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Side - -06 - 6 - しーま -
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Side - -06 - 6 - しーま -
「親父、貿易大臣の件はどうなった?」
「お前が言っていた通り、裏で悪事を働いていた・・・、隠蔽が巧みでな、被害者はとてつもない額の口止め料を握らされていたよ、そのせいで誰も告発せず今まで気付かなかった」
「口止め料?・・・おかしくねぇか?、そんなの払うなら最初からやらなければいい、悪事を働く意味が無いじゃないか」
「うむ、私も妙だと思って調べたのだ、賄賂や違法取引・・・それらは確かに大臣の手によるものだが、隠蔽しようとしている人間が同じ家に居るようだ」
「ボッチ家の子息の話だと有能な執事が居るそうだ、そいつかな?」
「そうかもしれん、どちらにしても次に行う査察で分かるだろう」
「・・・だが気付かなかったのは王家の責任にもなるよな」
「あぁ、違法取引の中には人身売買もあった、他国の商会にも口止めの為に多額の賄賂が流れている、この件が明らかになれば同盟国との信頼関係にもヒビが入るだろう・・・」
「あの家を潰さないと収まらないくらいにか?」
「そうだな、それに私も責任を取らなければならないな・・・、王女殿下の件はどうなった?」
「インフィーか、彼女はどうやらノルド・・・アーノルドが好きなようだ・・・」
「お前が彼女と結婚しても良いというならラングレーに婿に出してローゼリアはジョーの奴に継がせようと思っていたのだが」
「大事な友人だが恋愛感情は今のところ全く無い・・・結婚するとなるとお互い気が強いから主導権を取り合って衝突するだろう、国の為になるのならその辺は妥協して結婚しても良いが・・・」
「そうか・・・分かった、私としてもお前に気の進まない結婚を無理強いするつもりはないし、向こうの国王からはもし2人の相性が良ければどうだろうって話だったからな」
「・・・」
「・・・少し予定より早いが私は王位を退く、お前は即位の準備をしておけ」
「待て親父!、まだ心の準備が出来てねぇ!」
「安心しろ、私も先王・・・お前の爺さんが突然死した時には全く出来ていなかったぞ」
「あぁ・・・飯を喉に詰まらせたんだっけか」
「まぁ・・・そういう事になってるな」
「・・・違うのか?」
「聞きたいか?」
「・・・いやいい」
「王位は退くがお前だけに執務はやらせないから安心しろ、しばらくは今まで通りだ、それに身体が元気なうちに母さんと一緒に大陸一周旅行にも行きたいと話していてな、王位から退けば気軽にあちこち旅に行ける、母さんは旅行好きなのに今まで我慢させてたから喜ぶだろう」
「分かったよ・・・だがもう一つ問題がある、ノルドがボッチ家の令嬢に惚れたようだ、あれが一目惚れっていうんだろうな、この前から奴の挙動がおかしい」
「何だと・・・まずいな、その令嬢と一緒になったら王女殿下はどうするのだ、留学という名目だが婿探しの為でもあるんだぞ、一人でラングレー王国に帰らせるのか?」
「俺にどうしろと?」
「2人ともお前の友人だろう」
「そうだが・・・、マリアンヌ・ボッチと引き離してインフィーとくっ付ければ良いのか?」
「・・・任せる、他に誰かそこそこの身分があってお前が信用できると思う男が居ればそいつを紹介してやればいい」
「無責任だなおい!」
私の名前はジョーイフール・グァストォ、ネッコォ家に仕える執事でございます。
この家には祖父の代から仕えており、私も物心ついた頃より父親のジョナサーンから厳しく指導を受け、この国の大貴族に仕える誇りを持てと言われて育ちました。
しかし、先代の旦那様・・・シャーム・ネッコォ様がお亡くなりになられてからこの家は没落してしまいました・・・いえ、正確にはお嬢様の手腕により辛うじてかつての威光を保っている状態なのです・・・。
先代の旦那様がご存命の頃、この家は私の目から見ても暖かく幸せに溢れておりました。
今の旦那様・・・トゥーラ様とミーケ様は仲が良く、2人の子供・・・イッヌ様とシーマ様を大変可愛がっておられました、本当に幸せそうなご家族だったのです。
ただ・・・後継のトゥーラ様は甘やかされて育った為か、わがままな性格で金使いが荒かったのです、そうは言ってもこのネッコォ家はローゼリア王国の大貴族、いくら無駄使いをしようとも全ての資産を使い果たす事など不可能です。
先代のシャーム様もトゥーラ様の職務に対する才能の無さ、そして破滅的な性格をを早くから見抜かれており、早々に見切りを付け優秀であったシーマ様に家を任せようとされておりました。
シャーム様がまだ幼いシーマ様を執務室に呼び出し、繰り返し話された内容は今でも覚えております。
「シーマ、私の可愛い孫娘よ、お前の両親は典型的な貴族だ、弱者から金を吸い上げ自分達は贅沢三昧・・・、だがそれが許されるのは貴族としての責務を全うした者だけだ、お前の両親、そして不幸にも両親に似てしまったお前の兄は貴族の義務を果たそうとしない、私も教育しようとしたが・・・はっきり言えば馬鹿で能力が足りぬから家を継がせるのは無理だと判断した」
「私が生きているうちはいいが、居なくなった後の事が心配で堪らない、いいか、シーマよ、優秀なお前がこの家を継ぎ守るのだ、これから先、両親や兄の散財が目に余るようであれば私が責任を持って処分する、だからお前は家を継ぐ為にしっかりと学びなさい」
そう仰られていたシャーム様が隣国での視察中、落石事故に巻き込まれて亡くなられたのが今から6年前・・・シーマ様が10歳になられた時でした。
まだ何も準備が出来ていなかったのです・・・
シャーム様はシーマ様が15歳になられた時、当主の座を譲るお考えでした、もともと働く事がお嫌いであったトゥーラ様やミーケ様・・・そしてイッヌ様も面倒な当主の座には興味が無い、自分達が遊ぶ金さえあればシーマ様が当主になっても何も文句は言わないだろう、逆に喜ぶのではないか・・・シャーム様は私にそう話されておりました。
ですがシーマ様は幼な過ぎたのです。
まだ幼い娘に家を任せる訳にはいかない、父親なのだからなんとかしなければ・・・そう考えたのかトゥーラ様は本格的に家の運営、そして世襲制であった貿易大臣の仕事に就かれました。
本来、大臣たる能力が無いと判明した時、前任者の判断でその座を国に返さなければいけないのに・・・能力が無いのに責任のある当主の・・・そして大臣の座に就いてしまった・・・これがネッコォ家の不幸の始まりでした。
大臣職への就任に際して、荷が重過ぎるから国に返した方が良いと言うお嬢様と、このまま乗り切れば家は安泰だと主張するトゥーラ様、ミーケ様、イッヌ様に分かれ、激しい口論が続けられました。
最終的には今まで一度も子供に対して手を上げた事が無いトゥーラ様がシーマ様を叩いた事でようやくシーマ様が折れた形になりました。
もちろん就任後は国から何度もネッコォ家に対し大臣として適任であるか査察が行われました、しかしその度にシーマ様の手腕で乗り切り、正式に大臣職の引き継ぎが認められてしまったのです。
身体が弱く、城にはほとんど顔を出さないがそつなく仕事をこなす貿易大臣・・・表向きの評価はそのようなものでした、しかし実情は仕事の大半をシーマ様がこなし、会議や交渉はトゥーラ様が出向くという形が自然と定着しました。
最初は上手くいっていたのです・・・しかしまだ幼いシーマ様には荷が重過ぎました。
少しずつ疲労が蓄積し、誤った判断をされる事も増えました、そんな娘の姿を見ていられず口を出すトゥーラ様、更に増える不祥事、壊れる信頼、関係各所から噴き出す不満・・・。
出してしまった損害や賠償金はネッコォ家の資産を切り売りして補填し口止めを行いました、そうしているうちに潤沢だった資産が次第に枯渇してしまったのです。
再び家族の間で口論が始まりました、限界だから職を返上するべきだと主張するシーマ様と、そんな事はできないと反発する3人に分かれて・・・。
結局その時もシーマ様が折れる事で場が収まりました、しかし徐々にトゥーラ様の介入が増えて行き、遂に賄賂や詐欺などの違法行為に手を染め始めます。
その頃には莫大な資産は底をつき、今までの贅沢な暮らしを捨てられなかったシーマ様以外の3人は次第におかしくなっていったのです。
「ジョーイさん、今後一切、この家の執務と意思決定に関わることを禁じます」
「お嬢様・・・今なんと?・・・」
旦那様・・・トゥーラ様が下級貴族を騙し、破産させた事を知ったシーマ様が私に言った言葉です。
「我が家は犯罪に手を染めてしまいました、いずれこの事が明るみになり、ネッコォ家は王家から罰せられるでしょう、あなた達使用人は何も知らなかった、当主から命令された通りに動いていたと言えば罪には問われません、あなたもお父様の悪事には気付いていなかったのでしょう?・・・全ての罪は当主であるお父様とその補佐の私が償います」
「・・・」
「破産した貴族家には私が出向き謝罪と口止めをします、それから・・・家を再興できるだけの賠償金・・・いくら握らせたら黙っていてもらえるかな・・・あぅ・・・お腹痛い・・・」
「お嬢様・・・確かに詐欺の件は私の目を盗んで旦那様がやった事、私が知ったのは被害にあった貴族家の当主が我が家に押しかけて来たからでございます・・・しかしお嬢様も何も知らなかったではないですか」
「家族の散財を止められなかった・・・お父様の行動も止められなかった・・・それは私の罪なのです、お金さえ与えておけばお父様やお母様は昔のように笑ってくれる、兄さんは優しく抱きしめてくれる、そう思って・・・家族との幸せな暮らしを捨てられなかった、薄々気付いていたのに嫌われるのが怖くて強く言えなかった、その弱さが他の家族の幸せを奪ってしまった・・・だから罰せられる時には私も一緒なの」
「お嬢様、王家に報告いたしましょう」
「・・・いいえ、私は大好きな家族を裏切る勇気がありません、だから私に出来る精一杯の事をして・・・最後はお父様と一緒に罪を償います、近い将来・・・長く続いたネッコォ家は終わってしまうでしょう、でもあなた達使用人は私の我儘に付き合う必要はありません、他貴族家への紹介状を書いて明日から少しずつ人を減らします」
その日を境にお嬢様は体調を崩し、寝込まれる事が多くなりました、そしてトゥーラ様がお仕事の大半を行い、夜になるとトゥーラ様の目を盗んでお嬢様が修正をする・・・そんな日々が2年ほど続いたのです。
「・・・なんて事!・・・貿易の利権を盾に婚約を迫るなんて・・・」
「お嬢様!」
イッヌ様とボッチ家ご令嬢の婚約が決まった日、そしてそれが婚約準備金目当てだと知った時、お嬢様は遂に倒れてしまわれたのです。
「親父、貿易大臣の件はどうなった?」
「お前が言っていた通り、裏で悪事を働いていた・・・、隠蔽が巧みでな、被害者はとてつもない額の口止め料を握らされていたよ、そのせいで誰も告発せず今まで気付かなかった」
「口止め料?・・・おかしくねぇか?、そんなの払うなら最初からやらなければいい、悪事を働く意味が無いじゃないか」
「うむ、私も妙だと思って調べたのだ、賄賂や違法取引・・・それらは確かに大臣の手によるものだが、隠蔽しようとしている人間が同じ家に居るようだ」
「ボッチ家の子息の話だと有能な執事が居るそうだ、そいつかな?」
「そうかもしれん、どちらにしても次に行う査察で分かるだろう」
「・・・だが気付かなかったのは王家の責任にもなるよな」
「あぁ、違法取引の中には人身売買もあった、他国の商会にも口止めの為に多額の賄賂が流れている、この件が明らかになれば同盟国との信頼関係にもヒビが入るだろう・・・」
「あの家を潰さないと収まらないくらいにか?」
「そうだな、それに私も責任を取らなければならないな・・・、王女殿下の件はどうなった?」
「インフィーか、彼女はどうやらノルド・・・アーノルドが好きなようだ・・・」
「お前が彼女と結婚しても良いというならラングレーに婿に出してローゼリアはジョーの奴に継がせようと思っていたのだが」
「大事な友人だが恋愛感情は今のところ全く無い・・・結婚するとなるとお互い気が強いから主導権を取り合って衝突するだろう、国の為になるのならその辺は妥協して結婚しても良いが・・・」
「そうか・・・分かった、私としてもお前に気の進まない結婚を無理強いするつもりはないし、向こうの国王からはもし2人の相性が良ければどうだろうって話だったからな」
「・・・」
「・・・少し予定より早いが私は王位を退く、お前は即位の準備をしておけ」
「待て親父!、まだ心の準備が出来てねぇ!」
「安心しろ、私も先王・・・お前の爺さんが突然死した時には全く出来ていなかったぞ」
「あぁ・・・飯を喉に詰まらせたんだっけか」
「まぁ・・・そういう事になってるな」
「・・・違うのか?」
「聞きたいか?」
「・・・いやいい」
「王位は退くがお前だけに執務はやらせないから安心しろ、しばらくは今まで通りだ、それに身体が元気なうちに母さんと一緒に大陸一周旅行にも行きたいと話していてな、王位から退けば気軽にあちこち旅に行ける、母さんは旅行好きなのに今まで我慢させてたから喜ぶだろう」
「分かったよ・・・だがもう一つ問題がある、ノルドがボッチ家の令嬢に惚れたようだ、あれが一目惚れっていうんだろうな、この前から奴の挙動がおかしい」
「何だと・・・まずいな、その令嬢と一緒になったら王女殿下はどうするのだ、留学という名目だが婿探しの為でもあるんだぞ、一人でラングレー王国に帰らせるのか?」
「俺にどうしろと?」
「2人ともお前の友人だろう」
「そうだが・・・、マリアンヌ・ボッチと引き離してインフィーとくっ付ければ良いのか?」
「・・・任せる、他に誰かそこそこの身分があってお前が信用できると思う男が居ればそいつを紹介してやればいい」
「無責任だなおい!」
私の名前はジョーイフール・グァストォ、ネッコォ家に仕える執事でございます。
この家には祖父の代から仕えており、私も物心ついた頃より父親のジョナサーンから厳しく指導を受け、この国の大貴族に仕える誇りを持てと言われて育ちました。
しかし、先代の旦那様・・・シャーム・ネッコォ様がお亡くなりになられてからこの家は没落してしまいました・・・いえ、正確にはお嬢様の手腕により辛うじてかつての威光を保っている状態なのです・・・。
先代の旦那様がご存命の頃、この家は私の目から見ても暖かく幸せに溢れておりました。
今の旦那様・・・トゥーラ様とミーケ様は仲が良く、2人の子供・・・イッヌ様とシーマ様を大変可愛がっておられました、本当に幸せそうなご家族だったのです。
ただ・・・後継のトゥーラ様は甘やかされて育った為か、わがままな性格で金使いが荒かったのです、そうは言ってもこのネッコォ家はローゼリア王国の大貴族、いくら無駄使いをしようとも全ての資産を使い果たす事など不可能です。
先代のシャーム様もトゥーラ様の職務に対する才能の無さ、そして破滅的な性格をを早くから見抜かれており、早々に見切りを付け優秀であったシーマ様に家を任せようとされておりました。
シャーム様がまだ幼いシーマ様を執務室に呼び出し、繰り返し話された内容は今でも覚えております。
「シーマ、私の可愛い孫娘よ、お前の両親は典型的な貴族だ、弱者から金を吸い上げ自分達は贅沢三昧・・・、だがそれが許されるのは貴族としての責務を全うした者だけだ、お前の両親、そして不幸にも両親に似てしまったお前の兄は貴族の義務を果たそうとしない、私も教育しようとしたが・・・はっきり言えば馬鹿で能力が足りぬから家を継がせるのは無理だと判断した」
「私が生きているうちはいいが、居なくなった後の事が心配で堪らない、いいか、シーマよ、優秀なお前がこの家を継ぎ守るのだ、これから先、両親や兄の散財が目に余るようであれば私が責任を持って処分する、だからお前は家を継ぐ為にしっかりと学びなさい」
そう仰られていたシャーム様が隣国での視察中、落石事故に巻き込まれて亡くなられたのが今から6年前・・・シーマ様が10歳になられた時でした。
まだ何も準備が出来ていなかったのです・・・
シャーム様はシーマ様が15歳になられた時、当主の座を譲るお考えでした、もともと働く事がお嫌いであったトゥーラ様やミーケ様・・・そしてイッヌ様も面倒な当主の座には興味が無い、自分達が遊ぶ金さえあればシーマ様が当主になっても何も文句は言わないだろう、逆に喜ぶのではないか・・・シャーム様は私にそう話されておりました。
ですがシーマ様は幼な過ぎたのです。
まだ幼い娘に家を任せる訳にはいかない、父親なのだからなんとかしなければ・・・そう考えたのかトゥーラ様は本格的に家の運営、そして世襲制であった貿易大臣の仕事に就かれました。
本来、大臣たる能力が無いと判明した時、前任者の判断でその座を国に返さなければいけないのに・・・能力が無いのに責任のある当主の・・・そして大臣の座に就いてしまった・・・これがネッコォ家の不幸の始まりでした。
大臣職への就任に際して、荷が重過ぎるから国に返した方が良いと言うお嬢様と、このまま乗り切れば家は安泰だと主張するトゥーラ様、ミーケ様、イッヌ様に分かれ、激しい口論が続けられました。
最終的には今まで一度も子供に対して手を上げた事が無いトゥーラ様がシーマ様を叩いた事でようやくシーマ様が折れた形になりました。
もちろん就任後は国から何度もネッコォ家に対し大臣として適任であるか査察が行われました、しかしその度にシーマ様の手腕で乗り切り、正式に大臣職の引き継ぎが認められてしまったのです。
身体が弱く、城にはほとんど顔を出さないがそつなく仕事をこなす貿易大臣・・・表向きの評価はそのようなものでした、しかし実情は仕事の大半をシーマ様がこなし、会議や交渉はトゥーラ様が出向くという形が自然と定着しました。
最初は上手くいっていたのです・・・しかしまだ幼いシーマ様には荷が重過ぎました。
少しずつ疲労が蓄積し、誤った判断をされる事も増えました、そんな娘の姿を見ていられず口を出すトゥーラ様、更に増える不祥事、壊れる信頼、関係各所から噴き出す不満・・・。
出してしまった損害や賠償金はネッコォ家の資産を切り売りして補填し口止めを行いました、そうしているうちに潤沢だった資産が次第に枯渇してしまったのです。
再び家族の間で口論が始まりました、限界だから職を返上するべきだと主張するシーマ様と、そんな事はできないと反発する3人に分かれて・・・。
結局その時もシーマ様が折れる事で場が収まりました、しかし徐々にトゥーラ様の介入が増えて行き、遂に賄賂や詐欺などの違法行為に手を染め始めます。
その頃には莫大な資産は底をつき、今までの贅沢な暮らしを捨てられなかったシーマ様以外の3人は次第におかしくなっていったのです。
「ジョーイさん、今後一切、この家の執務と意思決定に関わることを禁じます」
「お嬢様・・・今なんと?・・・」
旦那様・・・トゥーラ様が下級貴族を騙し、破産させた事を知ったシーマ様が私に言った言葉です。
「我が家は犯罪に手を染めてしまいました、いずれこの事が明るみになり、ネッコォ家は王家から罰せられるでしょう、あなた達使用人は何も知らなかった、当主から命令された通りに動いていたと言えば罪には問われません、あなたもお父様の悪事には気付いていなかったのでしょう?・・・全ての罪は当主であるお父様とその補佐の私が償います」
「・・・」
「破産した貴族家には私が出向き謝罪と口止めをします、それから・・・家を再興できるだけの賠償金・・・いくら握らせたら黙っていてもらえるかな・・・あぅ・・・お腹痛い・・・」
「お嬢様・・・確かに詐欺の件は私の目を盗んで旦那様がやった事、私が知ったのは被害にあった貴族家の当主が我が家に押しかけて来たからでございます・・・しかしお嬢様も何も知らなかったではないですか」
「家族の散財を止められなかった・・・お父様の行動も止められなかった・・・それは私の罪なのです、お金さえ与えておけばお父様やお母様は昔のように笑ってくれる、兄さんは優しく抱きしめてくれる、そう思って・・・家族との幸せな暮らしを捨てられなかった、薄々気付いていたのに嫌われるのが怖くて強く言えなかった、その弱さが他の家族の幸せを奪ってしまった・・・だから罰せられる時には私も一緒なの」
「お嬢様、王家に報告いたしましょう」
「・・・いいえ、私は大好きな家族を裏切る勇気がありません、だから私に出来る精一杯の事をして・・・最後はお父様と一緒に罪を償います、近い将来・・・長く続いたネッコォ家は終わってしまうでしょう、でもあなた達使用人は私の我儘に付き合う必要はありません、他貴族家への紹介状を書いて明日から少しずつ人を減らします」
その日を境にお嬢様は体調を崩し、寝込まれる事が多くなりました、そしてトゥーラ様がお仕事の大半を行い、夜になるとトゥーラ様の目を盗んでお嬢様が修正をする・・・そんな日々が2年ほど続いたのです。
「・・・なんて事!・・・貿易の利権を盾に婚約を迫るなんて・・・」
「お嬢様!」
イッヌ様とボッチ家ご令嬢の婚約が決まった日、そしてそれが婚約準備金目当てだと知った時、お嬢様は遂に倒れてしまわれたのです。
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