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Side - 302 - 8 - ふろーれんす・みーあ -

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Side - 302 - 8 - ふろーれんす・みーあ -


「ヘンリエッタ・シェルダン、貴様との婚約を破棄する!、今までしてきたフィリス嬢への陰湿な嫌がらせ、未来の王妃に相応しくない!」

「え・・・あぅ・・・ちが・・・」

「婚約者だからと見逃してきたがもう我慢ならん!、聞けば嫉妬から私と仲が良いフィリス嬢を階段から突き落とそうとしたと言うではないか!、何か言い訳はあるか!」

「・・・うぅ・・・ぐすっ・・・」

「無いようだな、何を睨んでいるのだ無礼だぞ!、では自分の犯した罪を償ってもらおうか、貴様を国外追放とする!」

「あぅ・・・痛いよぅ・・・」

「そして私はここに居るフィリス嬢と婚約することを宣言する!、俺は真実の愛を見つけたのだ!、貴様のような笑わない女よりここに居るフィリス嬢の方が妃にふさわしい!」



私の名前はフローレンス・ミーア・ローゼリア14歳、この国の第一王女です。

今私は何を見せられているのでしょう?、王太子であり兄でもあるレックレス・シェール・ローゼリアが大勢の貴族が集まる夜会の席で、婚約者であるヘンリエッタ・シェルダンに婚約破棄を突き付けました・・・。

お父様とお母様はお隣の国の国王即位式に出られていて留守、この場でお兄様の寝言を止められる人間は居ません、・・・私を除いて・・・、私も正直このバカな兄の為に目立ちたく無い、・・・何より面倒臭い、・・・高位貴族の人達が私の方をチラチラ見てるけど、いや知らんがな!、って大きな声で言いたいの、私はこのバカ兄に何度も振り回されてもう疲れたの。

兄の取り巻きの令息に床に押さえつけられて泣いている可哀想な女の子は大貴族シェルダン家の長女、・・・両親や兄弟から溺愛されている娘なのにあんな酷い事をしたら間違いなく怒るよね、激怒だよ、あの家、うちより力持ってるのにどんな報復をされるのか、・・・あの人達はそんな事も分からない馬鹿なのでしょうか?。

それに嫉妬から今目の前で兄の腕に胸を押し付けている頭が軽そうな女に危害を加えた?、そんな訳無いでしょう、彼女は兄との婚約を泣いて嫌がっていたのに、あらゆる所へ圧力をかけて・・・、いえ、お父様が頭を下げたり苦労をしてようやく婚約させたのに・・・。

お父様達が戻られてこの事を知ったら卒倒するよね、・・・あーあ、統一国王陛下にも怒られるだろうし、お父様、王様のままでいられるのかなぁ・・・。

はっ!、お父様が国王を辞めさせられて、お兄様が廃嫡なんて事になったら、・・・もしかして私が王様に、・・・やだ!、そんな面倒なものになりたくないよぅ、・・・私はのんびりまったり、毎日楽しく過ごしたいの・・・女王様なんて無理、・・・どどど・・・どうしよう・・・。

もしかして大事になる前にあのバカ兄を止めた方がよかった?、もう手遅れだけど・・・、いえ、今止めてもそのうちあのバカ兄は何かやらかしてたと思うの・・・、そうだ、ギャラン・ローゼリア王家から誰か王様になりたい人連れてきたら良いんだよ、私じゃなくても向こうの人も元を辿ると同じ王族の血縁だからいける!。

「・・・様・・・」

どうしても王様になれって言われたら、・・・逃げよう、周りのお金や貴重品全部かき集めて夜逃げするの、一生王城に縛られて毎日執務なんてやだ、私はかっこよくてお金持ちの男の人と結婚して幸せに暮らすんだ、そんな都合のいい人まだ見つかってないけど・・・。

「姫様」

「ひゃぅ!、な・・・なに?」

執事のアランさんが声をかけて来ました。

「あれを放っておいてよろしいので?」

「・・・わ・・・私にどうしろと?」

「お止めした方がよろしいかと、この場で王太子殿下を除いて一番身分が高いのは姫様ですので・・・」

「向こうから鬼のようなお顔をして走って来てるシェルダン家当主様とそのご子息を私が何とかできるとでも?、・・・あ、乱闘始まった・・・」

「しかし、何もぜず見ているだけとなると・・・、陛下からお叱りを受けるのでは?「お前は何をしていたのだ!」と・・・」

「わぁ、アランさん声真似上手いね・・・、私お腹痛くなったからお手洗い行ってくるね」

「姫様お待ちを・・・」

「やだ、漏れちゃうの・・・大きい方・・・漏らしたら大参事・・・あ、それと多分今のエテルナ・ローゼリア王家終わると思うから、アランさんも逃げる用意しておいた方がいいよ」

「・・・」

私はお忍びでよく城下に遊びに行ってたから隠れて住むところは事前に見つけてあって、そこに少しずつお金や貴金属を移してたの、だって次の王様になる筈の兄はバカだし、お父様は優しい王様だけど人畜無害過ぎてよく悪い貴族に利用されてる、だから私は危機感を持ったの。

幼い頃から私に仕えてくれている信頼できるメイドに協力してもらって・・・じゃないと絶対近いうちに兄が何かやらかしてその余波で私は酷い目に遭う、王家が没落したら娘の私はそれこそ政治の道具にされちゃう、自分で言うのもアレだけど、私可愛いし・・・、上級貴族のどこかに嫁がされたり・・・他国との友好の為にって可能性もあるよね。

密かにお料理やお洗濯、自分の身の回りの事も普通の庶民のように出来るようになってるし、こんな窮屈なお城や上級貴族のお屋敷で一生を終えるのなんて絶対に嫌なの、もうちょっと時間に余裕があると思ってたんだけど、予想以上に早くバカ兄がやらかしやがったから・・・、私はお部屋に戻って荷物の準備を始めました。



「・・・それが今から半年前に起きた事、そして逃げる途中で見つかって連れ戻されて・・・お父様に怒られて、・・・うぅ・・・ぐすっ・・・」







「いてて・・・クソ!、・・・思いっきり殴りやがって、口の中が切れてやがる」

俺は今王城の医務室で治療を受けている、シェルダンの当主にぶん殴られた、普通なら当主は捕まって裁かれるだろうが俺はこの件は不問にするとあの場で宣言した、だから罪には問われないだろう、そして俺に寄り添うように下級貴族の娘フィリス嬢が隣に居る。

「レックレス様ぁ・・・大丈夫?、でもこれで邪魔者は居なくなりましたぁ!、私たち結婚できるんですよね!」

俺の名前はレックレス・シェール・ローゼリア、この超大国、エテルナ・ローゼリアの王太子だ、もうすぐ王太子じゃなくなるだろうがな・・・。

「フィリス、これで俺は確実に王太子ではなくなる、もしかしたら廃嫡になるかもな、それでも俺と結婚してくれるか?」

「なっ!、どういう事なのです!」

「分からないか?、統一王家と並ぶ力を持つと言われるシェルダンをコケにして怒らせたんだ、ただじゃ済まないだろう、しかもこちらから無理に頼み込んだ婚約を一方的に破棄した、下手をすると・・・エテルナ・ローゼリア王家が潰されるだろうな、お前も身の周りには気を付けろよ、ありもしない罪をヘンリエッタに被せたんだ、刺客の10人や20人送り込まれても俺は驚かない、寝てる時に天井から刃物を持った男が・・・ってなるかもな、それから向こうには有名な毒使いが居る、食い物には注意しろよ」

「え・・・刺客?、・・・なぜ・・・ありもしない罪と・・・、いえ!、私はヘンリエッタ様に虐められて、この前は階段から・・・」

「はいはい、そういう事にしておこう、彼女は仮にも王太子の婚約者だった、当然朝から晩まで王家の影が側に付いて監視してる、そんな事も知らなかったのか?」

「それを知っているのに何故・・・いえ!、それより私は王妃になれないのですか!」

「俺が王になれないのだから当然お前も王妃になれないだろう、俺はヘンリエッタと婚約破棄したかった、どうしようかと悩んでいる時にお前が俺にしつこく擦り寄ってきた、それで・・・顔も可愛いしこいつでいいか・・・と考えた、もちろん俺が王太子、・・・いや貴族じゃなくなっても結婚してくれるんだろ、お前のために俺は全てを捨てたんだ、金も地位もな、貧しくても2人で力を合わせて幸せな家庭を築こうぜ、愛してるよ、フィリス」

「じ・・・冗談じゃないです!、嫌です!、こんな事・・・、お父様に何と言えばいいか・・・王族でもない貴方など何の価値も無いではありませんか!」

「あれ、俺って顔は人並み以上にいいと自負してるんだがなぁ、・・・何の価値も無いか・・・ハハハ、酷ぇな・・・だがそうかもしれないな、さて、婚約の手続きしに行こうか、親父たちが帰ってきたら荒れるだろうから今のうちに・・・」

パシン・・・

「だ・・・誰が王太子でも無い貴方なんかと・・・、今までの私の苦労は・・・いえ、それよりお父様に・・・あぁ・・・なんて事」

「・・・フフ、酷いなぁ・・・あんなに俺のこと好きだって言ってたじゃないか、いかに自分がヘンリエッタより優れてるか力説してたしな、じゃぁ婚約の件は無しにして良いのか?」

「えぇ!、王太子じゃない貴方なんて好きでも何でもないわ!、・・・それにどうしてくれるのよ!、私も命を狙われるなんて!」

「そうか、振られちまったな・・・、こいつは俺を叩いた、まだ俺は王太子だ、王族への暴力、それから暴言・・・不敬罪だな、・・・おい、お前ら見てたよな!、そこの騎士、捕まえて牢に放り込んでおけ!」

「はっ!」

「いやぁ!、触らないで!、何するのよ!、離せ!、はーなーせー!」

「・・・あいつも、ここで本性を出さずに婚約に応じてくれていれば、・・・不本意だが結婚して・・・馬鹿だし腹黒い性格だが・・・愛して・・・大切にしようと思ってたんだがなぁ・・・残念だ」



「・・・レックレス様ぁ、・・・うぅ・・・ぐすっ」

「泣くなよ、リリア、これで良かったんだよ・・・、さて、疲れたなぁ・・・風呂に入って寝るか・・・もうすぐあの寝心地の良いベッドともお別れだ」

俺は幼い頃からずっと仕えてくれている専属メイドのリリスの頭をそっと撫でた、そして誰にも聞こえない小さな声で呟いた。

「エッタ・・・幸せになれよ」



「・・・という事が半年前にあったんだ、それから連絡を受けた親父たちが帰ってきて、そりゃ大騒ぎになったぜ、ハハハ・・・で、俺が今ここに居るってわけよ!」
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