219 / 302
3学期
王子の町娘奪還作戦1
しおりを挟む
「葉月か?どうした。」
「…やっぱり、田宮さんと一緒でしたね。」
「ま、まあな。」
「携帯情報は生徒に教えないんじゃなかったんですか?」
うっ!そこ、突っ込むなよ~。
「イジワルだな。本当にすまない。」
「…手短に話します。
この前のメモ…見ました?」
「ああ、意味もわかってるつもりだ。」
「…助けて…くれますか?」
これは!!…そう言う事だよな。
メモを貰った時から薄々は感じていたが、デリケートな案件だけに、本人には確認を取っていなかった。
でも、大方予想はしていた事態だ。
「葉月…今どこに?」
「まだ…大丈夫です。
先生の携帯番号を転送して貰っていいですか?」
「わかった。送る。」
「では、後ほど情報を転送します。
もう、切ります。ごめんなさい。」
「あ!おい!葉月!?」
葉月からの電話は切れてしまった。
「田宮、僕のアドレスを葉月に転送してくれないか?」
「はい。」
田宮はすぐに葉月に僕の連絡先情報を転送した。
「先生…。葉月さんに何か…。
また、姉が…。」
彼女は怯えた眼差しで僕を見上げた。
「大丈夫だ。君とは関係ない案件だ。」
僕は笑顔で彼女の頬に右手を当てた。
彼女は震える両手を頬にある僕の手に重ねた。
震えてる…。
僕は左手腕でグッと彼女の身体を引き寄せた。
「心配性だな。ほら、おまじない。」
僕はそう言って、彼女のおデコに軽くキスをした。
「何も心配ない。約束する。
僕を信じてくれるね。」
「…はい。」
プルルルルプルルルル。
葉月からのメッセージだ。
『今夜10時 流石ゼミナール横 藤和銀行正面 。
黒のアタッシュケース。』
予備校の近く…。
なるほど…予備校の近くで補導されるリスクは少ない。
つくづく、頭の使い方があざとい!
これだから、下手に頭のいい奴ってのは厄介なんだ。
「ちょっと、職員室に行ってくる。」
僕は彼女を旧理科室に残して、清水先生と連絡を取るために職員室へと向かった。
清水先生は出勤予定ではない。
一応、職員室内を見回したが、やはりいない。
僕は自席に座って清水先生に電話を掛けた。
「おう!どうした武本。
お前が電話を掛けて来るなんて。」
「緊急事態です。
今夜10時に葉月がウリの客と会います。」
「…はああ?何だと!?」
「協力をお願いします。」
「金井先生に連絡は?」
「まだです。これからしようかと。」
「午後7時に学校で落ち合おう。
一旦作戦会議も必要だろ。」
「わかりました。
金井先生にも、そう伝えます。」
僕は清水先生の電話を切るとすぐに、金井先生に電話を掛けた。
「武本先生?どうしました?何か…。」
「昨日の今日でスミマセン。
葉月が緊急事態です。
今夜10時に1年3組の葉月がウリの客と会います。」
「何ですって?」
「助けを求めて来てます。
清水先生には連絡済みです。
午後7時に学校で落ち合おう事に…。」
「わかりました。
僕もそちらに向かいます。」
「宜しくお願いします。」
僕は電話を切って、再び旧理科室へと向かった。
田宮は掃除をしていた。
実験台を丁寧に拭いていた。
今の時間は午後5時。
「田宮…今日は早めに帰らないか?」
「ん?ここ、使いますか?」
「いや…そうじゃなくて。」
何て言ったらいいんだ…。
「先生…困るんですね。
じゃあ、帰ります。」
「あ、いや…邪魔とかじゃないんだ。
勘違いしないで欲しい。」
「わかってますよ。
私は、また明日来ればいいので。」
「…ありがとう。」
恋愛以外は察しがいいな…本当に。
「掃除道具を片付けてから帰ります。」
そう言うと、彼女は掃除道具を片付け始めた。
最後に手を洗い終えた彼女に僕は近寄った。
「田宮…あのさ…。」
これから…僕は葉月を助けに行かなきゃならない。
怖くないと言ったら嘘になる。
勇気が欲しい…少しでいいから。
僕は言葉を選んでいた。
「…先生。気を付けて。」
「…えっ…。」
彼女が急に僕の首に腕を伸ばし、僕の額と彼女の額をピタリとくっつけた。
「私も…見ています。
先生が見ていてくれるように。」
僕は目を伏せて礼を言った。
「ありがとう。…でも…できたら…。」
キスが欲しい…。
僕はその言葉を飲み込んだ。
好きでもない男に、そう何度もキスをするなんて…やっぱり可哀想だと思ったからだ。
「!!」
一瞬柔らかい彼女の唇が、僕の唇に触れ合った。
彼女からの3度目のフレンチキスだった…。
「これで元気出ますか?」
キスの内容なんかより、彼女からっていうのがたまらなく嬉しかった。
「…出た!すごく元気になった!」
「ふふふ。」
彼女は照れながら小さく笑った。
これで、俄然やる気が出てきた。
僕は彼女を帰宅させて、僕も一旦マンションに戻った。
格好から言えば、自分の方が怪しまれそうだ。
なんせモテない大学生だからな。ははは。
とりあえず、スーツを着てオールバックにして、前の視界も確保して黒のロングコートに着替えてから、僕は再び学校へと戻った。
「…やっぱり、田宮さんと一緒でしたね。」
「ま、まあな。」
「携帯情報は生徒に教えないんじゃなかったんですか?」
うっ!そこ、突っ込むなよ~。
「イジワルだな。本当にすまない。」
「…手短に話します。
この前のメモ…見ました?」
「ああ、意味もわかってるつもりだ。」
「…助けて…くれますか?」
これは!!…そう言う事だよな。
メモを貰った時から薄々は感じていたが、デリケートな案件だけに、本人には確認を取っていなかった。
でも、大方予想はしていた事態だ。
「葉月…今どこに?」
「まだ…大丈夫です。
先生の携帯番号を転送して貰っていいですか?」
「わかった。送る。」
「では、後ほど情報を転送します。
もう、切ります。ごめんなさい。」
「あ!おい!葉月!?」
葉月からの電話は切れてしまった。
「田宮、僕のアドレスを葉月に転送してくれないか?」
「はい。」
田宮はすぐに葉月に僕の連絡先情報を転送した。
「先生…。葉月さんに何か…。
また、姉が…。」
彼女は怯えた眼差しで僕を見上げた。
「大丈夫だ。君とは関係ない案件だ。」
僕は笑顔で彼女の頬に右手を当てた。
彼女は震える両手を頬にある僕の手に重ねた。
震えてる…。
僕は左手腕でグッと彼女の身体を引き寄せた。
「心配性だな。ほら、おまじない。」
僕はそう言って、彼女のおデコに軽くキスをした。
「何も心配ない。約束する。
僕を信じてくれるね。」
「…はい。」
プルルルルプルルルル。
葉月からのメッセージだ。
『今夜10時 流石ゼミナール横 藤和銀行正面 。
黒のアタッシュケース。』
予備校の近く…。
なるほど…予備校の近くで補導されるリスクは少ない。
つくづく、頭の使い方があざとい!
これだから、下手に頭のいい奴ってのは厄介なんだ。
「ちょっと、職員室に行ってくる。」
僕は彼女を旧理科室に残して、清水先生と連絡を取るために職員室へと向かった。
清水先生は出勤予定ではない。
一応、職員室内を見回したが、やはりいない。
僕は自席に座って清水先生に電話を掛けた。
「おう!どうした武本。
お前が電話を掛けて来るなんて。」
「緊急事態です。
今夜10時に葉月がウリの客と会います。」
「…はああ?何だと!?」
「協力をお願いします。」
「金井先生に連絡は?」
「まだです。これからしようかと。」
「午後7時に学校で落ち合おう。
一旦作戦会議も必要だろ。」
「わかりました。
金井先生にも、そう伝えます。」
僕は清水先生の電話を切るとすぐに、金井先生に電話を掛けた。
「武本先生?どうしました?何か…。」
「昨日の今日でスミマセン。
葉月が緊急事態です。
今夜10時に1年3組の葉月がウリの客と会います。」
「何ですって?」
「助けを求めて来てます。
清水先生には連絡済みです。
午後7時に学校で落ち合おう事に…。」
「わかりました。
僕もそちらに向かいます。」
「宜しくお願いします。」
僕は電話を切って、再び旧理科室へと向かった。
田宮は掃除をしていた。
実験台を丁寧に拭いていた。
今の時間は午後5時。
「田宮…今日は早めに帰らないか?」
「ん?ここ、使いますか?」
「いや…そうじゃなくて。」
何て言ったらいいんだ…。
「先生…困るんですね。
じゃあ、帰ります。」
「あ、いや…邪魔とかじゃないんだ。
勘違いしないで欲しい。」
「わかってますよ。
私は、また明日来ればいいので。」
「…ありがとう。」
恋愛以外は察しがいいな…本当に。
「掃除道具を片付けてから帰ります。」
そう言うと、彼女は掃除道具を片付け始めた。
最後に手を洗い終えた彼女に僕は近寄った。
「田宮…あのさ…。」
これから…僕は葉月を助けに行かなきゃならない。
怖くないと言ったら嘘になる。
勇気が欲しい…少しでいいから。
僕は言葉を選んでいた。
「…先生。気を付けて。」
「…えっ…。」
彼女が急に僕の首に腕を伸ばし、僕の額と彼女の額をピタリとくっつけた。
「私も…見ています。
先生が見ていてくれるように。」
僕は目を伏せて礼を言った。
「ありがとう。…でも…できたら…。」
キスが欲しい…。
僕はその言葉を飲み込んだ。
好きでもない男に、そう何度もキスをするなんて…やっぱり可哀想だと思ったからだ。
「!!」
一瞬柔らかい彼女の唇が、僕の唇に触れ合った。
彼女からの3度目のフレンチキスだった…。
「これで元気出ますか?」
キスの内容なんかより、彼女からっていうのがたまらなく嬉しかった。
「…出た!すごく元気になった!」
「ふふふ。」
彼女は照れながら小さく笑った。
これで、俄然やる気が出てきた。
僕は彼女を帰宅させて、僕も一旦マンションに戻った。
格好から言えば、自分の方が怪しまれそうだ。
なんせモテない大学生だからな。ははは。
とりあえず、スーツを着てオールバックにして、前の視界も確保して黒のロングコートに着替えてから、僕は再び学校へと戻った。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる