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Side - 12 - 2 - わたしのいるせかい -

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カラカラ・・・ひゅいーん・・・ひゅいーん・・・

こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン12歳です、今私とお父様は馬車に乗って王城に向かっています。

馬車と言っても生きている馬ではないのです、馬に代わる移動、貨物運搬手段として最近普及してきた馬型四足歩行魔道具「アイヴォウ」、そしてそれが曳く家紋付きの馬車に乗っています、そう・・・この世界には魔法に加えて、魔力を動力源にした魔道具があるのです。

ここまでの話でお察しの通り私が転生したお家は貴族・・・しかも国の筆頭貴族なのです、こう見えて私は大貴族のお嬢様なのですよ!、家族の人相がとても悪いから傍目には悪徳貴族に見えますが・・・広大な領地に住む領民の評判は上々、皆からは「顔はとてつもなく恐ろしいが良い領主様」と慕われています。

そしてお父様は宰相補佐というお仕事をしていて、毎日お城に通勤しているのです。

私のお家からお城へと続く道は王都のメインストリート、石畳が敷き詰められている広い道で、馬車のサスペンションの良さもあって揺れがほとんど無くとても快適です、道の中央には線路が通っていて魔導列車が乗客を沢山乗せて走っています。

街はとても賑やかで、道の両脇には魔導灯が等間隔に設置され夜でも明るいのです、石造りの外壁と傾斜が急な屋根のある民家やお店にはこの国の国旗が飾られ、色鮮やかな鉢植えのお花が咲いています。

私が前世で読んでいた異世界小説に出てくるような中世ヨーロッパ的な街並みに魔道具が発達した機械文明、スチームパンク的な要素が混ざったような世界・・・これが私の住んでいる街、ローゼリア王国の王都、ローゼリアなのです。


「・・・無駄に文明が進み過ぎてるから異世界転生小説にありがちな現代知識で無双は出来ないし、私なんかが思い付く事はもう他の誰かが考えて作っているのです・・・それにお食事もとても美味しい・・・」

「ん、リゼたん、何か言ったかな?」

わ、脳内の会話が口に出ちゃってた・・・しかも日本語で!。

「ううん、お父様、ちょっと独り言」

「リゼたん時々独り言を言うけど、それは前世で使ってた言葉だよね」

「うん、頭の中では向こうの言葉で考えるようにしてるの、使ってないと忘れそうで怖いから」





さて、この辺で私が転生して生まれ変わったこの世界についてお話しするのです。

私が今住んでいるのは田中理世として生きていた地球と同じような惑星にある大きな4つの陸地のうちの1つ、エテルナ大陸の中にある国、ローゼリア王国なのです。

・・・と言ってもこの世界には惑星の概念が無いようで、ざっくりと「世界」「大陸」「国」「島」「海」「星」「月」といった感じで私が知る限り「宇宙」や「惑星」という言葉を聞いた事がありません。

ちなみに太陽は1つで巨大な月が2つあるのです、季節は春夏秋冬のような四季はあるけれど名前はそうじゃなくて、「暑い時期」「寒い時期」「雨の時期」「晴れの時期」「風の時期」って呼ばれています。

時計(もちろん時計もあるのです!)は0から9までの10時間表示、針が2周すると1日になります、月の概念はなくて、1年はちょうど400日。

文字や言葉は大陸共通の言語があって、このエテルナ大陸の国々どこに行っても言葉が通じます。

一般の人達の識字率はかなり高く、普通に文字が読めて書ける人が殆どなのです、でも文字を覚えるの大変だったなぁ・・・。

言葉と同じく通貨も大陸共通で単位は「ギル」、金貨や銀貨、銅貨が主に使われていて魔力を使ったグレジットカード的なものもあるのです。

「リ・・・たん・・・」

「・・・」

「リゼたん、着いたよ」

「ん・・・あ、ごめんお父様、ちょっと考え事をしてたの」

「頭の中のエアお友達?とお話ししてたのかな」

「・・・うん」

お城に着きました、ゴシック様式の大聖堂のような・・・見上げると首が痛くなりそうな巨大な白いお城・・・エテルナ大陸最大の国、ローゼリア王国の王城です。

この国には王様がいて貴族がいます、奴隷もいるし、私は見た事が無いですがエルフや獣人もいるそうです。

理世が生きていた世界にも王様が居ましたが、この世界はガチの王政なのです、偉い人に何かしたら物理的に首が飛ぶような、いわゆる中世ヨーロッパみたいな感じかな。

人を裁く法律は意外としっかりしているから意味もなく殺されたりはしないのですが日本と比べると人の命が軽いかもしれません、幸いな事にこの大陸は平和で、聞いたところによると200年近く大きな国家間の戦争は起きてないのだとか。

ローゼリア王国を建国した始祖王様によって法律、言語、通貨、単位、宗教、その他様々な統一規格を作ってこの大陸にある国々と同盟を結び、1つに纏め上げたのだそうです、でも・・・同盟に加わり従う国にはお金や食料をばらまき、従わない国は地図からいつの間にか消えたそう、なにそれ怖い・・・。

戦争が無くて平和なのはこの大陸とお隣のミラージュ大陸の一部の国だけらしく、他の大陸では魔物の巣窟で人が住めなかったり、悪い皇帝が国民を使って巨大なピラミッドを作らせたり、野盗がヒャッハー!するような理世のお父さんが沢山持っていた胸に七つの傷がある漢が登場する世紀末漫画のような物騒な地域があるようです・・・。

「じゃぁお父様はお仕事に行ってくるからね、お勉強頑張るんだよ」

「はーい」





コンコン・・・ガチャ・・・

「魔法錠がかかってる、魔力を通して・・・」

がこっ・・・ギィ・・・

「博士ぇ、おはよー・・・あれ、居ないや、書き置き?」

「えーと「嬢ちゃんへ、急用ができた、明日までには戻る、今日は自習しててくれ」・・・えー、博士居ないのかぁ・・・」

ぽすっ・・・

魔導具があちこち散乱している博士の研究室、その壁際に置いてあるソファに腰掛け、大きく伸びをします・・・今日は自習、お父様が迎えに来る夕方まで何をしようかな。

カチカチ・・・

「ん・・・また博士は訳の分かんない物を作ってる、何これ・・・時計が付いてて時を刻んでる、タイマー的なものかな、それで裏側に魔法陣・・・解読できるかな」

カーン!、カーン!、カーン!

「わひゃぁぁ!、・・・びっくりしたのです・・・何なのこれ、目覚まし時計?・・・にしては大掛かり過ぎるでしょ・・・うぅ・・・びっくりして少し漏れちゃった・・・どうしよう」





「あぅ・・・履いてないと無防備で落ち着かないのです・・・」

お漏らしした下着を洗ってお部屋に干した後、私はソファに寝転がって博士の書棚にある本を読んでいます、ここの本もほとんど読み尽くしたなぁ・・・。

あ、博士っていうのは私の師匠です、この国の子供は絶対に学校に行かなければいけない、という決まりはなくて、平民なら授業料無料の学校で読み書きや数学を、貴族やお金持ちは学校に行ってもいいし家庭教師を雇ってもいいのです、頭がいい人だと学校には行かずに本を読んで独学しているのです。

私の場合は極度の人見知り、身体の大きな男の人に触れられると怖くてお漏らしをしてしまうのでお父様の友人・・・恩師らしいのですが、その人に家庭教師兼魔法の師匠になってもらっています。

博士の名前はドック・フューチャ、王立魔法研究所の所長で推定年齢300歳以上、魔法理論、魔道具研究の権威、薬学や医学の知識も豊富、人体構造にも詳しく医者としての腕も超一流という凄い人なのです!。

外見は初老の男性、理世のお父さんが持っていた映画のDVD、「⚪︎ックトゥザフューチャー」に出て来るドクっていう人にとても似ているのです。





くぅ・・・

「お腹が空いたのです・・・あ、お昼少し前、今行ったら食堂混んでないかも」

王城の敷地の片隅に建っている赤い煉瓦作りの古い建物、魔法研究所の廊下を歩いて所員用の食堂にご飯を食べに行くのです。

「うん、予想通り、まだお昼前だから人が居ない」

「あら、リゼちゃん、今日は所長と一緒じゃないの?」

「・・・うん、博士は用があって出掛けるって・・・あの・・・肉挟みパンと野菜スープをお願いします」

「はいよ!、スープの具はちょっと多めにしておくね」

「ありがとう・・・」



あむあむ・・・

「うん、今日も美味しい」

研究所に来た時の私の定位置、食堂奥のテーブルでいつものようにお食事をしています、食堂のおばさんとも顔馴染みになりました。

この国の料理はとても美味しいのです、幼い頃「もしかして異世界小説みたいに料理知識で無双できるかも」って少しだけ思ってたけど・・・どこで食べても私の料理より何倍も美味しいのです・・・。

「残るは悪役令嬢のパターンだよね」

そう、チートなスキルで無双、現代知識で無双、料理無双、全部ダメならもう残ったのは悪役令嬢・・・私悪役顔だし・・・でも学校に行ってないし婚約者も居ないから主人公的な女の子とも出会わないだろうし接点が全然無いよね・・・って!、私男の人と結婚なんて絶対に無理だし!。

ざわざわ・・・

あむあむ・・・んくっ・・・

「少し混んできたのです、急いで食べよう・・・」





「あー、腹減ったぁ、おばちゃん、ミックスランチ1つ」

「俺は鳥のソテーとパンね」

「はいはい、ちょっと待ちな」





「今日もうまそうだな」

「おい、あの眼帯の女の子今日は一人で食ってるぞ」

「ん?、あぁ、所長のお弟子さんか、確か所長は朝から荷物を持って何処かに出掛けてたな」

「何であんな人の弟子になったんだか・・・」

「あぁ、所長は人嫌いの変人だが魔法陣や魔道具の知識は凄いからな、その知識目当てか何かだろう・・・弟子入りしてもう4年くらいになるか、よく続いてるよな」

「転移魔法陣だったか・・・ハハハ、本気であんな物が実現できると思ってるのなら優しい俺がやめておけって忠告してやろうか」

「研究室で変な事されてたりしてな・・・もう所長無しでは生きられない身体になりましたぁ・・・ってな」

「馬鹿、声がでかい、聞こえたらどうするんだよ、彼女は上級貴族、シェルダンの娘で王女殿下の友人だぞ」

「あぁ、そうか、やばいやばい、当主にバレたら暗殺されそうだ、あの家を怒らせたら恐ろしいからな」





ガタッ・・・

「ぐすっ・・・」

・・・博士は凄いのです、今は好き勝手言ってればいいのです、そのうちざまぁしてやるから覚えてろ!、なのです・・・。





バタン・・・

「あーあ、せっかくの美味しい昼食がクソ野郎達のせいで台無しになったのです、みんな馬鹿にしてるけど、絶対に転移魔法陣は実現できるのです!」









(肉挟みパン)
ローストビーフのような薄切り肉を炭火で炙って甘酸っぱいソースを付け、パンに挟んだもの、ローゼリアの街のご当地グルメ

(野菜スープ)
野菜やソーセージがゴロゴロ入ったポトフっぽいスープ

(王城)
ミラノ大聖堂に似た感じのお城




大陸地図
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