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2章 おーすたぁていこく〜おうちにかえろう〜
Side LE - 15 - 20 - まものなんかじゃない! -(挿絵あり)
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Side LE - 15 - 20 - まものなんかじゃない! -
「さて、話を聞こうか、そこのソファに座れ、飲み物は今は水しかないから我慢してくれ、腹が減ってるのならそこの果物でも食いながら話そう」
「ありがとう・・・私の名前はカリーン・チッパイ、呼びにくければカリンでいい、もう気付いていると思うが私とお嬢様はデボネア帝国の貴族だ、お嬢様は上級貴族で私は下級貴族、あの国は皇帝の一族と一握りの上級貴族に支配されていて、下級貴族は上級貴族に虐げられていた、私は剣の腕と、・・・その・・・顔が好みだという理由でお嬢様の家に召し抱えられた、それからはずっとお嬢様の護衛兼雑用、そしてお世話係だ」
「・・・続けて」
「お嬢様は皇帝の息子・・・第二皇子に恋をしていて、その妃になると言っていた、だがお嬢様の婚約者はとある上級貴族の子息と決まっていたのだ、その子息はお世辞にも美しいとは言えなかったから、お嬢様は嫌がった、だが両親はお嬢様の願いを聞き入れなかった、そしてデボネア帝国に居る限りその婚約者との結婚から逃れられないと悟り、船で密かに帝国から逃げ、この国に辿り着いた・・・船の手配や脱出の工作をしたのは・・・私だ、とても苦労した・・・この大陸で3年ほど暮らして、国に戻ったら家族も諦めているだろうし、婚約者も他の結婚相手を見つけているだろう・・・そうお嬢様は考えたようだ」
「大変だったな」
「うん・・・帝国からの逃亡は一族全員死刑と決まっている、お嬢様の家は・・・上級貴族の中でも特に皇帝と近いから刑は見逃されただろう、私の家族は恐らく生きていない、私は貧しい下級貴族の生まれだったし、この赤い目が原因で家族からも疎まれていた、・・・赤い目は私の一族では忌まわしい物として嫌われているのだ、だから家族が死んでも何とも思わない、私はお嬢様の家に金で売られたのだから」
「・・・」
「言葉が分からない大陸、知らない土地で我儘を言うお嬢様を連れてここまで辿り着いた、辛くて何度も夜中に一人で泣いた、途中で魔物を狩り、それを売って食料を買った、時には盗みもした・・・、私とお嬢様には首輪と左の頬、肩、背中に焼き印が押されている、この大陸では首輪を嵌められている者は重犯罪者の奴隷だけだと教わった、だから人目を避けて暮らせる場所がないかと探しているうちにこの屋敷を見つけたのだ」
「そうか、だが分からない事がある、何故お前は我儘なお嬢様にそこまで忠実に従っているのだ?、恩があるのか?、それとも契約で縛られているのか?」
「お嬢様の側に居たら上級貴族からの嫌がらせは受けない・・・お嬢様から叩かれたり蹴られたりはしたが・・・、契約のようなものは結んでいない、ただ、上級貴族の命令に下級貴族は何があっても逆らえない」
「逆らえない・・・か、何故だ?、逆らうとどうなるのだ?」
「酷い罰を受ける、皇帝の血族がこの首輪に魔力を流すと嵌められた者には激痛が走る、そして更に流し続けると死んでしまうのだ、だから皇帝とその一族、そしてその配下の上級貴族には逆らえない」
「だが皇帝は2年前に死んだぞ、何者かに殺された、一族全員と皇帝に近い上級貴族まで皆殺しだったらしい、国は大混乱だ、今頃は国ごと無くなってるんじゃないのか?・・・私はそう帝国から来た男に聞いた、その男は肉食の植物に食われて死んだがな」
「2年前・・・私とお嬢様が国を出てすぐか・・・、他には何か聞いているか?」
「いや、それくらいだ、街に行けば知ってる奴がいるだろうし、図書館にその当時の新聞があると思うぞ」
「私は・・・この国の言葉が全く分からない・・・」
「話を戻そう、その首輪に魔力を注げる人間は皆死んだ。そのお嬢様とやらの家も皇帝と親しい上級貴族家なら皆殺しになってる可能性が高い、お前があのお嬢様に反抗したとして、誰が罰を与えるのだ?」
「・・・へ?」
「あのお嬢様を捨てて、お前がどこかに行っても誰も咎める奴は居ないと言ってるんだ、剣の腕は相当なものだからハンターにでもなって稼げばいい暮らしができるんじゃないか?」
「だが、お嬢様はどうなるのだ?、世話をする下級貴族はここでは私しか居ない」
「すごいな、幼少の頃から上級貴族に絶対服従を刷り込まれたらこうなるのか・・・お前が居なくなったら飢えてそのうち死ぬんじゃないか、その前にこの屋敷から私が放り出すだろうが・・・、お前はお嬢様が死んだら悲しいのか?」
「いや・・・散々酷い目に遭ったから、ざまぁとしか思わない、あのお嬢様は性格がとても悪いのだ、下級貴族を虐めていた・・・、小さな女の子に靴を舐めさせて笑っていたし、飢えて痩せ細った令嬢の僅かな食料を取り上げて踏み潰したり・・・、何度死ねばいいのにと思った事か」
「ならそれでいいじゃないか、お前はハンターをして金を稼ぐ、稼いだ金は全部自分のものだ、美味いものを食い、いい宿で寝て、人生を楽しめばいい、その首輪は・・・ローブか何かで隠した方がいいな、魔導列車に乗った時に国境で首を確認された、奴隷と間違われると困るから国がデボネア帝国人を保護してるそうだ・・・どこに連れて行かれて何をされるのかは知らんがな、あの国に未練が無いならこの大陸で暮らせばいい、ここは住みやすいし平和だぞ」
「・・・そうか、そうだな・・・何故もっと早くその事に気付かなかったのだ、私はバカだなぁ・・・ははは・・・うぅ・・・ぐすっ・・・首輪がある限り、この大陸では奴隷扱いされるし、言葉も分からない、だからお嬢様を捨てて逃げる事はできないと思っていた、密航を仕事にしている連中に金を払って・・・ここで3年耐えた後は、デボネア帝国に戻る予定だったし、手配も済ませていたから・・・お嬢様に従う他はないと、そう信じ込んでいた」
「だが国外逃亡は死罪なんだろ、皇帝が殺されてなかったと仮定して、2人が国に帰ったら・・・お嬢様とやらは大丈夫でもお前は殺されるんじゃないのか?」
「・・・確かに・・・そこまでは考えてなかった・・・国を出たのは、ただお嬢様の命令に従っただけだった・・・お嬢様は「問題ないわ」と言っていたが・・・私は、命懸けでお嬢様を守っていたのに、お嬢様は私が処刑されるのを知ってて・・・利用したのか・・・」
「さぁ、それはあの馬鹿お嬢様に聞いてみないと分からないな・・・、さて、ハンターになるにしても・・・言葉が分からんのは辛いな、喋れないという設定にしようか、ギルドに一緒に行ってやるからハンターの登録をしろ、当面の金は貸してやる、しばらくは見習いハンターの身分だが薬草を集めて暮らしていれば傷もそのうち治るだろう、どうだ?」
「うん・・・うん!、やる!、目が覚めたよ・・・この恩、どう返せばいいか・・・」
「稼げるようになったら貸した金を返せ、それでいい、あのお嬢様は・・・追い出すか・・・しばらくここで飼って酷い目に遭わせてやろうか」
「今までの恨みはある・・・でも・・・私はもうお嬢様とは関わりたくない、罵られるのはもう沢山だ」
「ならあいつの前からこのまま姿を消せばいい、・・・あいつは・・・放っておけばいいだろう、一人では何もできないのだろう?」
「ある程度の事はできるように教えたのだが・・・覚えが悪い、食料は自分ではどうしようもないと思う、私が狩った魔物を換金した金はまだあるが、山道を一人で歩いて街に行けるかどうかは分からない、ここに来る時には山道は嫌だと言うから私が背負って運んだのだ・・・遅いと言って何度も尻を叩かれた」
「大変だったんだな・・・」
「うん・・・ぐすっ・・・」
「泣くなよ・・・だが私はまだ完全にお前を信用した訳ではないし、ここは私の家だ、悪いがここで寝泊まりはさせてやれない」
「当然だと思う、私はあなたを殺そうとした」
「街に行くのは明後日の予定だったが、今日の夜中にここを出て街に向かおう、宿をとってやる、それから夜が明けたら医者に行って腕の治療、それからハンターギルドに登録だな、首輪は人に見られたら面倒だからローブも貸してやる、魔導士のローブだが身体を覆い隠すのには都合が良い」
「本当にありがとう・・・私・・・ひっく・・・うぅ・・・」
「だから泣くなって、お前、性格きついと思ってたが泣き虫だな」
「今まで・・・私の人生は、お嬢様のお世話だけだった・・・うぅ・・・これで自由になれるのかな・・・」
「首輪さえ見られなければ大丈夫だろう、だがこの国・・・この大陸の人間は首輪をしている人間は罪を重ねた凶悪な重犯罪者だけだと思っている、だから首輪をしている人間は人間扱いされない、酷い時には暴力を振るわれたり・・・お前は女だからもっと酷い事もされるだろう、奴隷は衣服を着る事も許されてないから、裸に剥かれるかもしれない」
「ひぃっ・・・」
「だから絶対に他人に首輪は見られるな、言葉が分からないのも致命的だ、奴隷ではなくてデボネア帝国から逃亡してきた貴族だと自分では説明できないだろう、あの街の人間は親切だが奴隷にまで親切ではない」
「うん、それから、もう一つ秘密にしていた重大な問題がある・・・恩人のあなたに迷惑をかけたくないから話しておく」
「何だ?、まだあるのか?」
「私には魔物の血が流れている、私の一族には・・・15代ほど前に魔物に襲われて子を孕んだ人間が居る、15代も前なら血が薄まっていると思うだろうが、あまりにもその魔物の血が強かったから、一族に呪いのように残り、稀にその魔物の特性が強く出た人間・・・ほぼ魔物の人間が生まれる、その人間は体内に魔石を持ち、赤い目をしている」
「赤い目?、お前の事か?」
「うん、そうだ、私の一族は赤い目の子供が生まれたら魔物にならないように封印する、昔、何度か殺そうとしたらしいが、死ぬ直前にたとえ赤子でも皆魔物に覚醒して周りを道連れにしたそうだ、だから私は両足に一族に伝わる封印の枷を嵌められて、魔物として覚醒しないよう抑えている、そして私は家族から疎まれて・・・金で売られたのだ」
「気にするな」
「だが私は魔物なのだぞ!、怖くないのか?、・・・その・・・気持ち悪いとか・・・、私と関わると街の人たちにどう思われるか・・・」
「怖くないぞ、まぁ・・・私は訳あって魔物に対して寛容だ、今のお前は人間なのだろう?」
「うん・・・私は・・・人間だ・・・魔物なんかじゃない・・・」
「一応聞いておこうか、会った時から威圧感と言うのか・・・只者じゃない雰囲気があった、何の魔物だ、まさか吸血族とか言わないよな」
「何で分かったのだ?、正解だ、私には不死族の頂点、吸血族の血が流れてる、だが今は斬られたら死ぬし、殴られたら痛くて泣く、ただの人間だ」
「仮眠は取れたか?、ベッドを使わせるわけにはいかないからソファで寝心地は悪かっただろうが・・・」
「ありがとう、久しぶりに魔物に警戒する事なく眠れたよ」
「表から行くのはやめよう、あの馬鹿が地下の入り口に居るかもしれない、少し大変だが裏から行くぞ」
ガコッ・・・
「わぁ・・・凄い、展望台かぁ・・・今日は月が一つしか出てなくて暗くてよく分からないけど、屋敷の裏の大森林?」
「そうだ、ここから階段で一度崖の下まで降りて、獣道を通って街道に出る、時々魔物が襲ってくるだろうが私が片付ける、後ろの警戒をして何か察知したら声を出して知らせろ」
「分かった」
「はぁ・・・はぁ・・・道が険しかった・・・」
「もうすぐ街道だ、ほら遠くに街の壁が見えただろう、よく頑張ったな、傷は・・・開いてないか、大怪我してるんだ、明日の朝一で医者のところに行くぞ、宿はハンター達がよく利用しているところだ、夜中もやってるし1階で遅くまで飲み食いできる、お前は喋れないって事にするから街に入ったら声を出すな」
「うん・・・あの、レイアさん」
「何だ」
「本当にありがとう、お嬢様から解放されて・・・これから私の新しい人生が始まるって思ったらワクワクする」
「あぁ、人生を楽しめ、私も時々薬草採りについて行ってやるよ、お前だったらすぐに鉄級になれるだろ」
「うん!」
ユッキィのお家(地下岩盤内)
「さて、話を聞こうか、そこのソファに座れ、飲み物は今は水しかないから我慢してくれ、腹が減ってるのならそこの果物でも食いながら話そう」
「ありがとう・・・私の名前はカリーン・チッパイ、呼びにくければカリンでいい、もう気付いていると思うが私とお嬢様はデボネア帝国の貴族だ、お嬢様は上級貴族で私は下級貴族、あの国は皇帝の一族と一握りの上級貴族に支配されていて、下級貴族は上級貴族に虐げられていた、私は剣の腕と、・・・その・・・顔が好みだという理由でお嬢様の家に召し抱えられた、それからはずっとお嬢様の護衛兼雑用、そしてお世話係だ」
「・・・続けて」
「お嬢様は皇帝の息子・・・第二皇子に恋をしていて、その妃になると言っていた、だがお嬢様の婚約者はとある上級貴族の子息と決まっていたのだ、その子息はお世辞にも美しいとは言えなかったから、お嬢様は嫌がった、だが両親はお嬢様の願いを聞き入れなかった、そしてデボネア帝国に居る限りその婚約者との結婚から逃れられないと悟り、船で密かに帝国から逃げ、この国に辿り着いた・・・船の手配や脱出の工作をしたのは・・・私だ、とても苦労した・・・この大陸で3年ほど暮らして、国に戻ったら家族も諦めているだろうし、婚約者も他の結婚相手を見つけているだろう・・・そうお嬢様は考えたようだ」
「大変だったな」
「うん・・・帝国からの逃亡は一族全員死刑と決まっている、お嬢様の家は・・・上級貴族の中でも特に皇帝と近いから刑は見逃されただろう、私の家族は恐らく生きていない、私は貧しい下級貴族の生まれだったし、この赤い目が原因で家族からも疎まれていた、・・・赤い目は私の一族では忌まわしい物として嫌われているのだ、だから家族が死んでも何とも思わない、私はお嬢様の家に金で売られたのだから」
「・・・」
「言葉が分からない大陸、知らない土地で我儘を言うお嬢様を連れてここまで辿り着いた、辛くて何度も夜中に一人で泣いた、途中で魔物を狩り、それを売って食料を買った、時には盗みもした・・・、私とお嬢様には首輪と左の頬、肩、背中に焼き印が押されている、この大陸では首輪を嵌められている者は重犯罪者の奴隷だけだと教わった、だから人目を避けて暮らせる場所がないかと探しているうちにこの屋敷を見つけたのだ」
「そうか、だが分からない事がある、何故お前は我儘なお嬢様にそこまで忠実に従っているのだ?、恩があるのか?、それとも契約で縛られているのか?」
「お嬢様の側に居たら上級貴族からの嫌がらせは受けない・・・お嬢様から叩かれたり蹴られたりはしたが・・・、契約のようなものは結んでいない、ただ、上級貴族の命令に下級貴族は何があっても逆らえない」
「逆らえない・・・か、何故だ?、逆らうとどうなるのだ?」
「酷い罰を受ける、皇帝の血族がこの首輪に魔力を流すと嵌められた者には激痛が走る、そして更に流し続けると死んでしまうのだ、だから皇帝とその一族、そしてその配下の上級貴族には逆らえない」
「だが皇帝は2年前に死んだぞ、何者かに殺された、一族全員と皇帝に近い上級貴族まで皆殺しだったらしい、国は大混乱だ、今頃は国ごと無くなってるんじゃないのか?・・・私はそう帝国から来た男に聞いた、その男は肉食の植物に食われて死んだがな」
「2年前・・・私とお嬢様が国を出てすぐか・・・、他には何か聞いているか?」
「いや、それくらいだ、街に行けば知ってる奴がいるだろうし、図書館にその当時の新聞があると思うぞ」
「私は・・・この国の言葉が全く分からない・・・」
「話を戻そう、その首輪に魔力を注げる人間は皆死んだ。そのお嬢様とやらの家も皇帝と親しい上級貴族家なら皆殺しになってる可能性が高い、お前があのお嬢様に反抗したとして、誰が罰を与えるのだ?」
「・・・へ?」
「あのお嬢様を捨てて、お前がどこかに行っても誰も咎める奴は居ないと言ってるんだ、剣の腕は相当なものだからハンターにでもなって稼げばいい暮らしができるんじゃないか?」
「だが、お嬢様はどうなるのだ?、世話をする下級貴族はここでは私しか居ない」
「すごいな、幼少の頃から上級貴族に絶対服従を刷り込まれたらこうなるのか・・・お前が居なくなったら飢えてそのうち死ぬんじゃないか、その前にこの屋敷から私が放り出すだろうが・・・、お前はお嬢様が死んだら悲しいのか?」
「いや・・・散々酷い目に遭ったから、ざまぁとしか思わない、あのお嬢様は性格がとても悪いのだ、下級貴族を虐めていた・・・、小さな女の子に靴を舐めさせて笑っていたし、飢えて痩せ細った令嬢の僅かな食料を取り上げて踏み潰したり・・・、何度死ねばいいのにと思った事か」
「ならそれでいいじゃないか、お前はハンターをして金を稼ぐ、稼いだ金は全部自分のものだ、美味いものを食い、いい宿で寝て、人生を楽しめばいい、その首輪は・・・ローブか何かで隠した方がいいな、魔導列車に乗った時に国境で首を確認された、奴隷と間違われると困るから国がデボネア帝国人を保護してるそうだ・・・どこに連れて行かれて何をされるのかは知らんがな、あの国に未練が無いならこの大陸で暮らせばいい、ここは住みやすいし平和だぞ」
「・・・そうか、そうだな・・・何故もっと早くその事に気付かなかったのだ、私はバカだなぁ・・・ははは・・・うぅ・・・ぐすっ・・・首輪がある限り、この大陸では奴隷扱いされるし、言葉も分からない、だからお嬢様を捨てて逃げる事はできないと思っていた、密航を仕事にしている連中に金を払って・・・ここで3年耐えた後は、デボネア帝国に戻る予定だったし、手配も済ませていたから・・・お嬢様に従う他はないと、そう信じ込んでいた」
「だが国外逃亡は死罪なんだろ、皇帝が殺されてなかったと仮定して、2人が国に帰ったら・・・お嬢様とやらは大丈夫でもお前は殺されるんじゃないのか?」
「・・・確かに・・・そこまでは考えてなかった・・・国を出たのは、ただお嬢様の命令に従っただけだった・・・お嬢様は「問題ないわ」と言っていたが・・・私は、命懸けでお嬢様を守っていたのに、お嬢様は私が処刑されるのを知ってて・・・利用したのか・・・」
「さぁ、それはあの馬鹿お嬢様に聞いてみないと分からないな・・・、さて、ハンターになるにしても・・・言葉が分からんのは辛いな、喋れないという設定にしようか、ギルドに一緒に行ってやるからハンターの登録をしろ、当面の金は貸してやる、しばらくは見習いハンターの身分だが薬草を集めて暮らしていれば傷もそのうち治るだろう、どうだ?」
「うん・・・うん!、やる!、目が覚めたよ・・・この恩、どう返せばいいか・・・」
「稼げるようになったら貸した金を返せ、それでいい、あのお嬢様は・・・追い出すか・・・しばらくここで飼って酷い目に遭わせてやろうか」
「今までの恨みはある・・・でも・・・私はもうお嬢様とは関わりたくない、罵られるのはもう沢山だ」
「ならあいつの前からこのまま姿を消せばいい、・・・あいつは・・・放っておけばいいだろう、一人では何もできないのだろう?」
「ある程度の事はできるように教えたのだが・・・覚えが悪い、食料は自分ではどうしようもないと思う、私が狩った魔物を換金した金はまだあるが、山道を一人で歩いて街に行けるかどうかは分からない、ここに来る時には山道は嫌だと言うから私が背負って運んだのだ・・・遅いと言って何度も尻を叩かれた」
「大変だったんだな・・・」
「うん・・・ぐすっ・・・」
「泣くなよ・・・だが私はまだ完全にお前を信用した訳ではないし、ここは私の家だ、悪いがここで寝泊まりはさせてやれない」
「当然だと思う、私はあなたを殺そうとした」
「街に行くのは明後日の予定だったが、今日の夜中にここを出て街に向かおう、宿をとってやる、それから夜が明けたら医者に行って腕の治療、それからハンターギルドに登録だな、首輪は人に見られたら面倒だからローブも貸してやる、魔導士のローブだが身体を覆い隠すのには都合が良い」
「本当にありがとう・・・私・・・ひっく・・・うぅ・・・」
「だから泣くなって、お前、性格きついと思ってたが泣き虫だな」
「今まで・・・私の人生は、お嬢様のお世話だけだった・・・うぅ・・・これで自由になれるのかな・・・」
「首輪さえ見られなければ大丈夫だろう、だがこの国・・・この大陸の人間は首輪をしている人間は罪を重ねた凶悪な重犯罪者だけだと思っている、だから首輪をしている人間は人間扱いされない、酷い時には暴力を振るわれたり・・・お前は女だからもっと酷い事もされるだろう、奴隷は衣服を着る事も許されてないから、裸に剥かれるかもしれない」
「ひぃっ・・・」
「だから絶対に他人に首輪は見られるな、言葉が分からないのも致命的だ、奴隷ではなくてデボネア帝国から逃亡してきた貴族だと自分では説明できないだろう、あの街の人間は親切だが奴隷にまで親切ではない」
「うん、それから、もう一つ秘密にしていた重大な問題がある・・・恩人のあなたに迷惑をかけたくないから話しておく」
「何だ?、まだあるのか?」
「私には魔物の血が流れている、私の一族には・・・15代ほど前に魔物に襲われて子を孕んだ人間が居る、15代も前なら血が薄まっていると思うだろうが、あまりにもその魔物の血が強かったから、一族に呪いのように残り、稀にその魔物の特性が強く出た人間・・・ほぼ魔物の人間が生まれる、その人間は体内に魔石を持ち、赤い目をしている」
「赤い目?、お前の事か?」
「うん、そうだ、私の一族は赤い目の子供が生まれたら魔物にならないように封印する、昔、何度か殺そうとしたらしいが、死ぬ直前にたとえ赤子でも皆魔物に覚醒して周りを道連れにしたそうだ、だから私は両足に一族に伝わる封印の枷を嵌められて、魔物として覚醒しないよう抑えている、そして私は家族から疎まれて・・・金で売られたのだ」
「気にするな」
「だが私は魔物なのだぞ!、怖くないのか?、・・・その・・・気持ち悪いとか・・・、私と関わると街の人たちにどう思われるか・・・」
「怖くないぞ、まぁ・・・私は訳あって魔物に対して寛容だ、今のお前は人間なのだろう?」
「うん・・・私は・・・人間だ・・・魔物なんかじゃない・・・」
「一応聞いておこうか、会った時から威圧感と言うのか・・・只者じゃない雰囲気があった、何の魔物だ、まさか吸血族とか言わないよな」
「何で分かったのだ?、正解だ、私には不死族の頂点、吸血族の血が流れてる、だが今は斬られたら死ぬし、殴られたら痛くて泣く、ただの人間だ」
「仮眠は取れたか?、ベッドを使わせるわけにはいかないからソファで寝心地は悪かっただろうが・・・」
「ありがとう、久しぶりに魔物に警戒する事なく眠れたよ」
「表から行くのはやめよう、あの馬鹿が地下の入り口に居るかもしれない、少し大変だが裏から行くぞ」
ガコッ・・・
「わぁ・・・凄い、展望台かぁ・・・今日は月が一つしか出てなくて暗くてよく分からないけど、屋敷の裏の大森林?」
「そうだ、ここから階段で一度崖の下まで降りて、獣道を通って街道に出る、時々魔物が襲ってくるだろうが私が片付ける、後ろの警戒をして何か察知したら声を出して知らせろ」
「分かった」
「はぁ・・・はぁ・・・道が険しかった・・・」
「もうすぐ街道だ、ほら遠くに街の壁が見えただろう、よく頑張ったな、傷は・・・開いてないか、大怪我してるんだ、明日の朝一で医者のところに行くぞ、宿はハンター達がよく利用しているところだ、夜中もやってるし1階で遅くまで飲み食いできる、お前は喋れないって事にするから街に入ったら声を出すな」
「うん・・・あの、レイアさん」
「何だ」
「本当にありがとう、お嬢様から解放されて・・・これから私の新しい人生が始まるって思ったらワクワクする」
「あぁ、人生を楽しめ、私も時々薬草採りについて行ってやるよ、お前だったらすぐに鉄級になれるだろ」
「うん!」
ユッキィのお家(地下岩盤内)
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