上 下
96 / 208

Side - 302 - 9 - れっくれす・しぇーる -

しおりを挟む
Side - 302 - 9 - れっくれす・しぇーる -


「ふぅ・・・怒られた怒られた・・・ハハハ、「追って沙汰があるまで謹慎」だってさ」

「・・・レックレス様ぁ、私、どうしても納得できません、・・・ひっく・・・ぐす・・・」

「俺も王様って柄じゃ無いしな、自分で言うのもアレだが俺は馬鹿だ、リリアも知ってるだろ、妹は面倒くさがりで泣き虫だが頭は良い、良い王様になれるだろう、俺は嫌われてるようだがな」

「それは・・・レックレス様があえて道化を演じていらっしゃるから・・・」

「おっとそこまで、どこで誰が聞いてるか分からんからな」

「申し訳ありません・・・」

「さて、向こうの家に行って話をして来ようかな、リリアも来るか?」

「出かける?・・・陛下から謹慎と言われてるではありませんか」

「そんなのバレなきゃ良いんだよ、もう今日の仕事終わったんだろ」

「はい、ですが・・・」

「今回の婚約破棄騒動の詳しい理由、知りたいんだろ」

「・・・」

「いいから行くぞ、これは奴から預かってる携帯型転移魔法陣だ、この上に立て」

「・・・え、どこに行かれるのでしょう?」

「行ってからのお楽しみだ、ほい、転移!」






「ひぃっ・・・ここは・・・」

「・・・ようこそシェルダン家へ、可愛いメイドさん、それから殿下・・・」

「いやぁ、痛かったぞウルフ殿!、口の中が切れてた」

「殿下が娘の事をあまりにも悪く言うものでね、つい力が入ったのだよ、あれだけやれば誰も演技だとは思うまい」

「はいはい、俺が頼んだのだから仕方ないか、・・・これで一件落着・・・となれば良いがな」

「長かったですな・・・」

「エッタちゃんは?」

「部屋に閉じこもってる、男性に押さえつけられて怖かったのだろう」

「悪い事をしたな、だが彼女は演技が下手そうだ、バレるとまずい、それに当事者だと知られたら心に傷が付くだろう、優しい子だからね」

「そのメイドさんは?、・・・確か殿下といつも一緒にいる子だね」

「あぁ、俺が幼い頃から仕えてくれてるリリア・・・俺にとって姉のような人だ、今回のことが知りたそうだったから連れて来た」

「前にも確認したが・・・本当によろしいので?、一人で背負われなくとも良いのでは?」

「あぁ、気にしないでくれ、堅苦しい王族の生活は性に合わない、これで俺は自由だ、妹はこれから大変だろうがね・・・」

「これで王妃様の周りの連中がどう動くかだな」

「・・・あの、口を挟んで申し訳ないのですが、・・・全く状況が理解できません」

「あぁ、悪い悪い、僕から軽く説明しよう、ウルフ殿少し時間いいかな」

「えぇ、かまいませんよ、私も状況を整理したいので」

「リリア、これから話す事は極秘事項だ、他言無用だよ」

「はい・・・」

「まずどこから話そうか、そもそもの始まりはシェルダンの血筋が色々な所から狙われている・・・って事、白銀の大魔導士様をはじめ、そのご両親、弟、叔父、そして子孫も、これだけ不老に到達する程の膨大な魔力量を持つ人間を排出した貴族家はここシェルダン家だけだ、それを見た他の貴族連中はどう思う?、この家系に不老不死の秘密があるのでは無いか・・・そう噂し始めた、もちろんこれはデマで、白銀の大魔導士様が開発した国家機密の秘術によるものだと王家からも公表されている、ここまではリリアも知ってるよね」

「はい、この国について最初に教わる事ですよね」

「で、王家から公表された事実を信じない馬鹿どもに何度も子供を誘拐されかけたり、婚姻でその血を手に入れようとしたり・・・そんな事が多発してシェルダンは警戒を強めた、血族を厳格に管理し、子供を作り過ぎず、無闇に婚姻を結んで血族を外に出さない、・・・血が濃くなるからある程度信頼できる貴族家とは極秘で縁を結んだり、赤ん坊の頃から厳重に警備して誘拐を防ぐ・・・他にも色々と対策をした結果、どこの貴族家も喉から手が出るほど欲しがる価値のある血筋、それなのに厳重に守られて手が出せない、・・・そんなイライラする状態が続いて今に至っている」

「そしてシェルダン家に手が出せないのなら王家はどうだろう、・・・そう考える奴らが出てきた、この大陸を中心に活動する犯罪組織、主に子供の誘拐と人身売買で金を稼いでいる奴らがシェルダン家の血筋が欲しい貴族家と手を組んで動き出した」

「俺の母親・・・王妃だな、彼女は貴族でも何でもない、どこの誰かも分からない、その犯罪組織によって何処かから誘拐され、そして奴らに育てられた工作員だ」

「ええええ!、王妃様が!、まさか・・・そんな」

「正確には「元」工作員だね、組織と手を組んだ貴族家の養子となりその令嬢として社交界デビュー、親父の好みの容姿、好みの振る舞いをする女性を演じ、近付き、そして気に入られて結婚した、だけど親父と一緒に暮らすうちに本気で恋をして、本当の夫婦になったんだよ・・・親父は王族にしては穏やかで優しいからな」

「奴らの計画はこうだ、親父と結婚して王子あるいは王女を産み、そのどちらかとシェルダン家の子供を結婚させる、その嫁か婿を誘拐してもいいし、あるいは結婚して子を産ませて・・・偽物として用意した子供とすり替える・・・、王妃と、城に潜入させた工作員の仲間と協力すれば、シェルダンに直接手を出すよりはるかに簡単に赤ん坊を手に入れられるだろうね」

「そんな・・・酷い」

「随分と気の長い話だが、赤ん坊をすり替える手はよく考えられていると思う、気付かれないしシェルダンからの報復も無い、それにこんな事をされたら知らないうちに王家と何の関係もない血筋の人間が王になるからね、脅迫材料にもなるし、他国に情報を売れば、このローゼリアはそんな事をされても気付かない間抜けな国って笑いものになる、当然王も敬われないし、国が崩壊するかも知れない、事実俺も半分は貴族じゃなくて平民の血が流れている可能性が高い」

「・・・」

「俺の母親は悩んだ、毎晩苦しんで泣いていた、指示通りに何とか自分の息子とシェルダンの娘を国王陛下の努力で婚約させた、次はその2人の子を工作員と協力して別人とすり替える・・・だがその工作員のメイドとのやり取りを俺に聞かれた、13歳の時だったかな、俺は母親を問い詰めた、泣きながらごめんなさい、命を狙われるかも知れないけれどもう指示には従わない、あの人には・・・親父だな・・・お願いだから言わないでって・・・」

「俺から見ても両親は仲のいい夫婦だ、この関係を壊すのは俺だってしたくない、だから親父には黙っていた、その代わりシェルダンの家に相談した、ここも当事者だからな、俺の話を聞いたウルフ殿は協力を約束してくれた、娘には秘密にして・・・だけどな、・・・そもそもあまりにも王家が婚約させろってうるさいから仮に俺と婚約させて何かの理由をつけて破棄しようと考えていたらしい」

「俺はそれから馬鹿なフリをして・・・まぁ色々と問題を起こした、愚かな王子、こんな奴が次の国王で大丈夫か・・・散々言われたし、やらかし過ぎて仲が良かった妹にも見限られた、そんな日々が3年続いて俺が16歳になった時にはバカ王子が定着した」

「これでシェルダンも婚約破棄を言い出しやすくなるだろう・・・そう思ってた矢先にフィリスが俺に擦り寄って来た、元々失礼で下品な女だったが俺は「これだ!」って思ったね、俺とフィリスが真実の愛とやらを見つけてヘンリエッタに婚約破棄を突き付ける、これなら俺の母親は組織を裏切る必要がない、欲しかったシェルダンの嫁がどこかの下級貴族の娘にすり替わるんだから、もう用済みだ、しかもバカ王子の俺がやらかしたんだから母親には全く非が無い、あとは組織に消されないように注意していればいい、組織が母親の素性をばらそうとしてもシェルダンの力で握り潰せばいいしな、そして計画を変更したんだが、まさかフィリスがあんなに性格が悪くてヘンリエッタに冤罪を被せるとは思ってなかったな」

「レックレス様が13歳の頃を境に急に荒れ初めたのはそんな理由があったのですね、私としては・・・その、あの年頃の男の子はそういった事をするものかな・・・と、「フフフ、俺の左腕に封印されたドラゴンが・・・」とか「ククク、我は闇の支配者・・・」ってよくおっしゃっていましたから」

「いや、リリア!、そこまで言わなくていいから!、ウルフ殿、何を笑っておられるのか!」

「話を戻そう、エッタちゃんは確か好きな男がいるんだよな、執事の・・・名前は忘れたが・・・、俺と婚約させる時に「王家からの求婚を断って貴族では無い執事と婚約するとは何事か!」って親父が詰め寄ったらしいな、これでエッタちゃんも好きな男と幸せに暮らせるだろう、妹はかわいそうだが女王になってもらおうかな、親父とお袋はおそらく今回の責任を取って王位を退くだろう、シェルダン経由で統一国王陛下にもこの話が伝わっている、激怒して親父に「責任を取れ!」って言う事になってるしシェルダンの方もウルフ殿に「大事な娘にお前の息子はなんて事してくれたんだゴラァ!」ってやってくれって頼んである、ハハハ、親父も気の毒にな!、まぁこれだけ大きな陰謀が動いてるのに気付かないのも間抜けなんだが・・・」

「・・・悪かったな間抜けで」

「ぬふぉあっ!、親父!、・・・とお袋?、何でこんなところに居るんだよ」

親父とお袋が隠し扉から出てきた!、今の話全部聞かれたのか?、そんなの聞いてないぞ!。

「私が呼んだんだよ、先に王妃様には了承をもらってある、「全てを陛下に話して、それでも2人の愛は変わらない」そうだ、殿下にだけ全て背負わせるのはどう考えても理不尽だ、そもそもこれから城にいる組織の連中がどう動くか分からん状態で陛下が知らないのはまずいと判断した、あの城は危険だから陛下と王妃様はギャラン・ローゼリアの城でしばらく過ごしてもらおうと統一国王陛下はおっしゃっておられたな」

「そうか・・・」

「レックレス・・・その・・・酷く叱って悪かったな、経緯は全部シェルダン殿から聞いた・・・それから・・・ありがとう」

「レックレスちゃん・・・お母様からもお礼を言うわ、・・・今まで本当にありがとう、ずっと私を庇ってくれてたのね・・・ぐす・・・」

「あぁ、2人の仲のいい所あれだけ見せつけられたら庇いたくもなるよ、後で相談しようと思ってたんだが、・・・俺は王族の籍を抜けてハンターになろうと思う、心配なのは妹だが、・・・まぁあいつは賢いから何とかなるだろう、ここまで俺とウルフ殿でやったんだ、後のことは頼んでいいか?」

「分かった、組織の奴らは城から一人たりとも逃がさんつもりだ、それから・・・リリアさん、もし嫌なら断ってもらってもいいのだが、しばらく息子と一緒に行動してもらえないか、こいつを一人で野に放つのは心配でな、城に勤めている時の3倍の給料を出す、出張という形で息子の監視と世話を頼めないか」

「はい、陛下、喜んで!」

「お、リリア、いいのかよ、俺なんかに付いて来たら更に婚期が遅れるぞ」

「大丈夫ですよー、婚期逃したら責任とってレックレス様にもらってもらいますから!」

「あらあら、リリアちゃん、息子をよろしくね・・・」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

〜マリアンヌさんは凶悪令息のお気に入り〜

柚亜紫翼
恋愛
裕福な貴族令嬢マリアンヌ・ボッチさんはお裁縫が趣味の16歳。 上級貴族の令息と政略によって半ば強制的に婚約者にさせられていました、見た目麗しい婚約者様だけど性格がとても悪く、いつも泣かされています。 本当はこんな奴と結婚なんて嫌だけど、相手は権力のある上級貴族、断れない・・・。 マリアンヌさんを溺愛する家族は婚約を解消させようと頑張るのですが・・・お金目当ての相手のお家は簡単に婚約を破棄してくれません。 憂鬱な毎日を送るマリアンヌさんの前に凶悪なお顔の男性が現れて・・・。 投稿中の 〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜 https://www.alphapolis.co.jp/novel/652357507/282796475 に登場するリーゼロッテさんのお母様、マリアンヌさんの過去話です。 本編にも同じお話を掲載しますが独立したお話として楽しんでもらえると嬉しいです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

スペースシエルさんReboot 〜宇宙生物に寄生されましたぁ!〜

柚亜紫翼
SF
真っ暗な宇宙を一人で旅するシエルさんはお父さんの遺してくれた小型宇宙船に乗ってハンターというお仕事をして暮らしています。 ステーションに住んでいるお友達のリンちゃんとの遠距離通話を楽しみにしている長命種の145歳、趣味は読書、夢は自然豊かな惑星で市民権とお家を手に入れのんびり暮らす事!。 「宇宙船にずっと引きこもっていたいけど、僕の船はボロボロ、修理代や食費、お薬代・・・生きる為にはお金が要るの、だから・・・嫌だけど、怖いけど、人と関わってお仕事をして・・・今日もお金を稼がなきゃ・・・」 これは「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に投稿している「〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜」の元になったお話のリメイクです、なので内容や登場人物が「リーゼロッテさん」とよく似ています。 時々鬱展開やスプラッタな要素が混ざりますが、シエルさんが優雅な引きこもり生活を夢見てのんびりまったり宇宙を旅するお話です。 遥か昔に書いたオリジナルを元にリメイクし、新しい要素を混ぜて最初から書き直していますので宇宙版の「リーゼロッテさん」として楽しんでもらえたら嬉しいです。 〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜 https://www.alphapolis.co.jp/novel/652357507/282796475

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...