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Side - 16 - 14 - ちぇん・まおたお -
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Side - 16 - 14 - ちぇん・まおたお -
ざわざわ・・・
「何だろうな、突然重大発表があるって呼び出されたけど・・・」
ざわざわ・・・
「あれじゃね、私は宇宙人と会ったのだぁ!・・・みたいな?」
「あぁ、ありえるな」
「記者もそんなに集まってねぇな、本当に何を発表するんだか・・・」
「おい、入って来たぞ」
「首相と官房長官か」
ざわざわ・・・
ぺこり
「突然の記者会見にお集まり頂きありがとう、これより我が国に飛来した宇宙船について重大発表を行う」
「レーダーにも反応せず、日本の防衛システムを潜り抜けて飛来した宇宙船は偽物であり、残されていた地球外生命体は異世界人が転移により持ち込んだ物である」
「その異世界人についてだが、話を聞いたところ元々は日本に住んでいた女性で死後に異世界で生まれ変わったそうだ、彼女はすでに地球と異世界の間を何度も行き来している」
「彼女は前世の故郷である地球にもう一度戻りたいと願い、転移魔法を使って地球に訪れる計画を立てたが未知の病原菌や寄生虫を持ち込めば大惨事になる、悩んだ彼女は宇宙人の仕業と見せかけて地球に検査を依頼した」
「地球に害を与えないようにと願い実行した彼女の行動は結果的に我々人類を騙した事になる、その事を後悔していた彼女は私にコンタクトを取り正式に謝罪したいと言ってきた」
「総理大臣である私は謝罪を受け入れ、今後の異世界生物に関する研究の協力を依頼、契約を結んだ」
「先に持ち込んだ生物はすでに各国から研究チームが派遣され調査が進んでいる、迷惑をかけたお詫びに研究者を派遣した国に対し、謝罪と今後の友好の為に異世界産の品を贈る」
「・・・以上」
・・・
私の名前は騨志勝雄(だしかつお)50歳、この国の内閣総理大臣だ・・・。
今私は首相官邸にある記者会見場で世界に向けて重大な事項を発表したところだ。
予想通り、会場は沈黙に包まれた、詰めかけた各国の記者は様々な反応をしている、呆然とする者、私に憐れむような目を向ける者、笑いを堪える者・・・これが他人事ならまだ良かったのだが私は当事者だ、おそらく明日の朝刊の一面は再び私が華々しく飾るだろう、もうすでに胃が痛い・・・。
ざわざわ・・・
私の隣に居る官房長官が沈黙を破った。
「質問があれば挙手を・・・」
「総理!」
「はいどうぞ」
「頭は大丈夫でしょうか?」
日頃から私に辛辣な質問を投げかける京都府経済産業新聞の記者だ・・・確か・・・津野田三郎(つのださぶろう)と言ったか・・・相変わらず腹が立つ奴だな。
「大丈夫ですよ(ニコッ)」
「今総理が仰った内容は日本政府からの正式な発表と思って間違い無いのでしょうか」
「はい間違いありません(ニコッ)」
「・・・」
なぜ黙るのだ、いつもの切れ味鋭い質問はどうした、構えていた私がバカみたいではないか!。
「とても信じられません!、異世界人が存在するという証拠はあるのでしょうか」
「はい、・・・こちらは我が国にお詫びとして贈られた品です・・・出してくれるかな」
ささっ・・・
官房長官が震える手でトレイを机の上に出した、皆の注目が集まる。
私はトレイの上にかけてある布を外した。
「おぉ・・・」
「凄い・・・」
そうだろう、凄いだろう、私も見せてもらった時にはチベットスナギツネみたいな表情になったぞ・・・薔薇の花を模した形にカットされた恐ろしく巨大なダイヤの前で私は少しだけ胸を張った。
「これは異世界の技術で緻密なカットを施されています、こちらで解析したところ間違いなく本物のダイヤモンド原石一個から作られている事が分かりました、しかも今確認されている世界最大の物のおよそ3倍の大きさです、このダイヤと同じ大きさのルビー、そして異世界の生物を雌雄で1種類・・・現在我が国で研究を進めている研究員を派遣してくれた国に贈る予定です」
ざわざわ・・・
「それに・・・私も最初は信じられませんでした、しかし実際に異世界に連れて行かれ美しい街並を見せられたら信用しない訳にはいかない、どうしても信じられないと仰るのなら各国の代表団を異世界に転移させる事で真実だと証明する準備も進めています」
ざわざわ・・・
「はい!、総理!」
「どうぞ」
別の記者が手を挙げた、この娘はテレビ局だな・・・確か・・・新日本テレビだったか・・・。
「その異世界人は危険ではないのですか?」
「私は先日実際に会ったのですが友好的ですよ、全ての異世界人がそうだとは限らないですが少なくとも彼女は元々日本人でしたので言葉も通じますし考え方も我々に近い、今回の発表も自分の持ち込んだものを宇宙生物だと信じて研究している人達に悪い事をした、謝罪したい・・・と彼女が申し出て実現したものです」
ざわざわ・・・
「ただ・・・あまりにも非常識な事をして怒らせるとどうなるか分かりません、彼女は人間を別の場所に転移させ山の上に巨大な宇宙船を映し出せるほど魔法が得意だと聞いております、加えて彼女と同じ異世界人・・・向こうでは大魔導士と呼ばれている人物が存在するのですが、その者は大規模破壊魔法を使い、大きな都市を一瞬で更地にできるようです」
ざわざわ・・・
「つまり、異世界人は我々人類と同等の高度な文明を持ち、魔法という未知の武器まで持っている・・・と言えますね」
ざわざわ!・・・
更に会場のざわめきが大きくなったな、だがこれも想定内だ。
「謝罪をというのなら我々の前に出て来て直接すればいいのでは?」
「彼女はとても人見知りで気が弱いのです、私でさえこの場に立って記者さん達に詰め寄られたら恐ろしいし泣きそうになるのに・・・皆さんの前に姿を見せるのは無理だと私が判断しました」
バタン・・・
「やれやれ、ようやく会見が終わった・・・」
「先生、お疲れのところ申し訳ないのですがホットラインが3件同時に入っています」
官邸の執務室に戻ると秘書官の豆柴くんが笑顔で迎えてくれた。
「どこからだろうか?・・・想像はつくが・・・」
「えーと、アメリカ合衆国のクリボッチ・ルーズソクス大統領、中華人民共和国の陳猫桃(ちぇんまおたお)国家主席、それからロシア共和国のイワンノヴァカ・レッドヴルチョフ大統領からです」
「では先に猫(まお)ちゃんの方から・・・豆柴くん、中国に繋いでくれるかな」
「ダメです先生!、同盟国の合衆国大統領を放置して先に中国と話したら後で面倒な事になるので合衆国の方から先に対応して下さい」
「ぐっ・・・だが・・・あの大統領怖いし・・・」
「ダメです!」
そして大統領との電話会談が終わった・・・。
「ふぅ・・・疲れた、大統領は異世界人との会談を強く要求してきたよ、どうやら転移魔法にとても興味があるらしい」
「それは当然だと思います、人や物を魔法で転移できたら物流に革命が起こりますからね」
「・・・」
「中国とロシアの他にも話したいと言ってる国が20ヶ国程に増えてますけど、どうします・・・」
「後日私から連絡すると返してくれないかな、一度に全部は無理だ」
「はい、ではそのように、それから・・・転生や死後の世界を認めていない宗教の国が大騒ぎになっています」
「そう・・・」
宗教絡みか・・・知らんがな!。
「ところで先生、陳主席とお知り合いなのですか?、先程も首席の事を猫(まお)ちゃんって・・・」
「あぁ・・・昔、少しね、全くの初対面ではないんだよ」
「そうですか、でも気をつけて下さいね、あまり親しくしていると先生の支持層・・・保守派の反中勢力から何を言われるか・・・」
「わかってるよ」
カチャ・・・
「私だ、つないでくれ、通訳や記録は不要だ」
「はい」
ツー
「勝(かっ)ちゃん生中継見てたよ!、えらい愉快な事になってんね、わろてもうたわ」
「うん・・・」
この日本各地の方言が混ざったような個性的な言葉を話すのは陳猫桃(ちぇんまおたお)、中華人民共和国の国家主席で・・・私の幼馴染だ。
「うん、うん・・・いや!、そこまでしなくてもいいよ、くれぐれも殺さないでね・・・じゃぁよろしく」
ガチャ・・・
「先生、時々不穏な内容のお話が聞こえて来たのですが・・・」
「あぁ、大丈夫だよ、異世界人に関して敵対的な言論は徹底的に弾圧してくれるそうだ、粛清するって言ってたけど流石にそこまでしなくていいと言っておいたから」
「・・・」
「何か聞きたそうだね」
「えぇ、やたらと親しそうなので気になって・・・それに普通に日本語で話していましたし」
「彼女は幼い頃日本に住んでいたんだよ、その時近所に住んでいた私とよく遊んでいた、まぁ、猫(まお)ちゃんが国家主席だと分かったのは私が総理に就任した後なのだけどね・・・どこで調べたのか分からないのだが私のスマホに直接電話があって・・・」
・・・あれは私が総理大臣に就任して2週間が過ぎた頃、公務を終えて公邸のプライベートスペースでテレビを見ていると突然私のスマホに1本の着信があった。
「はい・・・」
「やほー、うちやうち!」
しまった!、詐欺電話か。
「うちさん・・・ですか?」
「ちゃうねん!、だからうちやて言うてるやろ!、うちの声忘れたんかい薄情なやっちゃな、思い出すまでミサイル撃ち込んだろか!」
確かにこのエセ関西弁はどこかで聞いた事がある。
「え・・・まさか・・・猫(まお)ちゃん?」
「当たりや!、中華人民共和国国家主席の猫(まお)ちゃんやで!、あと少し思い出すの遅かったら日本海にミサイル落ちてた所や、もうボタンに指がかかっとったけぇな!、勝(かっ)ちゃん久しぶり!」
彼女と過ごしたのは小学校5年から中学2年までの4年間、妙に気が合っていつも遊んでいたのだが・・・、近所の中華料理店の娘だと思っていた、中学の頃は喧嘩が強くていつも釘バットを持ち歩いていたからヤンキー・チェンと呼ばれていたな・・・。
「え・・・国家主席?、だって中華料理店の・・・」
「あはは、実はうちのお父ちゃん人民解放軍の諜報部隊員だったんよ、だからあの店はスパイのアジトやな、まだあの場所に店あるし後任のスパイが絶賛活動中や!」
「・・・今私は日本の首相として聞いちゃいけないような情報を聞かされてる気がするんだけど・・・それで何で猫(まお)ちゃんが中国の国家主席やってるの?」
「あー、それな!、お父ちゃんが前任の主席を暗殺・・・いや説得して退いてもろてん、でも引き摺り降ろすのに思うたより時間かかってな、もうお父ちゃんも歳やからお前がやれ言われてん、えらい迷惑なこっちゃで!、気がついたら独裁者になってもうてたわ」
「いやそんな個人経営の会社引き継ぐみたいなノリで言われても・・・っていうかおじさんは元気?」
「あはは!、元気やで、元気過ぎてうちもえらい迷惑してんねん、それで今日電話したのは就任のお祝いもあるんやけどな、国民を弾圧し過ぎて今うちのとこ国際社会から孤立してるやん、だからちぃと助けて欲しいかなって」
「いやいや無理だよ、弾圧しなきゃいいじゃん」
「うちの国、日本と違て多民族で思想も宗教もごちゃごちゃやねん、上から睨み利かせて押さえつけとらんとすぐにテロや内戦で国が滅茶苦茶になるわ!、内乱起こされてうちが処刑されてもええんか?、うちもこんな事しとうないけどこんななった以上もうあとには引けんのや!」
「・・・ところでどうやって私の連絡先を知ったの?」
「ふふふ・・・知りたいかぁ?」
「いやいいです・・・」
「なんやつまらんなぁ・・・」
「・・・と、まぁ大体こんな感じの話をしたのだ」
「わぁ・・・それ私が聞いていい話じゃないですよね」
「できれば黙っていてほしい、新聞社や週刊誌に知られたら大変だ」
「そうでしょうね」
いや、豆柴くん、私が心配しているのは新聞社や週刊誌の方だ、私のスキャンダルが出そうになると星噛と薄刃の両家が動くだろう、週刊誌の記者が失踪したり編集社が謎の火事になったりするのは見たくない・・・。
「It's unusable・・・」
ガチャ・・・
やぁ、初めまして、私の名前はクリボッチ・ルーズソクス、アメリカ合衆国大統領をやっている。
今私の脳内は英語で思考しているのだが、謎の力が働いて君達には言葉が通じていると思う。
私は政府子飼いの組織に日本の首相暗殺を命じた、理由は日本に出現した宇宙船の技術や宇宙生物で得られる利権が欲しいからだ・・・今までの首相や閣僚は我々が弱みを握っているから扱い易かった、私が命じれば素直に言う事を聞くだろう、だがあの男は・・・新しい首相は何者なのだ!。
首相候補のリストにもこれまで全く名前が出て来なかった人物だ、当然我が国は賄賂で買収もしていないし弱みも握っていない、彼を暗殺すれば再び我が国にとって扱い易い人物が首相になるだろう・・・そう安易に考えていたのだが・・・。
組織の送り出した暗殺者が消息を絶った・・・。
実はあれはCIAが飼っている組織だ、構成員の腕も確かだと言われている。
まず日本に向かわせた暗殺者が行方不明となった、そいつにはGPS付きの腕輪が嵌められていて体内に埋め込まれたチップと対になっている、腕輪を破壊しても壊れる直前に信号が出るし、身体から一定の距離腕輪が離れても本部で状況が把握出来るようになっていた。
だが消えたのだ・・・まるで闇に溶け込んだように突然跡形も無く消えた。
次に組織の人間が一人、また一人と不審な死を遂げた、死体はどれも悲惨だった、大型の獣のようなものに身体を喰われていた。
僅かに残った死体の噛み傷は少なくとも虎の4倍程の大きさの鋭い牙を持った肉食獣・・・だが誰もその獣の姿を見ていないのだ。
被害に遭った者はビルの間の路地、飲食店のトイレの中、ホテルの密室、組織本部の地下・・・様々だが巨大な獣がいれば誰か気付く筈だ、だが目撃情報が全く無い。
報告によると組織の構成員のうち12人が犠牲になった、おかげで政府が大金を注ぎ込んで作った組織の内部は大混乱だ。
それに・・・組織の者は立場上「存在しない事」になっているから戸籍もなく、事件を報道されて身元を調べられたらまずい、だから公に捜査もできない・・・。
もうすぐ日本時間の13時、首相から何か重大発表があるようだ、これについても今までの首相なら事前に報告がある筈だった、だが忌々しい事に何も知らせが無い、一体何を公表しようというのか・・・。
私は同時通訳で会見の様子を見た。
「Oh my god・・・」
なんという事だ!、宇宙船はフェイクだと!、しかも宇宙人ではなくて異世界人・・・転移魔法・・・大規模破壊魔法・・・都市を更地に・・・。
何としてもあの男を我が合衆国に従わせねば、そして異世界の魔法を手に入れるのだ・・・。
「Call the Prime Minister of Japan!」
ざわざわ・・・
「何だろうな、突然重大発表があるって呼び出されたけど・・・」
ざわざわ・・・
「あれじゃね、私は宇宙人と会ったのだぁ!・・・みたいな?」
「あぁ、ありえるな」
「記者もそんなに集まってねぇな、本当に何を発表するんだか・・・」
「おい、入って来たぞ」
「首相と官房長官か」
ざわざわ・・・
ぺこり
「突然の記者会見にお集まり頂きありがとう、これより我が国に飛来した宇宙船について重大発表を行う」
「レーダーにも反応せず、日本の防衛システムを潜り抜けて飛来した宇宙船は偽物であり、残されていた地球外生命体は異世界人が転移により持ち込んだ物である」
「その異世界人についてだが、話を聞いたところ元々は日本に住んでいた女性で死後に異世界で生まれ変わったそうだ、彼女はすでに地球と異世界の間を何度も行き来している」
「彼女は前世の故郷である地球にもう一度戻りたいと願い、転移魔法を使って地球に訪れる計画を立てたが未知の病原菌や寄生虫を持ち込めば大惨事になる、悩んだ彼女は宇宙人の仕業と見せかけて地球に検査を依頼した」
「地球に害を与えないようにと願い実行した彼女の行動は結果的に我々人類を騙した事になる、その事を後悔していた彼女は私にコンタクトを取り正式に謝罪したいと言ってきた」
「総理大臣である私は謝罪を受け入れ、今後の異世界生物に関する研究の協力を依頼、契約を結んだ」
「先に持ち込んだ生物はすでに各国から研究チームが派遣され調査が進んでいる、迷惑をかけたお詫びに研究者を派遣した国に対し、謝罪と今後の友好の為に異世界産の品を贈る」
「・・・以上」
・・・
私の名前は騨志勝雄(だしかつお)50歳、この国の内閣総理大臣だ・・・。
今私は首相官邸にある記者会見場で世界に向けて重大な事項を発表したところだ。
予想通り、会場は沈黙に包まれた、詰めかけた各国の記者は様々な反応をしている、呆然とする者、私に憐れむような目を向ける者、笑いを堪える者・・・これが他人事ならまだ良かったのだが私は当事者だ、おそらく明日の朝刊の一面は再び私が華々しく飾るだろう、もうすでに胃が痛い・・・。
ざわざわ・・・
私の隣に居る官房長官が沈黙を破った。
「質問があれば挙手を・・・」
「総理!」
「はいどうぞ」
「頭は大丈夫でしょうか?」
日頃から私に辛辣な質問を投げかける京都府経済産業新聞の記者だ・・・確か・・・津野田三郎(つのださぶろう)と言ったか・・・相変わらず腹が立つ奴だな。
「大丈夫ですよ(ニコッ)」
「今総理が仰った内容は日本政府からの正式な発表と思って間違い無いのでしょうか」
「はい間違いありません(ニコッ)」
「・・・」
なぜ黙るのだ、いつもの切れ味鋭い質問はどうした、構えていた私がバカみたいではないか!。
「とても信じられません!、異世界人が存在するという証拠はあるのでしょうか」
「はい、・・・こちらは我が国にお詫びとして贈られた品です・・・出してくれるかな」
ささっ・・・
官房長官が震える手でトレイを机の上に出した、皆の注目が集まる。
私はトレイの上にかけてある布を外した。
「おぉ・・・」
「凄い・・・」
そうだろう、凄いだろう、私も見せてもらった時にはチベットスナギツネみたいな表情になったぞ・・・薔薇の花を模した形にカットされた恐ろしく巨大なダイヤの前で私は少しだけ胸を張った。
「これは異世界の技術で緻密なカットを施されています、こちらで解析したところ間違いなく本物のダイヤモンド原石一個から作られている事が分かりました、しかも今確認されている世界最大の物のおよそ3倍の大きさです、このダイヤと同じ大きさのルビー、そして異世界の生物を雌雄で1種類・・・現在我が国で研究を進めている研究員を派遣してくれた国に贈る予定です」
ざわざわ・・・
「それに・・・私も最初は信じられませんでした、しかし実際に異世界に連れて行かれ美しい街並を見せられたら信用しない訳にはいかない、どうしても信じられないと仰るのなら各国の代表団を異世界に転移させる事で真実だと証明する準備も進めています」
ざわざわ・・・
「はい!、総理!」
「どうぞ」
別の記者が手を挙げた、この娘はテレビ局だな・・・確か・・・新日本テレビだったか・・・。
「その異世界人は危険ではないのですか?」
「私は先日実際に会ったのですが友好的ですよ、全ての異世界人がそうだとは限らないですが少なくとも彼女は元々日本人でしたので言葉も通じますし考え方も我々に近い、今回の発表も自分の持ち込んだものを宇宙生物だと信じて研究している人達に悪い事をした、謝罪したい・・・と彼女が申し出て実現したものです」
ざわざわ・・・
「ただ・・・あまりにも非常識な事をして怒らせるとどうなるか分かりません、彼女は人間を別の場所に転移させ山の上に巨大な宇宙船を映し出せるほど魔法が得意だと聞いております、加えて彼女と同じ異世界人・・・向こうでは大魔導士と呼ばれている人物が存在するのですが、その者は大規模破壊魔法を使い、大きな都市を一瞬で更地にできるようです」
ざわざわ・・・
「つまり、異世界人は我々人類と同等の高度な文明を持ち、魔法という未知の武器まで持っている・・・と言えますね」
ざわざわ!・・・
更に会場のざわめきが大きくなったな、だがこれも想定内だ。
「謝罪をというのなら我々の前に出て来て直接すればいいのでは?」
「彼女はとても人見知りで気が弱いのです、私でさえこの場に立って記者さん達に詰め寄られたら恐ろしいし泣きそうになるのに・・・皆さんの前に姿を見せるのは無理だと私が判断しました」
バタン・・・
「やれやれ、ようやく会見が終わった・・・」
「先生、お疲れのところ申し訳ないのですがホットラインが3件同時に入っています」
官邸の執務室に戻ると秘書官の豆柴くんが笑顔で迎えてくれた。
「どこからだろうか?・・・想像はつくが・・・」
「えーと、アメリカ合衆国のクリボッチ・ルーズソクス大統領、中華人民共和国の陳猫桃(ちぇんまおたお)国家主席、それからロシア共和国のイワンノヴァカ・レッドヴルチョフ大統領からです」
「では先に猫(まお)ちゃんの方から・・・豆柴くん、中国に繋いでくれるかな」
「ダメです先生!、同盟国の合衆国大統領を放置して先に中国と話したら後で面倒な事になるので合衆国の方から先に対応して下さい」
「ぐっ・・・だが・・・あの大統領怖いし・・・」
「ダメです!」
そして大統領との電話会談が終わった・・・。
「ふぅ・・・疲れた、大統領は異世界人との会談を強く要求してきたよ、どうやら転移魔法にとても興味があるらしい」
「それは当然だと思います、人や物を魔法で転移できたら物流に革命が起こりますからね」
「・・・」
「中国とロシアの他にも話したいと言ってる国が20ヶ国程に増えてますけど、どうします・・・」
「後日私から連絡すると返してくれないかな、一度に全部は無理だ」
「はい、ではそのように、それから・・・転生や死後の世界を認めていない宗教の国が大騒ぎになっています」
「そう・・・」
宗教絡みか・・・知らんがな!。
「ところで先生、陳主席とお知り合いなのですか?、先程も首席の事を猫(まお)ちゃんって・・・」
「あぁ・・・昔、少しね、全くの初対面ではないんだよ」
「そうですか、でも気をつけて下さいね、あまり親しくしていると先生の支持層・・・保守派の反中勢力から何を言われるか・・・」
「わかってるよ」
カチャ・・・
「私だ、つないでくれ、通訳や記録は不要だ」
「はい」
ツー
「勝(かっ)ちゃん生中継見てたよ!、えらい愉快な事になってんね、わろてもうたわ」
「うん・・・」
この日本各地の方言が混ざったような個性的な言葉を話すのは陳猫桃(ちぇんまおたお)、中華人民共和国の国家主席で・・・私の幼馴染だ。
「うん、うん・・・いや!、そこまでしなくてもいいよ、くれぐれも殺さないでね・・・じゃぁよろしく」
ガチャ・・・
「先生、時々不穏な内容のお話が聞こえて来たのですが・・・」
「あぁ、大丈夫だよ、異世界人に関して敵対的な言論は徹底的に弾圧してくれるそうだ、粛清するって言ってたけど流石にそこまでしなくていいと言っておいたから」
「・・・」
「何か聞きたそうだね」
「えぇ、やたらと親しそうなので気になって・・・それに普通に日本語で話していましたし」
「彼女は幼い頃日本に住んでいたんだよ、その時近所に住んでいた私とよく遊んでいた、まぁ、猫(まお)ちゃんが国家主席だと分かったのは私が総理に就任した後なのだけどね・・・どこで調べたのか分からないのだが私のスマホに直接電話があって・・・」
・・・あれは私が総理大臣に就任して2週間が過ぎた頃、公務を終えて公邸のプライベートスペースでテレビを見ていると突然私のスマホに1本の着信があった。
「はい・・・」
「やほー、うちやうち!」
しまった!、詐欺電話か。
「うちさん・・・ですか?」
「ちゃうねん!、だからうちやて言うてるやろ!、うちの声忘れたんかい薄情なやっちゃな、思い出すまでミサイル撃ち込んだろか!」
確かにこのエセ関西弁はどこかで聞いた事がある。
「え・・・まさか・・・猫(まお)ちゃん?」
「当たりや!、中華人民共和国国家主席の猫(まお)ちゃんやで!、あと少し思い出すの遅かったら日本海にミサイル落ちてた所や、もうボタンに指がかかっとったけぇな!、勝(かっ)ちゃん久しぶり!」
彼女と過ごしたのは小学校5年から中学2年までの4年間、妙に気が合っていつも遊んでいたのだが・・・、近所の中華料理店の娘だと思っていた、中学の頃は喧嘩が強くていつも釘バットを持ち歩いていたからヤンキー・チェンと呼ばれていたな・・・。
「え・・・国家主席?、だって中華料理店の・・・」
「あはは、実はうちのお父ちゃん人民解放軍の諜報部隊員だったんよ、だからあの店はスパイのアジトやな、まだあの場所に店あるし後任のスパイが絶賛活動中や!」
「・・・今私は日本の首相として聞いちゃいけないような情報を聞かされてる気がするんだけど・・・それで何で猫(まお)ちゃんが中国の国家主席やってるの?」
「あー、それな!、お父ちゃんが前任の主席を暗殺・・・いや説得して退いてもろてん、でも引き摺り降ろすのに思うたより時間かかってな、もうお父ちゃんも歳やからお前がやれ言われてん、えらい迷惑なこっちゃで!、気がついたら独裁者になってもうてたわ」
「いやそんな個人経営の会社引き継ぐみたいなノリで言われても・・・っていうかおじさんは元気?」
「あはは!、元気やで、元気過ぎてうちもえらい迷惑してんねん、それで今日電話したのは就任のお祝いもあるんやけどな、国民を弾圧し過ぎて今うちのとこ国際社会から孤立してるやん、だからちぃと助けて欲しいかなって」
「いやいや無理だよ、弾圧しなきゃいいじゃん」
「うちの国、日本と違て多民族で思想も宗教もごちゃごちゃやねん、上から睨み利かせて押さえつけとらんとすぐにテロや内戦で国が滅茶苦茶になるわ!、内乱起こされてうちが処刑されてもええんか?、うちもこんな事しとうないけどこんななった以上もうあとには引けんのや!」
「・・・ところでどうやって私の連絡先を知ったの?」
「ふふふ・・・知りたいかぁ?」
「いやいいです・・・」
「なんやつまらんなぁ・・・」
「・・・と、まぁ大体こんな感じの話をしたのだ」
「わぁ・・・それ私が聞いていい話じゃないですよね」
「できれば黙っていてほしい、新聞社や週刊誌に知られたら大変だ」
「そうでしょうね」
いや、豆柴くん、私が心配しているのは新聞社や週刊誌の方だ、私のスキャンダルが出そうになると星噛と薄刃の両家が動くだろう、週刊誌の記者が失踪したり編集社が謎の火事になったりするのは見たくない・・・。
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やぁ、初めまして、私の名前はクリボッチ・ルーズソクス、アメリカ合衆国大統領をやっている。
今私の脳内は英語で思考しているのだが、謎の力が働いて君達には言葉が通じていると思う。
私は政府子飼いの組織に日本の首相暗殺を命じた、理由は日本に出現した宇宙船の技術や宇宙生物で得られる利権が欲しいからだ・・・今までの首相や閣僚は我々が弱みを握っているから扱い易かった、私が命じれば素直に言う事を聞くだろう、だがあの男は・・・新しい首相は何者なのだ!。
首相候補のリストにもこれまで全く名前が出て来なかった人物だ、当然我が国は賄賂で買収もしていないし弱みも握っていない、彼を暗殺すれば再び我が国にとって扱い易い人物が首相になるだろう・・・そう安易に考えていたのだが・・・。
組織の送り出した暗殺者が消息を絶った・・・。
実はあれはCIAが飼っている組織だ、構成員の腕も確かだと言われている。
まず日本に向かわせた暗殺者が行方不明となった、そいつにはGPS付きの腕輪が嵌められていて体内に埋め込まれたチップと対になっている、腕輪を破壊しても壊れる直前に信号が出るし、身体から一定の距離腕輪が離れても本部で状況が把握出来るようになっていた。
だが消えたのだ・・・まるで闇に溶け込んだように突然跡形も無く消えた。
次に組織の人間が一人、また一人と不審な死を遂げた、死体はどれも悲惨だった、大型の獣のようなものに身体を喰われていた。
僅かに残った死体の噛み傷は少なくとも虎の4倍程の大きさの鋭い牙を持った肉食獣・・・だが誰もその獣の姿を見ていないのだ。
被害に遭った者はビルの間の路地、飲食店のトイレの中、ホテルの密室、組織本部の地下・・・様々だが巨大な獣がいれば誰か気付く筈だ、だが目撃情報が全く無い。
報告によると組織の構成員のうち12人が犠牲になった、おかげで政府が大金を注ぎ込んで作った組織の内部は大混乱だ。
それに・・・組織の者は立場上「存在しない事」になっているから戸籍もなく、事件を報道されて身元を調べられたらまずい、だから公に捜査もできない・・・。
もうすぐ日本時間の13時、首相から何か重大発表があるようだ、これについても今までの首相なら事前に報告がある筈だった、だが忌々しい事に何も知らせが無い、一体何を公表しようというのか・・・。
私は同時通訳で会見の様子を見た。
「Oh my god・・・」
なんという事だ!、宇宙船はフェイクだと!、しかも宇宙人ではなくて異世界人・・・転移魔法・・・大規模破壊魔法・・・都市を更地に・・・。
何としてもあの男を我が合衆国に従わせねば、そして異世界の魔法を手に入れるのだ・・・。
「Call the Prime Minister of Japan!」
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