忘却の魔法

平塚冴子

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忘却魔法とパンドラの箱

第1話

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時間になり、金井の車で俺達は一路『脳内記憶研究所』を目指した。

途中、コンビニに寄りブラックコーヒーをしこたま買い込んだ。
こりゃ敵との戦いの前に眠気との戦いに勝たなきゃだな。

あくびをしつつ、軽く身体を動かしてから再度車に乗った。
次は俺の運転の番だ。
「安全運転でお願いします。
鈴に会いたい気持ちはわかりますが、事故ったらそれで終わってしまうので。」
「わかってるよ!ンなの!」
ったく、親友はいいが、こうもなんでも見透かされてるなんて…レベルの差を感じる。
俺は金井の何を知ってるんだろう…振られた話しも聞いてないし…まぁ、男は付き合った話しはしても基本、振られた話しはしないもんだけどな。

車は田舎道に入った。
もう少しで『脳内記憶研究所』に着くはずだ。
ハンドルを握る手にも力が入った。
あれだけ睡魔に襲われてたのに、『脳内記憶研究所』が近づいたってだけで、目がギンギンに冴えて来やがった。

…待ってろよ!今、行くからな!…鈴!

人気の無い通りを抜けて、ガタガタした山間の道に入って行った。
「門が見えて来ましたよ!」
金井が門を指差した。

門の前まで来ると、一旦車を止めて、俺は仁科 加奈子の直通電話番号に電話を掛けた。

トゥルルル。
ガチャ。
「お久しぶりです。
フリーライターの梶です。
俺の相棒がお邪魔してるそうなので、迎えに来ました。」
俺は内心キレながらも、表では冷静さを装って話した。
「いらっしゃいませ。
おまちしていましたわ。
お嬢さんは今、奥でティータイムを満喫しています。
手荒な真似はしていませんよ。
さ、門を開場します。
どうぞ中へ。」

ガチャ。
プッ。
電話を切ったと同時に門が開いた。
駐車場に車を停めて、俺と金井は受付へと向かった。
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