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Side MA - 16(-6) - 10 - もっときんにくをきたえねば -

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Side MA - 16(-6) - 10 - もっときんにくをきたえねば -


こんにちは、マリアンヌ・ボッチです。

ノルドさん・・・アーノルド・シェルダン様が私の両親に向かって「お嬢さんをくれ!」と叫びました、私は意味が分からずとても混乱しています。

「おい・・・ノルド」

「ノルドちゃん・・・」

「何だ俺は今大事な話を・・・」

「落ちつけノルド、順番が間違ってるだろ、マリアンヌ嬢の意思は確認したのか?、自分の気持ちは伝えたのか?」

「・・・先に最も決定権を持っている人物・・・親に・・・そう本に書いてあった」

「何の本だよ?」

「昔の兵法だ、まずは素早く敵の本陣に斬り込み将の首を・・・落とせと」

「何でそんな本を参考にするのよぉ!」

エルさんとインフィーちゃんが呆れ、お父様が慌てて自分の首を押さえました・・・私のお父様に対して「お嬢さん」を要求って、それ私の事だよね、・・・まさかノルドさん、私のせいで気分を害して・・・お父様に私の首を・・・命を寄越せと・・・。

フルフル・・・

「い・・・いやぁ・・・」

「落ち着いてマリアンヌさん、貴方色々と想像を巡らせているのでしょうけど、それは全部間違っているわ!」

「ほら今目の前にマリアンヌ嬢が居るんだから直接伝えろよ」

「・・・ダメだ」

「何でだよ!」

「彼女の前に立つと・・・話し掛けようとすると・・・呼吸が速くなり胸がドキドキするんだ、おそらく俺の鍛錬が足りないのだろう、もっと・・・もっと筋肉を鍛えねば・・・まともに話ができない!」

「・・・」

「毎日鍛錬をしてこのドキドキを止めようとしているのだが・・・ダメなのだ!、呼吸や脈は止める事ができるようになったのだが・・・心臓までは・・・だから俺の気持ちはまだ直接伝えられないのだ!」

「それ止めたら死んじゃうから!」

「だが鍛錬のおかげで顔は赤くならなくなったぞ、見てろ・・・ぬうんっ!」

「やめろノルド!、確かに赤くはなっていないが紫色になってる!」

殿下3人組が意味の分からない会話を繰り広げている隣でお姉様とお姉様のご両親は頭を抱えています・・・いえ、プルプルしてるから・・・笑ってる?。

「お父様ぁ・・・私もしかして・・・死んじゃう?」

「ぶふぉっ」

あ、お父様がお茶を鼻から吹きました・・・。

「・・・っ」

お母様は・・・ハンカチでお顔を押さえて・・・。

「ぷふぉっ・・・ふひゃはは・・・ごめん・・・もうダメ・・・」

何がダメなのか分からないのですが・・・。

「ほらノルド、簡単な事だ・・・マリアンヌ嬢の前に立ってみろ、それからお前はマリアンヌ嬢と・・・どうしたいか言うだけでいい」

「大丈夫よノルドちゃん・・・私達がちゃんと見ていてあげるわ」

「分かった・・・」

のしっ

ずぅぅぅぅん・・・

え・・・何でノルドさん私の前に来るの・・・跪いて・・・それにお顔が紫色だし・・・こ・・・怖いの・・・。

それにしても近くで見たら凄い筋肉・・・お胸なんてピクピクしてるし・・・腕は・・・私の腰より太いかも・・・。

「ま・・・マリアンヌ嬢ぉ!・・・ぬぅん!」

ばしゅぅ!

「ひぃぃっ!」

ノルドさんの着てる服が突然裂けて弾け飛びました・・・上半身裸になって躍動する筋肉が私の目の前に・・・。

フルフル・・・

「・・・わぁ・・・わぁぁん!、怖いよぉ・・・」

「よしよし、怖かったわねマリアンヌさん、お姉さまが付いてるわ、もう大丈夫だから・・・」

泣き出した私のそばにお姉さまが近付いて頭を撫でてくれました。

「うっく・・・ひっく・・・怖かったの・・・ぐすっ・・・ノルドさん・・・怖い顔して、息も荒くて・・・お洋服がばしゅって・・・それにお胸の筋肉がピクピクって」

「・・・ノルド・・・出直そう・・・ボッチ殿、それからマリアンヌ嬢、俺の友人が失礼しました、この話は改めてと言う事で・・・よろしいでしょうか?」

「・・・は・・・はい、もちろんです、ですが・・・今まで望まない婚約をさせていましたので・・・私どもとしてはマリアンヌの気持ちを優先したく・・・」

「分かっています、こいつにはよく言って聞かせますので、・・・では我々はそろそろ・・・」

「はい・・・」

何故か燃え尽きて真っ白になっている上半身裸のノルドさんを2人が抱え起こして帰って行きました。

「マリアンヌ、もし・・・お前にとてもいい婚約の話があると言ったら・・・どうする?」

今まで黙っていた弟のパトリックが私に言いました・・・婚約?。

「やっとイッヌ様から解放されて自由になったのに・・・またあんな辛い思いをするのは嫌ぁ・・・」

「そうか・・・」











ざわざわ・・・

「・・・お疲れ、・・・朝から大変だな・・・」

「畜生!、寝過ごしちまったぜ・・・早く行かねぇと・・・」

ざわざわ・・・

酒場の裏通りを歩いてる奴らが俺を見てる、そりゃそうか、いい身なりをした貴族がこんな場所で独り言呟いてたら変だよな・・・。

だが俺は馬車を待ってるんだ、ここから歩いて屋敷に帰るのは遠過ぎる、あの御者は何で来ねぇんだよ!。




カラカラ・・・キィ・・・

「やっと来たか・・・おい、見ねぇ顔だな?」

ようやく俺を迎えに来た馬車には知らねぇ男が乗ってた、だが・・・確かにうちの保守用ボロ馬車だ。

「ネッコォ家の坊ちゃんですね、どうぞお乗りください」

「いつもの御者はどうしたんだよ?」

「彼は没落する家と共倒れは御免だと言って今朝辞めましたよ」

「なん・・・だと」

「さ、お早く馬車の中へ」

「・・・分かった」

ギィ・・・

がしっ!

「おい!、お前ら誰だよ!」

馬車の中には覆面をした黒い服の男が2人乗ってやがった、驚いて動きを止めた俺の腕を掴んで中に無理矢理引き摺り込まれたぞ・・・何するんだよ!。

暴れる俺を押さえ付け、男の片方が俺に言った。

「おっと、暴れないで下さいよ、シーマ・ネッコォ様の依頼により貴方をとある場所にお連れします」

「何?、シーマ・・・妹は昨日死んだぞ!」

「おや・・・そうでしたか、それは・・・お悔やみ申し上げます、ですがシーマ様の依頼はたとえ自分が死んでいても遂行の事・・・と契約内容にございますので大人しく我々の指示に従って下さい」

「その依頼ってのは何だよ!、ってか痛ぇよ、腕を離せ!」

「暴れないと約束して下さるなら・・・」

「暴れねぇから離せ!」



カラカラ・・・

「妹の依頼って何だ!、何で俺を拉致する?」

「拉致とは人聞きの悪い・・・確かに我々は裏の仕事を営んでおりますが比較的信用のある組織ですのでご安心を」

「比較的かよ・・・で、俺の質問に早く答えろ」

「依頼主のシーマ様は犯罪行為の露呈とネッコォ家の没落を予測しておられました、そして私どもの組織に家族をローゼリア王国の手の届かない場所に逃して欲しいと依頼されたのです、依頼の発動はシーマ様の指示、或いはネッコォ家の所業が公になった後・・・つまり新聞などで世間に知られた今日なのです」

「妹がお前らに依頼したのは分かった、だが裏の組織だろ、信用していいのかよ」

「裏世界は信用が大事なのですよ、それに・・・シーマ様には我々への報酬をすでに支払って頂いております「いくら払えば絶対に裏切らず、確実に依頼を遂行してくれますか?」と尋ねられ、我々の希望通りの金額をお支払い頂きました」

「どこに行くんだ?」

「ラングレー王国に家があると聞いております、景色の良い田舎の小さな家、そこで家族と一緒に静かに暮らしたい・・・と仰っておられました」

「お袋も死んだのだが・・・」

「我々の仲間が今お屋敷にお二人を、それから王城にある牢獄に当主様をお迎えに行っております、今夜遅く合流場所で安否の報告がありますので亡くなっておられるのならその時に分かるでしょう」

「そうか・・・」

「契約には逃す人数が死亡などにより減った場合はその人数分だけ生き残った家族の願いを聞くように・・・とあります、何かご要望はありますか?」

「・・・ある」

「何でしょう?」

「今から言う人物を2人誘拐してくれ、復讐がしたい」






カラカラ・・・キィ・・・

「着きました、降りて下さい」

「ここはどこだ?」

「王都の隣町にある、我々の活動拠点です、部外者に場所を知られるとまずいのでしばらく目隠しをさせてもらっても?」

「俺に拒否権は?」

「ありません(ニコッ)」

「・・・勝手にしろ」

目隠しをされた俺は男にサポートされて建物の中に入った、階段を降りたからどうやら部屋は地下にあるようだ・・・。

「目隠しを外します」

視界が開けた・・・薄汚ぇ部屋だな、テーブルがあって・・・ソファがある、周りには食い物や酒瓶が転がってる。

「他の仲間が集まる夜までここでお寛ぎ下さい、食べ物もありますので遠慮なくどうぞ、生存されているご家族が集まり次第、商人に偽装して国境に向けて出発します」

「待ってくれ、さっき頼んだ誘拐はどうなった?」

「あぁ、そうですね、誘拐して・・・どうされるのでしょう、ただ殺すだけなら我々の手でやりましょうか?」

「俺の手で・・・切り刻んでやりたい・・・いや、ただ殺すのは面白くねぇな、しばらく遊んでボロボロにして放り出すってのも良いかもな」

「ほぅ・・・裏組織の人間も驚く悪趣味なお方だ・・・、あまり長居はしたくないのですが「依頼」なら仕方ないですね・・・予定を遅らせてここでしばらく滞在しましょう・・・」
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