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Side - 15 - 71 - なかみはざんねんなのだ -
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Side - 15 - 71 - なかみはざんねんなのだ -
「さてと・・・ここで最後だ、可愛い部屋だな」
「この家のお嬢様の部屋だな、3日前に処刑されたらしい」
「やめて!、それは私の宝物なの!、お願い、持って行かないで!」
「この箱は手紙か、それから・・・宝箱?・・・って書いた紙が貼ってある、まだ子供だからおもちゃの箱だな、大した物は入ってないか」
「あぁ、ドレスや高価そうな装飾品は先に全部回収してる、今あるのは残り物・・・安物ばかりだと思うぞ、金になるようなものは国が売り払って被害者や遺族への賠償金、それ以外は中を確認して焼却する・・・全部箱に詰めて持ち出せ」
「うぅ・・・いやだぁ・・・、みんな無くなっちゃう!、コナンザ様からのお手紙、コナンザ様に初めてお会いした時にもらったハンカチ、お出かけの時に一緒に集めた木の実・・・嫌だぁ!、嫌だよ!、盗らないで!」
ガシャン!・・
「何か落ちたぞ、壊すなよ」
「俺じゃないぞ、あの机の上の鏡が倒れたんだろう、何だこの人形、ふふっ・・・かわいいな」
「それは・・・お義母様にもらったリゼぐるみ・・・リゼお義姉様の姿をしたお人形・・・触らないで!」
「持って行かないのか?」
「あぁ、手作りみたいだし、大事にしていたようだ、この娘の部屋が空っぽになるのも可哀想な気がしてな、まぁ、次の住人が見つけて捨てるならそれでいいし、もしかしたら大切に持っていてくれるかもしれないからな」
「そうか、それもそうだな・・・さて、これで全部だ、帰るぞ」
バタン・・・
「あぁ・・・私の宝物・・・コナンザ様との思い出、みんな持って行かれちゃったぁ・・・ひっく・・・ぐすっ・・・いやだ、諦めたくない、でもどうすれば・・・」
私の名前はハロキティ・リラックーマァ、罪人として処刑され、ゴーストになってから3日が経ちました。
私は処刑の後、貴族用の牢獄から抜け出して、お家に帰りました、行く所も無いし、私のお部屋にはコナンザ様との思い出が沢山あるの、だからそれに囲まれて休みたい・・・身体が無いから疲れたり、眠くなったりはしないけれど、あれから・・・とても、・・・とても疲れたの・・・だから少し休みたい・・・。
でも、一昨日からお家に大勢の人がやって来て、私達家族のお洋服や宝石、金貨を沢山運び出しています。
私のお部屋にあるドレスや宝石も持って行かれました、幸いコナンザ様にもらったお手紙やハンカチはそのままだったので安心していたのですが・・・今日になって全ての物が運び出されてしまったのです・・・このお人形を除いて・・・。
「このリゼぐるみ、魔力で操れないかな、私の姿は見えないからお人形を使ってシェルダンの・・・お義父様かお義母様に伝える事ができたら」
「そいやっ!・・・んぐぐ・・・う・・・動いたぁ!、・・・うまく歩け・・・せいっ!・・・ダメかぁ・・・汚れるけど這って行こう」
ズズ・・・ズズズ・・・
「うぅ・・・もう少し・・・もう少しでコナンザ様のお家・・・早くしなくちゃ・・・全部燃やされちゃうの!、嫌だ、そんなの嫌だ!」
ズッ・・・ズル・・・ズズズ・・・
ズズッ・・・
とてとて・・・
「いいお天気ね・・・、最近運動不足だからお散歩するにはちょうどいいな・・・あら、こんな所に私のリゼぐるみ、何でお外に?、・・・え・・・どうしたの!、ボロボロになってる!、誰がこんな事を」
「・・・」
「どの子だろう・・・靴を脱がせて・・・足の裏に通し番号を書いてあるのよねー、・・・あれ?・・・153番・・・嘘・・・キティちゃんにあげた子だ・・・どうしてうちに?」
「・・・」
「・・・」
ピクッ!・・・ビクン!・・・
「ひっ!」
ピク・・・ピクピクッ・・・
「ひゃぁぁぁぁ!、う・・・動いたぁぁぁ!」
ガタン!、ドタドタ・・・バタン!ドサッ!・・・ずしゃぁ・・・
「あぅ・・・お顔からこけちゃった・・・ぐすっ・・・お膝も擦りむいちゃった、痛いよぉ・・・怖いよぉ・・・パパ助けて・・・ひっく・・・うわぁぁん!」
「お・・・奥様ぁ?・・・大丈夫ですか!、一体何が?」
「えぐえぐ・・・あぁぁぁぁ・・・怖いの、・・・お人形が勝手に動いて・・・キティちゃんがぁ・・・」
ざわざわ・・・
「おい、騒がしいな、どうしたんだ・・・わぁぁ!、奥様!、お顔!、それに鼻血が・・・すぐに医者を・・・おーい、大変だぁ!、奥様が!」
「ぐすっ・・・」
「大丈夫ですか奥様・・・」
「あぅ・・・いひゃいの・・・うぅ・・・」
「もうすぐ医者が来ますので・・・」
「ひゃい・・・」
「では、メイドにお水を持って来させます・・・」
「うん・・・ひっく・・・」
バタン・・・
「奥様の様子はどうだ?」
「応急手当ては終わりました、膝と額に擦り傷、それから酷く怯えて泣いておられますが・・・、奥様ってあんな子供みたいに泣くんですね」
「あぁ、お前はまだここに来て日が浅いから知らないのか・・・、奥様は見た目は恐ろしい・・・いや冷たい感じの美女だが中身は残念なのだ、普段は気を付けて淑女らしく振舞われているが気を抜くと幼い子供みたいな言動をされる、それが可愛らしい、味わい深いと言って使用人の間では人気なのだが・・・まぁ人は見た目によらないって事だよ」
「意外ですね・・・、もっと恐ろしい・・・失敗した使用人を鞭で打つような方かと思っていました」
「まぁ、あの外見であんな性格だとは思わないだろう、そのおかげで他の貴族家への威嚇にはなってるしな、旦那様も最初は他家に対して誤解を解こうとしていたらしいが諦めたようだ、今は冷酷で恐ろしい奥方様っていう噂を否定していない」
「・・・それでどうしましょう」
「医者は呼んだか?、そうか・・・旦那様にも知らせておいた方が良さそうだな」
「うぅ・・・使用人達に恥ずかしいところ見られちゃったぁ・・・メガネも割れたし・・・、ぐすっ・・・パパぁ、・・・ノルド様ぁ・・・早く帰って来て・・・私を慰めて・・・」
ギィィィィ・・・
ズ・・・
ズズッ・・・
ズズズズ・・・
「ひっ!」
ズズッ・・・ビクッ・・・ビクン!・・・
「ひいっ!・・・ひぅ・・・あ・・・あぁ・・・」
ピョン・・・ぼふっ!
「ひぃぃぃ・・・」
ビクッ!
「い・・・いやぁぁぁ・・・」
ぼすっ・・・
「・・・あぅ」
ぶるっ・・・
しょわわわわぁ・・・
ほかほかぁ・・・
ぽたぽた・・・
「えっぐ・・・うっく・・・ぐすっ・・・うあぁぁ・・・」
コンコン・・・
「奥様ぁ、一階にお医者様が・・・わぁぁぁぁ、奥様ぁ!」
「あぅ・・・恥ずかしいの・・・見ないでぇ・・・うわぁぁん」
「おーい、メイドを呼んでくれ!、それから着替えと、入浴の準備を!、医者には少し待ってもらえ!」
「あぅ・・・ひっく・・・あれ・・・お人形・・・どこ行ったの・・・やだ・・・もうやだ・・・2児の母なのにお漏らしなんて・・・ぐすっ・・・」
あぁ・・・お義母様ごめんなさい!・・・まだお人形うまく動かせないよぉ・・・力加減間違えてお義母様のお顔に飛び付いちゃった・・・。
そうだよね、怖いよね、お人形が這って飛びかかって来たら・・・うん、お漏らししても仕方ないよ・・・私だって漏らすもん。
おっとダメだ、早くお義母様に伝えないと・・・お義父様に頼んで持って行かれた私の宝物を取り返すの、早くしないと燃やされちゃうの・・・、でもこれ以上怖がらせるのは・・・あぁ・・・どうしよう!。
今私は弾き飛ばされてソファの裏・・・ベッドまで這って行って・・・よし、気付かれずにベッドの下までいけたの・・・、仕方ないかぁ、お義父様が帰って来られるまで待とう。
コンコン・・・バタン!
「マリたん!、マリアンヌ!、どうしたんだ!」
「あぅ・・・ぐすっ」
「遅くなってすまない!、連絡があってすぐ帰ろうと思ったのだが陛下の話が長くてな、しばき倒して途中で帰って来たぞ」
「ぐす・・・ひっく・・・パパぁ・・・怖かったの・・・お人形が・・・キティちゃんの呪いがぁ・・・わーん!」
「何を言ってるのか分からんが、・・・ハロキティちゃんがどうしたのだ?」
「・・・えとね・・・キティちゃんにあげた筈のお人形が・・・這ってきて・・・私のお顔に飛び付いてきたの・・・怖かったの・・・お漏らしまで・・・うぅ・・・」
「なるほど分からん・・・」
もぞっ・・・
「ん、マリたんの後ろの布団・・・動かなかったか?」
「へ?・・・」
もぞっ・・・ばさっ・・・キシャァァァ!
「ひぃぃぃぃ!」
「わひゃぁぁぁ!」
ぴょこ・・・ぴょこ・・・ズズズズ・・・
「何だ・・・人形が勝手に動いて・・・」
「あぁぁぁ!、パパぁ・・・居たの!・・・あれが這ってきて・・・怖いよぉ・・・嫌だぁ・・・」
ズズズッ・・・よじよじ・・・しゅたっ!
「待て、机の上に立った・・・ペンが浮いているぞ・・・何か書いている・・・」
かきかき・・・
(お義父様、お義母様、驚かせてごめんなさい、私、ハロキティです)
「なん・・・だと」
さらさら・・・
(私が犯した罪は何度謝っても許してもらえないと覚悟しています、でも一つだけお願いがあるのです)
「お願い?」
(今日お家に大勢人が来て、私のお部屋の中にある物、私とコナンザ様の思い出の品を全部持って行かれてしまいました、あれは大切な私の宝物なのです、急がないと燃やされちゃう)
「・・・」
(お義父様、お願いです、燃やされる前に取り返して、せめてコナンザ様からのお手紙と宝箱だけでも!)
「・・・」
(取り返してもらえたら、私はそれを持ってここから消えます、本当にごめんなさい、でもコナンザ様との思い出の品だけは持って行きたいのです)
「・・・分かった、今から城に行って取り返して来る、キティちゃん?、今ここに居るのだね」
(はい、何故かゴーストになってしまったようなのです、私が処刑されて死んだ後、お義父様が来て私の死体を抱えて泣いておられたのも天井から見ておりました)
「・・・すまん、聞きたい事は沢山あるが先にキティちゃんの宝物を取り返してからだな、待っててくれ、・・・マリたん、もう大丈夫だね、悪いが今から城まで行ってくる」
「うん・・・もう大丈夫・・・」
(お願いします)
バタン!
「キティちゃん?・・・」
(はい、お義母様、今まで騙していて本当にごめんなさい)
「話はパパ・・・旦那様から聞いてるよ、コナンきゅん・・・コナンザの事を思って・・・傷付けたくなかったからあんな事をしたんだよね、こちらこそ助けられなくてごめんなさい」
(もういいのです、私は死んでしまいました、コナンザ様の幸せを祈っています)
「・・・うぅ・・・キティちゃん・・・どうしてこんな事に・・・、家族になってみんな一緒に楽しく暮らせると思っていたのに・・・」
(コナンザ様は、どうされていますか?)
「あの子は、お部屋に閉じ籠ってずっと泣いていたからリゼたんが旅行に連れ出してるの」
(そうですか、どうかお元気でと伝えて下さい)
「・・・」
コンコン・・・バタン・・・
「戻ったぞ、キティちゃん、いるのかい?」
ぴょこぴょこ・・・
「そうか・・・これでいいのかな?、お手紙の箱と、宝箱って書いてある木箱」
かきかき・・・
(はい、それで間違い無いです、本当にありがとうございます)
「よかった・・・実はもう少しで燃やされてしまうところだったのだ」
(では、お義父様、お義母様、驚かせてごめんなさい、そしてありがとうございました、さようなら)
「待て!、キティちゃん、さようならって、どこか行くあてはあるのか?」
(いえ、私はゴーストですので食べ物も住む場所も必要ありません、どこかの空き家に住み着いて、この宝物を抱えて消えるまで過ごそうかと)
「ここに住めばいい、・・・マリたんも、いいだろ?」
「キティちゃんさえ良ければこの屋敷に居て欲しいな、もっとお話もしたいし、お部屋も用意しましょう」
(でも、ここに居て迷惑をかけるわけにも行きませんし、コナンザ様が他の女性と結婚してイチャイチャ・・・いえ、幸せに過ごしているのを見るのは辛いのです)
「そうか・・・だが・・・辛いのならコナンザが結婚するまでここに居るというのはどうだろう、・・・キティちゃんの事はコナンザには言わないでおこう、いずれはコナンザも結婚するだろうが、その時にどうしても辛いなら出て行ってもらって構わない、助けてあげられなかったお詫びにどこか綺麗な場所にお家を買ってあげよう」
(でも)
「キティちゃん、ここに居ればコナンザの寝顔はもちろん、入浴や全裸が見放題よ」
(乗った!、・・・いえ、・・・そうですかぁ・・・そこまで言ってもらえるのなら断るのも悪い気がします!、仕方ないですね、お世話になります!)
「ふふふ、よろしくね、キティちゃん」
「よろしく頼むよ」
(はい、これからもよろしくお願いします、お義父様、お義母様)
マリアンヌ・シェルダンさん
マリアンヌ・シェルダンさん(眼鏡)
「さてと・・・ここで最後だ、可愛い部屋だな」
「この家のお嬢様の部屋だな、3日前に処刑されたらしい」
「やめて!、それは私の宝物なの!、お願い、持って行かないで!」
「この箱は手紙か、それから・・・宝箱?・・・って書いた紙が貼ってある、まだ子供だからおもちゃの箱だな、大した物は入ってないか」
「あぁ、ドレスや高価そうな装飾品は先に全部回収してる、今あるのは残り物・・・安物ばかりだと思うぞ、金になるようなものは国が売り払って被害者や遺族への賠償金、それ以外は中を確認して焼却する・・・全部箱に詰めて持ち出せ」
「うぅ・・・いやだぁ・・・、みんな無くなっちゃう!、コナンザ様からのお手紙、コナンザ様に初めてお会いした時にもらったハンカチ、お出かけの時に一緒に集めた木の実・・・嫌だぁ!、嫌だよ!、盗らないで!」
ガシャン!・・
「何か落ちたぞ、壊すなよ」
「俺じゃないぞ、あの机の上の鏡が倒れたんだろう、何だこの人形、ふふっ・・・かわいいな」
「それは・・・お義母様にもらったリゼぐるみ・・・リゼお義姉様の姿をしたお人形・・・触らないで!」
「持って行かないのか?」
「あぁ、手作りみたいだし、大事にしていたようだ、この娘の部屋が空っぽになるのも可哀想な気がしてな、まぁ、次の住人が見つけて捨てるならそれでいいし、もしかしたら大切に持っていてくれるかもしれないからな」
「そうか、それもそうだな・・・さて、これで全部だ、帰るぞ」
バタン・・・
「あぁ・・・私の宝物・・・コナンザ様との思い出、みんな持って行かれちゃったぁ・・・ひっく・・・ぐすっ・・・いやだ、諦めたくない、でもどうすれば・・・」
私の名前はハロキティ・リラックーマァ、罪人として処刑され、ゴーストになってから3日が経ちました。
私は処刑の後、貴族用の牢獄から抜け出して、お家に帰りました、行く所も無いし、私のお部屋にはコナンザ様との思い出が沢山あるの、だからそれに囲まれて休みたい・・・身体が無いから疲れたり、眠くなったりはしないけれど、あれから・・・とても、・・・とても疲れたの・・・だから少し休みたい・・・。
でも、一昨日からお家に大勢の人がやって来て、私達家族のお洋服や宝石、金貨を沢山運び出しています。
私のお部屋にあるドレスや宝石も持って行かれました、幸いコナンザ様にもらったお手紙やハンカチはそのままだったので安心していたのですが・・・今日になって全ての物が運び出されてしまったのです・・・このお人形を除いて・・・。
「このリゼぐるみ、魔力で操れないかな、私の姿は見えないからお人形を使ってシェルダンの・・・お義父様かお義母様に伝える事ができたら」
「そいやっ!・・・んぐぐ・・・う・・・動いたぁ!、・・・うまく歩け・・・せいっ!・・・ダメかぁ・・・汚れるけど這って行こう」
ズズ・・・ズズズ・・・
「うぅ・・・もう少し・・・もう少しでコナンザ様のお家・・・早くしなくちゃ・・・全部燃やされちゃうの!、嫌だ、そんなの嫌だ!」
ズッ・・・ズル・・・ズズズ・・・
ズズッ・・・
とてとて・・・
「いいお天気ね・・・、最近運動不足だからお散歩するにはちょうどいいな・・・あら、こんな所に私のリゼぐるみ、何でお外に?、・・・え・・・どうしたの!、ボロボロになってる!、誰がこんな事を」
「・・・」
「どの子だろう・・・靴を脱がせて・・・足の裏に通し番号を書いてあるのよねー、・・・あれ?・・・153番・・・嘘・・・キティちゃんにあげた子だ・・・どうしてうちに?」
「・・・」
「・・・」
ピクッ!・・・ビクン!・・・
「ひっ!」
ピク・・・ピクピクッ・・・
「ひゃぁぁぁぁ!、う・・・動いたぁぁぁ!」
ガタン!、ドタドタ・・・バタン!ドサッ!・・・ずしゃぁ・・・
「あぅ・・・お顔からこけちゃった・・・ぐすっ・・・お膝も擦りむいちゃった、痛いよぉ・・・怖いよぉ・・・パパ助けて・・・ひっく・・・うわぁぁん!」
「お・・・奥様ぁ?・・・大丈夫ですか!、一体何が?」
「えぐえぐ・・・あぁぁぁぁ・・・怖いの、・・・お人形が勝手に動いて・・・キティちゃんがぁ・・・」
ざわざわ・・・
「おい、騒がしいな、どうしたんだ・・・わぁぁ!、奥様!、お顔!、それに鼻血が・・・すぐに医者を・・・おーい、大変だぁ!、奥様が!」
「ぐすっ・・・」
「大丈夫ですか奥様・・・」
「あぅ・・・いひゃいの・・・うぅ・・・」
「もうすぐ医者が来ますので・・・」
「ひゃい・・・」
「では、メイドにお水を持って来させます・・・」
「うん・・・ひっく・・・」
バタン・・・
「奥様の様子はどうだ?」
「応急手当ては終わりました、膝と額に擦り傷、それから酷く怯えて泣いておられますが・・・、奥様ってあんな子供みたいに泣くんですね」
「あぁ、お前はまだここに来て日が浅いから知らないのか・・・、奥様は見た目は恐ろしい・・・いや冷たい感じの美女だが中身は残念なのだ、普段は気を付けて淑女らしく振舞われているが気を抜くと幼い子供みたいな言動をされる、それが可愛らしい、味わい深いと言って使用人の間では人気なのだが・・・まぁ人は見た目によらないって事だよ」
「意外ですね・・・、もっと恐ろしい・・・失敗した使用人を鞭で打つような方かと思っていました」
「まぁ、あの外見であんな性格だとは思わないだろう、そのおかげで他の貴族家への威嚇にはなってるしな、旦那様も最初は他家に対して誤解を解こうとしていたらしいが諦めたようだ、今は冷酷で恐ろしい奥方様っていう噂を否定していない」
「・・・それでどうしましょう」
「医者は呼んだか?、そうか・・・旦那様にも知らせておいた方が良さそうだな」
「うぅ・・・使用人達に恥ずかしいところ見られちゃったぁ・・・メガネも割れたし・・・、ぐすっ・・・パパぁ、・・・ノルド様ぁ・・・早く帰って来て・・・私を慰めて・・・」
ギィィィィ・・・
ズ・・・
ズズッ・・・
ズズズズ・・・
「ひっ!」
ズズッ・・・ビクッ・・・ビクン!・・・
「ひいっ!・・・ひぅ・・・あ・・・あぁ・・・」
ピョン・・・ぼふっ!
「ひぃぃぃ・・・」
ビクッ!
「い・・・いやぁぁぁ・・・」
ぼすっ・・・
「・・・あぅ」
ぶるっ・・・
しょわわわわぁ・・・
ほかほかぁ・・・
ぽたぽた・・・
「えっぐ・・・うっく・・・ぐすっ・・・うあぁぁ・・・」
コンコン・・・
「奥様ぁ、一階にお医者様が・・・わぁぁぁぁ、奥様ぁ!」
「あぅ・・・恥ずかしいの・・・見ないでぇ・・・うわぁぁん」
「おーい、メイドを呼んでくれ!、それから着替えと、入浴の準備を!、医者には少し待ってもらえ!」
「あぅ・・・ひっく・・・あれ・・・お人形・・・どこ行ったの・・・やだ・・・もうやだ・・・2児の母なのにお漏らしなんて・・・ぐすっ・・・」
あぁ・・・お義母様ごめんなさい!・・・まだお人形うまく動かせないよぉ・・・力加減間違えてお義母様のお顔に飛び付いちゃった・・・。
そうだよね、怖いよね、お人形が這って飛びかかって来たら・・・うん、お漏らししても仕方ないよ・・・私だって漏らすもん。
おっとダメだ、早くお義母様に伝えないと・・・お義父様に頼んで持って行かれた私の宝物を取り返すの、早くしないと燃やされちゃうの・・・、でもこれ以上怖がらせるのは・・・あぁ・・・どうしよう!。
今私は弾き飛ばされてソファの裏・・・ベッドまで這って行って・・・よし、気付かれずにベッドの下までいけたの・・・、仕方ないかぁ、お義父様が帰って来られるまで待とう。
コンコン・・・バタン!
「マリたん!、マリアンヌ!、どうしたんだ!」
「あぅ・・・ぐすっ」
「遅くなってすまない!、連絡があってすぐ帰ろうと思ったのだが陛下の話が長くてな、しばき倒して途中で帰って来たぞ」
「ぐす・・・ひっく・・・パパぁ・・・怖かったの・・・お人形が・・・キティちゃんの呪いがぁ・・・わーん!」
「何を言ってるのか分からんが、・・・ハロキティちゃんがどうしたのだ?」
「・・・えとね・・・キティちゃんにあげた筈のお人形が・・・這ってきて・・・私のお顔に飛び付いてきたの・・・怖かったの・・・お漏らしまで・・・うぅ・・・」
「なるほど分からん・・・」
もぞっ・・・
「ん、マリたんの後ろの布団・・・動かなかったか?」
「へ?・・・」
もぞっ・・・ばさっ・・・キシャァァァ!
「ひぃぃぃぃ!」
「わひゃぁぁぁ!」
ぴょこ・・・ぴょこ・・・ズズズズ・・・
「何だ・・・人形が勝手に動いて・・・」
「あぁぁぁ!、パパぁ・・・居たの!・・・あれが這ってきて・・・怖いよぉ・・・嫌だぁ・・・」
ズズズッ・・・よじよじ・・・しゅたっ!
「待て、机の上に立った・・・ペンが浮いているぞ・・・何か書いている・・・」
かきかき・・・
(お義父様、お義母様、驚かせてごめんなさい、私、ハロキティです)
「なん・・・だと」
さらさら・・・
(私が犯した罪は何度謝っても許してもらえないと覚悟しています、でも一つだけお願いがあるのです)
「お願い?」
(今日お家に大勢人が来て、私のお部屋の中にある物、私とコナンザ様の思い出の品を全部持って行かれてしまいました、あれは大切な私の宝物なのです、急がないと燃やされちゃう)
「・・・」
(お義父様、お願いです、燃やされる前に取り返して、せめてコナンザ様からのお手紙と宝箱だけでも!)
「・・・」
(取り返してもらえたら、私はそれを持ってここから消えます、本当にごめんなさい、でもコナンザ様との思い出の品だけは持って行きたいのです)
「・・・分かった、今から城に行って取り返して来る、キティちゃん?、今ここに居るのだね」
(はい、何故かゴーストになってしまったようなのです、私が処刑されて死んだ後、お義父様が来て私の死体を抱えて泣いておられたのも天井から見ておりました)
「・・・すまん、聞きたい事は沢山あるが先にキティちゃんの宝物を取り返してからだな、待っててくれ、・・・マリたん、もう大丈夫だね、悪いが今から城まで行ってくる」
「うん・・・もう大丈夫・・・」
(お願いします)
バタン!
「キティちゃん?・・・」
(はい、お義母様、今まで騙していて本当にごめんなさい)
「話はパパ・・・旦那様から聞いてるよ、コナンきゅん・・・コナンザの事を思って・・・傷付けたくなかったからあんな事をしたんだよね、こちらこそ助けられなくてごめんなさい」
(もういいのです、私は死んでしまいました、コナンザ様の幸せを祈っています)
「・・・うぅ・・・キティちゃん・・・どうしてこんな事に・・・、家族になってみんな一緒に楽しく暮らせると思っていたのに・・・」
(コナンザ様は、どうされていますか?)
「あの子は、お部屋に閉じ籠ってずっと泣いていたからリゼたんが旅行に連れ出してるの」
(そうですか、どうかお元気でと伝えて下さい)
「・・・」
コンコン・・・バタン・・・
「戻ったぞ、キティちゃん、いるのかい?」
ぴょこぴょこ・・・
「そうか・・・これでいいのかな?、お手紙の箱と、宝箱って書いてある木箱」
かきかき・・・
(はい、それで間違い無いです、本当にありがとうございます)
「よかった・・・実はもう少しで燃やされてしまうところだったのだ」
(では、お義父様、お義母様、驚かせてごめんなさい、そしてありがとうございました、さようなら)
「待て!、キティちゃん、さようならって、どこか行くあてはあるのか?」
(いえ、私はゴーストですので食べ物も住む場所も必要ありません、どこかの空き家に住み着いて、この宝物を抱えて消えるまで過ごそうかと)
「ここに住めばいい、・・・マリたんも、いいだろ?」
「キティちゃんさえ良ければこの屋敷に居て欲しいな、もっとお話もしたいし、お部屋も用意しましょう」
(でも、ここに居て迷惑をかけるわけにも行きませんし、コナンザ様が他の女性と結婚してイチャイチャ・・・いえ、幸せに過ごしているのを見るのは辛いのです)
「そうか・・・だが・・・辛いのならコナンザが結婚するまでここに居るというのはどうだろう、・・・キティちゃんの事はコナンザには言わないでおこう、いずれはコナンザも結婚するだろうが、その時にどうしても辛いなら出て行ってもらって構わない、助けてあげられなかったお詫びにどこか綺麗な場所にお家を買ってあげよう」
(でも)
「キティちゃん、ここに居ればコナンザの寝顔はもちろん、入浴や全裸が見放題よ」
(乗った!、・・・いえ、・・・そうですかぁ・・・そこまで言ってもらえるのなら断るのも悪い気がします!、仕方ないですね、お世話になります!)
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それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
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