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第2.5章 幕間
変化①
しおりを挟む「なんでだ」
ジュドーが自宅の扉を開け、目の前に立つ人物を見て出た言葉がそれだった。
「こ、こんにちは……」
眉間に皺を寄せ、あからさまに嫌がっている家の主にリラはか細い声で挨拶をした。
「なんで、お前が、ここに、いる」
最初の言葉の答えがもらえなかったのが気に障ったのか、ジュドーはさらに眉間に皺をよせ言葉を区切り区切り強く言ってみせた。
「いや、その…体の具合は大丈夫かな~と思いまして…」
「大丈夫だ。問題はない。じゃ」
そう言ってジュドーは扉を閉めようとしたが、リラは閉めまいとガシと扉の端を掴んだ。
「なんだ。もう用は済んだだろ。手を離せ」
「ちょっ…待ってください! 用は済んでません!」
「体の具合を聞きに来ただけだろ。だったら済んだはずだ」
「そうじゃなくて…そのっ…私…謝りにきたんですっ」
リラがそう言うとジュドーの扉を持つ力が緩んだ。
「……別にあの事はお前は悪くない。気にするな」
「そうもいかないんです。それに私ロードさんからこれも預かってきましたし」
そう言ってリラは持っているバスケットをジュドーに見せてみせた。
「…なんだそれは」
「ロードさんがジュドーさんはちゃんとご飯を食べてないでしょうからって色々と食料を持たされたんです」
「…飯くらい別に大丈夫だ」
「それと、焼きたてのクロワッサンも買ってきました」
クロワッサンの言葉が出た瞬間、ジュドーはピクリと反応した。
「……どこのだ?」
「もちろんラリウス様達も好きな“オベリーヌ ベーカリー"のです」
「……少しだけだからな」
ジュドーはそう言うと閉じかけていた扉を開くとリラを中へと招き入れたのだった。
【変化】
「お邪魔します」
ジュドーの部屋はテーブルに椅子、そしてベットと必要最低限の家具があるのみで、飾り気や色味もなく殺伐としていた。
「そこに荷物置いていいから」
ジュドーに言われリラは部屋の中央にあるテーブルに荷物を乗せた。
「悪いが客人に出せるようなお茶は家にないからな」
「いえっ! 私の事はお構いなく! 長居はしませんので」
「なら良かった」
少しの沈黙があり、リラが意を決したように口を開いた。
「あのっ! こ、今回のこと本当に申し訳ありませんでした!」
「……さっきも言ったけど気にしなくていい。あれは俺が弱すぎたんだ」
「でも…。やっぱり私が曖昧な態度をとったのも原因ですし…」
「確かにお前の態度にも原因はある」
ジュドーのストレートな言葉はグサリとくるものだったが、それはリラ自身よく自覚していたものだった。
「……でも、お前はメイザース家に対して最低限の礼儀はわきまえようとしていただろ。
それにあいつはお前がどの選択肢を選ぼうとも、最初から連れ去るつもりだった。例えあの日お前があいつに会いに行かなくても、別の方法で近づいたはずだ」
「それは…」
「だから、今回の事はもうこれ以上謝るな。
そしてこれからは絶対にメイザース家を、ラリウス様を裏切らないと誓え。それでチャラだ」
「は、はい! もちろんです」
「ならいい。さ、もう用は済んだだろ」
「はい。あ、そうだロードさんに預かったものを」
リラはそう言うと机の上に乗せたバスケットの中から食べ物を出し始めた。
「ポタージュとビーフシチュー、ポテトサラダにローストビーフ、シェパーズパイにスコッチエッグにクロワッサン…」
「ちょ…! 待て待て! こんなに食べきれないぞ」
一体このバスケットのどこからそんなに出てくるのか、次々とテーブルに並べられる料理にジュドーは慌てて制止をかけた。
「え…あ、でも一つ一つの量は少ないですし、一気に食べなくても冷蔵庫に保存しておけば…」
「……壊れてる」
「……え?」
「今、冷蔵庫壊れてるんだ」
「え……」
「……お前昼は食ったのか?」
「あ、いえ…まだ」
ジュドーはリラの返事を聞き、小さくため息をつくと渋々ある提案をした。
「お前も食べていけ」
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