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Side - -05 - 2 - いっているいみがわからないのだけど -
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Side - -05 - 2 - いっているいみがわからないのだけど -
こんにちは、私の名前はカーラ・ムーチョ、20歳。
今私は王都の貴族街にある高級レストランの前に居ます。
恐らくここはフォーマルなドレスを着ていなくても咎められないレストランの中では一番高級なお店、私を呼び出した人達が気を遣ってくれたのでしょう。
お店に入り挙動不審になりながらも名前を告げると一番奥の個室に案内されました。
ちなみに今日はいつものメイド服ではなく私服です。
このお店にメイド服で入る勇気はありません、何故なら私の目の前を歩いている給仕の子が着ているお洋服は私のメイド服より綺麗で高価そうなのです・・・凄いなお貴族様向け高級レストラン・・・。
貴族令嬢の専属メイドなら夜会に付き添うので豪華なドレスやお洋服など見慣れている筈なのですが・・・あいにく私のお嬢様は引きこもり・・・夜会なんて片手で数えるほどしか出ていないのです。
「やぁ、忙しいのに呼び出してすまないね」
「いえ・・・陛下・・・」
「おっと、この姿の時はエルでいいよ、こっちはインフィーね」
「私はアリーでよろしくてよ」
「・・・はい、エルさん、インフィーさん・・・それとアリーさん」
「では早速で悪いけど本題に入ろうか、ノルドの奴はまだボッチ家に頻繁に顔を出しているようだけど、様子はどんな感じかな?」
「どう・・・と言われましても・・・特に何も・・・」
「え?、まだマリアンヌちゃんとまともに話せて無いとか?」
「まさかそんな事・・・いや、あの2人ならあり得るか?」
「お部屋に入って来て「体調はどうだ」お帰りになる時に「また来る」・・・毎回会話はそれだけです、あとお嬢様は終始無言です」
「えぇ・・・」
「それは・・・気まずいわね」
「あ、今まででしたらお嬢様の様子をただ眺めているだけでしたがここ最近はお身体を鍛えられていますよ」
「・・・言っている意味が分からないのだけど」
「えと・・・お嬢様のお部屋で腹筋100回、腕立て伏せ100回、片腕立て各50回の後、逆立ち腕立てとスクワットも50回ずつやられていますね、それが1セットだそうで、お帰りになるまでそれを何度も繰り返して・・・この間なんて暇を持て余した私が数を数えさせて頂いておりました」
「待て待て!、あいつ何でそんな事してるんだよ!」
「ご本人のお話だと「鍛えていると落ち着く、緊張しない」らしくて・・・」
「そんなに運動してたらマリアンヌさんのお部屋が汗で汚れるし臭くなるわ、あぁ・・・どうしましょう早くなんとかしないと!」
「落ち着けアリー」
「私としましてもお嬢様のお部屋が汚れるのは嫌だなと思っていたのですが、アーノルド様のお話だと「筋肉で汗の出る穴を塞いでいるから汗は出ないし汚れない、全て筋肉が解決してくれるのだ」との事で」
「ノルドちゃんはカーラちゃんとは普通にお話をするの?」
「はい、私や他のボッチ家のご家族とも普通にお話ししますよ、会話が無いのはお嬢様だけです」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「あの・・・」
「・・・忙し過ぎて奴の行動に気が回らなかった我々の責任だな」
「・・・そうね、陛下の即位式や婚約発表、それに建国記念行事も重なったからこの1年休む暇がなかったわ」
「・・・私もあれから一時帰国していたとはいえ誰かに様子を探らせるくらいはできたと思うの、でもこんな事になってるなんて思わないじゃない!」
「それで・・・マリアンヌさんは彼の事をどう思っているのかしら」
「・・・空気・・・でしょうか?」
「あ?」
「待てアリー、淑女がしちゃいけない顔になってる」
「最初はアーノルド様の奇行にドン引き・・・いえ、怯えていたのですが、しばらく経つと何か悟られたようなお顔で・・・「そこには居ないもの、空気のような存在」として視界に入れもせず趣味のお裁縫や読書に没頭されております」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「悟ったような顔って・・・」
「ある日たまたま執事とメイドが出払っておりまして、アーノルド様の急な来訪に対応できなかった事があったのです、無断で屋敷に入るわけにはいかないと考えたのでしょう、アーノルド様は指の力だけで外壁を上りお嬢様のお部屋のある3階の窓に張り付いて・・・」
「いや待ってくれ、なんだよそれ!」
「エルちゃん、黙って続きを聞きましょう」
「・・・窓に張り付かれたアーノルド様を見たお嬢様は悲鳴をあげ、失禁してしまいまして・・・それが直接の原因かどうかは分からないのですが、その頃を境に・・・」
「間違いなくそれが原因だと思うわ」
「・・・想像しただけでも怖いな、俺でも漏らしそうだ・・・」
「・・・ノルドちゃん」
なんでしょうかこの微妙な空気・・・いえ、アーノルド様の行動に呆れられているのでしょう、でも私のせいではないので早く帰らせてもらいたいのですが・・・。
「気を取り直して先に食事をしよう」
エルさんが重い口を開きました。
「そうね・・・」
アリシア様・・・いえ、アリーさんが頭を抱えながら言いました。
「ここのお肉は焼き加減が絶品だと聞いてるわ」
インフィーさんが楽しそうに言いました。
「では私はこれで失礼します」
「いやちょっと待って、カーラさんの分も注文してあるから一緒に食事をしよう、俺たちの奢りだから安心して」
「・・・」
超大国である我が国・・・ローゼリア王国の国王陛下、将来の王妃様、そしてラングレー王国の王女様と一緒に個室で食事をしろと・・・何かの罰ゲームなのでしょうか、この4人の中で私だけが異質なのですが!。
がしっ!
「さぁ遠慮しないで座りなさいな」
帰ろうとして椅子から立ち上がった私の腕をインフィーさんが掴んで離してくれません、どうやら私に拒否権は無さそうです。
「オースター帝国もなの?・・・うちの国にはその情報は入ってないわね」
「まだ公表されてないがほぼ確定らしい、諜報員からこの前報告があった」
そんなまだ誰も知らないような機密情報、私のようなメイドの前で普通に話さないで欲しいのですが!。
「他に2カ国ほど出そうね」
「あぁ、うちの親父達のせいで周りの国が大混乱だ」
そうなのです、ローゼリア前国王の退位は大陸中の国々に衝撃を与えました。
名目としては貿易大臣がやらかした非人道的な犯罪と、その他様々な不祥事に対する引責とされていますが王位を退いて夫婦でのんびり世界旅行を楽しむ・・・という計画を前国王陛下自ら発表した為にローゼリアの全国民が知っています、当然他の国々にも・・・。
王が亡くなり次代に引き継ぐという王位継承が常識だったこの大陸でローゼリアのような前例ができた為「うちも面倒な王位を子供に譲ってのんびり暮らしたい!」「目指せ優雅なスローライフ!」と言い出す国王や皇帝が続出したのです。
今この大陸はちょっとした退位、王位交代ブームというものが起きています。
「うちもお父様を説得するのに苦労したわ、私が国外に居るのをいい事に勝手に退位の準備してたのよ!、宰相から私の即位式の日程を相談されて初めて知ったんだから!」
「あぁ、だからインフィーちゃん俺の即位式が終わった後慌てて帰国したのか・・・突然黙って帰るから内乱でも起きたのかと思って心配してたんだぞ」
「国内外に凄い影響があるから安易にこんな事言えるわけないじゃない、でもまだお父様諦めてないみたいなのよねー、あのクソ親父・・・」
「まぁそれもこの大陸が平和な証拠だよな、国同士が争ってたら王の交代や政治の空白は隙になるから簡単には出来ない」
「そうねぇ・・・」
私は3人の会話を聞きながら出された料理に手を付けます、確かに美味しいです!、お肉の焼き加減が絶妙だしソースも素晴らしい、でもこの料理のお値段は怖いから見ていません。
もきゅもきゅ・・・
メイド長に厳しく教わったからお食事のマナーは大丈夫だと思う、でも3人の食べ方は優雅で綺麗、さすが王族・・・。
それにしてもエルさんとアリーさんっていつの間に仲良くなったのかな?、ウンディーネ家にお嬢様がお世話になっていた頃は仲が悪かったと思う、「蹴るわよ!」「蹴られた!」とか言って騒いでたのに・・・。
「あら、カーラちゃん、2人がいつの間に仲良くなったのか不思議に思ってるわね」
「げほっ!、えふっ!」
インフィーさんの言葉に思わずむせてしまいました、王女様鋭いな!、もしかして心の中が読めるの?。
「まぁ、ほとんどインフィーのせいだがな」
「そうね」
お2人とも不本意そうな顔をしながらも仲良く同意されました。
「王位を継承したら欲に塗れた令嬢がこれまで以上に沢山群がって来る、外面が良くても腹の中では何を考えてるか分からないから注意しろって言われてな、気に入った子が居ないのなら家柄が釣り合って性格もよく知っているアリーを虫除けにしたらいいんじゃないかって提案された」
「それは初耳ね、エルにそんなこと言ったの?」
「・・・確かに言われてみれば俺の裏の顔「エル」を知っていて、俺の事を王族扱いしない令嬢はインフィー以外だとアリーだけだ、・・・どうしても性格が合わなくて結婚したくないなら側近にして抱え込め、こんな有能な人間はそう居ないから絶対に逃すなとも言われたぞ」
「私の方はエルと結婚すればどれだけの利益があるかしつこく説明されたわね、強大な権力を持つ事がいかに楽しく素晴らしいか・・・まぁ現役の王女様が言うと説得力があったわ、それに目の前に超優良物件が転がってるのに拾わないのは馬鹿だ、どこかの馬の骨にでも取られたら後で悔しがっても遅いのよ、よく考えなさい、あなたはお金や権力が大好きでしょうって言われたわね」
「わぁ・・・」
いけない、呆れて思わず声が出ちゃった。
「あと・・・私が王妃になれば親友のマリアンヌさんを攻撃する愚か者は居ないだろうし守る事が出来るわよってね・・・その言葉を聞いた時、私は王妃になろうと思ったの」
「お嬢様を守って下さる為に・・・」
「実はそれが一番の理由・・・マリアンヌさんには言わないでね、もちろんエルと一緒に国を動かすのも楽しみだわ(ニヤリ)」
「インフィーの人を見る目は確かだし、俺もアリーと友人関係になって結構経つからな・・・権力を悪用するような人間じゃないのはすぐに分かったよ、性格が凶暴だし俺に対して容赦無いところは不満だが王妃にするならこの国で一番適任だろう」
楽しそうに2人の話を聞いていたインフィーさんが口を開きました。
「私としてはエルちゃんかノルドちゃんをお持ち帰りして一緒にラングレー王国を継ぐ計画だったんだけどね、エルちゃんは大事な友人だけどお互い我が強いから一緒になったら主導権を取り合って衝突すると思うの、だから王配候補は諦めたわ」
「・・・俺も全く同じ意見だな、あまりにも近い存在になると衝突して関係が険悪になるだろう、もし結婚した後でそうなったら最悪だ」
「でも私との縁談を蹴った後で結婚する令嬢は私より有能な人間じゃないと許せないわ、一応私にも王女様としてのプライドはあるし、それにアリーちゃんならエルちゃんを後ろから操って影の最高権力者になりそうで面白いと思わない?」
「俺は全く面白く無いぞ!」
「それから・・・もう一つの問題、ノルドちゃん達を放っておいて大丈夫かしら、私の予想だと何年経ってもこのまま関係が進展しないと思うわ、・・・私が介入してもいいけど」
「インフィーが絡んだら話がややこしくなるだろう」
あ、ダメだ、お嬢様とアーノルド様を結婚させる方向に話が進んじゃう・・・。
「あのっ・・・お嬢様はあのような性格なのでシェルダン家に嫁ぐのは荷が重過ぎると思うのです、実はお嬢様はアーノルド様の好意に気付いていて・・・でも大貴族の跡継ぎと結婚するのが怖くて現実逃避しているように見えるのです・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・確かにマリアンヌさんの性格を考えるとカーラさんの予測は正しいと思うわ、あの子にそんな重荷を背負わせたら間違いなく潰れるでしょうね、引きこもって外に出て来なくなるかも」
「でもノルドちゃんが婚約者候補から離脱したらマリアンヌちゃん大変よ」
「・・・なぜでしょう」
意味がわからず思わず尋ねてしまいました。
「なぜって・・・大商会の娘で次期王妃様のお友達、国王陛下とラングレー王国の王女である私ともお友達・・・・凄い優良物件だと思わない?、今はノルドちゃんのところのシェルダン家が婚約者の有力候補として居るから大人しくしてるけど、それが居なくなったら飢えた令息共が群がって来るわよ」
「わぁ・・・確かに、言われてみればお嬢様の交友関係は凄いですね」
「カーラちゃんもでしょ、大商会の令嬢の専属メイドで当主からも可愛がられてる、国王陛下と次期王妃様、ラングレー王国の王女様ともお友達っ!」
「わ・・・私がですかぁ!」
「そう、あなたも私達のお友達でしょ、改めて考えたら後ろ盾の顔ぶれ凄いわぁ、まさに無敵のメイドよね」
私の名前はカーラ・ムーチョ、知らない間に無敵のメイドになっていましたぁ・・・。
こんにちは、私の名前はカーラ・ムーチョ、20歳。
今私は王都の貴族街にある高級レストランの前に居ます。
恐らくここはフォーマルなドレスを着ていなくても咎められないレストランの中では一番高級なお店、私を呼び出した人達が気を遣ってくれたのでしょう。
お店に入り挙動不審になりながらも名前を告げると一番奥の個室に案内されました。
ちなみに今日はいつものメイド服ではなく私服です。
このお店にメイド服で入る勇気はありません、何故なら私の目の前を歩いている給仕の子が着ているお洋服は私のメイド服より綺麗で高価そうなのです・・・凄いなお貴族様向け高級レストラン・・・。
貴族令嬢の専属メイドなら夜会に付き添うので豪華なドレスやお洋服など見慣れている筈なのですが・・・あいにく私のお嬢様は引きこもり・・・夜会なんて片手で数えるほどしか出ていないのです。
「やぁ、忙しいのに呼び出してすまないね」
「いえ・・・陛下・・・」
「おっと、この姿の時はエルでいいよ、こっちはインフィーね」
「私はアリーでよろしくてよ」
「・・・はい、エルさん、インフィーさん・・・それとアリーさん」
「では早速で悪いけど本題に入ろうか、ノルドの奴はまだボッチ家に頻繁に顔を出しているようだけど、様子はどんな感じかな?」
「どう・・・と言われましても・・・特に何も・・・」
「え?、まだマリアンヌちゃんとまともに話せて無いとか?」
「まさかそんな事・・・いや、あの2人ならあり得るか?」
「お部屋に入って来て「体調はどうだ」お帰りになる時に「また来る」・・・毎回会話はそれだけです、あとお嬢様は終始無言です」
「えぇ・・・」
「それは・・・気まずいわね」
「あ、今まででしたらお嬢様の様子をただ眺めているだけでしたがここ最近はお身体を鍛えられていますよ」
「・・・言っている意味が分からないのだけど」
「えと・・・お嬢様のお部屋で腹筋100回、腕立て伏せ100回、片腕立て各50回の後、逆立ち腕立てとスクワットも50回ずつやられていますね、それが1セットだそうで、お帰りになるまでそれを何度も繰り返して・・・この間なんて暇を持て余した私が数を数えさせて頂いておりました」
「待て待て!、あいつ何でそんな事してるんだよ!」
「ご本人のお話だと「鍛えていると落ち着く、緊張しない」らしくて・・・」
「そんなに運動してたらマリアンヌさんのお部屋が汗で汚れるし臭くなるわ、あぁ・・・どうしましょう早くなんとかしないと!」
「落ち着けアリー」
「私としましてもお嬢様のお部屋が汚れるのは嫌だなと思っていたのですが、アーノルド様のお話だと「筋肉で汗の出る穴を塞いでいるから汗は出ないし汚れない、全て筋肉が解決してくれるのだ」との事で」
「ノルドちゃんはカーラちゃんとは普通にお話をするの?」
「はい、私や他のボッチ家のご家族とも普通にお話ししますよ、会話が無いのはお嬢様だけです」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「あの・・・」
「・・・忙し過ぎて奴の行動に気が回らなかった我々の責任だな」
「・・・そうね、陛下の即位式や婚約発表、それに建国記念行事も重なったからこの1年休む暇がなかったわ」
「・・・私もあれから一時帰国していたとはいえ誰かに様子を探らせるくらいはできたと思うの、でもこんな事になってるなんて思わないじゃない!」
「それで・・・マリアンヌさんは彼の事をどう思っているのかしら」
「・・・空気・・・でしょうか?」
「あ?」
「待てアリー、淑女がしちゃいけない顔になってる」
「最初はアーノルド様の奇行にドン引き・・・いえ、怯えていたのですが、しばらく経つと何か悟られたようなお顔で・・・「そこには居ないもの、空気のような存在」として視界に入れもせず趣味のお裁縫や読書に没頭されております」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「悟ったような顔って・・・」
「ある日たまたま執事とメイドが出払っておりまして、アーノルド様の急な来訪に対応できなかった事があったのです、無断で屋敷に入るわけにはいかないと考えたのでしょう、アーノルド様は指の力だけで外壁を上りお嬢様のお部屋のある3階の窓に張り付いて・・・」
「いや待ってくれ、なんだよそれ!」
「エルちゃん、黙って続きを聞きましょう」
「・・・窓に張り付かれたアーノルド様を見たお嬢様は悲鳴をあげ、失禁してしまいまして・・・それが直接の原因かどうかは分からないのですが、その頃を境に・・・」
「間違いなくそれが原因だと思うわ」
「・・・想像しただけでも怖いな、俺でも漏らしそうだ・・・」
「・・・ノルドちゃん」
なんでしょうかこの微妙な空気・・・いえ、アーノルド様の行動に呆れられているのでしょう、でも私のせいではないので早く帰らせてもらいたいのですが・・・。
「気を取り直して先に食事をしよう」
エルさんが重い口を開きました。
「そうね・・・」
アリシア様・・・いえ、アリーさんが頭を抱えながら言いました。
「ここのお肉は焼き加減が絶品だと聞いてるわ」
インフィーさんが楽しそうに言いました。
「では私はこれで失礼します」
「いやちょっと待って、カーラさんの分も注文してあるから一緒に食事をしよう、俺たちの奢りだから安心して」
「・・・」
超大国である我が国・・・ローゼリア王国の国王陛下、将来の王妃様、そしてラングレー王国の王女様と一緒に個室で食事をしろと・・・何かの罰ゲームなのでしょうか、この4人の中で私だけが異質なのですが!。
がしっ!
「さぁ遠慮しないで座りなさいな」
帰ろうとして椅子から立ち上がった私の腕をインフィーさんが掴んで離してくれません、どうやら私に拒否権は無さそうです。
「オースター帝国もなの?・・・うちの国にはその情報は入ってないわね」
「まだ公表されてないがほぼ確定らしい、諜報員からこの前報告があった」
そんなまだ誰も知らないような機密情報、私のようなメイドの前で普通に話さないで欲しいのですが!。
「他に2カ国ほど出そうね」
「あぁ、うちの親父達のせいで周りの国が大混乱だ」
そうなのです、ローゼリア前国王の退位は大陸中の国々に衝撃を与えました。
名目としては貿易大臣がやらかした非人道的な犯罪と、その他様々な不祥事に対する引責とされていますが王位を退いて夫婦でのんびり世界旅行を楽しむ・・・という計画を前国王陛下自ら発表した為にローゼリアの全国民が知っています、当然他の国々にも・・・。
王が亡くなり次代に引き継ぐという王位継承が常識だったこの大陸でローゼリアのような前例ができた為「うちも面倒な王位を子供に譲ってのんびり暮らしたい!」「目指せ優雅なスローライフ!」と言い出す国王や皇帝が続出したのです。
今この大陸はちょっとした退位、王位交代ブームというものが起きています。
「うちもお父様を説得するのに苦労したわ、私が国外に居るのをいい事に勝手に退位の準備してたのよ!、宰相から私の即位式の日程を相談されて初めて知ったんだから!」
「あぁ、だからインフィーちゃん俺の即位式が終わった後慌てて帰国したのか・・・突然黙って帰るから内乱でも起きたのかと思って心配してたんだぞ」
「国内外に凄い影響があるから安易にこんな事言えるわけないじゃない、でもまだお父様諦めてないみたいなのよねー、あのクソ親父・・・」
「まぁそれもこの大陸が平和な証拠だよな、国同士が争ってたら王の交代や政治の空白は隙になるから簡単には出来ない」
「そうねぇ・・・」
私は3人の会話を聞きながら出された料理に手を付けます、確かに美味しいです!、お肉の焼き加減が絶妙だしソースも素晴らしい、でもこの料理のお値段は怖いから見ていません。
もきゅもきゅ・・・
メイド長に厳しく教わったからお食事のマナーは大丈夫だと思う、でも3人の食べ方は優雅で綺麗、さすが王族・・・。
それにしてもエルさんとアリーさんっていつの間に仲良くなったのかな?、ウンディーネ家にお嬢様がお世話になっていた頃は仲が悪かったと思う、「蹴るわよ!」「蹴られた!」とか言って騒いでたのに・・・。
「あら、カーラちゃん、2人がいつの間に仲良くなったのか不思議に思ってるわね」
「げほっ!、えふっ!」
インフィーさんの言葉に思わずむせてしまいました、王女様鋭いな!、もしかして心の中が読めるの?。
「まぁ、ほとんどインフィーのせいだがな」
「そうね」
お2人とも不本意そうな顔をしながらも仲良く同意されました。
「王位を継承したら欲に塗れた令嬢がこれまで以上に沢山群がって来る、外面が良くても腹の中では何を考えてるか分からないから注意しろって言われてな、気に入った子が居ないのなら家柄が釣り合って性格もよく知っているアリーを虫除けにしたらいいんじゃないかって提案された」
「それは初耳ね、エルにそんなこと言ったの?」
「・・・確かに言われてみれば俺の裏の顔「エル」を知っていて、俺の事を王族扱いしない令嬢はインフィー以外だとアリーだけだ、・・・どうしても性格が合わなくて結婚したくないなら側近にして抱え込め、こんな有能な人間はそう居ないから絶対に逃すなとも言われたぞ」
「私の方はエルと結婚すればどれだけの利益があるかしつこく説明されたわね、強大な権力を持つ事がいかに楽しく素晴らしいか・・・まぁ現役の王女様が言うと説得力があったわ、それに目の前に超優良物件が転がってるのに拾わないのは馬鹿だ、どこかの馬の骨にでも取られたら後で悔しがっても遅いのよ、よく考えなさい、あなたはお金や権力が大好きでしょうって言われたわね」
「わぁ・・・」
いけない、呆れて思わず声が出ちゃった。
「あと・・・私が王妃になれば親友のマリアンヌさんを攻撃する愚か者は居ないだろうし守る事が出来るわよってね・・・その言葉を聞いた時、私は王妃になろうと思ったの」
「お嬢様を守って下さる為に・・・」
「実はそれが一番の理由・・・マリアンヌさんには言わないでね、もちろんエルと一緒に国を動かすのも楽しみだわ(ニヤリ)」
「インフィーの人を見る目は確かだし、俺もアリーと友人関係になって結構経つからな・・・権力を悪用するような人間じゃないのはすぐに分かったよ、性格が凶暴だし俺に対して容赦無いところは不満だが王妃にするならこの国で一番適任だろう」
楽しそうに2人の話を聞いていたインフィーさんが口を開きました。
「私としてはエルちゃんかノルドちゃんをお持ち帰りして一緒にラングレー王国を継ぐ計画だったんだけどね、エルちゃんは大事な友人だけどお互い我が強いから一緒になったら主導権を取り合って衝突すると思うの、だから王配候補は諦めたわ」
「・・・俺も全く同じ意見だな、あまりにも近い存在になると衝突して関係が険悪になるだろう、もし結婚した後でそうなったら最悪だ」
「でも私との縁談を蹴った後で結婚する令嬢は私より有能な人間じゃないと許せないわ、一応私にも王女様としてのプライドはあるし、それにアリーちゃんならエルちゃんを後ろから操って影の最高権力者になりそうで面白いと思わない?」
「俺は全く面白く無いぞ!」
「それから・・・もう一つの問題、ノルドちゃん達を放っておいて大丈夫かしら、私の予想だと何年経ってもこのまま関係が進展しないと思うわ、・・・私が介入してもいいけど」
「インフィーが絡んだら話がややこしくなるだろう」
あ、ダメだ、お嬢様とアーノルド様を結婚させる方向に話が進んじゃう・・・。
「あのっ・・・お嬢様はあのような性格なのでシェルダン家に嫁ぐのは荷が重過ぎると思うのです、実はお嬢様はアーノルド様の好意に気付いていて・・・でも大貴族の跡継ぎと結婚するのが怖くて現実逃避しているように見えるのです・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・確かにマリアンヌさんの性格を考えるとカーラさんの予測は正しいと思うわ、あの子にそんな重荷を背負わせたら間違いなく潰れるでしょうね、引きこもって外に出て来なくなるかも」
「でもノルドちゃんが婚約者候補から離脱したらマリアンヌちゃん大変よ」
「・・・なぜでしょう」
意味がわからず思わず尋ねてしまいました。
「なぜって・・・大商会の娘で次期王妃様のお友達、国王陛下とラングレー王国の王女である私ともお友達・・・・凄い優良物件だと思わない?、今はノルドちゃんのところのシェルダン家が婚約者の有力候補として居るから大人しくしてるけど、それが居なくなったら飢えた令息共が群がって来るわよ」
「わぁ・・・確かに、言われてみればお嬢様の交友関係は凄いですね」
「カーラちゃんもでしょ、大商会の令嬢の専属メイドで当主からも可愛がられてる、国王陛下と次期王妃様、ラングレー王国の王女様ともお友達っ!」
「わ・・・私がですかぁ!」
「そう、あなたも私達のお友達でしょ、改めて考えたら後ろ盾の顔ぶれ凄いわぁ、まさに無敵のメイドよね」
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