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第2章 ジェス編
覚醒④
しおりを挟む「っく! お前は…っ!」
ラリウスによって窓から落とされたジェスだったが、空中でなんとかラリウスから逃れ、頭から地面に叩きつけられるのを回避した。
お互い距離を取り着地する。
「ははっ…ちょっとびっくりしちゃったよ」
「ちょっと、じゃないでしょう?」
「……ふん。そんなことよりその目…。やっぱりあんたも契約者だったんだ」
「あなたのような低俗な悪魔と一緒にしないで下さい」
ザッとラリウスが短剣を構え、ジェスへと向かっていく。
ジェスもナイフで応戦するが圧倒的な力で弾き飛ばされ、屋敷の周りにある木々のうちの一つに背中を強く打ちつけた。
「ぐっ…!」
隙を与えずラリウスはそのままジェスに蹴りを入れるがそれはギリギリで避けられ、かわりに大木が派手な音をたてて倒れた。
ラリウスは着地するジェスに休む暇も与えず斬りつける。 反応が遅れたジェスの右肩に短剣が食い込んだ。
「っくそ!」
ジェスもラリウスにナイフを突き刺そうとするがバッと距離を取られた。
「はっ…今回は聖水ってやつにそれはつけてないみたいだね。そんな暇なかった?」
そう言いジェスが肩を手で抑えると血はピタリと止まり、傷口も跡を少し残して塞がった。
「あぁ、そっか。今のあんたじゃ使えないか。
それにしても片方だけ悪魔の眼を持ってるなんてお前出来損ないなんじゃないの?
なんで片目が黄金色になってんの?」
ジェスの言葉にラリウスは黄金色の瞳と紅い色の瞳をうっすら細めた。
「…そんな事も知らないなんて、あなたはやはり低俗な悪魔のようですね」
ラリウスの言葉にジェスの目が鋭くなる。
「はっ! そうやって僕を甘く見たのが間違いだったね」
「えぇ、私もそう思ってます。だからこそ今回はー…本気であなたを殺します」
そう言い終わると同時にジェスの視界からラリウスが消えた。そして気が付けばジェスの腹部には短剣が深く突き刺さっていた。
「なっ…」
短剣は内臓までを裂いたようで、ジェスの口から血が流れた。
「流石に内部の修復は無理でしょう?」
ラリウスは口元に弧を描きながら、さらにグッと短剣の身をジェスの体に沈める。
「く…そっ…」
ジェスはラリウスの肩を掴むが力が入らず、そのまま地面へと倒れた。ずるりと短剣がジェスの体から引き抜かれ、ぼたぼたと赤い血が刃を流れる。
「おや? どうしてさっさとジェスの体から離れないんですか?
あなたも一緒に死ぬ気ですか?」
ラリウスは優しい口調でジェスを冷たく見下ろす。
「て…めぇ…」
ジェスは自分の爪をナイフのように鋭く変化させ攻撃しようとした。が、その手をラリウスはガッと踏み地面にめり込ませた。
「あぁ、なるほど。ジェスの体と完全に同調しちゃってもう出られないんですね。
やはりあなたは 低俗 ですね」
「黙れっ……!」
「……そういえば私が取ってあげた腕はどちらでしたっけ?」
「くっ……」
「あぁ、こっちの変化出来てない方の腕ですね」
ラリウスはどこか楽しそうにそう言うと、倒れているジェスの背中に片足を乗せ右手を掴んだ。
月光に反射して真っ赤なラリウスの左目が光る。
「邪魔な腕は取ってあげます」
バキバキィ
「ぅう゛ああああぁあぁぁぁ!」
「あぁ…そうだ。もともとこの腕は他人のでしたね」
千切れた腕を持ち見下ろすその姿はー
「っ…悪魔、め…!」
「ラリ、ウス…様?」
その声にラリウスはハッとし、声のした方を向いた。そこにはシルキーとギルと共にリラがこちらを呆然と見ていた。
その目は怯えてるようだった。
だから彼女の前で力を使いたくなかった―…
「リラさん…」
一瞬動揺したラリウスは少し遅れてその名前を呟いた。
リラの名前が出た途端踏んでいたジェスの背中の筋肉が強張った。
ぐらりと足元の背中が動いたかと思うとラリウスは足首を掴まれ、そのまま屋敷へと投げ飛ばされてしまった。
ドォンと屋敷の壁に土埃があがる。
「ラリウス様っ…!」
リラがそう叫んだ時すでに背後に赤い目が2つ光っていた。
シルキーとギルはその気配を察知していたが、それよりもジェスの動きが速く、2人とも攻撃を仕掛ける前に殴り飛ばされていた。
一瞬の出来事に呆然としているリラの目の前にジェスが立つ。その赤い瞳はまるで我を忘れて暴れる獣のよう。
その姿にリラは声を出すことも息をすることもできなかった。
「リラ……」
ジェスがそう呟いた時、一瞬目が優しくなった気がした。リラは何か言おうと口を開こうとしたがラリウスの攻撃によってそれは叶うことはなかった。
ラリウスの気配を察知していたジェスは蹴りを塞ぎ、逆に足を掴んで今度はラリウスを地面へと叩きつけた。
動くたびにジェスの腹部の傷口から血が噴き出すが力が緩むことはなく、逆に先ほどより力は増してるようだった。
ラリウスはすぐに起き上がろうとしたが、その前にジェスに胸を思い切り踏みつけられた。
「ガハッ…!」
骨が折れたような鈍い音がし、ラリウスは口から血と空気を吐き出した。
「ラリウス様っ…!」
悲痛な叫び声を上げ、駆け寄ろうとするリラの両サイドを何かが速いスピードで駆け抜けた。その正体はギルとシルキー。
2人はそれぞれの武器をジェスに突き刺すが急所は外れ、逆に反撃をくらい飛ばされた。2人とも屋敷の壁に激突しそのまま地面へと沈んでいってしまった。
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