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Side - 16 - 23 - みえるこくん -
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(柚亜紫翼からのお知らせ)
エリーゼさんのお話、Side - 63 - 1 ~ 63 - 4を加筆修正しました。
Side - 16 - 23 - みえるこくん -
がさがさ・・・
つめつめ・・・
「・・・」
「ねぇコナンザ」
「ひゃぅ!、な・・・何?お姉ちゃん」
「あ、驚かせちゃったかな、ごめんね」
「・・・」
「お母様のお誕生日会で明日向こうのお屋敷に帰るでしょ、忘れ物は無いかなって」
「だ・・・大丈夫だよ、荷物は全部鞄に詰めたし、プレゼントも忘れてないの」
「コナンザがこっちの世界で働いて買ったプレゼントだもんね、お母様喜ぶと思うよ」
「・・・」
「どうしたの?、元気ないね」
「・・・」
「悩みでもあるの?、お姉ちゃんにできる事なら相談に乗るけど」
「・・・あの・・・明日どうしてもお屋敷に帰らないとダメかな?」
「お誕生日会にコナンザが居なかったらお母様泣いちゃうよ」
「うん・・・そうだよね」
「もしかして・・・前に言ってたハロキティちゃんの幽霊が見えるってやつ?」
「うん、怖いの・・・ぐすっ・・・」
「私はコナンザから話を聞いた後に何度もお屋敷に戻ってるけど、特に何も感じないよ・・・」
「うりゅ・・・でも・・・」
「はいはい、泣かないで・・・お姉ちゃんが何とかしてあげるのです!」
なでなで・・・
「本当?」
「アメリア様にお願いしてお屋敷の除霊して貰おうか、あの人って日本での本業は陰陽師だし、悪霊退治は得意だと思う」
「アメリア様その顔と格好はどうしたのです?」
「ふふふ、久しぶりの除霊だからね、安倍晴明として生きていた時の容姿を再現したのだ、どうだい理世ちゃん、私はイケメンだろう?、高給取りの官僚でこの見た目だから自慢じゃないがあの頃はとてもモテたのだ」
「確かにイケおじだけどお顔が濃くて阿部寛にしか見えないのです」
「なぁっ!・・・まぁいい、さっき理世ちゃんから依頼のあった内容をまとめるとシェルダンの屋敷に弟くんの元婚約者・・・ハロキティ嬢のゴーストが出るから除霊して欲しい・・・で合っているかな?」
「うん、その霊はコナンザにしか見えないみたいなの」
「特定の人間にしか見えない・・・か、原因も含めて調査してあげよう、早速行こうか」
「アメリア様ちょっと待って!、その姿で行ったらお母様達が驚くのです、せめて転移する時はアメリア様の姿でお願い」
「これではダメかな?」
「怪し過ぎるのです!」
「これは陰陽師の正装なのだが・・・仕方ないな、だが除霊の時は安倍晴明の姿になるよ」
しゅっ・・・
「あ、アメリア様じゃなくて美少女魔法騎士リベラ・ロリータちゃんだ」
「この外見はとても気に入っているのだ、それに・・・あまり向こうで本当の姿を見せたくないからね」
「じゃぁコナンザ、行ってくるね」
「うん・・・お姉ちゃん、アメリア様、ごめんなさい僕の為に・・・」
「気にする事はないよ弟くん、久しぶりの除霊だからワクワクしているのだ!、ふふふ、待っていろよ悪霊ども!」
・・・こんにちは、僕の名前はコナンザ・シェルダン14歳です、今僕は長期留学という名目でお姉ちゃんが前世で住んでいた場所・・・日本に滞在しています。
貴族の子供・・・特に上級貴族は子供の頃に他国へ留学して見聞を広げる事が多く、僕はラングレー王国への留学が決まっていたのですが、宰相の反逆事件に巻き込まれて急遽日本に身を隠す事になりました。
僕は12歳の時に既に成人までに学ばなくてはいけない基礎教育を終えてしまい、お父様に付いて貴族家当主のお仕事を勉強していました。
お父様によると、今の時点で教える事は殆ど無いのだとか・・・両親やお姉ちゃんは僕の事を天才だと褒めてくれるのですが、シェルダン家の当主はお姉ちゃんの方が相応しいと思ってるの・・・。
だって・・・僕は気が弱くて泣き虫で・・・いつも家族に守られてばかり。
それに比べてお姉ちゃんは王女様とお友達で国王陛下からも信頼されてる・・・大きな商会の幹部だし魔法に関する数々の功績を認められて来年には大魔導士の称号が授けられる予定・・・。
ローゼリア王国では女性の貴族家当主が普通に認められているのです、だからお姉ちゃんが当主になって僕は裏方・・・後ろからお姉ちゃんのお仕事を手伝いたい、そう家族に打ち明けたのだけど・・・。
お姉ちゃんは極度の男性恐怖症で男の人と結婚する気が無いし子供も作れない・・・だから次の当主は僕しか居ないと言われました・・・お姉ちゃんからは「ダメな姉でごめんね」と何度も謝られたし・・・。
そんな訳で僕の婚約者も早い段階で決まり、残りの時間は他国に留学して友人を作り、見聞を広げよう・・・そう考えていたのです。
でもその計画は突然崩れてしまいます、宰相の反逆事件で多くの貴族が捕まりました、その中には僕の婚約者、ハロキティ・リラックーマァとその家族が居たのです。
事件の主犯格だった事もあってリラックーマァ家は全員処刑され、婚約者のハロキティちゃんも国家反逆の罪で毒杯を賜りました・・・。
とても仲が良かった婚約者の裏切り・・・お部屋に引き篭もって泣き続ける僕を見かねたお姉ちゃんが日本に連れて行ってくれたのです。
日本での生活は楽しいです!、僕の生まれ育った国と全く違う文化はとても興味深く、見るもの全てが驚きの連続でした、薄情なようだけどキティちゃんの事を忘れてしまうくらい日本での生活を満喫していたのです・・・。
滞在先はお姉ちゃんの実家です、ご両親のパパさんとママさん、そして弟の龍之介さんは僕にとても良くしてくれています。
日本語を習得して本を読み漁りました、政治、経済、医療、科学技術、戦時兵法や過去の様々な歴史・・・時間の許す限り全部吸収して国に持ち帰ろう・・・そう思って勉強に没頭しました。
この世界にはインターネットという大規模情報網も整備されていて、知りたい内容を入力すればすぐに閲覧できるの・・・本当に凄いです。
お姉ちゃんは将来、ローゼリア王国やエテルナ大陸にこれと同じようなインターネット網を構築してゲームをするんだって張り切っています、お姉ちゃんはゲームが大好きだから何年かかっても必ずやり遂げそう・・・。
それから・・・日本で頑張っていたのはお勉強だけではないです、お姉ちゃんは僕を色々な場所に連れて行ってくれます、お家の近くのショッピングモール、遊園地、自然豊かな山奥やキャンプ場・・・。
お姉ちゃんのお祖父さんが経営するカフェでお手伝いをさせてもらって日本のお金も稼ぎました、そのお金を使ってお母様の誕生日プレゼントを買ったのです。
着物・・・日本の民族衣装は値段が高過ぎて僕のお金じゃ買えなかったから代わりに浴衣を買いました、お母様はお裁縫が大好きだから服が沢山掲載されているファッション誌やお裁縫の本もプレゼントの中に入れています。
明日はローゼリアに一時帰国してお母様のお誕生日会です、普通の貴族がやるような大規模な夜会は開きません、お母様はとても人見知りなので家族と親しい友人だけを招いてのささやかなパーティです、僕のプレゼントは喜んでくれるかな・・・。
ぱぁっ!
「ひゃぁ・・・眩しい」
「ただいまコナンザ・・・」
「うむ・・・戻ったのだ・・・」
「お姉ちゃん、アメリア様、2人とも様子が変だけど・・・ゴースト退治はどうなったの?」
「あー・・・うん、アメリア様、説明お願い」
「あ・・・あぁ、コナンザくん、落ち着いて聞いてほしいのだ」
「はい・・・」
「すまない・・・恐ろしく強力な霊だった、我が全力を以ってしてもあれは祓いきれなかった・・・くっ・・・この安倍晴明、一生の不覚!」
「え・・・」
「だが心配はいらない、長い死闘の末に無力化する事が出来たのだ、残念ながら霊の姿は見えるだろうけど害は無くなったから安心して欲しい」
「見えたら怖いんだけど!」
「見えているものはハロキティ嬢の姿をした只の抜け殻だから生前の意思も感情も無い、今後も時々姿を見せると思うのだが「そこには居ないもの」として生活する事をお勧めするよ」
「そ・・・そうなのコナンザ、アメリア様すっごく頑張ったの!、でも完全に除霊するのは無理だったの、だから妥協しよう・・・ね」
「うん・・・姿が見えるのは怖いけど・・・できるだけ無視するように頑張る・・・ありがとう、お姉ちゃん、アメリア様・・・」
「どういたしましてなのだ!、完全に除霊できなかったから謝礼はいらないよ、そ・・・それでは私はこれで失礼するね!」
しゅっ・・・
「あ・・・行っちゃった」
「仕方ないよコナンザ・・・安倍晴明は史上最強の陰陽師って言われてる人なの、そんな凄い人の全力でも祓いきれなかったんだから他の誰にも無理だと思う」
「・・・うん」
「アメリア様は言い忘れてたみたいだけど、あの霊が見えても怖がっちゃダメなんだって、気付かないフリをしてね、そうじゃないと少しずつ力が溜まって、また強力な悪霊になるかもしれないの」
「ひっ・・・」
「どう?、出来るかな?」
「・・・うん、頑張る・・・ぐすっ」
「じゃぁ私はまだアメリア様と話す事があるから行くね、それから明日の朝転移してお屋敷に行くから夜更かししないで早く寝る事、いいね!」
「うん」
・・・大変な事になりました、僕はお姉ちゃんのお誕生日会の時以来、今日まで一度もお屋敷に帰っていません、理由はキティちゃんの幽霊が出たからです!。
すごく怖かったからお姉ちゃんに帰ろうと誘われても断っていました、今日アメリア様が何とかしてくれると思ってたのに完全に除霊出来なかったみたいです。
うぅ・・・怖いよぅ・・・僕はよく似たお話を知っています。
パパさんのお部屋にあった漫画・・・「見え⚪︎子ちゃん」、幽霊が見えてしまう女の子が必死で見えないフリをするお話・・・あの漫画に出て来る悪霊が凄く怖くて・・・読んだ後は1人のお布団で眠れなかったからお姉ちゃんに抱き付いて寝ていました。
あの恐ろしい「見⚪︎る子ちゃん」と同じ状況になっちゃった、キティちゃんの幽霊が見えても気付かないフリ・・・できるかな・・・たぶん僕は叫んじゃう自信があるの!、どうしよう!。
キティちゃんの幽霊が見えてる事・・・気付かれたらどうなるのかな?、お姉ちゃんは強力な悪霊になるかもって言ってたけど、もしかして僕襲われちゃう?。
嫌だ、血まみれのキティちゃんに襲われたらお漏らししちゃうかも・・・。
ぱぁっ!
「言われた通りアメリア様の指輪を目標に転移してきたけど、ここがアメリア様のお家?」
「ようこそ理世ちゃん、王都の平民街にある私の家だよ」
「わぁ・・・猫ちゃんだぁ!」
「あ・・・その猫は私の式神でね、白虎というのだ、今は猫だが本当の姿は巨大な虎だよ」
「ふむ、なかなかに凄まじい妖力を纏った小娘だわい、我は白虎、此の国に興味を持った故、今は主(あるじ)の家で厄介になっておる、貴様が我が主(あるじ)の末裔(まつえい)・・・りぜろてか・・・特別に我を撫でる事を許そうぞ」
「ひゃぁ!、喋ったぁ!」
「そいつは好きに撫でていいから話の続きをしようか、弟くんの様子は?」
なでなで・・・
ごろごろ・・・
わっし・・・わっし・・・
「貴様は撫でるのが上手いな、褒めてやろう」
なでなで・・・
ごろごろ・・・
さわさわ・・・
「一通り説明しておいたのです、怖いけど頑張るって言ってた」
「誤魔化せるだろうか?」
「大丈夫だと思うのです」
「だが危なかった、あの時、母君が止めてくれなければハロキティ嬢の魂を完全に消し飛ばしていた・・・久々に本気を出せる相手だったのに残念なのだ」
「私もこんな事になってるとは知らなかったの、・・・今のキティちゃんって強いの?」
「その辺のゴーストとはまるで違う、周りの魔力の影響を受けてハイゴーストになりかけているし、放っておいたら間違いなく魔精霊になるだろう」
「魔精霊?」
「厄災級の魔物だね、とても強いが私なら対処できる、日本の妖怪で言えば・・・九尾の狐・・・玉藻前(たまものまえ)よりちょっとだけ弱いってところかな」
「そんなのと比較されても分からないのです、っていうか九尾の狐って本当に居たの?」
「居たよ、放っておいたら国を滅ぼしていただろう、一応私の子孫が関わった事になっているが・・・あれは子孫では対応できなくてね、依頼を受けて私が封じたのだ」
「・・・」
「殺しても良かったのだが・・・泣きながら「ごめんなさい」したから特別に許してやったのだ」
「言い伝えだと確か・・・殺生石になったんだよね」
「・・・」
「違うのです?」
「・・・あの殺生石は奴のう⚪︎こだ」
「え・・・?」
「助けてくれと泣いている九尾(たまちゃん)をお仕置きしていた時に恐怖で漏らしたものが石になった」
「じゃぁ・・・狐さんはどうなったの?」
「聞きたいかな?(ニコッ)」
「・・・いやいいです」
エリーゼさんのお話、Side - 63 - 1 ~ 63 - 4を加筆修正しました。
Side - 16 - 23 - みえるこくん -
がさがさ・・・
つめつめ・・・
「・・・」
「ねぇコナンザ」
「ひゃぅ!、な・・・何?お姉ちゃん」
「あ、驚かせちゃったかな、ごめんね」
「・・・」
「お母様のお誕生日会で明日向こうのお屋敷に帰るでしょ、忘れ物は無いかなって」
「だ・・・大丈夫だよ、荷物は全部鞄に詰めたし、プレゼントも忘れてないの」
「コナンザがこっちの世界で働いて買ったプレゼントだもんね、お母様喜ぶと思うよ」
「・・・」
「どうしたの?、元気ないね」
「・・・」
「悩みでもあるの?、お姉ちゃんにできる事なら相談に乗るけど」
「・・・あの・・・明日どうしてもお屋敷に帰らないとダメかな?」
「お誕生日会にコナンザが居なかったらお母様泣いちゃうよ」
「うん・・・そうだよね」
「もしかして・・・前に言ってたハロキティちゃんの幽霊が見えるってやつ?」
「うん、怖いの・・・ぐすっ・・・」
「私はコナンザから話を聞いた後に何度もお屋敷に戻ってるけど、特に何も感じないよ・・・」
「うりゅ・・・でも・・・」
「はいはい、泣かないで・・・お姉ちゃんが何とかしてあげるのです!」
なでなで・・・
「本当?」
「アメリア様にお願いしてお屋敷の除霊して貰おうか、あの人って日本での本業は陰陽師だし、悪霊退治は得意だと思う」
「アメリア様その顔と格好はどうしたのです?」
「ふふふ、久しぶりの除霊だからね、安倍晴明として生きていた時の容姿を再現したのだ、どうだい理世ちゃん、私はイケメンだろう?、高給取りの官僚でこの見た目だから自慢じゃないがあの頃はとてもモテたのだ」
「確かにイケおじだけどお顔が濃くて阿部寛にしか見えないのです」
「なぁっ!・・・まぁいい、さっき理世ちゃんから依頼のあった内容をまとめるとシェルダンの屋敷に弟くんの元婚約者・・・ハロキティ嬢のゴーストが出るから除霊して欲しい・・・で合っているかな?」
「うん、その霊はコナンザにしか見えないみたいなの」
「特定の人間にしか見えない・・・か、原因も含めて調査してあげよう、早速行こうか」
「アメリア様ちょっと待って!、その姿で行ったらお母様達が驚くのです、せめて転移する時はアメリア様の姿でお願い」
「これではダメかな?」
「怪し過ぎるのです!」
「これは陰陽師の正装なのだが・・・仕方ないな、だが除霊の時は安倍晴明の姿になるよ」
しゅっ・・・
「あ、アメリア様じゃなくて美少女魔法騎士リベラ・ロリータちゃんだ」
「この外見はとても気に入っているのだ、それに・・・あまり向こうで本当の姿を見せたくないからね」
「じゃぁコナンザ、行ってくるね」
「うん・・・お姉ちゃん、アメリア様、ごめんなさい僕の為に・・・」
「気にする事はないよ弟くん、久しぶりの除霊だからワクワクしているのだ!、ふふふ、待っていろよ悪霊ども!」
・・・こんにちは、僕の名前はコナンザ・シェルダン14歳です、今僕は長期留学という名目でお姉ちゃんが前世で住んでいた場所・・・日本に滞在しています。
貴族の子供・・・特に上級貴族は子供の頃に他国へ留学して見聞を広げる事が多く、僕はラングレー王国への留学が決まっていたのですが、宰相の反逆事件に巻き込まれて急遽日本に身を隠す事になりました。
僕は12歳の時に既に成人までに学ばなくてはいけない基礎教育を終えてしまい、お父様に付いて貴族家当主のお仕事を勉強していました。
お父様によると、今の時点で教える事は殆ど無いのだとか・・・両親やお姉ちゃんは僕の事を天才だと褒めてくれるのですが、シェルダン家の当主はお姉ちゃんの方が相応しいと思ってるの・・・。
だって・・・僕は気が弱くて泣き虫で・・・いつも家族に守られてばかり。
それに比べてお姉ちゃんは王女様とお友達で国王陛下からも信頼されてる・・・大きな商会の幹部だし魔法に関する数々の功績を認められて来年には大魔導士の称号が授けられる予定・・・。
ローゼリア王国では女性の貴族家当主が普通に認められているのです、だからお姉ちゃんが当主になって僕は裏方・・・後ろからお姉ちゃんのお仕事を手伝いたい、そう家族に打ち明けたのだけど・・・。
お姉ちゃんは極度の男性恐怖症で男の人と結婚する気が無いし子供も作れない・・・だから次の当主は僕しか居ないと言われました・・・お姉ちゃんからは「ダメな姉でごめんね」と何度も謝られたし・・・。
そんな訳で僕の婚約者も早い段階で決まり、残りの時間は他国に留学して友人を作り、見聞を広げよう・・・そう考えていたのです。
でもその計画は突然崩れてしまいます、宰相の反逆事件で多くの貴族が捕まりました、その中には僕の婚約者、ハロキティ・リラックーマァとその家族が居たのです。
事件の主犯格だった事もあってリラックーマァ家は全員処刑され、婚約者のハロキティちゃんも国家反逆の罪で毒杯を賜りました・・・。
とても仲が良かった婚約者の裏切り・・・お部屋に引き篭もって泣き続ける僕を見かねたお姉ちゃんが日本に連れて行ってくれたのです。
日本での生活は楽しいです!、僕の生まれ育った国と全く違う文化はとても興味深く、見るもの全てが驚きの連続でした、薄情なようだけどキティちゃんの事を忘れてしまうくらい日本での生活を満喫していたのです・・・。
滞在先はお姉ちゃんの実家です、ご両親のパパさんとママさん、そして弟の龍之介さんは僕にとても良くしてくれています。
日本語を習得して本を読み漁りました、政治、経済、医療、科学技術、戦時兵法や過去の様々な歴史・・・時間の許す限り全部吸収して国に持ち帰ろう・・・そう思って勉強に没頭しました。
この世界にはインターネットという大規模情報網も整備されていて、知りたい内容を入力すればすぐに閲覧できるの・・・本当に凄いです。
お姉ちゃんは将来、ローゼリア王国やエテルナ大陸にこれと同じようなインターネット網を構築してゲームをするんだって張り切っています、お姉ちゃんはゲームが大好きだから何年かかっても必ずやり遂げそう・・・。
それから・・・日本で頑張っていたのはお勉強だけではないです、お姉ちゃんは僕を色々な場所に連れて行ってくれます、お家の近くのショッピングモール、遊園地、自然豊かな山奥やキャンプ場・・・。
お姉ちゃんのお祖父さんが経営するカフェでお手伝いをさせてもらって日本のお金も稼ぎました、そのお金を使ってお母様の誕生日プレゼントを買ったのです。
着物・・・日本の民族衣装は値段が高過ぎて僕のお金じゃ買えなかったから代わりに浴衣を買いました、お母様はお裁縫が大好きだから服が沢山掲載されているファッション誌やお裁縫の本もプレゼントの中に入れています。
明日はローゼリアに一時帰国してお母様のお誕生日会です、普通の貴族がやるような大規模な夜会は開きません、お母様はとても人見知りなので家族と親しい友人だけを招いてのささやかなパーティです、僕のプレゼントは喜んでくれるかな・・・。
ぱぁっ!
「ひゃぁ・・・眩しい」
「ただいまコナンザ・・・」
「うむ・・・戻ったのだ・・・」
「お姉ちゃん、アメリア様、2人とも様子が変だけど・・・ゴースト退治はどうなったの?」
「あー・・・うん、アメリア様、説明お願い」
「あ・・・あぁ、コナンザくん、落ち着いて聞いてほしいのだ」
「はい・・・」
「すまない・・・恐ろしく強力な霊だった、我が全力を以ってしてもあれは祓いきれなかった・・・くっ・・・この安倍晴明、一生の不覚!」
「え・・・」
「だが心配はいらない、長い死闘の末に無力化する事が出来たのだ、残念ながら霊の姿は見えるだろうけど害は無くなったから安心して欲しい」
「見えたら怖いんだけど!」
「見えているものはハロキティ嬢の姿をした只の抜け殻だから生前の意思も感情も無い、今後も時々姿を見せると思うのだが「そこには居ないもの」として生活する事をお勧めするよ」
「そ・・・そうなのコナンザ、アメリア様すっごく頑張ったの!、でも完全に除霊するのは無理だったの、だから妥協しよう・・・ね」
「うん・・・姿が見えるのは怖いけど・・・できるだけ無視するように頑張る・・・ありがとう、お姉ちゃん、アメリア様・・・」
「どういたしましてなのだ!、完全に除霊できなかったから謝礼はいらないよ、そ・・・それでは私はこれで失礼するね!」
しゅっ・・・
「あ・・・行っちゃった」
「仕方ないよコナンザ・・・安倍晴明は史上最強の陰陽師って言われてる人なの、そんな凄い人の全力でも祓いきれなかったんだから他の誰にも無理だと思う」
「・・・うん」
「アメリア様は言い忘れてたみたいだけど、あの霊が見えても怖がっちゃダメなんだって、気付かないフリをしてね、そうじゃないと少しずつ力が溜まって、また強力な悪霊になるかもしれないの」
「ひっ・・・」
「どう?、出来るかな?」
「・・・うん、頑張る・・・ぐすっ」
「じゃぁ私はまだアメリア様と話す事があるから行くね、それから明日の朝転移してお屋敷に行くから夜更かししないで早く寝る事、いいね!」
「うん」
・・・大変な事になりました、僕はお姉ちゃんのお誕生日会の時以来、今日まで一度もお屋敷に帰っていません、理由はキティちゃんの幽霊が出たからです!。
すごく怖かったからお姉ちゃんに帰ろうと誘われても断っていました、今日アメリア様が何とかしてくれると思ってたのに完全に除霊出来なかったみたいです。
うぅ・・・怖いよぅ・・・僕はよく似たお話を知っています。
パパさんのお部屋にあった漫画・・・「見え⚪︎子ちゃん」、幽霊が見えてしまう女の子が必死で見えないフリをするお話・・・あの漫画に出て来る悪霊が凄く怖くて・・・読んだ後は1人のお布団で眠れなかったからお姉ちゃんに抱き付いて寝ていました。
あの恐ろしい「見⚪︎る子ちゃん」と同じ状況になっちゃった、キティちゃんの幽霊が見えても気付かないフリ・・・できるかな・・・たぶん僕は叫んじゃう自信があるの!、どうしよう!。
キティちゃんの幽霊が見えてる事・・・気付かれたらどうなるのかな?、お姉ちゃんは強力な悪霊になるかもって言ってたけど、もしかして僕襲われちゃう?。
嫌だ、血まみれのキティちゃんに襲われたらお漏らししちゃうかも・・・。
ぱぁっ!
「言われた通りアメリア様の指輪を目標に転移してきたけど、ここがアメリア様のお家?」
「ようこそ理世ちゃん、王都の平民街にある私の家だよ」
「わぁ・・・猫ちゃんだぁ!」
「あ・・・その猫は私の式神でね、白虎というのだ、今は猫だが本当の姿は巨大な虎だよ」
「ふむ、なかなかに凄まじい妖力を纏った小娘だわい、我は白虎、此の国に興味を持った故、今は主(あるじ)の家で厄介になっておる、貴様が我が主(あるじ)の末裔(まつえい)・・・りぜろてか・・・特別に我を撫でる事を許そうぞ」
「ひゃぁ!、喋ったぁ!」
「そいつは好きに撫でていいから話の続きをしようか、弟くんの様子は?」
なでなで・・・
ごろごろ・・・
わっし・・・わっし・・・
「貴様は撫でるのが上手いな、褒めてやろう」
なでなで・・・
ごろごろ・・・
さわさわ・・・
「一通り説明しておいたのです、怖いけど頑張るって言ってた」
「誤魔化せるだろうか?」
「大丈夫だと思うのです」
「だが危なかった、あの時、母君が止めてくれなければハロキティ嬢の魂を完全に消し飛ばしていた・・・久々に本気を出せる相手だったのに残念なのだ」
「私もこんな事になってるとは知らなかったの、・・・今のキティちゃんって強いの?」
「その辺のゴーストとはまるで違う、周りの魔力の影響を受けてハイゴーストになりかけているし、放っておいたら間違いなく魔精霊になるだろう」
「魔精霊?」
「厄災級の魔物だね、とても強いが私なら対処できる、日本の妖怪で言えば・・・九尾の狐・・・玉藻前(たまものまえ)よりちょっとだけ弱いってところかな」
「そんなのと比較されても分からないのです、っていうか九尾の狐って本当に居たの?」
「居たよ、放っておいたら国を滅ぼしていただろう、一応私の子孫が関わった事になっているが・・・あれは子孫では対応できなくてね、依頼を受けて私が封じたのだ」
「・・・」
「殺しても良かったのだが・・・泣きながら「ごめんなさい」したから特別に許してやったのだ」
「言い伝えだと確か・・・殺生石になったんだよね」
「・・・」
「違うのです?」
「・・・あの殺生石は奴のう⚪︎こだ」
「え・・・?」
「助けてくれと泣いている九尾(たまちゃん)をお仕置きしていた時に恐怖で漏らしたものが石になった」
「じゃぁ・・・狐さんはどうなったの?」
「聞きたいかな?(ニコッ)」
「・・・いやいいです」
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