忘却の魔法

アナスタシアと鈴

第2話

「あれをやらせたらさぁ、海も空も初めはビビってたのに…どんどん斬り刻んて行くうちに、身体中が熱くなって満足感に包まれたってさ。
自分達の求めてた事に気が付いたんだよ！
見てご覧！2人の顔！
恍惚の顔ってのはああいう事だろう！
仁科先生！僕等は自由なんだ！
監視された生活なんて望んでないのさ！」

綺麗な顔に似合わないセリフを近藤 陸は長々と吐いた。

「そんな…時期が来たら自由になれるって…！
解放されるって言ってたでしょ！」

「待てないんだよ。
僕等は若いんでね。」

バタバタ！ガチャ！
仁科 加奈子は慌てた様子で所長室を飛び出して行った。

俺と金井は仁科 加奈子の置いて行ったインカムを持ち上げて、お互いの耳を近付けた。
「梶さん、金井さんこんにちわ。
ようこそ、僕の楽しい宴に。」
「テメェ！何考えてる！鈴は何処だ！」
俺は思わず噛み付いた。

「慌てない、慌てない。
これから、もっと面白い事が始まるよ。
あははは、あははは！」
「変な笑い方をすると、せっかくのその顔が台無しですよ！
鈴はそこに…君の側に居るんですね。」
「居るけど…お2人さんは探すの大変でしょう。
何せ今居る場所でさえ把握して無い。」

ブルルルブルルル。
「えっ、メール？」
「ここの施設内の地図アプリですよ。
ちゃんとかわいいウサギと狼のキャラクターの居る部屋がここです。」
近藤 陸が狼で、鈴がウサギって訳かよ。

…ん？もう一通メールが来てる…これは…？
「梶！急ぎましょう！」
「あ！ああ。」
俺はもう一通のメールを開く間も無く、金井と部屋を急いで出た。