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Side - 05 - 2 - うん、しってた -
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Side - 05 - 2 - うん、しってた -
私の名前はウォルフガング・ダークシュナイダー、セドリック帝国の貴族です。
ミラージュ大陸の南に位置する帝国は国境を5つの国と接している事から紛争や小競り合いが絶えず、民は疲弊し国は荒れていました。
このような状況にも関わらず貴族達は贅沢三昧・・・これではいかにミラージュ大陸第2の国力をを持つ帝国といえども緩やかな衰退は避けられない・・・そう誰もが思っていました。
幸い2年前に即位した現皇帝陛下は過激だった前陛下とは異なり穏健派で、国の現状に危機感を覚えたのか他国との関係改善に尽力、まだ小規模な紛争はあるものの少しずつ国内の経済は立ち直りつつあります。
しかし未だ長く続いた戦争の傷は癒えず、街には難民や孤児が溢れているのです。
私の家は下級貴族ながら海に面した街を領地に持ち、とても裕福でした、しかしそれは街からの税収とは別に代々我が家が営んでいる人材斡旋業によるもの・・・いえ、人材斡旋といえば聞こえが良いのですが実のところは人身売買、奴隷商のようなものでした。
貴族の次男として生まれた私は幸いな事に高度な教育を受け、家業は兄に任せて医学の道に進みました、戦争が絶えないこの国には医者が不足していたのです。
医師の資格を取得し軍医の募集をしていた帝国軍に入りました、最前線に赴いたのが18歳・・・9年間軍で過ごし、戦場で膝に矢を受けたのが27歳・・・。
我ながらよくやったと思います、地獄のような戦場で私は沢山の兵士の命を救いました。
退役して街で病院でも開こうかな・・・戦地で今後の事を考えていた私に追い打ちをかけるように知らされた兄夫婦の事故死。
父親は既に亡く、実家は私が継ぐ事になったのです。
「はじめまちて・・・おじしゃま」
国境の激戦地から実家に戻った私を待っていたのは兄夫婦の娘でした。
「・・・アリーシェちゃん?」
「はい」
4歳の姪はまだ両親の死が理解できないのか、花が咲くような笑顔で私に挨拶をしました。
「兄さん・・・ダメだよ・・・こんな可愛い子を残して逝くなんて・・・」
私か、姪か、今後どちらが家を継ぐにせよこの奴隷商まがいの裏家業は終わらせなければいけない・・・幸い私にはこの家の財産、税収、それから軍で蓄えた報酬や退役に伴う慰労金があるのです。
最初は街に溢れる孤児達に何か出来ないか・・・そう考えて始めた事だったのです。
まず「商品」の居た収容所を閉鎖し病院と孤児院に改装、元居た「商品」は患者や子供達の世話をする職員として雇い入れました。
孤児院に入った子達の中から優秀な人材を使用人として屋敷に住まわせ、私が直接読み書き計算を教え職を斡旋したのです。
そうしているうちに10年が経ち、ダークシュナイダー家が斡旋する使用人がとても優秀だと評判を呼び、斡旋業者として莫大な利益が出せるようになりました。
「・・・結局人材斡旋業は継続ですか・・・皮肉ですね」
そう、私の屋敷で働いていたメイドや執事はとても優秀だったのです、孤児院から連れて来た子達を皆で一流のメイド、執事に鍛え上げてくれました。
最初は下級貴族、そこから評判が広がり上級貴族、更には皇室にまで・・・ダークシュナイダーの使用人達は多くの貴族家で働いています。
「・・・叔父様」
「うわぁぁ!」
「あの・・・ノックをしたのですけどお返事が無かったので・・・勝手に入ってしまいました、驚かせて申し訳ありません・・・あの・・・お伝えしたい事が・・・」
「アリーシェちゃんですか・・・ごめん、考え事をしていてね」
「セラちゃん達の事ですか?」
「いえ、セラちゃんの事も心配ですけど、昔の事を少し・・・で、私に伝えたい事って何でしょう?」
「セラちゃんと仲の良かった子から聞いたんですけど、セラちゃんって、教育係のミリンダちゃんに虐められてたみたいです、隠れて蹴られたり、殴られたり、それから・・・もう少し成長したら幼女趣味の叔父様に酷い事をされるぞって吹き込まれてたみたいで・・・」
「なん・・・だって・・・」
「だから、自分から逃げたか・・・ミリンダちゃんに仕返しをして、でもそんな事したらお屋敷にいられないから出て行ったんじゃないかって」
「なぜ・・・その子は今まで言ってくれなかったのでしょう?」
「ミリンダちゃん、目上の人には礼儀正しいんですけど、年下の子には酷い事をしていたようです、だから言えば自分もいじめられると思って言えなかったって」
「セラちゃんに私は・・・幼女趣味の変態と思われていたのですか・・・」
「えーと、叔父様は確かに幼女が大好きですもんね、誤解されても仕方がないかと・・・小さな女の子はお屋敷に住まわせて、男の子は別邸・・・街の人達も、あの領主様は幼女が大好きな変態だが領民想いのとても良い御方だ・・・と」
「・・・」
133バン・・・クウチョウセツダン・・・
頭の中に声が響いた、僕は指を動かしスイッチを押す感覚で133番フロアの空調を切る、逆らうと身体に激痛が走るから仕方なく言われた通りにする。
「(133番空調切りましたー)」
あれから何日経ったか分からない、でも僕がどうなったのかなんとなく分かった。
この宇宙船は生き物を使って制御している・・・のだと思う。
だから僕はこの宇宙船の生体コンピュータの一部、僕の役割は「中央」からの指示を受けてとある区画の空調を制御・・・卵を産み付けられて宿主にはされなかったけどこれは酷い!。
しかもお給料も出ないタダ働きの休み無し!、地球のブラック企業も真っ青だ、ご主人様のお屋敷でさえ年に数回お小遣いが貰えたのに・・・。
僕の身体は見えないから分からないのだけど手足は動かない、口やお尻・・・それから・・・お・・・お股の穴にも触手が入ってる感覚があるからミリンダさんと同じ状態なのだと思う・・・。
あれから更に何日も経った。
空調の制御が仕事だけど暇な時もある、暇な時は余計な事を考えるものだ、・・・ある日僕はこの船を乗っ取れるのではないだろうかと考えた・・・。
僕の前世・・・瀬良大樹(せらだいき)の仕事はシステムエンジニアでありプログラマー、若い頃はハッカーの真似事もしていた、だから僕に指示を出す「中央」にアクセスして乗っ取る・・・までいかなくともイタズラくらいならできるのではないか・・・。
考え始めたら夢中になって思わず実行してしまった。
結果は・・・乗っ取り成功、案外ちょろかった、セキュリティは地球の中小企業のサーバー並みだ、まだ半分程度しか乗っ取れていないが空調、照明、生命維持機能を掌握できた。
命令される側からする側に立場が逆転したのだ、まだ宇宙人どもは僕の行動に気付いていないし気付かれないように慎重に作業している、ふふふ・・・見てろよ宇宙人・・・。
僕が誘拐されて・・・母星の時間でちょうど1年だ。
何故1年だと分かったのか・・・それはこの船の頭脳を完全に乗っ取ったからだ、ふはははは!。
あれから更に「中央」を踏み台にしてこの船の頭脳にアクセスした、船長の指示を最優先とあったので「船長」を「中央」に書き換えてやった。
全ての権限を取得した後、僕はこの船のデータベースにアクセスして情報を読んだ、もちろん僕がこのシステムに「部品」として組み込まれた時点で言語は理解できるようになっている。
この船は僕の住んでいた星、ジュノス星系第4惑星から数億光年先にある母星を出発し空間転移を繰り返してここに辿り着いたらしい、彼らの星は異種族間の紛争で壊滅、奇跡的に宇宙に脱出できたのはこの船だけだった。
立ち寄った惑星で物資を補給しつつ何世代にも渡って宇宙を旅しているこの船は何千回も繰り返した「部品交換」で僕とミリンダさんを「拾い」古い部品と「交換」した、それが船の乗員を全滅させる厄災の元凶だと知らずに・・・。
この船の乗っ取り計画は最後まで誰にもバレずに実行できた、彼らもまさか「部品」が知能を持って船の頭脳を掌握するとは思わなかっただろう。
何しろ僕が生まれた国は中世ヨーロッパ並みの文明だから油断したのだと思う、しかも僕達には魔力や魔法がある、僕は魔力を薄く伸ばして触手というケーブルを辿りこの船の頭脳を完全掌握したのだ。
最初は僕も宇宙人たちに「話し合い」を求めた、圧倒的有利をちらつかせ、お互いの利益を共有しようと提案した、だけど彼らは僕の居るサーバー室・・・繭のある部屋を攻撃しようとした。
だから報復として僕の居る部屋以外の生命維持機能を止めた。
死体は全部で132体、作業用ロボットを使って宇宙に捨てた、ちなみにあのプレデターとエイリアンは作業用ロボットだった。
そしてこの船には僕以外誰も居なくなった、船外カメラから見えるのは青い惑星・・・ジュノス星系第4惑星、僕が転生して10歳まで生きた星だ。
ピピッ・・・
あ、培養機の処理が終わったようだ・・・生成開始から30日、結構時間かかったな。
僕は室内モニターを培養室に切り替え作業用ロボットを向かわせた。
バックアップ2番から3番培養機にデータ転送、ファイル名「セラ」。
転送完了・・・っと。
ざぱぁ・・・・
培養機が自動的に起き上がり蓋が開く、中の培養液が外に溢れ格子状になった床から排水された。
むくり・・・
ぺた・・・
ぺた・・・
「手足は自由に動くね、視界も良好・・・」
僕は培養機から身体を起こし作業用ロボット(プレデター型)に支えられて立ち上がった、この視線の高さは久しぶり、ちょっと感動。
視界を部屋の監視モニターに切り替えて・・・うん、完璧にセラの姿だね。
そう、この船には文明の存在する惑星を探査する為に機械の内蔵と骨格を持つ「人形」が製造できる装置があった。
培養機と名付けられたこの装置は対象の惑星に存在する生命体に似せて自由に製作できる、だから僕はかつての自分の肉体を再現し、僕自身の脳のコピーをインストールした。
元々は高度な文明を持つ惑星の生命体に紛れて諜報活動をしたり、権力者と入れ替わって街や国を乗っ取る為のものらしい。
骨格は金属、強化筋肉と人工皮膚に包まれた身体は手触りまで生前の僕の肉体そのものだ、傷が付けばナノマシン的なものが自動修復してくれるらしい・・・この原理は何度も船のデータを読み返したが僕には理解できなかった。
僕・・・セラの容姿は気に入っていたので変にいじっていない、身長は少し伸ばし僕が成長して15歳になった時をイメージした、ちなみに瀬良大樹(せらだいき)は貧乳派だったので胸はささやかにしてある。
「まるでアイドルみたいな美少女だ!、ふふふ、僕は美しい!」
ぺたぺた・・・
僕は今全裸だけど他に誰もいないので気にしない、培養室から出て裸足で通路を歩き、船の展望室に入る。
「うわぁぁ・・・綺麗!」
展望室に入ると巨大なモニターに僕が生まれた星の青く美しい姿が映し出されていた、大きなモニターを肉眼(機械だけど)で見ると迫力が違う、暗い所は夜、明るい所は昼・・・あ、あの辺は暗いけど電気・・・魔導灯が所々ついていて薄明るい・・・大きな街かな。
「よく見ると部屋の隅の方が埃っぽいな、作業用ロボットは細かい所のお掃除できないのかも・・・まぁ自由に動ける身体が手に入ったからお掃除しよう・・・ご主人様の所で教わったメイドスキルが役に立つ時が来たね」
「・・・」
「・・・」
「誰も話し相手がいないのは寂しいなぁ・・・そうだ、もう1体「人形」を作って・・・は却下かな、一人漫才みたいになるし・・・星に降りて街を探索してみたいな・・・これまで街で遊んだ事ないし、うん、そうしよう!」
「この宇宙船は大気圏の中と外を転移できるから、高度1000mくらいで浮かせて船の下を光学迷彩で隠せば気付かれないと思う、それから惑星探査用の小型戦闘艇で地上に降りて・・・」
本当に楽しみだ、ワクワクする、お金は全然持ってないけどハンターという職業があって魔物を退治したり薬草を採って来るとお金が貰えると先輩のメイドに聞いた事がある。
僕の身体は機械だから寝たり食べたりしなくても大丈夫だ、危ない事があれば船に逃げて来ればいい、ここは僕のお家だ!。
船内のお掃除が終わったら惑星探索用戦闘艇を整備して・・・っていうかこの船は広い、東京ドーム何個分あるんだろう、まるで街、これ全部僕がお掃除してたら大変だ、雑用をしてくれる「人形」は増やしておいた方がいいかも。
ゔぃぃぃぃん・・・
僕が自由に動ける機械の身体を手に入れてから2日が経った、服が無くてまだ全裸だけど・・・この船には服はもちろん布が無い、グレイさん達は全裸だったし僕が着ていた服は元素レベルで分解されて成分分析に使われたようだ。
昨日からやっている部屋のお掃除は順調に進んでいるもののまだ終わっていない、部屋数が多過ぎるのだ!、普段使う区画の掃除が一通り終われば他は放置でいいだろう・・・。
今僕が居るのはサーバー室、繭のあるお部屋、ここに外から入るのは2回目だね。
この部屋の中には僕の「本体」が眠っている、脳の機能はすでにこの船の頭脳に移してバックアップも取ってあるからこの身体が死んでも大丈夫だ、それに僕の担当していたフロアは人が居ないから今は空調の制御は必要ない。
僕が今悩んでいるのはこの身体をどうするか・・・だ。
自分の身体だから捨てる訳にもいかないし、正直どうなっているのか見るのが怖い、この部屋にあるカメラも繭の中まではっきり見えない、でも・・・10年間お世話になった身体だからちゃんと向き合わないと・・・。
「これだね・・・覚悟を決めて・・・」
・・・
「わぁ・・・」
ミリンダさんと同じ感じで程よく触手と融合してるね、既視感あると思ったら転生前に持ってたH・Rギーガーやベクシンスキーの画集にこんな感じのあったなぁ・・・。
つんつん・・・
ねちゃぁぁ・・・
「触手から出た液が糸引いてる・・・これ抜けるのかな」
ずずっ・・・
「・・・うん、知ってた」
触手は完全に皮膚と溶着して抜けなかった・・・この船の「頭脳」に入ってる僕とはまだ感覚を共有してるからお股の触手を引っ張ったら感じてビクッ!ってなったよ!、残念ながら僕には触手プレイを楽しむ趣味は無い・・・。
廃棄処理の信号を出せば切り離せるけどあれって使用済みの身体をぐちゃぐちゃに潰して宇宙に捨てる機能だからダメだよね・・・。
「さて、船の中をお散歩しようかな」
僕は問題を先送りにした。
私の名前はウォルフガング・ダークシュナイダー、セドリック帝国の貴族です。
ミラージュ大陸の南に位置する帝国は国境を5つの国と接している事から紛争や小競り合いが絶えず、民は疲弊し国は荒れていました。
このような状況にも関わらず貴族達は贅沢三昧・・・これではいかにミラージュ大陸第2の国力をを持つ帝国といえども緩やかな衰退は避けられない・・・そう誰もが思っていました。
幸い2年前に即位した現皇帝陛下は過激だった前陛下とは異なり穏健派で、国の現状に危機感を覚えたのか他国との関係改善に尽力、まだ小規模な紛争はあるものの少しずつ国内の経済は立ち直りつつあります。
しかし未だ長く続いた戦争の傷は癒えず、街には難民や孤児が溢れているのです。
私の家は下級貴族ながら海に面した街を領地に持ち、とても裕福でした、しかしそれは街からの税収とは別に代々我が家が営んでいる人材斡旋業によるもの・・・いえ、人材斡旋といえば聞こえが良いのですが実のところは人身売買、奴隷商のようなものでした。
貴族の次男として生まれた私は幸いな事に高度な教育を受け、家業は兄に任せて医学の道に進みました、戦争が絶えないこの国には医者が不足していたのです。
医師の資格を取得し軍医の募集をしていた帝国軍に入りました、最前線に赴いたのが18歳・・・9年間軍で過ごし、戦場で膝に矢を受けたのが27歳・・・。
我ながらよくやったと思います、地獄のような戦場で私は沢山の兵士の命を救いました。
退役して街で病院でも開こうかな・・・戦地で今後の事を考えていた私に追い打ちをかけるように知らされた兄夫婦の事故死。
父親は既に亡く、実家は私が継ぐ事になったのです。
「はじめまちて・・・おじしゃま」
国境の激戦地から実家に戻った私を待っていたのは兄夫婦の娘でした。
「・・・アリーシェちゃん?」
「はい」
4歳の姪はまだ両親の死が理解できないのか、花が咲くような笑顔で私に挨拶をしました。
「兄さん・・・ダメだよ・・・こんな可愛い子を残して逝くなんて・・・」
私か、姪か、今後どちらが家を継ぐにせよこの奴隷商まがいの裏家業は終わらせなければいけない・・・幸い私にはこの家の財産、税収、それから軍で蓄えた報酬や退役に伴う慰労金があるのです。
最初は街に溢れる孤児達に何か出来ないか・・・そう考えて始めた事だったのです。
まず「商品」の居た収容所を閉鎖し病院と孤児院に改装、元居た「商品」は患者や子供達の世話をする職員として雇い入れました。
孤児院に入った子達の中から優秀な人材を使用人として屋敷に住まわせ、私が直接読み書き計算を教え職を斡旋したのです。
そうしているうちに10年が経ち、ダークシュナイダー家が斡旋する使用人がとても優秀だと評判を呼び、斡旋業者として莫大な利益が出せるようになりました。
「・・・結局人材斡旋業は継続ですか・・・皮肉ですね」
そう、私の屋敷で働いていたメイドや執事はとても優秀だったのです、孤児院から連れて来た子達を皆で一流のメイド、執事に鍛え上げてくれました。
最初は下級貴族、そこから評判が広がり上級貴族、更には皇室にまで・・・ダークシュナイダーの使用人達は多くの貴族家で働いています。
「・・・叔父様」
「うわぁぁ!」
「あの・・・ノックをしたのですけどお返事が無かったので・・・勝手に入ってしまいました、驚かせて申し訳ありません・・・あの・・・お伝えしたい事が・・・」
「アリーシェちゃんですか・・・ごめん、考え事をしていてね」
「セラちゃん達の事ですか?」
「いえ、セラちゃんの事も心配ですけど、昔の事を少し・・・で、私に伝えたい事って何でしょう?」
「セラちゃんと仲の良かった子から聞いたんですけど、セラちゃんって、教育係のミリンダちゃんに虐められてたみたいです、隠れて蹴られたり、殴られたり、それから・・・もう少し成長したら幼女趣味の叔父様に酷い事をされるぞって吹き込まれてたみたいで・・・」
「なん・・・だって・・・」
「だから、自分から逃げたか・・・ミリンダちゃんに仕返しをして、でもそんな事したらお屋敷にいられないから出て行ったんじゃないかって」
「なぜ・・・その子は今まで言ってくれなかったのでしょう?」
「ミリンダちゃん、目上の人には礼儀正しいんですけど、年下の子には酷い事をしていたようです、だから言えば自分もいじめられると思って言えなかったって」
「セラちゃんに私は・・・幼女趣味の変態と思われていたのですか・・・」
「えーと、叔父様は確かに幼女が大好きですもんね、誤解されても仕方がないかと・・・小さな女の子はお屋敷に住まわせて、男の子は別邸・・・街の人達も、あの領主様は幼女が大好きな変態だが領民想いのとても良い御方だ・・・と」
「・・・」
133バン・・・クウチョウセツダン・・・
頭の中に声が響いた、僕は指を動かしスイッチを押す感覚で133番フロアの空調を切る、逆らうと身体に激痛が走るから仕方なく言われた通りにする。
「(133番空調切りましたー)」
あれから何日経ったか分からない、でも僕がどうなったのかなんとなく分かった。
この宇宙船は生き物を使って制御している・・・のだと思う。
だから僕はこの宇宙船の生体コンピュータの一部、僕の役割は「中央」からの指示を受けてとある区画の空調を制御・・・卵を産み付けられて宿主にはされなかったけどこれは酷い!。
しかもお給料も出ないタダ働きの休み無し!、地球のブラック企業も真っ青だ、ご主人様のお屋敷でさえ年に数回お小遣いが貰えたのに・・・。
僕の身体は見えないから分からないのだけど手足は動かない、口やお尻・・・それから・・・お・・・お股の穴にも触手が入ってる感覚があるからミリンダさんと同じ状態なのだと思う・・・。
あれから更に何日も経った。
空調の制御が仕事だけど暇な時もある、暇な時は余計な事を考えるものだ、・・・ある日僕はこの船を乗っ取れるのではないだろうかと考えた・・・。
僕の前世・・・瀬良大樹(せらだいき)の仕事はシステムエンジニアでありプログラマー、若い頃はハッカーの真似事もしていた、だから僕に指示を出す「中央」にアクセスして乗っ取る・・・までいかなくともイタズラくらいならできるのではないか・・・。
考え始めたら夢中になって思わず実行してしまった。
結果は・・・乗っ取り成功、案外ちょろかった、セキュリティは地球の中小企業のサーバー並みだ、まだ半分程度しか乗っ取れていないが空調、照明、生命維持機能を掌握できた。
命令される側からする側に立場が逆転したのだ、まだ宇宙人どもは僕の行動に気付いていないし気付かれないように慎重に作業している、ふふふ・・・見てろよ宇宙人・・・。
僕が誘拐されて・・・母星の時間でちょうど1年だ。
何故1年だと分かったのか・・・それはこの船の頭脳を完全に乗っ取ったからだ、ふはははは!。
あれから更に「中央」を踏み台にしてこの船の頭脳にアクセスした、船長の指示を最優先とあったので「船長」を「中央」に書き換えてやった。
全ての権限を取得した後、僕はこの船のデータベースにアクセスして情報を読んだ、もちろん僕がこのシステムに「部品」として組み込まれた時点で言語は理解できるようになっている。
この船は僕の住んでいた星、ジュノス星系第4惑星から数億光年先にある母星を出発し空間転移を繰り返してここに辿り着いたらしい、彼らの星は異種族間の紛争で壊滅、奇跡的に宇宙に脱出できたのはこの船だけだった。
立ち寄った惑星で物資を補給しつつ何世代にも渡って宇宙を旅しているこの船は何千回も繰り返した「部品交換」で僕とミリンダさんを「拾い」古い部品と「交換」した、それが船の乗員を全滅させる厄災の元凶だと知らずに・・・。
この船の乗っ取り計画は最後まで誰にもバレずに実行できた、彼らもまさか「部品」が知能を持って船の頭脳を掌握するとは思わなかっただろう。
何しろ僕が生まれた国は中世ヨーロッパ並みの文明だから油断したのだと思う、しかも僕達には魔力や魔法がある、僕は魔力を薄く伸ばして触手というケーブルを辿りこの船の頭脳を完全掌握したのだ。
最初は僕も宇宙人たちに「話し合い」を求めた、圧倒的有利をちらつかせ、お互いの利益を共有しようと提案した、だけど彼らは僕の居るサーバー室・・・繭のある部屋を攻撃しようとした。
だから報復として僕の居る部屋以外の生命維持機能を止めた。
死体は全部で132体、作業用ロボットを使って宇宙に捨てた、ちなみにあのプレデターとエイリアンは作業用ロボットだった。
そしてこの船には僕以外誰も居なくなった、船外カメラから見えるのは青い惑星・・・ジュノス星系第4惑星、僕が転生して10歳まで生きた星だ。
ピピッ・・・
あ、培養機の処理が終わったようだ・・・生成開始から30日、結構時間かかったな。
僕は室内モニターを培養室に切り替え作業用ロボットを向かわせた。
バックアップ2番から3番培養機にデータ転送、ファイル名「セラ」。
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ざぱぁ・・・・
培養機が自動的に起き上がり蓋が開く、中の培養液が外に溢れ格子状になった床から排水された。
むくり・・・
ぺた・・・
ぺた・・・
「手足は自由に動くね、視界も良好・・・」
僕は培養機から身体を起こし作業用ロボット(プレデター型)に支えられて立ち上がった、この視線の高さは久しぶり、ちょっと感動。
視界を部屋の監視モニターに切り替えて・・・うん、完璧にセラの姿だね。
そう、この船には文明の存在する惑星を探査する為に機械の内蔵と骨格を持つ「人形」が製造できる装置があった。
培養機と名付けられたこの装置は対象の惑星に存在する生命体に似せて自由に製作できる、だから僕はかつての自分の肉体を再現し、僕自身の脳のコピーをインストールした。
元々は高度な文明を持つ惑星の生命体に紛れて諜報活動をしたり、権力者と入れ替わって街や国を乗っ取る為のものらしい。
骨格は金属、強化筋肉と人工皮膚に包まれた身体は手触りまで生前の僕の肉体そのものだ、傷が付けばナノマシン的なものが自動修復してくれるらしい・・・この原理は何度も船のデータを読み返したが僕には理解できなかった。
僕・・・セラの容姿は気に入っていたので変にいじっていない、身長は少し伸ばし僕が成長して15歳になった時をイメージした、ちなみに瀬良大樹(せらだいき)は貧乳派だったので胸はささやかにしてある。
「まるでアイドルみたいな美少女だ!、ふふふ、僕は美しい!」
ぺたぺた・・・
僕は今全裸だけど他に誰もいないので気にしない、培養室から出て裸足で通路を歩き、船の展望室に入る。
「うわぁぁ・・・綺麗!」
展望室に入ると巨大なモニターに僕が生まれた星の青く美しい姿が映し出されていた、大きなモニターを肉眼(機械だけど)で見ると迫力が違う、暗い所は夜、明るい所は昼・・・あ、あの辺は暗いけど電気・・・魔導灯が所々ついていて薄明るい・・・大きな街かな。
「よく見ると部屋の隅の方が埃っぽいな、作業用ロボットは細かい所のお掃除できないのかも・・・まぁ自由に動ける身体が手に入ったからお掃除しよう・・・ご主人様の所で教わったメイドスキルが役に立つ時が来たね」
「・・・」
「・・・」
「誰も話し相手がいないのは寂しいなぁ・・・そうだ、もう1体「人形」を作って・・・は却下かな、一人漫才みたいになるし・・・星に降りて街を探索してみたいな・・・これまで街で遊んだ事ないし、うん、そうしよう!」
「この宇宙船は大気圏の中と外を転移できるから、高度1000mくらいで浮かせて船の下を光学迷彩で隠せば気付かれないと思う、それから惑星探査用の小型戦闘艇で地上に降りて・・・」
本当に楽しみだ、ワクワクする、お金は全然持ってないけどハンターという職業があって魔物を退治したり薬草を採って来るとお金が貰えると先輩のメイドに聞いた事がある。
僕の身体は機械だから寝たり食べたりしなくても大丈夫だ、危ない事があれば船に逃げて来ればいい、ここは僕のお家だ!。
船内のお掃除が終わったら惑星探索用戦闘艇を整備して・・・っていうかこの船は広い、東京ドーム何個分あるんだろう、まるで街、これ全部僕がお掃除してたら大変だ、雑用をしてくれる「人形」は増やしておいた方がいいかも。
ゔぃぃぃぃん・・・
僕が自由に動ける機械の身体を手に入れてから2日が経った、服が無くてまだ全裸だけど・・・この船には服はもちろん布が無い、グレイさん達は全裸だったし僕が着ていた服は元素レベルで分解されて成分分析に使われたようだ。
昨日からやっている部屋のお掃除は順調に進んでいるもののまだ終わっていない、部屋数が多過ぎるのだ!、普段使う区画の掃除が一通り終われば他は放置でいいだろう・・・。
今僕が居るのはサーバー室、繭のあるお部屋、ここに外から入るのは2回目だね。
この部屋の中には僕の「本体」が眠っている、脳の機能はすでにこの船の頭脳に移してバックアップも取ってあるからこの身体が死んでも大丈夫だ、それに僕の担当していたフロアは人が居ないから今は空調の制御は必要ない。
僕が今悩んでいるのはこの身体をどうするか・・・だ。
自分の身体だから捨てる訳にもいかないし、正直どうなっているのか見るのが怖い、この部屋にあるカメラも繭の中まではっきり見えない、でも・・・10年間お世話になった身体だからちゃんと向き合わないと・・・。
「これだね・・・覚悟を決めて・・・」
・・・
「わぁ・・・」
ミリンダさんと同じ感じで程よく触手と融合してるね、既視感あると思ったら転生前に持ってたH・Rギーガーやベクシンスキーの画集にこんな感じのあったなぁ・・・。
つんつん・・・
ねちゃぁぁ・・・
「触手から出た液が糸引いてる・・・これ抜けるのかな」
ずずっ・・・
「・・・うん、知ってた」
触手は完全に皮膚と溶着して抜けなかった・・・この船の「頭脳」に入ってる僕とはまだ感覚を共有してるからお股の触手を引っ張ったら感じてビクッ!ってなったよ!、残念ながら僕には触手プレイを楽しむ趣味は無い・・・。
廃棄処理の信号を出せば切り離せるけどあれって使用済みの身体をぐちゃぐちゃに潰して宇宙に捨てる機能だからダメだよね・・・。
「さて、船の中をお散歩しようかな」
僕は問題を先送りにした。
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