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Side - 16 - 15 - いきゅらす・・・ -
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Side - 16 - 15 - いきゅらす・・・ -
「・・・という事がこの前あったのです!」
「えぇ・・・それアメリア様と日本の・・・ソーリ?、偉い人?に丸投げって言わない?」
「丸投げだけどアメリア様はそれでいいって言ってたし、総理も大丈夫だよって言ってくれたのです!、私は許されたのです!」
「後始末大変だと思うけど・・・」
「いいって言ってくれたから許されたのです!」
「まぁリゼちゃんやアメリア様が良いなら私は何も言えないけど・・・」
こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン16歳です。
最近は日本で色々と活動していたのでリィンちゃんが大陸横断ウルトラ巡業に旅立ってから結構な時間が過ぎていると思っていたのですが・・・まだオースター帝国に居るのです。
国境近くのサニーの街でリィンちゃんやトリエラさんとお話ししてからまだ3日しか経っていません。
・・・もちろんその間も時々転移してローゼリアではお仕事をやってたけど日本では1ヶ月くらい滞在してコナンザと遊んだり、龍之介達とバンドのリハーサルをしたり、総理と会って私がやらかした宇宙船騒ぎの後始末を頼んだり、我が家の新築の為に間取りを家族と決めたり・・・本当に忙しかったのです!。
日本での用事が一段落したのでリィンちゃんのところに転移するとちょうどオースター帝国での歓迎式典が終わったところ・・・正装してキラキラのドレスに身を包んだリィンちゃんが疲れた顔をしてお部屋で休んでいました。
「もう一人の転生者・・・リーシャさんだっけ?、彼女も日本に連れて行ったんでしょ」
メイドさん達に囲まれてドレスを脱がされながらリィンちゃんが私に話しかけます。
「うん、日本のお兄さんとの対面の時は私も居たんだけど、別の日に両親とも会ったみたい、その辺はアメリア様に任せてたからどうなったか分かんないけど・・・」
「そういえば私まだアメリア様にちゃんと紹介してもらってないなぁ・・・それっぽい人?・・・リベラ・ロリータさんさんだっけ?、その人とは日本で会ってお話もしたけど・・・セシルちゃんの状況を少し話しただけですぐ帰っちゃったし」
「え・・・私リィンちゃんを紹介してなかったっけ?」
「ないよ」
衝撃の事実が発覚したのです!。
「でもアメリア様って王族に不信感持ってるからなぁ・・・」
「え・・・もしかして私、嫌われてる?」
フルフル・・・
「わぁぁ、リィンちゃん泣かないで!、紹介するから!、ちょっと待ってね・・・もしもしアメリア様、理世だけど・・・今大丈夫?・・・うん、そう・・・悪いけど私の所まで来て欲しいのです」
・・・
・・・
ぱぁっ!
「うわ眩しっ!」
「何か用かな・・・ひぃっ!ここはどこ?、貴族の屋敷みたいな感じするけど!」
「オースター帝国のお城なのです!、紹介するね、私の親友のリィンちゃん」
「うん、知ってるけど」
「え、紹介したっけ?」
「されてないけど一度日本で会ったよね、理世ちゃんの話にもよく出て来るし・・・そちらは護衛のトリエラちゃんだね」
「リゼちゃん・・・紹介が雑過ぎるよ」
「うん、理世ちゃんが悪いね」
「そうなのです?、でもリィンちゃんが紹介しろって言うから・・・」
「まぁいいか・・・では改めて・・・リィンフェルド王女殿下、初めましてではないですがアメリア・セーメインと申します、世を忍ぶ仮の姿はリベラ・ロリータ、魔法騎士団に所属しています」
「あ・・・はい、リィンフェルド・フェリス・ローゼリアです、よろしくお願いします建国の大魔導士様、改まった口調は苦手なのでリゼちゃんと同じ感じで喋ってもらえると嬉しいです」
ざわざわっ・・・
あ、お着替えを手伝ってくれたメイドさんが3人、まだお部屋に居たのです。
「リィンちゃんダメだよ!、大魔導士様が生きてるの秘密なのに」
「あ、ごめんなさい・・・」
アメリア様が驚いているメイドさんの前に満面の笑顔で歩いて行きます。
「ねぇ可愛いメイドさん達、私が建国の大魔導士だという事は秘密にしておいてもらえるかなぁ、あ、もしかして口の軽い子は居る?、もし居るのなら私は君たちの記憶を消さないといけない・・・ほらこうやって・・・」
しゅこぉぉぉ・・・ぼぼぼぼ・・・
アメリア様の手から赤黒い魔法陣が現れたのです。
「ひぃぃぃ!、お許しを!」
「誰にも言いませんからぁ!」
「わぁぁん・・・怖いよぉ・・・」
「うん、分かってくれればいいのだ、私も「これ」はできるだけ使いたくなくてね、加減を間違えると生まれてからの記憶が全部消えて赤ちゃんになるのだ・・・本当に黙っていてもらえる?、家族にも、友達にも・・・誰にも話しちゃダメだよ」
こくこく!
3人のメイドさんは泣きながら全力で首を縦に振っています、リィンちゃんが退室を促すと3人とも物凄い速さでお部屋から出て行きました。
「アメリア様、ちょっとやり過ぎだよ」
「そうかな?」
「そうなのです・・・っていうかそんな魔法あるのです?」
「いや、無いから私が作った、これは昔放送されていたアニメを見ていて思い付いてね・・・異世界に行ってたおじさんが戻って来るやつ、あると便利だなーと思って設計してみたら出来たのだ」
「お父さんが面白いって勧めるから私も観たのです・・・イキュラスキュオラ・・・」
「うん正解、あれは面白かったのだ」
それからしばらくの間、私とリィンちゃんの前でアメリア様は最近起こった色々な出来事の顛末を話してくれました。
「でね、リーシャちゃんって普段はお薬をギリギリまで飲まないんだよ、高価で貴重なものって事もあるんだけど・・・でも日本のご両親に会いに行っている間、禁断症状が出てなくてね」
「え・・・そうなのです?」
「うん、故郷で家族と1日過ごしてもらって薬の時間に間に合うようにこっちの世界に戻ろうとしたら禁断症状が出てないって本人から聞いたのだ、おかしいと思って日本で食べたものを聞いてみたのだが、どうやらとある食べ物が関係してるようでね」
「凄い!、それが本当に効果あるんだったらデボネア帝国で依存の症状に苦しんでる人達が助かるよね」
リィンちゃんが目を輝かせて話に割り込んできました、普段はポンコツなのにちゃんと王女様らしく民の事を考えてるんだね・・・。
「アメリア様、その食べ物って何なのです?」
「納豆」
「え?」
「私も最初は何でこんなものが効くのか分からなかったのだ、でもデボネア帝国に持ち込んで中毒者に食べさせたら効果があった」
「・・・」
「残念ながら中毒状態が完治するわけでは無くて薬と同じ頻度で食べなくてはいけないのだが安く沢山用意出来るから薬の代わりになると思う」
「向こうの人、よく初見であれ食べたね」
「いや・・・腐ってると言って嫌がったから無理に食べさせたのだ、理世ちゃんは納豆大丈夫?」
「・・・納豆は嫌いなのです」
「関西・・・特に四国って納豆が嫌いな人多いもんね」
「あれは腐ってるのです!、納豆は大嫌いなのです!」
「デボネア帝国の人達が苦しんでいても私には関係無い事だけど、報告だけでもと思って博士に頼んで陛下に伝えてもらったのだ、そしたら国主導で購入したいから大量に納豆を売ってくれって・・・」
「わぁ・・・それでどうするの?、日本で買ってこっちに持って来るのです?」
「私はできるだけ王家とは関わりたく無いから理世ちゃんに頼めばやってくれるのでは?と言っておいたからそのうち話があると思うよ」
「アメリア様酷いのです!」
「まぁそれは冗談で、買い付けと持ち込みは私の方でやる事になった、でもデボネア帝国の中毒患者に配る時にはリゼちゃんの名前を貸して欲しいって陛下が言ってる、私は死んだ事になってるし表には出られないからね」
「・・・別に名前くらいならいいのです」
「というわけで、リーシャちゃんは当初の予定を変更してまだ岡山の実家に居るよ、数日後に迎えに行って今後の事を決めようと思ってる、私としてはどちらで暮らすにしても幸せになって欲しいのだ」
リーシャちゃんの件はアメリア様がいい感じでやってくれてたみたいなのです、私はほとんど何もしてないけどこれで一件落着かな。
「あ、リゼちゃん、トリエラさんの剣を買いにマキシマの街に行きたいって言ってたでしょ、その事をオースターの皇帝陛下に言って、帝都を出た後でシーマの街に滞在する許可を貰おうと思ったんだけど・・・」
「リィンちゃん、珍しく気が利くね」
「珍しくって酷いなぁ・・・でね、許可は貰えたんだけど、皇帝陛下は私達にマキシマの街に行って欲しくなさそうだったの、あの周辺はオースター帝国の領土ではあるけど街の領主に自治権を与えて半ば独立国みたいな扱いなんだって」
「実はこの前シーマの街まで行ってきたのだ、その北にあるマキシマの街には小刻みに転移したらすぐに着くと思うよ、で、シーマの街でマキシマについて聞いたのだけど、大森林のすぐ近くにある辺境の街で魔女様という人物に守られているらしいのだ」
テーブルのお菓子をもきゅもきゅ食べていたアメリア様が言いました。
「魔女様?」
「うん、シーマの街でも大半の人が知ってたから有名人だと思う、街の住民の話から察すると権力を持ってるのは恐らく領主じゃなくて魔女様だろう、それから日本刀についても聞いてみた、マキシマの街にはトンガリィ・コーンという凄腕の鍛冶屋が居るらしい」
「あの・・・アメリア様、リゼ様・・・私のためにそこまでして頂かなくても・・・剣は無理そうなら・・・諦めますので」
アメリア様と同じくお菓子をもきゅもきゅ食べていたトリエラさんが言いました、そんなに泣きそうな顔して言っても説得力が無いのです。
「大丈夫だよトリエラさん、ちょっと転移で街に移動して、剣を買ってすぐ戻って来るだけだから手間じゃないし」
「・・・ぐすっ・・・ありがとうございます」
「ふぅ・・・疲れたな、晩餐会も無事に終わったしリィンフェルド王女殿下にも喜んで貰えた、俺はよく頑張った!」
そう呟きながら自室にあるソファに着替えもせず疲れた身体を沈めた。
俺の名前はゴンザレス・ロマンシング・オースター、ここオースター帝国を統治する皇帝だ。
今夜は超大国ローゼリアの姫君を歓迎する晩餐会があり当然俺も出席した、リィンフェルド殿下は大変美しく、年頃の子息が居る貴族家は互いに牽制し合い、気に入ってもらおうと躍起だった。
理由は簡単だ、彼女と婚約・・・までは行かなくとも友人関係になれば我が国での立場は圧倒的に優位となる、浮き足立つ貴族達を抑えるのにとても苦労した。
だがいくら当主に言い聞かせても隙を見て子息どもがちょっかいを出すのだ!、何を考えているのか!、俺は諜報部隊からカリーナ王国での惨状を事前に聞いている。
カリーナの馬鹿王子達が王女殿下に強引に迫り夜這いまでかけたようだ、王女殿下は翌日からの予定を全て取りやめオースター帝国に向けて出発した、あれは相当怒っているだろう、我が国はそのような過ちは絶対に避けねばならない。
王女殿下に対して必要以上に迫るな、機嫌を損ねるな、失礼な態度は控えよ・・・命令を理解できない馬鹿どもが予想以上に居て俺の毛根が消耗した、これ以上抜け毛が増えたらどうするのだ!。
王女殿下の親友、リーゼロッテ・シェルダンに無礼を働いたベレット王国がどうなったか・・・あの国は今回の王女殿下の訪問日程に含まれていないしローゼリア王国からの招待状も届かない、理由はローゼリアの国王陛下を怒らせたからだ。
我が国は山脈と大森林が国境線に存在するとはいえローゼリアの隣国だ、超大国を怒らせてはこの大陸での立場が悪くなる、王女殿下には何事もなく次の国へ向かって欲しい・・・。
そんな俺の願いも虚しく次の訪問地であるアルト共和国に向かう前に我が国の東端に位置する街、シーマとマキシマに立ち寄りたいと言って来た。
あの街はまずい!、シーマはともかくマキシマには俺の権力が届かない、だが一応我が国の領土だ、何かあれば俺の責任になる、頭を抱えた俺の手のひらを見ると髪の毛が5本ほど抜けていた・・・。
チリン・・・
俺はテーブルの上にあるベルを鳴らしメイドに命じて側近の男を呼んだ。
コンコン・・・
がちゃ
「何だよ陛下」
彼の名はオニャノコ・ハァードゲイ、俺の側近であり幼馴染で親友だ、人目の無い場所では気安い言葉を交わしている。
「まずい事になった、王女殿下はマキシマの街に行きたいと言っている」
「何であんなとこに?、まさかあの街の秘密がバレたのか?」
「分からん、用事があるそうだ、だが殿下はシーマの街に滞在し実際にマキシマへ行くのは護衛が3人ほどだと聞いている」
「8年ほど行方が分からなくなってた魔女様が最近戻って来られたってのは聞いてる、だから大森林の魔物は心配ないだろう、だがなぁ・・・」
魔女様は凶暴な魔物が発生する大森林の最前線で我が国を守っている、時折ふらりと旅に出て街を離れてしまうが彼女が作る魔物避けの薬剤は強力だ、魔女様が不在でも数年は魔物が街には下りて来ない。
「他国の人間がマキシマの街を訪れて魔女様に接触されるとまずい」
そう、とてもまずいのだ、彼女には大変な秘密がある、魔女様は我が国に安全と莫大な利益をもたらしているが秘密が公になれば我が国は他国から非難されるだろう・・・。
「オニャノコ・・・悪いが王女殿下より先にシーマの領主のところに行ってくれ、魔導列車を使えば先に着くだろう、領主の手配した案内役としてマキシマの街では殿下の護衛と行動を共にしろ、シーマとマキシマの領主には俺から連絡しておく」
「了解、魔女様と接触しそうになったらさりげなく止めればいいのか?」
「あぁ、頼む」
「それから・・・魔女様にも連絡をしないとな」
コンコン!
「入れ」
ガチャ!
誰かと思えば魔法騎士団長だ、とても慌てているな、何かあったのか?。
「陛下、ご報告します、とてつもない魔力量を持った人物が突然城内に現れました、場所はローゼリアの王女殿下がいらっしゃる客室・・・」
「護衛のリーゼロッテ・シェルダン嬢が転移してくる場合があると事前に連絡してあっただろう、彼女ではないのか?」
「はい、先に検知した1名はリーゼロッテ嬢と思われるのですが続いて彼女と同等かそれを大きく上回る魔力の持ち主が突然現れました!」
「何・・・だと・・・」
机の上を見ると俺の髪の毛が2本、はらりと落ちた・・・。
「・・・という事がこの前あったのです!」
「えぇ・・・それアメリア様と日本の・・・ソーリ?、偉い人?に丸投げって言わない?」
「丸投げだけどアメリア様はそれでいいって言ってたし、総理も大丈夫だよって言ってくれたのです!、私は許されたのです!」
「後始末大変だと思うけど・・・」
「いいって言ってくれたから許されたのです!」
「まぁリゼちゃんやアメリア様が良いなら私は何も言えないけど・・・」
こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン16歳です。
最近は日本で色々と活動していたのでリィンちゃんが大陸横断ウルトラ巡業に旅立ってから結構な時間が過ぎていると思っていたのですが・・・まだオースター帝国に居るのです。
国境近くのサニーの街でリィンちゃんやトリエラさんとお話ししてからまだ3日しか経っていません。
・・・もちろんその間も時々転移してローゼリアではお仕事をやってたけど日本では1ヶ月くらい滞在してコナンザと遊んだり、龍之介達とバンドのリハーサルをしたり、総理と会って私がやらかした宇宙船騒ぎの後始末を頼んだり、我が家の新築の為に間取りを家族と決めたり・・・本当に忙しかったのです!。
日本での用事が一段落したのでリィンちゃんのところに転移するとちょうどオースター帝国での歓迎式典が終わったところ・・・正装してキラキラのドレスに身を包んだリィンちゃんが疲れた顔をしてお部屋で休んでいました。
「もう一人の転生者・・・リーシャさんだっけ?、彼女も日本に連れて行ったんでしょ」
メイドさん達に囲まれてドレスを脱がされながらリィンちゃんが私に話しかけます。
「うん、日本のお兄さんとの対面の時は私も居たんだけど、別の日に両親とも会ったみたい、その辺はアメリア様に任せてたからどうなったか分かんないけど・・・」
「そういえば私まだアメリア様にちゃんと紹介してもらってないなぁ・・・それっぽい人?・・・リベラ・ロリータさんさんだっけ?、その人とは日本で会ってお話もしたけど・・・セシルちゃんの状況を少し話しただけですぐ帰っちゃったし」
「え・・・私リィンちゃんを紹介してなかったっけ?」
「ないよ」
衝撃の事実が発覚したのです!。
「でもアメリア様って王族に不信感持ってるからなぁ・・・」
「え・・・もしかして私、嫌われてる?」
フルフル・・・
「わぁぁ、リィンちゃん泣かないで!、紹介するから!、ちょっと待ってね・・・もしもしアメリア様、理世だけど・・・今大丈夫?・・・うん、そう・・・悪いけど私の所まで来て欲しいのです」
・・・
・・・
ぱぁっ!
「うわ眩しっ!」
「何か用かな・・・ひぃっ!ここはどこ?、貴族の屋敷みたいな感じするけど!」
「オースター帝国のお城なのです!、紹介するね、私の親友のリィンちゃん」
「うん、知ってるけど」
「え、紹介したっけ?」
「されてないけど一度日本で会ったよね、理世ちゃんの話にもよく出て来るし・・・そちらは護衛のトリエラちゃんだね」
「リゼちゃん・・・紹介が雑過ぎるよ」
「うん、理世ちゃんが悪いね」
「そうなのです?、でもリィンちゃんが紹介しろって言うから・・・」
「まぁいいか・・・では改めて・・・リィンフェルド王女殿下、初めましてではないですがアメリア・セーメインと申します、世を忍ぶ仮の姿はリベラ・ロリータ、魔法騎士団に所属しています」
「あ・・・はい、リィンフェルド・フェリス・ローゼリアです、よろしくお願いします建国の大魔導士様、改まった口調は苦手なのでリゼちゃんと同じ感じで喋ってもらえると嬉しいです」
ざわざわっ・・・
あ、お着替えを手伝ってくれたメイドさんが3人、まだお部屋に居たのです。
「リィンちゃんダメだよ!、大魔導士様が生きてるの秘密なのに」
「あ、ごめんなさい・・・」
アメリア様が驚いているメイドさんの前に満面の笑顔で歩いて行きます。
「ねぇ可愛いメイドさん達、私が建国の大魔導士だという事は秘密にしておいてもらえるかなぁ、あ、もしかして口の軽い子は居る?、もし居るのなら私は君たちの記憶を消さないといけない・・・ほらこうやって・・・」
しゅこぉぉぉ・・・ぼぼぼぼ・・・
アメリア様の手から赤黒い魔法陣が現れたのです。
「ひぃぃぃ!、お許しを!」
「誰にも言いませんからぁ!」
「わぁぁん・・・怖いよぉ・・・」
「うん、分かってくれればいいのだ、私も「これ」はできるだけ使いたくなくてね、加減を間違えると生まれてからの記憶が全部消えて赤ちゃんになるのだ・・・本当に黙っていてもらえる?、家族にも、友達にも・・・誰にも話しちゃダメだよ」
こくこく!
3人のメイドさんは泣きながら全力で首を縦に振っています、リィンちゃんが退室を促すと3人とも物凄い速さでお部屋から出て行きました。
「アメリア様、ちょっとやり過ぎだよ」
「そうかな?」
「そうなのです・・・っていうかそんな魔法あるのです?」
「いや、無いから私が作った、これは昔放送されていたアニメを見ていて思い付いてね・・・異世界に行ってたおじさんが戻って来るやつ、あると便利だなーと思って設計してみたら出来たのだ」
「お父さんが面白いって勧めるから私も観たのです・・・イキュラスキュオラ・・・」
「うん正解、あれは面白かったのだ」
それからしばらくの間、私とリィンちゃんの前でアメリア様は最近起こった色々な出来事の顛末を話してくれました。
「でね、リーシャちゃんって普段はお薬をギリギリまで飲まないんだよ、高価で貴重なものって事もあるんだけど・・・でも日本のご両親に会いに行っている間、禁断症状が出てなくてね」
「え・・・そうなのです?」
「うん、故郷で家族と1日過ごしてもらって薬の時間に間に合うようにこっちの世界に戻ろうとしたら禁断症状が出てないって本人から聞いたのだ、おかしいと思って日本で食べたものを聞いてみたのだが、どうやらとある食べ物が関係してるようでね」
「凄い!、それが本当に効果あるんだったらデボネア帝国で依存の症状に苦しんでる人達が助かるよね」
リィンちゃんが目を輝かせて話に割り込んできました、普段はポンコツなのにちゃんと王女様らしく民の事を考えてるんだね・・・。
「アメリア様、その食べ物って何なのです?」
「納豆」
「え?」
「私も最初は何でこんなものが効くのか分からなかったのだ、でもデボネア帝国に持ち込んで中毒者に食べさせたら効果があった」
「・・・」
「残念ながら中毒状態が完治するわけでは無くて薬と同じ頻度で食べなくてはいけないのだが安く沢山用意出来るから薬の代わりになると思う」
「向こうの人、よく初見であれ食べたね」
「いや・・・腐ってると言って嫌がったから無理に食べさせたのだ、理世ちゃんは納豆大丈夫?」
「・・・納豆は嫌いなのです」
「関西・・・特に四国って納豆が嫌いな人多いもんね」
「あれは腐ってるのです!、納豆は大嫌いなのです!」
「デボネア帝国の人達が苦しんでいても私には関係無い事だけど、報告だけでもと思って博士に頼んで陛下に伝えてもらったのだ、そしたら国主導で購入したいから大量に納豆を売ってくれって・・・」
「わぁ・・・それでどうするの?、日本で買ってこっちに持って来るのです?」
「私はできるだけ王家とは関わりたく無いから理世ちゃんに頼めばやってくれるのでは?と言っておいたからそのうち話があると思うよ」
「アメリア様酷いのです!」
「まぁそれは冗談で、買い付けと持ち込みは私の方でやる事になった、でもデボネア帝国の中毒患者に配る時にはリゼちゃんの名前を貸して欲しいって陛下が言ってる、私は死んだ事になってるし表には出られないからね」
「・・・別に名前くらいならいいのです」
「というわけで、リーシャちゃんは当初の予定を変更してまだ岡山の実家に居るよ、数日後に迎えに行って今後の事を決めようと思ってる、私としてはどちらで暮らすにしても幸せになって欲しいのだ」
リーシャちゃんの件はアメリア様がいい感じでやってくれてたみたいなのです、私はほとんど何もしてないけどこれで一件落着かな。
「あ、リゼちゃん、トリエラさんの剣を買いにマキシマの街に行きたいって言ってたでしょ、その事をオースターの皇帝陛下に言って、帝都を出た後でシーマの街に滞在する許可を貰おうと思ったんだけど・・・」
「リィンちゃん、珍しく気が利くね」
「珍しくって酷いなぁ・・・でね、許可は貰えたんだけど、皇帝陛下は私達にマキシマの街に行って欲しくなさそうだったの、あの周辺はオースター帝国の領土ではあるけど街の領主に自治権を与えて半ば独立国みたいな扱いなんだって」
「実はこの前シーマの街まで行ってきたのだ、その北にあるマキシマの街には小刻みに転移したらすぐに着くと思うよ、で、シーマの街でマキシマについて聞いたのだけど、大森林のすぐ近くにある辺境の街で魔女様という人物に守られているらしいのだ」
テーブルのお菓子をもきゅもきゅ食べていたアメリア様が言いました。
「魔女様?」
「うん、シーマの街でも大半の人が知ってたから有名人だと思う、街の住民の話から察すると権力を持ってるのは恐らく領主じゃなくて魔女様だろう、それから日本刀についても聞いてみた、マキシマの街にはトンガリィ・コーンという凄腕の鍛冶屋が居るらしい」
「あの・・・アメリア様、リゼ様・・・私のためにそこまでして頂かなくても・・・剣は無理そうなら・・・諦めますので」
アメリア様と同じくお菓子をもきゅもきゅ食べていたトリエラさんが言いました、そんなに泣きそうな顔して言っても説得力が無いのです。
「大丈夫だよトリエラさん、ちょっと転移で街に移動して、剣を買ってすぐ戻って来るだけだから手間じゃないし」
「・・・ぐすっ・・・ありがとうございます」
「ふぅ・・・疲れたな、晩餐会も無事に終わったしリィンフェルド王女殿下にも喜んで貰えた、俺はよく頑張った!」
そう呟きながら自室にあるソファに着替えもせず疲れた身体を沈めた。
俺の名前はゴンザレス・ロマンシング・オースター、ここオースター帝国を統治する皇帝だ。
今夜は超大国ローゼリアの姫君を歓迎する晩餐会があり当然俺も出席した、リィンフェルド殿下は大変美しく、年頃の子息が居る貴族家は互いに牽制し合い、気に入ってもらおうと躍起だった。
理由は簡単だ、彼女と婚約・・・までは行かなくとも友人関係になれば我が国での立場は圧倒的に優位となる、浮き足立つ貴族達を抑えるのにとても苦労した。
だがいくら当主に言い聞かせても隙を見て子息どもがちょっかいを出すのだ!、何を考えているのか!、俺は諜報部隊からカリーナ王国での惨状を事前に聞いている。
カリーナの馬鹿王子達が王女殿下に強引に迫り夜這いまでかけたようだ、王女殿下は翌日からの予定を全て取りやめオースター帝国に向けて出発した、あれは相当怒っているだろう、我が国はそのような過ちは絶対に避けねばならない。
王女殿下に対して必要以上に迫るな、機嫌を損ねるな、失礼な態度は控えよ・・・命令を理解できない馬鹿どもが予想以上に居て俺の毛根が消耗した、これ以上抜け毛が増えたらどうするのだ!。
王女殿下の親友、リーゼロッテ・シェルダンに無礼を働いたベレット王国がどうなったか・・・あの国は今回の王女殿下の訪問日程に含まれていないしローゼリア王国からの招待状も届かない、理由はローゼリアの国王陛下を怒らせたからだ。
我が国は山脈と大森林が国境線に存在するとはいえローゼリアの隣国だ、超大国を怒らせてはこの大陸での立場が悪くなる、王女殿下には何事もなく次の国へ向かって欲しい・・・。
そんな俺の願いも虚しく次の訪問地であるアルト共和国に向かう前に我が国の東端に位置する街、シーマとマキシマに立ち寄りたいと言って来た。
あの街はまずい!、シーマはともかくマキシマには俺の権力が届かない、だが一応我が国の領土だ、何かあれば俺の責任になる、頭を抱えた俺の手のひらを見ると髪の毛が5本ほど抜けていた・・・。
チリン・・・
俺はテーブルの上にあるベルを鳴らしメイドに命じて側近の男を呼んだ。
コンコン・・・
がちゃ
「何だよ陛下」
彼の名はオニャノコ・ハァードゲイ、俺の側近であり幼馴染で親友だ、人目の無い場所では気安い言葉を交わしている。
「まずい事になった、王女殿下はマキシマの街に行きたいと言っている」
「何であんなとこに?、まさかあの街の秘密がバレたのか?」
「分からん、用事があるそうだ、だが殿下はシーマの街に滞在し実際にマキシマへ行くのは護衛が3人ほどだと聞いている」
「8年ほど行方が分からなくなってた魔女様が最近戻って来られたってのは聞いてる、だから大森林の魔物は心配ないだろう、だがなぁ・・・」
魔女様は凶暴な魔物が発生する大森林の最前線で我が国を守っている、時折ふらりと旅に出て街を離れてしまうが彼女が作る魔物避けの薬剤は強力だ、魔女様が不在でも数年は魔物が街には下りて来ない。
「他国の人間がマキシマの街を訪れて魔女様に接触されるとまずい」
そう、とてもまずいのだ、彼女には大変な秘密がある、魔女様は我が国に安全と莫大な利益をもたらしているが秘密が公になれば我が国は他国から非難されるだろう・・・。
「オニャノコ・・・悪いが王女殿下より先にシーマの領主のところに行ってくれ、魔導列車を使えば先に着くだろう、領主の手配した案内役としてマキシマの街では殿下の護衛と行動を共にしろ、シーマとマキシマの領主には俺から連絡しておく」
「了解、魔女様と接触しそうになったらさりげなく止めればいいのか?」
「あぁ、頼む」
「それから・・・魔女様にも連絡をしないとな」
コンコン!
「入れ」
ガチャ!
誰かと思えば魔法騎士団長だ、とても慌てているな、何かあったのか?。
「陛下、ご報告します、とてつもない魔力量を持った人物が突然城内に現れました、場所はローゼリアの王女殿下がいらっしゃる客室・・・」
「護衛のリーゼロッテ・シェルダン嬢が転移してくる場合があると事前に連絡してあっただろう、彼女ではないのか?」
「はい、先に検知した1名はリーゼロッテ嬢と思われるのですが続いて彼女と同等かそれを大きく上回る魔力の持ち主が突然現れました!」
「何・・・だと・・・」
机の上を見ると俺の髪の毛が2本、はらりと落ちた・・・。
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フルーツパフェ
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クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
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