〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜

柚亜紫翼

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Side - 15 - 41 - とぅーりっくのやどや -

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Side - 15 - 41 - とぅーりっくのやどや -


「やぁ、リゼルくん、いらっしゃい」

「あ、クックさん・・・腕の調子・・・どうですか?」

「おかげでようやく痛みが引いたよ、まだリゼルくんのお薬がないとちょっと痛いかな」

「そう、・・・予定通りだとあと10日ほどしたら・・・包帯を解いて一度様子を・・・見るね」

「あぁ、ありがとう、今日は宿泊だね、リックさんから聞いてるよ、3泊食事付きの3人部屋で良いかな」

「・・・うん、それでお願い・・・します」

リィンちゃんと一緒にコルトの街を一周していたら夕方になったので、宿屋に行ったら受付カウンターの男の人が私に話しかけて来ました。

この人はクック・グリンベーレさん、コルトの街の元衛兵さんで、トシを襲って捕まった2人が脱獄する時に襲われて腕を大怪我、そして博士によってこの国初の切断された腱の縫合手術を受けた人なのです、今はお友達のタダーノさんの紹介でこの宿屋で働いています。

私達が宿泊費を払い、お部屋に行こうとするとクックさんが。

「あ、そうだ、今朝町長から連絡を受けたんだけどね、あの脱走した悪ガキ2人、どうやらここから歩いて10日くらいの宿場町に居たらしい、そこで盗みを働いて捕まったんだが、・・・また脱走したようだ、幸い今度は怪我人は居なかった、それで第三級危険人物扱いになって緊急指名手配がかかったよ、今度はシェルダン領所属の騎士団が動くからもうすぐ捕まるんじゃないかな」

「あの悪ガキども、まだ懲りて無かったんっすか!」

シャルロットさんが怒っています。

「本当に怪我人が出なくて良かったよ、あの時はまんまと逃げられたからね、俺が逃してしまったせいで誰かが殺されてたらって思うとね・・・」

「クックさんが・・・気にする事・・・ないと思うよ、・・・悪いのはあの2人」

「ありがとう、そう言ってくれると少しは気が楽になるね・・・」





「わぁ!、すごい良い景色!」

「ここってこの宿の一番いい部屋じゃないっすかね」

「そうみたい・・・3階の一番眺めがいいお部屋かも、僕も海側の客室には初めて入ったよ」

レストラン・タダーノの向かいにある宿屋トゥーリックは白壁が美しい3階建ての立派な建物で、2階と3階のお部屋からはタダーノの裏にある海がとてもよく見えるのです、もちろん景色がよく見えるお部屋ほど宿泊料金が高いのですが、私が払ったのは普通のお部屋の料金、そして今通されているのは一番高いと思われるお部屋・・・。

「リックさんがトシの件のお礼で宿泊料タダでいいって言ってたのを僕が払うって押し切ったからかな・・・」

「多分そうっすね・・・」

そうなのです、最初リックさんには宿泊料は要らないって言われたのです、でもそれは流石に悪いからって正規の料金から少し割り引いてもらって払ったの、・・・恐らくトシの命を助けた事で気を遣ってくれてるのだと思うのです。

「・・・せっかくだからお言葉に甘えちゃおうか」

「そうっすね、お互い気を遣い合っても仕方ないっすからね」

「じゃぁ、今度会った時にリックさんに言っておいて、・・・僕がありがとうって言ってたって」

「え・・・、私が言うんっすか?」

「うん、どうせ2人でイチャイチャするんでしょ」

「・・・なぁ・・・何言ってるんっすかリゼルくん、私はリゼルくんの護衛っすから仕事中にそんな事は・・・」

「しない?」

「・・・いえ、ちょっとだけ、休憩時間に会うかもしれないっすね・・・」

コンコン・・・

「あ、誰か来た」

「はーい、どうぞー」

ガチャッ・・・

「あ、トシの兄貴!」

「おぅ、どうだ、部屋は問題ないか」

「・・・うん、とっても快適、ここ一番高いお部屋だよね、いいの?」

「親父がいいって言ってたぞ、今は宿泊客ほとんどいねーから使ってもらえってさ」

「ありがとね、親友のリィンちゃんもすごく喜んでくれてる」

「あ、それでな、もう少ししたら街の連中が風呂に入りに来るんだけど、解放前に貸切にするから先に入ってもらえって親父が言ってた、・・・お前、傷を見られるの嫌がってただろ・・・だから」

「そうだね、・・・じゃぁそうさせてもらおっか・・・ありがとトシの兄貴」

「おう、とっとと入って来い」

そして私は男っていう事になってるから先に、そしてその後でシャルロットさんとリィンちゃんが広いお風呂を楽しんだのです。

「すごい気持ちよかった!、広くて綺麗なお風呂最高!」

「そうだね・・・しかも地中から汲み上げてる温泉みたい、もう少ししたら街の人に開放するんでしょ、もちろん有料だけど」

「まぁ、あんな設備が街に一軒あったらお家にお風呂要らないっすよね、掃除する手間がかかるだけっすから、私も時々入りに来ようかな」

「あぁー、いいなぁリゼルくん、私もここに住みたぁーい、ここに移住する!」

「わー、またリィンちゃんそんな無茶な事言って・・・」




そして宿で出された夕食がとても凄かったのです、半屋外の飲食スペースでリックさんがお客さんの目の前で料理するのです!、リックさんの前には鉄板や金網、下からは炭が赤く燃えています、そこで豪快にお肉や海産物を焼いて調理、とてもワイルドな料理が私たちの前に次から次へと出されます。

タダーノさんはあの顔で繊細な料理、リックさんはこの顔で豪快な料理、・・・兄弟で料理とキャラが逆じゃない?ってリィンちゃんとお話ししながら食べていると、やって来た街の人達が設置された鉄板で好き勝手に自分達で料理を焼いて食べ始めています、・・・宿側は食材とお酒、調味料を提供、各自で食材やお酒を持ち寄って大騒ぎする人も、・・・みんな自由過ぎるのです・・・。

「リィンちゃん、自分で焼いて食べてみる?」

「・・・う・・・うん、初めてだけど楽しそう」

「お肉やお魚いっぱい持って来たっすよー」




みんなでお腹いっぱい食べた後、お部屋に戻ったリィンちゃんはベッドにダイブ、苺ちゃんの影響だろうなぁ・・・シャルロットさんが驚いてるよ・・・。

「あー、美味しかったー、これは太る・・・私絶対太っちゃう!、どうしようリゼルくん!」

「運動すれば良いんじゃないかな、この街は坂がいっぱいあるし、街を歩き回るだけで結構な運動になると思うよ、なんなら早朝に散歩行ってきなよ」

「朝はゆっくり寝ていたいの・・・」

「・・・」

「何その顔」

「・・・いや、リィンちゃん、いい性格してるよね」

「そう?、ありがと」

「そういうとこだよ・・・」

「ところで何してるの?」

「さっき買った魔鉄の指輪を加工してるの、やばいねこれ、ちょっと形を変えただけで僕の魔力半分持ってかれたよ、・・・リィンちゃんちょっと嵌めてみて、サイズどう?」

「え、怖いな・・・、これ抜けなくなったりしないよね・・・」

「・・・」

「いやなんか言ってよ!」

「冗談だよ、これはまだ普通の指輪だよ、魔法陣も刻んでないし、ほら見て、ちゃんと抜けるでしょ」

「うん、じゃぁ・・・あ、ぴったりだ」

「じゃぁサイズはこれでいいね、この後リィンちゃんが太ったら知らないけど」

「わーん!、リゼルくん何でそんなこと言うのー」

そんな楽しい会話をしながらコルトの街での1日目が過ぎていったのです。
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