』
魔力の矢を弓に合わせて構えれば、鏃を中心に小さな風が渦のように生じる。
「……よし」
そして、軽く深呼吸すると、目標地点である国境付近のある方へ、狙いを定める。
「狙うのはたった一つ……一人だけだから」
『大丈夫。最低でも一ヶ所は掠らせる』
シルフィードが隣で笑みを浮かべてそう返した後、吹いてきた風が止むのと同時に、キソラが矢を放つ。
放たれた矢は、横風の影響を受けても逸れることはせず、ただ真っ直ぐに目的地へと向かっていく。
――国境付近の森。
「特に変化無し、か」
双眼鏡を覗きながら、そう呟く。
ずっと見ていて変わったことと言えば、(帝国騎士と同じ軍服を着ていることから)帝国軍所属と思われるある一人の人物により、こちらの騎士や兵たちが蹂躙され、その人物を危険だと判断した数人の騎士と空間魔導師たちが抑えているといったところだ。
はっきり言って、あんなのが国内で暴れられては困るし、迷惑である。もし仮に、観察を自分に頼んできた依頼者が対峙したとしても。
「さて、そろそろこちらの状況報告でも――っつ!?」
――彼が小型通信機を手に取る前に起きたそれは、依頼者に対し、「人使いが荒い」と言いながらも、きちんと仕事をしている観察者(もとい諜報部員)の彼の横を通り過ぎていく。
「……今のって」
横は横でもほぼ真横だったから、彼は何が自分の横を通って行ったのか、その目で捉えていた。
そして、それは――……
「……ん?」
国境付近で帝国軍の(所属と思われる)女と交戦中だったノークたちの元へと向かい、近づいてくる矢にいち早く気付いたノークが振り返った。
「イアン、アクアさん、避けて!」
「っ、」
「わっ!」
ちょうど矢の軌道上にいた二人へとノークが叫べば、間一髪で二人が回避する。
そして、面々と対峙していた彼女も容易く回避したことで、矢は地面に突き刺さり、その動きを止めた。
「この矢――」
彼女の隣を通り過ぎ、地面に刺さった矢を見て、ノークとエルシェフォード、アクアライトの三人は、すぐにその矢が誰の物で、誰が放ったのかを理解した。
「……つか、え、マジ? 冗談じゃなく?」
「でも、風を纏っているのを見ると、シルフィードの弓矢で間違ってはないと思うよ?」
「いやいやいや! 仮にそうだとしても、学院からどれだけ距離があると思ってるんですか!」
そう話し合ってはみるが、放ったのはおそらくキソラであり、放った場所は彼女の通う学院にある時計塔だろうと、そこまで推測する三人。
「次は本当に、当ててきそうだから怖い」
「矢の軌道上に居なければ大丈夫だと思うけど、風の加護があるから、下手に避けるのは止めた方が良い気がする」
それこそ本当に当たりかねない。
「それで、どうするんだよ。次来るまでの時間が分からないから、どうしようも無いぞ」
イアンの問いに、ノークは放たれる魔法に対し、防壁を展開しながら思案する。
「ああ、その事なんだけど……とりあえず、この矢を放った主に連絡してみる」
その後、何かぶつぶつと呟きながら、小型通信機を操作するノークに、若干怖くなったのか、イアンとレオンが引く。
「ノーク、あの子に連絡するなら、陣営まで下がりなよ。危ないし、邪魔だから」
先程から帝国軍の女と対峙するアクアライトに言われ、ノークたち三人はあっさりと自軍の陣営にまで戻るのだが、そんな彼らを見た後、
「後で私たちからも、言っておく必要があるかもね」
と、エルシェフォードがアクアライトに視線だけ向けながら言う。
「そうだね。けどその前に――」
アクアライトは帝国軍の女へ目を向けながら言う。
「戦争を終わらせないと」
それにエルシェフォードが笑みを浮かべて無言で肯定すれば、水と風が二人の周囲に渦巻き始める。
「それじゃ、あの子が感づいてこっちに来る前に、さっさと終わらせようか」
そして、それぞれの相棒を構えれば、
「第二ラウンド、開始と行きましょうか」
そう、エルシェフォードが口火を切った。
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