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Side - 16 - 36 - かりーん・ちっぱいさんのだいぼうけん なな -
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Side - 16 - 36 - かりーん・ちっぱいさんのだいぼうけん なな -
「・・・」
「あの・・・ペトラさん?」
幼女になってしまったペトラさんは女の子座りをして呆然としている。
私はどう声をかけようかと考えながらとりあえず話し掛けた。
「うりゅ・・・ぐすっ・・・」
「え・・・ちょっと待って・・・泣かないでペトラさん、幼女にしちゃったのは不可抗力で、私もこんなになるとは思わなくて・・・」
ペトラさんの目から涙がポロポロと溢れた・・・元々小柄で可愛らしい人だったけど若返ったら凄い美少女になってるよ・・・その美少女が弱々しく震えて涙を流してる・・・私にそっちの趣味は無いけどなかなかの破壊力だった。
「違う・・・カリンちゃんが助けてくれたのは感謝してるんだ、でもこの姿じゃマルコーに・・・息子に会っても母親だとは信じてもらえない・・・そう思ったら悲しくなってね・・・」
「・・・」
「・・・」
2人の間に沈黙が流れた、もう夜が完全に明けて周りは明るくなっている。
ぐるるるる・・・
ぐちゃ・・・ぐちょっ・・・ぴちゃ・・・
「え・・・」
私たちの後ろで唸り声と変な音がした、とても嫌な予感がして振り返ると・・・。
「ひっ・・・」
「・・・これはまずいね、地龍がアンデッド・ドラゴンになりやがった!、逃げるよカリンちゃん!」
先ほど息絶えて私がお肉を齧った地龍さんが立ち上がり私達をじっと見てた、砕けて落ちた顎や私が食べちゃった足のところは何故か再生しかけてる・・・皮膚が削げ落ち筋肉が剥き出しで見た目がとても気持ち悪いけど・・・。
ぺたん・・・
腰が抜けて動けない私を庇うようにペトラさんが地龍と対峙してる、鎖の付いた鎌はちっちゃくなったペトラさんにはとても重そうだけど大丈夫?・・・それにサイズの大きな服がずり落ちて半裸だ。
ぶぉん・・・ぶぉん・・・。
「カリンちゃん!、早く立ち上がって逃げるよ、今の身体じゃ力の加減がまだ分からないから前と同じようには戦えない」
ペトラさんが鎖鎌を旋回させながら私に叫んだ・・・でも・・・。
ぽてっ・・・
「あぅ」
逃げようとしたら尻餅をついた。
「・・・怖いよぅ・・・ぐすっ・・・」
何度立ちあがろうとしても足腰に力が入らないから転んじゃうの!。
(・・・ナカナイデ・・・マスタァ)
「え?」
私の頭の中に誰かが話しかけてきた・・・周りを見ても私とペトラさん、それと地龍しかいないのに誰が?・・・。
(ワタシ・・・タタカウキ・・・ナイ・・・マスタァノ・・・メイレイニシタガウ・・・)
「なら・・・地龍から私達を助けて・・・」
頭の中に話しかけて来る者に応えるように私は声を出した。
(チリュウカラマスタァ・・・タスケル?・・・ワタシ・・・タブン・・・チリュウ・・・チリュウトイウノハ・・・ニンゲンガツケタナマエ)
私に話しかけてきた声は目の前の地龍さんでしたぁ!。
「ペトラさん待って!、この地龍さん私の頭に直接話し掛けて来たの、戦う気は無いって」
「あ?、何言ってるんだい!」
ペトラさんがキレた、そんなに怒らなくても・・・。
「だからこの地龍さん、私の事マスターって」
「・・・」
「地龍さーん、伏せ!」
ずぉぉぉん!
ぐるるるる・・・
私の指示通りに地龍さんが地面に伏せた。
「転がって」
ごろごろ・・・ぐるん!・・・ぐるん!・・・。
「ね」
「いや何が「ね」なのか分からないよ!、とりあえず目の前の地龍は危なくないんだね」
「うん、多分」
「・・・」
ぐるるるるる・・・
どす・・・どす・・・
きゅるるるる・・・
地龍さんが立ち上がって先に死んでしまったもう一頭の地龍さんに近付き、頭を擦り付けてとても悲しそうにしている、まるで泣いてるみたい・・・。
「あの・・・地龍さん?」
(マスタァ・・・ワタシノツガイ・・・シンジャッタ・・・イママデズット・・・イッショダッタ・・・ノニ・・・カナシイヨ・・・サミシイヨ・・・)
「わぁぁ、ごめんなさい!、って私は何もしてないけど・・・でも死んじゃってるからどうしようもないと思うの」
(マスタァ・・・オネガイ・・・イキカエラセテ・・・)
「いや無理だし!」
(ワタシト・・・オナジニ・・・デキナイノ?)
「え・・・アンデッドに・・・って事かな?、でもやり方分かんないよぅ」
「カリンちゃん、横で聞かせてもらってなんとなく話は分かったよ、おそらくこの死んでる地龍は蘇った方の番(つがい)か何かで、死んじまった事を悲しんでるんじゃないかい?」
ペトラさん察しがいいな!。
「うん、そうなの、私に蘇らせてってお願いされちゃった、でもやり方がわからないの」
「私も古い文献で読んだだけだから正確じゃないかもしれないが・・・吸血族は死体を使役できるって話だね、確か・・・自分の血を与えてから殺して、そいつの血を飲む・・・アンデッドになった後は名前を与えると眷属になって主に似た強い能力を得る・・・」
「そうなの?」
(マスタァ・・・ワタシ・・・ナンデモスルカラツガイヲタスケテ・・・)
うるうる・・・
地龍さんに潤んだ目で見つめられた・・・あれだけ恐ろしかったのにこうしてると可愛いな、威圧感凄いけど・・・。
「あなたは私を齧った後死んで、私がお肉を食べたからアンデッド化したんだよね」
(ヨクワカラナイケド・・・タブンソウ)
「じゃぁこっちの地龍さんを私がちょっとだけ食べたら蘇るかも」
キラキラ・・・
「そんなキラキラした目で見つめないでよ・・・、まだ蘇るか分かんないからね」
私は死んでいる地龍に近寄り、足のところのお肉を齧った。
かぷっ・・・
もきゅもきゅ・・・
「あ、やっぱり美味しい」
もきゅもきゅ・・・
キラキラ・・・
もきゅもきゅ・・・
キラキラ・・・
「そんなに見つめられると落ち着かないよぅ・・・」
くちゃくちゃ・・・
キラキラ・・・
びくっ!
びくん!、びくん!
「わぁ、びっくりしたぁ!」
私がお肉を食べ始めてしばらく経つと死んでいた地龍さんが急に動き出した、手足がびくびく痙攣してとても気持ち悪いの・・・。
ごきっ!・・・ばきばきっ!・・・ずっ・・・ずずっ・・・
捻れておかしな方に向いていた身体が再生を始めたみたい・・・でも傷があった所の皮膚は再生してないから見た目がとても気持ち悪いし。
ずぅぅぅぅん!
きょろきょろ・・・
(オ・・・オデ・・・オデハドウナッタ?・・・オォ・・・オデノイトシイツガイ!)
(ワァァン・・・ヨカッタ・・・ワタシノツガイ、イキカエッタ!、マスタァ、アリガトウ!)
「いや、死んでアンデッドになってるんだけどね」
私はイチャイチャし始めた2人?に聞こえないようにぼそっと呟いた。
「で・・・これからどうするんだい?、アンデッドの出現は騎士団が討伐に出るような国の非常事態だ、しかもそのアンデッドが人間なんかじゃなくて大森林の頂点に君臨する龍族・・・黒龍や炎龍と比べて弱いとはいえ地龍が2体、これだけの厄災になると普通なら大陸中の国に通達を出した後、皇帝の指揮で軍が動くだろうね」
「どうするって言われても・・・私もどうしていいか分からないよ・・・」
(ワタシ・・・マスタァガ、コマルナラアバレナイ・・・ヨ・・・ツガイニモイイキカセル・・・ツガイハ・・・バカダケド、ワタシノイウコトハ・・・キク)
(オデモ・・・オトナシク・・・スル・・・ナゾノチカラデ・・・オカシクナル・・・モリカラデテ・・・アバレタイ・・・ニンゲンヲ・・・ムシャムシャクイタクナルガ・・・ガマン・・・スル)
「・・・って言ってるよ」
私は地龍さん達の言葉を翻訳してペトラさんに伝えた、っていうか地龍さんとはデボネア帝国語を使って会話?してるんだけど、何で通じるんだろ・・・。
「謎の力でおかしく・・・それが解明されたら魔物の暴走が起きる原因が分かるかもしれないね・・・だがまずは森の奥から出て来る魔物をどうするかだが・・・」
「え・・・出て来るの?」
「あぁ、明日か明後日になるだろうが魔物の暴走・・・森から魔物が沢山出て来るだろうね、以前別の場所で暴走が起きた時と状況がとてもよく似ている」
「ここから少し戻った所に吊り橋が2つあるけど、あそこは深い渓谷だから魔物は渡れないよね?」
「いや・・・あの橋から川の上流に半日ほど歩くと滝があってね、谷が深いのはそこから下流だけなのさ、それより上流は歩いて簡単に川を渡れる、だから遠回りしてやって来るよ、だがマキシマ橋のある所は川幅が広くて流れも速いし谷もそれなりに深いからあの橋を落とせば魔物は街に近付けないだろう」
(マスタァ・・・)
ペトラさんと話していると地龍さんが話しかけて来た。
「何かな?」
(ワタシタチ・・・マダマスタァニ・・・ナマエモラッテナイ・・・ナマエヲツケテホシイ)
「名前?・・・ペトラさんどうしよう、地龍さん達が名前付けてくれって」
「カリンちゃん、こいつら飼うのかい?」
「いや飼わないし!」
2階建ての家くらいの背丈がある地龍さんなんて飼えないよ!。
うるうる・・・
だからそんなに潤んだ目で見ないで・・・。
「名前を付けて森の奥で大人しくしてろって命令しておけばいいんじゃないか?」
「そうだね・・・じゃぁ・・・地龍・・・ドラゴンだから・・・そっちの女の子はドラちゃんで、こっちの男の子はゴンちゃん・・・どうかな?」
「カリンちゃん・・・誰かに名前つけるの下手だと言われた事ないかい?」
「ないけど・・・」
「・・・」
「・・・ねぇ、ドラちゃんとゴンちゃん、あなた達にお願いがあるの、これから魔物達の暴走が起きると思うけど、お家に戻って大人しくしててくれるかな、一緒になって暴れちゃダメ」
(マスタニハ・・・オデヲイキカエラセテクデタオン・・・アル・・・マスタノイウコトハ・・・キク・・・オデ・・・スアナニ・・・モドッテオトナシクシテル)
(ワタシハ・・・ココデマスタァ・・・マモリタイ・・・イジメルヤツイタラ・・・アタマカラマルカジリ・・・スル)
どたどた・・・
バタン!
「おい、カーマ・・・っと来客中だったか」
「非常事態だから問題ないわぁ、チャールズちゃんは知ってるわよね、こちらは魔女様の新しい弟子でレイアちゃんよ」
ぺこり
俺の名前はチャールズ・マンダム、ハンター・ギルドからの依頼で大森林の調査から戻ったところだ。
ハンター・ギルドの応接室にはギルド長のカーマと魔女様の弟子が居た、挨拶するくらいでまだあまり話した事は無いが8年ぶりに魔女様が戻ってきた事を街の住民に知らせたのもこの少女だ。
「まぁ座りなさいな、お茶も用意させるわ」
「茶は後でいい、緊急の話だ、魔女様の弟子のお嬢ちゃんにも聞いてもらいたい」
「その様子だと・・・」
「あぁ、お察しの通り魔物の暴走の可能性が高い、最深部に行かないと出て来ないような魔物が浅い場所に居やがる、それに途中ですれ違ったハンターの話だと男のハンターが一人と紫色の髪をした少女・・・おそらくカリンちゃんだと思うが・・・地龍に喰われたようだ」
ガタン!
魔女様の弟子がソファーから勢いよく立ち上がった、動揺してるな・・・街の連中の話だとカリンちゃんとはよく一緒に買い物をしてたそうだから仲が良かったんだろう。
「魔女様も異変に気付いてお弟子ちゃんをここに寄越したのよ、魔女様もチャールズちゃんと同じで魔物の暴走が起きるんじゃないかって言ってるわ、ここ数日くらい森の様子がおかしかったみたいね」
「それで・・・どうすんだよ」
「街の緊急事態マニュアルに従って動くわ、私も先代のギルド長から引き継いだだけで魔物の大規模な暴走は初めてなのよ、32年前の暴走を体験したハンターはあまり残ってないし魔女様に頼ることになるだろうけど何とかなると思う・・・ところでペトラさんが居ないようだけど・・・」
「あぁ・・・姉御は最近疲れやすくてな、俺を先に報告に行かせて一休みしたらのんびり戻って来るそうだ」
「・・・」
「頭を抱えてどうしたんだよ・・・」
「紫髪の子・・・カリンちゃんが地龍に食べられたんでしょ、ペトラさんはあの子を可愛がってたのよ、復讐に行ったんじゃないの?」
「俺も一瞬そうじゃないかと思って心配はした、だが姉御の事だからいくら疲れてたとしても地龍くらい簡単に殺れる、そのうち素材や魔石を大量に抱えて戻って来ると思うぜ、俺もここで報告し終わったら念の為に森に姉御を迎えに行こうと思ってる」
ガタン・・・
「レイアちゃん・・・どこ行くの?」
「ちょっとお手洗い・・・」
とてとて・・・
ガチャ・・・バタン・・・
「・・・」
「(ねぇユッキィ、急にどうしたの?、私、おしっこしたくないよ)」
「まずいな・・・カリンの奴が喰われたのが本当なら魔物に覚醒した可能性がある」
「(え?)」
「夕方のあの音はカリンの仕業だろう、人として生まれた吸血族は覚醒する時に魔力を暴走させて周囲を破壊するんだ」
「(そうなんだ・・・)」
「私が以前、カリンが魔物に覚醒すると厄介だと言ったの覚えてるよな、人間としての正気を保っていればいいが恐怖でおかしくなってるかも・・・そうなると少し面倒だ、魔物の暴走と吸血族・・・両方の相手はいくら私でも少しきつい」
「・・・」
「あの・・・ペトラさん?」
幼女になってしまったペトラさんは女の子座りをして呆然としている。
私はどう声をかけようかと考えながらとりあえず話し掛けた。
「うりゅ・・・ぐすっ・・・」
「え・・・ちょっと待って・・・泣かないでペトラさん、幼女にしちゃったのは不可抗力で、私もこんなになるとは思わなくて・・・」
ペトラさんの目から涙がポロポロと溢れた・・・元々小柄で可愛らしい人だったけど若返ったら凄い美少女になってるよ・・・その美少女が弱々しく震えて涙を流してる・・・私にそっちの趣味は無いけどなかなかの破壊力だった。
「違う・・・カリンちゃんが助けてくれたのは感謝してるんだ、でもこの姿じゃマルコーに・・・息子に会っても母親だとは信じてもらえない・・・そう思ったら悲しくなってね・・・」
「・・・」
「・・・」
2人の間に沈黙が流れた、もう夜が完全に明けて周りは明るくなっている。
ぐるるるる・・・
ぐちゃ・・・ぐちょっ・・・ぴちゃ・・・
「え・・・」
私たちの後ろで唸り声と変な音がした、とても嫌な予感がして振り返ると・・・。
「ひっ・・・」
「・・・これはまずいね、地龍がアンデッド・ドラゴンになりやがった!、逃げるよカリンちゃん!」
先ほど息絶えて私がお肉を齧った地龍さんが立ち上がり私達をじっと見てた、砕けて落ちた顎や私が食べちゃった足のところは何故か再生しかけてる・・・皮膚が削げ落ち筋肉が剥き出しで見た目がとても気持ち悪いけど・・・。
ぺたん・・・
腰が抜けて動けない私を庇うようにペトラさんが地龍と対峙してる、鎖の付いた鎌はちっちゃくなったペトラさんにはとても重そうだけど大丈夫?・・・それにサイズの大きな服がずり落ちて半裸だ。
ぶぉん・・・ぶぉん・・・。
「カリンちゃん!、早く立ち上がって逃げるよ、今の身体じゃ力の加減がまだ分からないから前と同じようには戦えない」
ペトラさんが鎖鎌を旋回させながら私に叫んだ・・・でも・・・。
ぽてっ・・・
「あぅ」
逃げようとしたら尻餅をついた。
「・・・怖いよぅ・・・ぐすっ・・・」
何度立ちあがろうとしても足腰に力が入らないから転んじゃうの!。
(・・・ナカナイデ・・・マスタァ)
「え?」
私の頭の中に誰かが話しかけてきた・・・周りを見ても私とペトラさん、それと地龍しかいないのに誰が?・・・。
(ワタシ・・・タタカウキ・・・ナイ・・・マスタァノ・・・メイレイニシタガウ・・・)
「なら・・・地龍から私達を助けて・・・」
頭の中に話しかけて来る者に応えるように私は声を出した。
(チリュウカラマスタァ・・・タスケル?・・・ワタシ・・・タブン・・・チリュウ・・・チリュウトイウノハ・・・ニンゲンガツケタナマエ)
私に話しかけてきた声は目の前の地龍さんでしたぁ!。
「ペトラさん待って!、この地龍さん私の頭に直接話し掛けて来たの、戦う気は無いって」
「あ?、何言ってるんだい!」
ペトラさんがキレた、そんなに怒らなくても・・・。
「だからこの地龍さん、私の事マスターって」
「・・・」
「地龍さーん、伏せ!」
ずぉぉぉん!
ぐるるるる・・・
私の指示通りに地龍さんが地面に伏せた。
「転がって」
ごろごろ・・・ぐるん!・・・ぐるん!・・・。
「ね」
「いや何が「ね」なのか分からないよ!、とりあえず目の前の地龍は危なくないんだね」
「うん、多分」
「・・・」
ぐるるるるる・・・
どす・・・どす・・・
きゅるるるる・・・
地龍さんが立ち上がって先に死んでしまったもう一頭の地龍さんに近付き、頭を擦り付けてとても悲しそうにしている、まるで泣いてるみたい・・・。
「あの・・・地龍さん?」
(マスタァ・・・ワタシノツガイ・・・シンジャッタ・・・イママデズット・・・イッショダッタ・・・ノニ・・・カナシイヨ・・・サミシイヨ・・・)
「わぁぁ、ごめんなさい!、って私は何もしてないけど・・・でも死んじゃってるからどうしようもないと思うの」
(マスタァ・・・オネガイ・・・イキカエラセテ・・・)
「いや無理だし!」
(ワタシト・・・オナジニ・・・デキナイノ?)
「え・・・アンデッドに・・・って事かな?、でもやり方分かんないよぅ」
「カリンちゃん、横で聞かせてもらってなんとなく話は分かったよ、おそらくこの死んでる地龍は蘇った方の番(つがい)か何かで、死んじまった事を悲しんでるんじゃないかい?」
ペトラさん察しがいいな!。
「うん、そうなの、私に蘇らせてってお願いされちゃった、でもやり方がわからないの」
「私も古い文献で読んだだけだから正確じゃないかもしれないが・・・吸血族は死体を使役できるって話だね、確か・・・自分の血を与えてから殺して、そいつの血を飲む・・・アンデッドになった後は名前を与えると眷属になって主に似た強い能力を得る・・・」
「そうなの?」
(マスタァ・・・ワタシ・・・ナンデモスルカラツガイヲタスケテ・・・)
うるうる・・・
地龍さんに潤んだ目で見つめられた・・・あれだけ恐ろしかったのにこうしてると可愛いな、威圧感凄いけど・・・。
「あなたは私を齧った後死んで、私がお肉を食べたからアンデッド化したんだよね」
(ヨクワカラナイケド・・・タブンソウ)
「じゃぁこっちの地龍さんを私がちょっとだけ食べたら蘇るかも」
キラキラ・・・
「そんなキラキラした目で見つめないでよ・・・、まだ蘇るか分かんないからね」
私は死んでいる地龍に近寄り、足のところのお肉を齧った。
かぷっ・・・
もきゅもきゅ・・・
「あ、やっぱり美味しい」
もきゅもきゅ・・・
キラキラ・・・
もきゅもきゅ・・・
キラキラ・・・
「そんなに見つめられると落ち着かないよぅ・・・」
くちゃくちゃ・・・
キラキラ・・・
びくっ!
びくん!、びくん!
「わぁ、びっくりしたぁ!」
私がお肉を食べ始めてしばらく経つと死んでいた地龍さんが急に動き出した、手足がびくびく痙攣してとても気持ち悪いの・・・。
ごきっ!・・・ばきばきっ!・・・ずっ・・・ずずっ・・・
捻れておかしな方に向いていた身体が再生を始めたみたい・・・でも傷があった所の皮膚は再生してないから見た目がとても気持ち悪いし。
ずぅぅぅぅん!
きょろきょろ・・・
(オ・・・オデ・・・オデハドウナッタ?・・・オォ・・・オデノイトシイツガイ!)
(ワァァン・・・ヨカッタ・・・ワタシノツガイ、イキカエッタ!、マスタァ、アリガトウ!)
「いや、死んでアンデッドになってるんだけどね」
私はイチャイチャし始めた2人?に聞こえないようにぼそっと呟いた。
「で・・・これからどうするんだい?、アンデッドの出現は騎士団が討伐に出るような国の非常事態だ、しかもそのアンデッドが人間なんかじゃなくて大森林の頂点に君臨する龍族・・・黒龍や炎龍と比べて弱いとはいえ地龍が2体、これだけの厄災になると普通なら大陸中の国に通達を出した後、皇帝の指揮で軍が動くだろうね」
「どうするって言われても・・・私もどうしていいか分からないよ・・・」
(ワタシ・・・マスタァガ、コマルナラアバレナイ・・・ヨ・・・ツガイニモイイキカセル・・・ツガイハ・・・バカダケド、ワタシノイウコトハ・・・キク)
(オデモ・・・オトナシク・・・スル・・・ナゾノチカラデ・・・オカシクナル・・・モリカラデテ・・・アバレタイ・・・ニンゲンヲ・・・ムシャムシャクイタクナルガ・・・ガマン・・・スル)
「・・・って言ってるよ」
私は地龍さん達の言葉を翻訳してペトラさんに伝えた、っていうか地龍さんとはデボネア帝国語を使って会話?してるんだけど、何で通じるんだろ・・・。
「謎の力でおかしく・・・それが解明されたら魔物の暴走が起きる原因が分かるかもしれないね・・・だがまずは森の奥から出て来る魔物をどうするかだが・・・」
「え・・・出て来るの?」
「あぁ、明日か明後日になるだろうが魔物の暴走・・・森から魔物が沢山出て来るだろうね、以前別の場所で暴走が起きた時と状況がとてもよく似ている」
「ここから少し戻った所に吊り橋が2つあるけど、あそこは深い渓谷だから魔物は渡れないよね?」
「いや・・・あの橋から川の上流に半日ほど歩くと滝があってね、谷が深いのはそこから下流だけなのさ、それより上流は歩いて簡単に川を渡れる、だから遠回りしてやって来るよ、だがマキシマ橋のある所は川幅が広くて流れも速いし谷もそれなりに深いからあの橋を落とせば魔物は街に近付けないだろう」
(マスタァ・・・)
ペトラさんと話していると地龍さんが話しかけて来た。
「何かな?」
(ワタシタチ・・・マダマスタァニ・・・ナマエモラッテナイ・・・ナマエヲツケテホシイ)
「名前?・・・ペトラさんどうしよう、地龍さん達が名前付けてくれって」
「カリンちゃん、こいつら飼うのかい?」
「いや飼わないし!」
2階建ての家くらいの背丈がある地龍さんなんて飼えないよ!。
うるうる・・・
だからそんなに潤んだ目で見ないで・・・。
「名前を付けて森の奥で大人しくしてろって命令しておけばいいんじゃないか?」
「そうだね・・・じゃぁ・・・地龍・・・ドラゴンだから・・・そっちの女の子はドラちゃんで、こっちの男の子はゴンちゃん・・・どうかな?」
「カリンちゃん・・・誰かに名前つけるの下手だと言われた事ないかい?」
「ないけど・・・」
「・・・」
「・・・ねぇ、ドラちゃんとゴンちゃん、あなた達にお願いがあるの、これから魔物達の暴走が起きると思うけど、お家に戻って大人しくしててくれるかな、一緒になって暴れちゃダメ」
(マスタニハ・・・オデヲイキカエラセテクデタオン・・・アル・・・マスタノイウコトハ・・・キク・・・オデ・・・スアナニ・・・モドッテオトナシクシテル)
(ワタシハ・・・ココデマスタァ・・・マモリタイ・・・イジメルヤツイタラ・・・アタマカラマルカジリ・・・スル)
どたどた・・・
バタン!
「おい、カーマ・・・っと来客中だったか」
「非常事態だから問題ないわぁ、チャールズちゃんは知ってるわよね、こちらは魔女様の新しい弟子でレイアちゃんよ」
ぺこり
俺の名前はチャールズ・マンダム、ハンター・ギルドからの依頼で大森林の調査から戻ったところだ。
ハンター・ギルドの応接室にはギルド長のカーマと魔女様の弟子が居た、挨拶するくらいでまだあまり話した事は無いが8年ぶりに魔女様が戻ってきた事を街の住民に知らせたのもこの少女だ。
「まぁ座りなさいな、お茶も用意させるわ」
「茶は後でいい、緊急の話だ、魔女様の弟子のお嬢ちゃんにも聞いてもらいたい」
「その様子だと・・・」
「あぁ、お察しの通り魔物の暴走の可能性が高い、最深部に行かないと出て来ないような魔物が浅い場所に居やがる、それに途中ですれ違ったハンターの話だと男のハンターが一人と紫色の髪をした少女・・・おそらくカリンちゃんだと思うが・・・地龍に喰われたようだ」
ガタン!
魔女様の弟子がソファーから勢いよく立ち上がった、動揺してるな・・・街の連中の話だとカリンちゃんとはよく一緒に買い物をしてたそうだから仲が良かったんだろう。
「魔女様も異変に気付いてお弟子ちゃんをここに寄越したのよ、魔女様もチャールズちゃんと同じで魔物の暴走が起きるんじゃないかって言ってるわ、ここ数日くらい森の様子がおかしかったみたいね」
「それで・・・どうすんだよ」
「街の緊急事態マニュアルに従って動くわ、私も先代のギルド長から引き継いだだけで魔物の大規模な暴走は初めてなのよ、32年前の暴走を体験したハンターはあまり残ってないし魔女様に頼ることになるだろうけど何とかなると思う・・・ところでペトラさんが居ないようだけど・・・」
「あぁ・・・姉御は最近疲れやすくてな、俺を先に報告に行かせて一休みしたらのんびり戻って来るそうだ」
「・・・」
「頭を抱えてどうしたんだよ・・・」
「紫髪の子・・・カリンちゃんが地龍に食べられたんでしょ、ペトラさんはあの子を可愛がってたのよ、復讐に行ったんじゃないの?」
「俺も一瞬そうじゃないかと思って心配はした、だが姉御の事だからいくら疲れてたとしても地龍くらい簡単に殺れる、そのうち素材や魔石を大量に抱えて戻って来ると思うぜ、俺もここで報告し終わったら念の為に森に姉御を迎えに行こうと思ってる」
ガタン・・・
「レイアちゃん・・・どこ行くの?」
「ちょっとお手洗い・・・」
とてとて・・・
ガチャ・・・バタン・・・
「・・・」
「(ねぇユッキィ、急にどうしたの?、私、おしっこしたくないよ)」
「まずいな・・・カリンの奴が喰われたのが本当なら魔物に覚醒した可能性がある」
「(え?)」
「夕方のあの音はカリンの仕業だろう、人として生まれた吸血族は覚醒する時に魔力を暴走させて周囲を破壊するんだ」
「(そうなんだ・・・)」
「私が以前、カリンが魔物に覚醒すると厄介だと言ったの覚えてるよな、人間としての正気を保っていればいいが恐怖でおかしくなってるかも・・・そうなると少し面倒だ、魔物の暴走と吸血族・・・両方の相手はいくら私でも少しきつい」
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ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
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【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
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