〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜

柚亜紫翼

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Side - 15 - 58 - まにあわなかったの・・・ -

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Side - 15 - 58 - まにあわなかったの・・・ -


「うぐぅ・・・」

ゴロゴロゴロ・・・キュルルル・・・

「んくっ・・・あん・・・ひいっ!・・・あぁぁぁぁ!」

「大丈夫かぁ」

「らめぇ・・・」

・・・こ・・・こんにちは・・・私は・・・セシル・ミューラー12歳・・・私は今猛烈な下痢に襲われています・・・あぅ・・・汚くてごめんなさい・・・。

「あー、運が悪かったなぁ・・・雨水腐ってたかぁ・・・」

「酷いです・・・おじさん・・・ぐすっ・・・」

「まぁよかったじゃねぇか、ちょうどすぐ横が下水だ、しばらくそこに居ろ」

「あぅ・・・おじさん・・・どこ行くの?」

「雨水如きで腹を下すお前の為に、中央公園の噴水まで行って水を汲んで来てやるんだよ、感謝しやがれ」

・・・うぅ、臭いよぉ・・・、お腹痛くて・・・下水にお尻を向けて用を足そうとしたら・・・斬られた足が痛くて、うまく屈めなくて、頭から下水に落ちちゃった。

幸い浅かったからまだ良かったけど・・・おじさんが笑いながら棒を差し出して「掴まれ」って引き上げてくれたの・・・全身汚物まみれ・・・もう嫌だ・・・何で私がこんな目に・・・。

そうは言ってもおじさんは親切で・・・椅子を改造して簡易便座を作ってくれたの、それに意外と紳士的、私が用を足してる時はどこかに行ってくれてるし・・・。




「おじさん・・・遅いなぁ・・・お腹空いたよぉ」

私はあの家で虐げられてたけど・・・腐ったものは食べさせられなかったし、汚物まみれになる事もなかった・・・あれでも恵まれてたのかなぁ?。




「おぅ、帰ったぞ」

「・・・お帰りなさい」

「眼帯取れ、それから靴を脱いで足を出せ」

「・・・何で?、嫌だ見られたくない」

「お前下水に落ちただろ、そのままだと傷が腐る、顔や足が爛れて腐り落ちてもいいならそのままでいればいい」

「え・・・腐り落ちる?・・・」

「俺はそういう奴を何人も見てきた、傷口が腐ってな、熱が出て、苦しみながら死んじまう」

「・・・お願いします」

「まず水で洗うからな・・・、靴の中には入ってないみたいだな、良かった・・・念の為洗っておくか」

「うぅ・・・痛い・・・」

「次は酒だ、傷口にかけるからめちゃくちゃ痛いぞ」

「・・・ぎゃぁぁぁ!、痛い痛い痛い!、やだ待って痛い!」

「我慢しろ、俺の全財産使って買ってきてやった酒だぞ」

「うぅ・・・痛かったよぉ・・・ぐすっ」

「それから着てるもの脱げ」

「やだ!、おじさん何する気?まだ私12歳・・・」

「ガキのくせに恥じらうな!、お前のその高そうな服を売るんだよ、代わりにこれを着ろ」

「臭いけど売れるの?」

「夜中に噴水まで行って洗って来る、土と一緒に洗えばある程度匂いも落ちるだろ、お前の腹が弱いのは分かったからちゃんとしたもの買ってきてやる、だが俺はもう金が無ぇ」

「ごめんなさい・・・迷惑かけちゃって」

「面倒な奴を拾った俺が悪いんだ、気にするな、それから・・・髪も売れるか・・・お前、その長い銀髪に思い入れは無いか?無いなら切って売って来る、少しは美味いもん買えるだろ」

「・・・いいよ、切っても」






くんくん・・・

「臭くない・・・」

おじさんが私の・・・借り物だけど・・・服と、切った髪を噴水で洗って戻って来ました、匂いが落ちてる・・・ここの酷い匂いに慣れただけかもしれないけど・・・。

「あぁ、土や草を混ぜて噴水で8回くらい洗ったからな、今噴水は酷ぇ事になってるぜ、乾いたら髪と一緒に売って来てやる」

「頭が軽い・・・私、こんなに短くしたの初めて・・・」

「そうなのか?貴族様みたいな長い髪なんて邪魔にしかならねぇだろ」

「うん、でも勝手に切ったら怒られるから・・・」

「へー、面倒くせぇなぁ・・・」




あむ、あむ・・・んっ・・・

「美味しい!」

そりゃ美味いだろうよ、俺の食費の5日分だ。

「おじさんは食べないの?」

「あぁ、それはお前の服や髪を売って買った奴だからお前のだ」

「でも・・・おじさんも食べようよ」

「俺はカビたパンや残飯でいい、中途半端に良いもん食っちまうとな、次に残飯食わなきゃならん時に辛くなる」

「・・・そう」

「おじさんはずっとここに住んでるの?」

「・・・故郷から逃げてきてな、王都に辿り着いたは良いが、色々と揉め事を起こして最後に流れ着いたのがこの場所だ、この下水道にはそんな奴らが大勢住み着いててな、お互い困った時は助け合って住んでる、大体は訳ありで逃げ回ってる大人だがガキも居るぞ」

「子供も・・・」

「ここの住人が子供を産んだり、孤児院が嫌で逃げて来たガキだったり・・・いろんな奴がいる、だがこんなゴミ溜めじゃぁ読み書きも何も教えてもらえねぇからな、何も出来ねぇ大人になって、一生ここに住んで、死んでいくんだ、・・・全部無くして流れ着いた俺を拾ってくれた爺さんがそれだった、ここは元々爺さんの家だったんだ、俺の恩人だな」

「その人って、・・・あぅ!・・・んひいっ!・・・またお腹が!・・・」

「ははは、せっかくいいもん食ったのに出しちまうのか・・・あ、転けた」

「あぅ、痛いの・・・うぐっ!・・・やだ間に合って!・・・うぅ足が!・・・ちょっと待って!・・・あぁぁぁぁ!」




「おもしれぇ嬢ちゃんだな・・・さて、音を聞くのも可哀想だ、あの嬢ちゃんが何者なのか・・・ちょっと調べてみるか・・・」




「・・・うっく・・・ぐすっ・・・えっぐ・・・くさいよぅ・・・汚いよぅ・・・おじさん・・・ごめんなさい・・・間に合わなかったの・・・うぅ・・・」

「あー、畜生!、分かったから泣くな、後で噴水のとこで洗って来てやるから脱いだ奴そこに置いとけ」
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