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Side - 184 - 12 - あんじぇりか -(挿絵あり)
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Side - 184 - 12 - あんじぇりか -
僕の名前はアンジェリカ・シェルダン16歳、シェルダンと名乗っていますがローゼリア王国の筆頭貴族であるシェルダンの分家になります。
僕のおばあ樣の双子の姉、大伯母様が本家のシェルダンを継ぎ、おばあ様は余っている爵位を貰って新しく興した家の当主となりました、大伯母様とおばあ様はとても仲が良く、2つのシェルダン家はお互い助け合いながら交流を続けていました。
その交流が途絶えたのは一人娘だったお母様が周囲の反対を押し切って結婚、婿養子を迎えた時・・・僕のお父様はお世辞にも良い人間とは言えませんでした。
お母様はお父様のどこに惹かれたのか・・・僕には分かりません、金遣いが荒く毎晩遅くまで遊び歩き、お仕事はお母様に任せっきり・・・、僕の妹が生まれた頃には夫婦仲も冷え切っていました、でもお母様は離婚を勧める周囲の声を無視して仕事に没頭、次第に身体と精神を病んでいきました。
病弱だったおじい様は僕が生まれる前に、お母様が病に倒れた頃にはおばあ様も亡くなり本家とは疎遠な状態に・・・それでも散財をやめないお父様のせいで僕のお家にはお金がほとんど残っていませんでした。
お金が尽きかけた頃、流石にお父様は危機感を覚えたようで自分の娘を政略結婚の道具にしようと考えました、お父様と裕福そうな貴族家の当主様がお部屋で話しているのを偶然聞いてしまったのです。
僕か妹のどちらかを嫁に欲しい、一人息子だから甘やかして育ててしまった、仕事も覚えず悪い仲間と女を連れて遊び歩いている、賢く従順で領地運営をやらせる嫁が必要だ・・・シェルダンの血はとても魅力的だからお金は相当額払おう・・・と。
魔力量が比較的多く魔法が得意で将来は魔法騎士団に・・・と夢見ていた僕と、大人しく頭が良い妹・・・先程の話だと選ばれるのは妹で間違いないでしょう、僕は頭があまり良くないのです。
可愛い妹を守らないと!・・・まだ何の力もない子供だった僕は本家に助けを求めようとしました、今のお家の現状やお父様の企み、お金のために売られる妹・・・お手紙を書いてまだご存命の大伯母様に・・・でも僕たちを監視していた執事に気付かれ、お手紙を読まれてしまいました。
お部屋に閉じ込められてお父様に何度も殴られました、このままでは殺される・・・そう思った僕は隙を見て家を出ました。
妹も一緒にと思ったのですが一人で抜け出すのが精一杯、16歳の僕は・・・魔力量が多いせいで見た目は12歳ほどですが・・・一人でお家から遠く離れた街の路地裏に隠れながら生きる事になりました。
何とか王都まで辿り着いて本家の大伯母様に連絡を・・・そう考えましたが使えそうなゴミを拾って買い取ってもらったり、薬草を集めて売ったり・・・その日の寝る場所や食べ物を確保するのに精一杯で次第に夢も希望も・・・そして気力も尽きてしまいました。
そんな時、僕を拾ってくれた人がいました、銀級の女性ハンターで名前はジェーン、双剣を使う前衛、長い間ソロで活動していて、ちょうど魔法が使える後衛のパートナーを探していました。
「そこのゴミ箱で哀れに食べ物を漁るお嬢ちゃん・・・おやおや睨まれちゃったね、そんないかにも身寄りがありません、お腹空きましたって行動、攫ってくださいって言ってるようなものだよ」
「僕は・・・男だ!」
「嘘、骨格・・・足の動き、後ろで束ねた長い髪、自分では男だって言ってるのにその髪を切る勇気もなかったのかな?・・・見た目はまだ小さな子供だけど見る人が見たらすぐ女の子ってわかっちゃう、特に人攫い・・・」
「人攫い・・・」
「そう、身寄りのない子供は連れて行かれて・・・食べられちゃうんだ」
「・・・」
「あはは、そんなに怖がらないで、何で孤児院や教会に転がり込まないの?、この国は子供に優しいから孤児院の前で「身寄りがないです、お腹空きました」って言えば簡単に寝床とご飯、くれるよ」
「・・・孤児院は15歳までって聞いたから・・・ぐすっ・・・」
「真面目だねぇ魔力量の多いお嬢ちゃん、あなたの見た目なら・・・11歳って言っても信じてもらえるのに」
「分かるの?・・・」
「お嬢ちゃんも感じたでしょ、私も魔力量多いの、・・・同類は近くに来ると何となく分かるんだよ、さて、ここからが本題、お嬢ちゃん・・・魔法は使える?」
「素性の分からない怪しい人攫いには答えたくない!」
「気の強いお嬢ちゃんだね、ハンターの私が雇ってあげようか?って言ってるの、条件は支援魔法が使える事、私が気に入れば同等のパートナーにしてあげることもできる、お金が稼げるよ」
「・・・」
「用心深いのは良い事だけど、目の前に訪れたチャンスを見極めて掴める時には掴まないと・・・、お嬢ちゃんこのまま惨めに野垂れ死ぬかもね」
「どんな魔法を使えたら・・・雇ってくれるの?」
「私が魔物を倒してる時に後ろから魔法を撃って気を逸らしたり・・・足に攻撃して動きを止めたり・・・」
「できるよ」
「うん、できると思ってた、そんな魔力量持ってて何もできないなんてありえない、お嬢ちゃんは元貴族かな?、ひょっとして今も貴族で・・・家出中?」
僕はジェーンさんにこれまでの事を話しました、まだ完全に信用した訳じゃないけど、もう気力も体力も限界で誰でもいいから助けてもらいたかったの・・・。
「ほうほう、なるほど、あのシェルダン家の没落した方の子かぁ・・・、あなたの父親は探してるかな」
「僕に本家に駆け込まれたら都合が悪いし、こんな僕でも一応女で魔力量も多いから・・・まだ利用価値があると思う、領地の事やらされるか・・・どこかに売られたり・・・あの人、自分が生きてる時さえ良ければ家の後継の事とか全然考えてないから・・・うぅ・・・ひっく」
「はいはい、泣かないで、じゃぁお姉さんに雇われてくれたら王都に連れて行ってあげようか、王都までは魔物を倒してる私の後ろで魔法を撃ちまくる、ってのはどう?」
「・・・いいの?」
「うん、その後は本家に入って貴族のお嬢様として幸せに暮らすか、・・・妹さんを助けた後で私と一緒に世界中を旅してハンター生活を満喫するか・・・、それはあなたの自由、私としても大貴族様に恩を売っておいた方が何かとお得だからね」
こうして僕はジェーンさんに雇われ、ハンターの後衛として稼ぎつつお家の問題が片付いたら今後どうするか決めるっていう契約でシェルダン領の辺境から王都に向かう事になりました。
「ずっとニヤニヤして眺めてるけど・・・そんなに嬉しい?ハンター身分証」
「うん!、これで僕はどこにでも行けるんだって思ったらすごく嬉しいの!・・・今まで家に閉じ込められて・・・利用価値を高める為に貴族の教育や礼儀作法を無理やり叩き込まれて・・・寝る以外はずっと勉強してた」
「・・・」
「だけど僕バカだからお勉強できなくて、叩かれて・・・あぁ、このままどこの誰かもわからない男と結婚させられて、領地の仕事を押し付けられて、子供を産んで、歳をとって死んでいく・・・つまんない人生だなって思ってた、唯一良かった事といえば魔法の勉強ができた事、そのおかげでジェーンさんに雇ってもらえたから」
「うんうん、私のおかげ!、もっともっと崇めるがいいぞ!、それにしてもアンジェの魔法凄かったね!、ギルドで登録する時ちょっとだけ魔法撃ったやつ、標的の鎧が半分無くなってたし後ろで見てた人達も驚いてたよ」
「僕がシェルダン家の令嬢だってバレなかったかな?」
「大丈夫でしょ、ハンターって後ろ暗い過去がある人いっぱい居るから犯罪歴だけ見られて問題なければ大体通るよ、ほとんど詮索されなかったでしょ、・・・ギルドは貴族家と癒着してないからアンジェのお家に連絡しようっていう暇人なんていないし、シェルダンって名前の新米冒険者か、あのお貴族様と同じ名前ってスゲェな!くらいにしか思ってないよ、きっと」
「そう・・・だといいな・・・」
「さて、婚約の話が出てから1年半くらいだっけ?、妹さんの事も心配だし服や装備を買って王都に向かおうか、道中は契約通り私に協力して魔法撃ちまくってね」
「了解です!、雇い主さま!」
「・・・フフフ、楽しくなりそうだね!」
「うん!」
それからは僕の人生で一番楽しくて充実した日々でした、景色のいい湖でご飯を食べ、街道で旅人さん達とおしゃべり、途中の街では依頼を受け、宿では美味しい夕食、出てくる魔物もジェーンさんが瞬殺です、僕の支援っていらないんじゃ・・・何度もそう思いました、ジェーンさんに尋ねると。
「あ、おかしいなって思っちゃった?、実は後方支援に魔法が使える人を雇うっていうのは半分嘘、ずっとソロでやってきて寂しくなったんだぁ・・・誰かと一緒に旅をするって楽しいかなって・・・それで可愛い女の子を物色してたら路地裏でゴミを漁ってたアンジェを見つけたの、近寄ってみたら魔力量多いじゃない!、それに薄汚れてたけど可愛いし!、これは声かけなきゃって!」
「そうだったの?・・・じゃぁ僕が王都の本家で暮らす事になったら・・・ジェーンさんはまた一人で?」
「あぁー、そうだった、・・・別の子を探さなきゃだね、だって2人旅すっごく楽しいの!、もう1人で旅できそうにないや」
「ねぇ、僕でよかったらこれからもずっと一緒に旅しない?、ジェーンさんのせいで僕も息苦しい貴族令嬢に戻れないや・・・本当にジェーンさんに会ってから夢を見てるみたいに楽しかったから!」
「やったぁ!、パートナー確保!、でも本当にいいの?本家のシェルダンって超お金持ちだよ、贅沢し放題!、好きなもの買ってもらえるよ」
「そんなのは僕が欲しいものじゃないって気付いたの、ジェーンさんと一緒にいろんなところ旅して、美味しいものを食べて、お金稼いで、・・・歳を取って体力が無くなって・・・ハンターを引退するまで頑張ってお金を貯めて、景色のいいところにお家買って老後はそこでのんびり暮らすの!」
「老後かぁ、2人とも魔力量多いから・・・そうだなぁ・・・180歳?・・・200歳くらいまでいけるかもね、その夢のような人生設計!、乗った!、私も一緒に住むー」
「あれ、ジェーンさんいい男見つけて結婚するんじゃなかったの?」
「そっかー、じゃぁ旦那と一緒にアンジェのお家の隣に家建てて住む!、それで毎日一緒にお茶飲みながら「あの時の冒険は楽しかったのう・・・アンジェ婆さんや」「はて?、なんのことじゃったかな?ジェーン婆さん」「まぁ、アンジェお婆さんボケちゃって」ってお話する!」
「なんで僕がボケてるの前提なの!」
「ハハハ・・・じゃぁそんな楽しい老後に向けて、まずはアンジェのお家をなんとかしようか」
「そうだね、妹、大丈夫かなぁ」
依頼を受けたり寄り道をしていたので30日ほどかかってしまいましたが、いよいよ王都に到着します!。
アンジェリカ・シェルダンさん
僕の名前はアンジェリカ・シェルダン16歳、シェルダンと名乗っていますがローゼリア王国の筆頭貴族であるシェルダンの分家になります。
僕のおばあ樣の双子の姉、大伯母様が本家のシェルダンを継ぎ、おばあ様は余っている爵位を貰って新しく興した家の当主となりました、大伯母様とおばあ様はとても仲が良く、2つのシェルダン家はお互い助け合いながら交流を続けていました。
その交流が途絶えたのは一人娘だったお母様が周囲の反対を押し切って結婚、婿養子を迎えた時・・・僕のお父様はお世辞にも良い人間とは言えませんでした。
お母様はお父様のどこに惹かれたのか・・・僕には分かりません、金遣いが荒く毎晩遅くまで遊び歩き、お仕事はお母様に任せっきり・・・、僕の妹が生まれた頃には夫婦仲も冷え切っていました、でもお母様は離婚を勧める周囲の声を無視して仕事に没頭、次第に身体と精神を病んでいきました。
病弱だったおじい様は僕が生まれる前に、お母様が病に倒れた頃にはおばあ様も亡くなり本家とは疎遠な状態に・・・それでも散財をやめないお父様のせいで僕のお家にはお金がほとんど残っていませんでした。
お金が尽きかけた頃、流石にお父様は危機感を覚えたようで自分の娘を政略結婚の道具にしようと考えました、お父様と裕福そうな貴族家の当主様がお部屋で話しているのを偶然聞いてしまったのです。
僕か妹のどちらかを嫁に欲しい、一人息子だから甘やかして育ててしまった、仕事も覚えず悪い仲間と女を連れて遊び歩いている、賢く従順で領地運営をやらせる嫁が必要だ・・・シェルダンの血はとても魅力的だからお金は相当額払おう・・・と。
魔力量が比較的多く魔法が得意で将来は魔法騎士団に・・・と夢見ていた僕と、大人しく頭が良い妹・・・先程の話だと選ばれるのは妹で間違いないでしょう、僕は頭があまり良くないのです。
可愛い妹を守らないと!・・・まだ何の力もない子供だった僕は本家に助けを求めようとしました、今のお家の現状やお父様の企み、お金のために売られる妹・・・お手紙を書いてまだご存命の大伯母様に・・・でも僕たちを監視していた執事に気付かれ、お手紙を読まれてしまいました。
お部屋に閉じ込められてお父様に何度も殴られました、このままでは殺される・・・そう思った僕は隙を見て家を出ました。
妹も一緒にと思ったのですが一人で抜け出すのが精一杯、16歳の僕は・・・魔力量が多いせいで見た目は12歳ほどですが・・・一人でお家から遠く離れた街の路地裏に隠れながら生きる事になりました。
何とか王都まで辿り着いて本家の大伯母様に連絡を・・・そう考えましたが使えそうなゴミを拾って買い取ってもらったり、薬草を集めて売ったり・・・その日の寝る場所や食べ物を確保するのに精一杯で次第に夢も希望も・・・そして気力も尽きてしまいました。
そんな時、僕を拾ってくれた人がいました、銀級の女性ハンターで名前はジェーン、双剣を使う前衛、長い間ソロで活動していて、ちょうど魔法が使える後衛のパートナーを探していました。
「そこのゴミ箱で哀れに食べ物を漁るお嬢ちゃん・・・おやおや睨まれちゃったね、そんないかにも身寄りがありません、お腹空きましたって行動、攫ってくださいって言ってるようなものだよ」
「僕は・・・男だ!」
「嘘、骨格・・・足の動き、後ろで束ねた長い髪、自分では男だって言ってるのにその髪を切る勇気もなかったのかな?・・・見た目はまだ小さな子供だけど見る人が見たらすぐ女の子ってわかっちゃう、特に人攫い・・・」
「人攫い・・・」
「そう、身寄りのない子供は連れて行かれて・・・食べられちゃうんだ」
「・・・」
「あはは、そんなに怖がらないで、何で孤児院や教会に転がり込まないの?、この国は子供に優しいから孤児院の前で「身寄りがないです、お腹空きました」って言えば簡単に寝床とご飯、くれるよ」
「・・・孤児院は15歳までって聞いたから・・・ぐすっ・・・」
「真面目だねぇ魔力量の多いお嬢ちゃん、あなたの見た目なら・・・11歳って言っても信じてもらえるのに」
「分かるの?・・・」
「お嬢ちゃんも感じたでしょ、私も魔力量多いの、・・・同類は近くに来ると何となく分かるんだよ、さて、ここからが本題、お嬢ちゃん・・・魔法は使える?」
「素性の分からない怪しい人攫いには答えたくない!」
「気の強いお嬢ちゃんだね、ハンターの私が雇ってあげようか?って言ってるの、条件は支援魔法が使える事、私が気に入れば同等のパートナーにしてあげることもできる、お金が稼げるよ」
「・・・」
「用心深いのは良い事だけど、目の前に訪れたチャンスを見極めて掴める時には掴まないと・・・、お嬢ちゃんこのまま惨めに野垂れ死ぬかもね」
「どんな魔法を使えたら・・・雇ってくれるの?」
「私が魔物を倒してる時に後ろから魔法を撃って気を逸らしたり・・・足に攻撃して動きを止めたり・・・」
「できるよ」
「うん、できると思ってた、そんな魔力量持ってて何もできないなんてありえない、お嬢ちゃんは元貴族かな?、ひょっとして今も貴族で・・・家出中?」
僕はジェーンさんにこれまでの事を話しました、まだ完全に信用した訳じゃないけど、もう気力も体力も限界で誰でもいいから助けてもらいたかったの・・・。
「ほうほう、なるほど、あのシェルダン家の没落した方の子かぁ・・・、あなたの父親は探してるかな」
「僕に本家に駆け込まれたら都合が悪いし、こんな僕でも一応女で魔力量も多いから・・・まだ利用価値があると思う、領地の事やらされるか・・・どこかに売られたり・・・あの人、自分が生きてる時さえ良ければ家の後継の事とか全然考えてないから・・・うぅ・・・ひっく」
「はいはい、泣かないで、じゃぁお姉さんに雇われてくれたら王都に連れて行ってあげようか、王都までは魔物を倒してる私の後ろで魔法を撃ちまくる、ってのはどう?」
「・・・いいの?」
「うん、その後は本家に入って貴族のお嬢様として幸せに暮らすか、・・・妹さんを助けた後で私と一緒に世界中を旅してハンター生活を満喫するか・・・、それはあなたの自由、私としても大貴族様に恩を売っておいた方が何かとお得だからね」
こうして僕はジェーンさんに雇われ、ハンターの後衛として稼ぎつつお家の問題が片付いたら今後どうするか決めるっていう契約でシェルダン領の辺境から王都に向かう事になりました。
「ずっとニヤニヤして眺めてるけど・・・そんなに嬉しい?ハンター身分証」
「うん!、これで僕はどこにでも行けるんだって思ったらすごく嬉しいの!・・・今まで家に閉じ込められて・・・利用価値を高める為に貴族の教育や礼儀作法を無理やり叩き込まれて・・・寝る以外はずっと勉強してた」
「・・・」
「だけど僕バカだからお勉強できなくて、叩かれて・・・あぁ、このままどこの誰かもわからない男と結婚させられて、領地の仕事を押し付けられて、子供を産んで、歳をとって死んでいく・・・つまんない人生だなって思ってた、唯一良かった事といえば魔法の勉強ができた事、そのおかげでジェーンさんに雇ってもらえたから」
「うんうん、私のおかげ!、もっともっと崇めるがいいぞ!、それにしてもアンジェの魔法凄かったね!、ギルドで登録する時ちょっとだけ魔法撃ったやつ、標的の鎧が半分無くなってたし後ろで見てた人達も驚いてたよ」
「僕がシェルダン家の令嬢だってバレなかったかな?」
「大丈夫でしょ、ハンターって後ろ暗い過去がある人いっぱい居るから犯罪歴だけ見られて問題なければ大体通るよ、ほとんど詮索されなかったでしょ、・・・ギルドは貴族家と癒着してないからアンジェのお家に連絡しようっていう暇人なんていないし、シェルダンって名前の新米冒険者か、あのお貴族様と同じ名前ってスゲェな!くらいにしか思ってないよ、きっと」
「そう・・・だといいな・・・」
「さて、婚約の話が出てから1年半くらいだっけ?、妹さんの事も心配だし服や装備を買って王都に向かおうか、道中は契約通り私に協力して魔法撃ちまくってね」
「了解です!、雇い主さま!」
「・・・フフフ、楽しくなりそうだね!」
「うん!」
それからは僕の人生で一番楽しくて充実した日々でした、景色のいい湖でご飯を食べ、街道で旅人さん達とおしゃべり、途中の街では依頼を受け、宿では美味しい夕食、出てくる魔物もジェーンさんが瞬殺です、僕の支援っていらないんじゃ・・・何度もそう思いました、ジェーンさんに尋ねると。
「あ、おかしいなって思っちゃった?、実は後方支援に魔法が使える人を雇うっていうのは半分嘘、ずっとソロでやってきて寂しくなったんだぁ・・・誰かと一緒に旅をするって楽しいかなって・・・それで可愛い女の子を物色してたら路地裏でゴミを漁ってたアンジェを見つけたの、近寄ってみたら魔力量多いじゃない!、それに薄汚れてたけど可愛いし!、これは声かけなきゃって!」
「そうだったの?・・・じゃぁ僕が王都の本家で暮らす事になったら・・・ジェーンさんはまた一人で?」
「あぁー、そうだった、・・・別の子を探さなきゃだね、だって2人旅すっごく楽しいの!、もう1人で旅できそうにないや」
「ねぇ、僕でよかったらこれからもずっと一緒に旅しない?、ジェーンさんのせいで僕も息苦しい貴族令嬢に戻れないや・・・本当にジェーンさんに会ってから夢を見てるみたいに楽しかったから!」
「やったぁ!、パートナー確保!、でも本当にいいの?本家のシェルダンって超お金持ちだよ、贅沢し放題!、好きなもの買ってもらえるよ」
「そんなのは僕が欲しいものじゃないって気付いたの、ジェーンさんと一緒にいろんなところ旅して、美味しいものを食べて、お金稼いで、・・・歳を取って体力が無くなって・・・ハンターを引退するまで頑張ってお金を貯めて、景色のいいところにお家買って老後はそこでのんびり暮らすの!」
「老後かぁ、2人とも魔力量多いから・・・そうだなぁ・・・180歳?・・・200歳くらいまでいけるかもね、その夢のような人生設計!、乗った!、私も一緒に住むー」
「あれ、ジェーンさんいい男見つけて結婚するんじゃなかったの?」
「そっかー、じゃぁ旦那と一緒にアンジェのお家の隣に家建てて住む!、それで毎日一緒にお茶飲みながら「あの時の冒険は楽しかったのう・・・アンジェ婆さんや」「はて?、なんのことじゃったかな?ジェーン婆さん」「まぁ、アンジェお婆さんボケちゃって」ってお話する!」
「なんで僕がボケてるの前提なの!」
「ハハハ・・・じゃぁそんな楽しい老後に向けて、まずはアンジェのお家をなんとかしようか」
「そうだね、妹、大丈夫かなぁ」
依頼を受けたり寄り道をしていたので30日ほどかかってしまいましたが、いよいよ王都に到着します!。
アンジェリカ・シェルダンさん
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