15 / 107
第1章 リラ・過去編
闇の中の真実③
しおりを挟むジェスが去った後ラリウスは一旦倉庫を出て、マディーナを連れすぐに戻ってきた。
「うおっ。また派手にやったな」
マディーナはそう言ってるが格段驚いた様子はなく冷静に倉庫内の様子を見ていた。
「まぁ、人数も多かったので…。とりあえずシルキーを先に診てもらってもいいですか?」
「あぁ。わかった」
マディーナはラリウスにそう返事すると倉庫の奥にいるシルキーとティーナの方へ歩いていった。
「よぉシルキー坊。派手にやられたみたいだな」
マディーナはシルキーに近づくと頭にポンと手をやりニヤリと笑った。
「マディーナ。今度坊って言ったら刺すよ」
シルキーは頭にのった手を払いのけながらマディーナの方をムッとした様子で睨んだ。
「その様子じゃそこまで酷くないみたいだな。と、ティーナ嬢は今日もお美しいですね」
「まぁ、ありがとうございます」
「ティーナ嬢は怪我はないか?」
「えぇ、わたくしは大丈夫ですわ」
「それは良かった。で、俺のティーナ嬢の腕で眠ってる幸せなこの女は?」
マディーナはそう言うとティーナの腕の中で眠るリラの顔を覗き込んだ。
「誰が"俺の"ですか。この方はリラさんと言って、あの倒れてる方達の被害者になるところだったんです」
「とにかく詳しい事は車で説明しますからシルキーを」
ラリウスにそう促されマディーナはシルキーの前にしゃがみ込んだ。
「別にたいしたことないよ……」
「はいはい」
マディーナはシルキーの言葉を適当に流しシルキーのシャツをめくり上げた。シルキーの鳩尾あたりは赤紫に変色し、右わき腹には痛々しい刺し傷が。
「……いつ見てもお前の肌は白いな」
「……刺すよ」
「あはは……冗談だよ。ちょっと触るぞ」
マディーナはそう言うとスッと軽くお腹を触った。
「……1本折れてるな。まぁ内蔵には食い込んでないと思うが…。息がしにくいとかはあるか?」
「ううん。大丈夫」
「なら肺も大丈夫そうだな。なぁにメイザース家の血を継いでるなら2週間もしないうちに治るさ」
「良かったですわ」
マディーナの言葉にティーナがホッと胸をなで下ろす。
「だから大丈夫だって言ったでしょ」
「ただし絶対安静だからな」
マディーナはそうくぎを刺すと、シルキーの洋服をもとに戻した。
「わかりました。では治療は車の中でお願いします。先にここの事後処理を」
「はいはい、と。このお嬢ちゃんの記憶をいじればいいんだろ?」
「いえ、彼女は連れて行くつもりです」
「はぁ……!? ラリウス、どういうつもりだよ!」
ラリウスの言葉に驚いたのはマディーナだけじゃなくティーナもシルキーも驚いていた。
「あとで詳しくは説明しますが、このままリラさんを戻すと彼女が危険なんです。なので彼女は死んだことにして下さい」
「死んだ事に? そこまでする必要があるのか?」
「はい」
ラリウスの強い言葉にマディーナはそれ以上は言い返さなかった。
「……わかったよ。で、ちゃんとこの嬢ちゃん以外で誰か生かしてるのか?」
「えぇ、そこの青い服の男はまだ息があるはずですわ」
「了解。だいたい仲間割れの殺し合いってとこでいいか?」
そう言いマディーナがラリウスへと視線を向ける。
「えぇ、詳しくはあなたに任せます。では私達は先に車に戻ります」
「あぁ」
マディーナの返事を聞くとラリウス達は倉庫から出ていった。
その後車の中でシルキーは治療を受け、マディーナはラリウスに詳しい事情を説明してもらっていた。
「"悪魔"が憑いてた…? なんでまた…」
「えぇ……。実はハルモニア家について下調べしたんですが、ジェス・ハルモニアは約1年前まで病気で瀕死の状態だったんですよ。しかし急に病状は回復し病気の影も形もなくなった…。
そしてジェスの父親がある宗教にのめり込み始めたのも約1年前」
「宗教?」
「えぇ、その宗教の崇拝対象が"悪魔"なんです」
「あ~…そういう事ね」
「えぇ。恐らく"悪魔"を呼び出すような儀式をしたのだと…。そしてあの連続婦女暴行殺人事件が起きたのはジェスの病気が回復した後です」
「合致するな」
「まぁ、半信半疑だったんですが……」
「で、この子がなんで危ないんだ?」
「ジェスはリラさんに異常に執着してます。彼女はジェスに特に可愛がられてたみたいなんですが……。
調べたところジェスは裏で手を引き、使用人の中でリラさんが孤立するようにしていたようです」
「なんで?」
今まで2人の会話を黙って聞いていたシルキーがふと口を開いた。
「リラさんが他のところに行かないようにですよ。まるで自分だけがリラさんの味方であるかのように思わせるんです。ある意味洗脳に近いですね」
「うわぁ……そいつは酷いな」
「きっとジェスは体力を回復しリラさんを取り戻しにくるはずです」
「悪魔に憑かれてもジェスの意志はあるのか?」
「あるみたいですよ。最後私に向かって[リラは僕のだ]と言ってましたから」
その時のことを思い出したのか、ラリウスの目が一瞬鋭く光った。
「そうか…。……ん? でもジェスって奴はこの子を殺そうとしてたんだろ?」
「私の勝手な予想ですが"殺すふり"だったのではないかと…。彼は女性の恐怖する顔に性的興奮を感じてたみたいですしね。最初は他の女性で欲望を満たしていたけど我慢できなくなった、と」
「はぁ……この子も大変なやつに好かれたな……」
マディーナは慰めるかのように眠るリラの頭を優しく撫でた。それをシルキーはムッとした表情で見ていたが誰も気づいてはいなかった。
0
お気に入りに追加
167
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】
階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、
屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話
_________________________________
【登場人物】
・アオイ
昨日初彼氏ができた。
初デートの後、そのまま監禁される。
面食い。
・ヒナタ
アオイの彼氏。
お金持ちでイケメン。
アオイを自身の屋敷に監禁する。
・カイト
泥棒。
ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。
アオイに協力する。
_________________________________
【あらすじ】
彼氏との初デートを楽しんだアオイ。
彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。
目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。
色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。
だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。
ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。
果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!?
_________________________________
7話くらいで終わらせます。
短いです。
途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
見知らぬ男に監禁されています
月鳴
恋愛
悪夢はある日突然訪れた。どこにでもいるような普通の女子大生だった私は、見知らぬ男に攫われ、その日から人生が一転する。
――どうしてこんなことになったのだろう。その問いに答えるものは誰もいない。
メリバ風味のバッドエンドです。
2023.3.31 ifストーリー追加
【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎
——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。
※連載当時のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる