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4章 まきしまのちかとし〜かぞくにあおう〜

Side LE - 15 - 32 - ぢゃがりこ -

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「旦那さまぁ、この道昼間も薄暗くて気味悪かったですけど、夜はかなり怖いですねー」

「そうだな、雨も降ってるし・・・道幅は広いが谷が深い、滑落したら助からないだろう」

「魔女様か弟子の人、この時間なら居ますかね?、昼間に行った時は誰も居ませんでしたけど」

「分からん、庭の雑草が少し伐採されていたし、積み上げられていた草はまだ新しくて枯れてなかった、人が居た形跡はある」

「直接会って話してみた方がいいんじゃないですか?、魔女様だって街を守ってくれてるんだから訪問客にいきなり襲い掛からないでしょ」

「我々は魔女様について何も知らない、最初は遠くから様子を見た方がいいだろう」

私の名前はシシャー・ツタエルヨー、これは偽名で本名は別にある、いつまでも偽名じゃ失礼か・・・本名はヂャガリコ・ワサヴィーフと言う、レオーネ王国騎士団、特殊諜報部隊の隊長だ。

この街に到着して今日で5日経った、街での聞き込みや捜索を行った結果、レオーネ王国が探しているレイア・ルミナス嬢がこの街の住民に慕われている魔女様と何らかの関わりがある可能性が出て来た。

街の下に広がる広大な地下街・・・ここまでの規模となると地下都市と言った方がいいか、そこで居るかどうかも分からないレイア嬢を探すより魔女様の家を調べた方が早いだろう、そう考えて私とマーヴォは朝早く宿を出て魔女様の家がある「刻を告げる砦」に向かった。

結果から言うと家には誰も居なかった、それどころか蔦が絡まり壁はひび割れてまるで廃墟、ゴーストが出そうな屋敷だった。

無断侵入は気が引けたが任務だから仕方ない、人の気配を探りながら慎重に屋敷の中に入ると外観ほどは荒れてない、2階にいくつかある部屋の中の2つには、きちんとベッドが整えられて人が寝泊まりしていた形跡もあった、どこに行った・・・街に出かけているのか。

更に中を調べると地下に続く階段、その先には大掛かりな暗号と機械式の鍵で封鎖されている入り口があった、特殊諜報部隊員の嗜みとして鍵開け技術には自信があったが私の手に負える代物ではなさそうだったので諦める他なかった。

「一度街に戻って出直しましょうか」

扉の構造を調べている私の後ろで警戒していたマーヴォの提案で夜にもう一度訪れようとなって今私達は夜の屋敷に来ている。

「灯りがついてますねー」

「そうだな、予定通り裏に回って上に行くか」

「やだなぁ・・・」

「任務だから仕方ないだろう」

「冗談ですよー」

「・・・」

昼間来た時に人が居た形跡のある2階のベランダには縄を括り付けて下に垂らしてある、そこから上に登って様子を伺う計画だ。

ベランダの下はわずかな足場があるだけでその下は急な崖になっていた、しかも外は暗闇で相手にバレないように魔法で小さな灯りを灯しているだけなので落ちそうになる、流石に怖いな・・・。

2人がベランダの下に立つと声が聞こえて来た、女性の声か・・・。

「・・・ん・・・や・・・」

風の音が邪魔でよく聞こえないな。

「・・・あん!、・・・やぁっ・・・やだぁ!・・・」

喘ぎ声・・・まさか魔女様とレイア嬢が・・・しているのか?、それとも他に男が居て・・・。

「行って来る」

「ちょっと待って、私が行きます、旦那様はダメです!」

「何でだ?、私が上に登ってお前は下を警戒する手筈だっただろ」

「何でって・・・そんな事も分かんないとは思いませんでしたよー、もしえっちな事してたらどうするんです?、レイアちゃんの全裸見る気ですかぁ」

「・・・お・・・おぅ」

そう言い残してマーヴォは縄を伝って2階のベランダに・・・。

「あっ・・・あん!・・・んっ・・・」

声がでかくなって来たな、ベランダの下だからマーヴォの様子が分からない、私は下で周りの警戒をしつつあの声が魔女様とレイア嬢だった時の事を考えていた。

「女同士でしてるのか・・・」

いや、世の中にはそういった性癖の人間が居る事はもちろん知っているが私の身近には全く居なかったから戸惑っている。

しゅっ!・・・すたっ!

「旦那様逃げますよ!」

どん!

「おい押すな!、今のはやばかったぞ!」

マーヴォの奴がベランダから縄を伝って一気に下降してきた、私の肩を思いっきり押しやがったな!、落ちたらどうするんだよ!。

「見つかっちゃいました!、詳しい話は後です!」





私達は屋敷の裏から表に回って門のところまで逃げて来た。

「何があった、説明しろ」

「金髪の女の子がえっちな服を着てベッドの上で一人えっちしてました、様子を見てたら入り口の扉が開いてお食事のトレイを持った青髪の女の子が・・・レイアちゃんだと思いますけど、お部屋に入って来て私と目が合っちゃいましたぁ、てへっ」

「あほー!、腐っても特殊部隊員なんだから簡単に見つかるなよ!」

「酷い!、私腐ってないですぅー」

がさ・・・

「待て!、誰か来た!」





がさ・・・がさ・・・

門の周辺は背の高い雑草だらけだ、私達がここに居るのが分かるのか・・・草をかき分けて進む足音の主は正確にこちらに進んでいる、それに凄まじい殺気・・・。

「私が立ち上がって相手する、念の為に後ろに隠れて戦えるようにしておけ」

「了解ですー」





がさっ・・・

私と少し距離をとっているが目の前に誰か居る、草が邪魔でよく見えないが・・・

「そこから動くなよ、この屋敷に来ているという事は街の人間では無いな、誰かは知らんがここは魔女様の家で立ち入り禁止だ、このまま大人しく帰るなら見逃してやろう」

女性の声だ、魔女様か・・・それにしては声が若そうだな。

「待て、私は魔女様に用があってここに来た、話をさせてくれ」

「こんな夜遅くにか、礼儀がなってないな、明日出直せ」

「昼間は留守のようだった、だから夜には居るんじゃないかと思って来たんだ」

「そういえば昼に屋敷を歩き回って地下室に無断で入った輩が居たな、それから後ろで短剣を構えている女、下手な事をすると命の保証はできないぞ」

私達の昼間の行動を気付かれていたのか、それにマーヴォが潜んでるのがバレていたようだ、気配を消している筈なのに・・・。

「無断で入った事は謝る、正確には魔女様に用事ではなくて・・・私達はレイア・ルミナスという女の子を探している」

「レイアを?」

「そうだ、先ほど2階の部屋で青い髪の女の子を見た、彼女に会わせて欲しい」

「・・・レイアに用があるなら聞こう、今ここで話せ」

「無関係な人間に聞かれるとまずいのだ、直接会って本人と話したい」

「ダメだ」

「何故だろうか?」

「レイアは私の所有物になった、だからレイアへの話は主人である私を通せ」

「所有物・・・レイア嬢はレオーネ王国の貴族だぞ、そんな勝手に・・・」

「勝手ではない、本人も了承済みだ」

「・・・力ずくででも会うと言ったらどうする?」

「・・・面白い奴だな、相手してやろう、これまで数えきれない魔物を屠ってきた私に勝てるとでも?」

「お前が・・・魔女様なのか?」

「お前とは失礼な奴だな、私にはオースター帝国貴族フレシュネス・バーガーという名前がある、貴族へ刃を向ければどうなるか分かっているのだろうな」

殺気が一層強くなった、私は暗殺は得意だが無敵の魔女様と正面から戦って勝てるほどの腕はない。

「・・・待て、非礼は謝る、話し合いたい、・・・彼女の家族と、レオーネ国王陛下からの命令でレイア嬢を王国に連れ帰らなければならない」

「今は帰す訳にはいかない、いずれ家族に会うために帰国するつもりだと本人は言っていたからその時まで待て」

「待てないのだ、頼む、レイア嬢と話をさせて欲しい」

「レオーネ国王からオースター帝国皇帝陛下に話を通せ、フレシュネス・バーガーの弟子と話をさせろとな、間違いなく断られるだろうが・・・」

「・・・仕方ない・・・理由を話す、レイア・ルミナス嬢はレオーネ王国王太子殿下の婚約者に内定した、だからハンターのような危険な仕事をさせる訳にはいかない、今すぐにでも国に戻って王妃教育を受けてもらう、これは王命だから決定事項だ」

「・・・」

「・・・」

「・・・それは無理だな」

「何故だ?」

「レイアは王太子妃にはなれないし私がさせない、本人も嫌がるだろう、ここで話をしていても時間の無駄だ、そっちの国王からうちの皇帝陛下に話を通せ、それで許可されたら国に返そう、ほぼ間違いなく断られるだろうから無駄な事はしない方がいい」

「魔女様の弟子は歳を取らないと聞いた・・・レイア嬢に何かしたのか?」

「した、だから王太子妃には絶対になれないし、もしなったら国が大変な事になるだろう」

「これは誘拐だ、国際問題になるぞ」

「ならないと断言する、真実をそちらの国王が知ったら息子の婚約者にはしないだろうし、両国話し合いの結果この件は隠蔽されるだろうな、もしかしたら君達は消されるかもしれない、だからこれ以上知らない方がいいと忠告しているのだ」





「どう思う?」

「分かりません・・・王族同士で話し合えだなんて・・・」

私達はこれ以上魔女様と話をしても無駄だと判断して街に戻ってきた、幸い宿は夜中でも開いていたから部屋に戻ってマーヴォと話している。

「先程の魔女様とのやりとりをそのまま陛下に報告は出来ないだろう、いくら何でも分からない事が多過ぎる、魔女様に言われたからオースター帝国の皇帝と交渉しろって陛下に言うのか?」

「お叱りを受けるでしょうね、「お前は何を言っているのだ意味が分からないぞ!」って」

「陛下の物真似上手いな・・・」

「ふふっ、上手いでしょー」

「せめてレイア嬢と話せたらな・・・屋敷で会った時に会話できなかったのか?」

「驚いて私も動けなかったし目が合ってすぐ部屋の外に出て行きました、でも街には時々来てるんじゃないですかね、通りを歩いてたりギルドで見かけたって人居るし」

「そうだな、魔女様は街に直接来ないだろうから街に入ったところを捕まえて話をするか」
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